先月の話ですが、毎年お彼岸の墓参りの頃になると咲く彼岸花。
夏の気候が影響したのか今年は例年より咲くのがここ播州では1~2週間遅れていました。
テレビを見る度に思うのですがコロナに対しての過剰な報道はいまだに止むことがありません。
早く元通りになってコンサートやその練習が不通に行えるようになって欲しいです。
その修復は散々恐怖心を煽って来たマスコミが責任をっとって先頭を切らないと・・・そんな気がします。
小説「Obralmの風」
奥さんは痺れをきらせたのか彼女のコップに水を注ぎながら再び小声で言った。
「お連れの方は到着された時には改めて暖めますから、どうぞ冷めないうちに召し上がりませんか」
彼女は首を小さく横に振った。
「もう一度催促のメールをしたところなので返事があるまで待ちます」
「そうですか、私共は一向に構いませんのでお待ちしましょう」
彼女は奥さんの言葉にお礼を言いながら顔を少しこちらに向け、岳の様子を伺うような仕草をした。
岳は先程ワインを飲みながらこのまま居座ろうと考えていたが、彼女の心境を察すると斜め後ろに視線を感じることは耐え難い苦痛かもしれないと思い始めた。
自然豊かな場所にくると気持ちまで優しくなれるのか、それとも本来の自分が姿を現したのだろうかと岳は心の中で苦笑した。
岳はダイニングを後に廊下を歩いて自分の部屋へ戻った。
木枠の趣がある窓を開けると冷ややかな風が押し入って来る。
ワインで火照った顔に風が心地よく感じられる。
窓の外は漆黒の闇夜かと思えば意外にも明るい。
(おや?今夜は満月かな)
窓から空を見上げれば淡黄色の満月が明るく山麓を照らし出していた。
岳は後回しにしていた病への対処を考えることにした。
医者の勧めるまま入院して末期癌と戦いながら死を迎えるか、それともありもしない奇跡を信じてギリギリまでこのままの生活を続けようか。
この世に悔いを残さぬようまだ見ぬ世界を旅して自分のために時間を費やしてみるのもいいかも知れない。
でも何時病状の悪化症状が襲ってくるか判らない不安は拭えない。
かと言ってこのまま入院すれば最後まで出て来られない恐怖も心の一部を占めている。
よくドラマなど見るように他人や社会の為に命を燃焼させるほど崇高な心は残念ながら持ち合わせてはいない。
せっかくこの世に生まれて来たのだから自分が納得出来る生き方をしたいと思うのは自己中心で恥ずかしいことなのだろうか。
そんな病人の生き方に誰がジャッジするのだろうか。
満月はそんな岳の思案に無関心を示すかのように光り輝いていた。
どれ程の時間考えていたのだろう、部屋は山の冷気ですっかり冷えてしまった。
春とは言えここは山の中、それに標高も高いせいもあって冷え込みは冬の名残を思わせる。
岳は窓を閉めると浴槽に湯を貯めた。
(明日は風呂じゃなく、どこか温泉に行くとするか)
真新しい湯に体を沈め、眼を閉じると今日観た景色がスライドショーのごとく脳裏に浮かぶ。
都会の眺めとは違って自然の中に居るとこうまでも心の奥に記憶として留まり、その景色を反芻出来る。
小鳥の声や木立の間で聞いた春蝉の鳴き声までが鮮やかに蘇る。
そんな時、確かに昼間の残照とは違った異質の音というか声のようなものを岳の耳は捉えた。
(はて、何処から・・・)
岳は浴槽に浸かりながら周りを見た。
何処にも音源は見当たらない。
でも確かに聞こえて来る。
「ウーウーウー」
と呻き声のようで鼻腔に抜けるような感じの声は女性の咽び泣きのように聞こえる。
声の種類が判明した途端、岳の全身の毛穴が粟立った。
(ゆ、幽霊・・・)
昔から聞いた旅館やホテルで起こる怪奇話の記憶が一度に蘇った。
夏の気候が影響したのか今年は例年より咲くのがここ播州では1~2週間遅れていました。
テレビを見る度に思うのですがコロナに対しての過剰な報道はいまだに止むことがありません。
早く元通りになってコンサートやその練習が不通に行えるようになって欲しいです。
その修復は散々恐怖心を煽って来たマスコミが責任をっとって先頭を切らないと・・・そんな気がします。
小説「Obralmの風」
奥さんは痺れをきらせたのか彼女のコップに水を注ぎながら再び小声で言った。
「お連れの方は到着された時には改めて暖めますから、どうぞ冷めないうちに召し上がりませんか」
彼女は首を小さく横に振った。
「もう一度催促のメールをしたところなので返事があるまで待ちます」
「そうですか、私共は一向に構いませんのでお待ちしましょう」
彼女は奥さんの言葉にお礼を言いながら顔を少しこちらに向け、岳の様子を伺うような仕草をした。
岳は先程ワインを飲みながらこのまま居座ろうと考えていたが、彼女の心境を察すると斜め後ろに視線を感じることは耐え難い苦痛かもしれないと思い始めた。
自然豊かな場所にくると気持ちまで優しくなれるのか、それとも本来の自分が姿を現したのだろうかと岳は心の中で苦笑した。
岳はダイニングを後に廊下を歩いて自分の部屋へ戻った。
木枠の趣がある窓を開けると冷ややかな風が押し入って来る。
ワインで火照った顔に風が心地よく感じられる。
窓の外は漆黒の闇夜かと思えば意外にも明るい。
(おや?今夜は満月かな)
窓から空を見上げれば淡黄色の満月が明るく山麓を照らし出していた。
岳は後回しにしていた病への対処を考えることにした。
医者の勧めるまま入院して末期癌と戦いながら死を迎えるか、それともありもしない奇跡を信じてギリギリまでこのままの生活を続けようか。
この世に悔いを残さぬようまだ見ぬ世界を旅して自分のために時間を費やしてみるのもいいかも知れない。
でも何時病状の悪化症状が襲ってくるか判らない不安は拭えない。
かと言ってこのまま入院すれば最後まで出て来られない恐怖も心の一部を占めている。
よくドラマなど見るように他人や社会の為に命を燃焼させるほど崇高な心は残念ながら持ち合わせてはいない。
せっかくこの世に生まれて来たのだから自分が納得出来る生き方をしたいと思うのは自己中心で恥ずかしいことなのだろうか。
そんな病人の生き方に誰がジャッジするのだろうか。
満月はそんな岳の思案に無関心を示すかのように光り輝いていた。
どれ程の時間考えていたのだろう、部屋は山の冷気ですっかり冷えてしまった。
春とは言えここは山の中、それに標高も高いせいもあって冷え込みは冬の名残を思わせる。
岳は窓を閉めると浴槽に湯を貯めた。
(明日は風呂じゃなく、どこか温泉に行くとするか)
真新しい湯に体を沈め、眼を閉じると今日観た景色がスライドショーのごとく脳裏に浮かぶ。
都会の眺めとは違って自然の中に居るとこうまでも心の奥に記憶として留まり、その景色を反芻出来る。
小鳥の声や木立の間で聞いた春蝉の鳴き声までが鮮やかに蘇る。
そんな時、確かに昼間の残照とは違った異質の音というか声のようなものを岳の耳は捉えた。
(はて、何処から・・・)
岳は浴槽に浸かりながら周りを見た。
何処にも音源は見当たらない。
でも確かに聞こえて来る。
「ウーウーウー」
と呻き声のようで鼻腔に抜けるような感じの声は女性の咽び泣きのように聞こえる。
声の種類が判明した途端、岳の全身の毛穴が粟立った。
(ゆ、幽霊・・・)
昔から聞いた旅館やホテルで起こる怪奇話の記憶が一度に蘇った。