朝起きてみたら東の空が何時もになくきれいな朝焼けなので早速携帯電話をのカメラで撮影をしました。
夏至が終わってからは日を追うごとに日昇時刻が遅くなり、このような情景が観られる季節となりました。
季節の移ろいは早いもので気が付けば随分と時の流れに楽しかった過去が遠ざけられている今日この頃です。
私の人生の中で渡欧の演奏旅行は格別なものでした。
遠ざかる過去ですがその記憶は消えることなく日に一度は必ず様々なことが想い出され、深い溜息に変わります。
年齢的にも経済的にももう二度と訪れることの出来ないヨーロッパ。
空を見上げる度、その果てに想い出の町や田園風液が広がっていると想いを馳せるだけになってしまいました。
そんな想いを文章に綴り、携帯小説サイト「魔法のiらんど」に連載していましたが未完のまま終わってしまいました。
今回にブログ投稿することにより更新数を増やして行こうと思います。
小説「Oberalm(オーバーアルム)の風
告知
阪急電車の西宮北口駅は大阪から神戸へ向かう途中の駅である。
またこの駅からは北へ宝塚線、南へ今津線との乗り継ぎ地点でもあり、乗降客はそれぞれのプラットホームから階上のコンコースへ上がると振り分けられるように目的地に向かうホームへと下りて行く。
久保 岳(くぼ たけし)はそのコンコースの片隅に立ってぼんやりとその流れに目をやっている。
その風体は待ち合わせをしているそこらにいる中年男性と変わりはない。
しかし外見と違って岳は心の中で医師から聞かされた過酷な宣告を何度も反芻していたのだ。
岳は今年の春で49歳になるが、婚期を逸していた。
男性として性格や機能的に欠陥がある訳でもないし、結婚願望もないことはない。
しかしこの歳までずるずると独身を通してきた。
神戸の大手保険代理店に勤める岳はどこにでも居る平凡なサラリーマンである。
先月の健康診断で再診を通告され、数日前に西宮市内の病院で検査を受けた。
この日は午前中半休届を出して病院へ行ったが、医師から聞かされた再診結果は自分の耳を疑う内容であった。
コンコースの南側から少し冷たい風が流れて来る。
その風に桜の香りが混ざっているような気がして岳の眼は屋外にその木を求めた。
(このまま須磨浦公園へ行ってみようかなあ・・・きっと桜は満開やろうなあ)
残酷な告知から逃れて一瞬でも何も聞かなかった自分に戻ってみたかった。
(なんで俺が癌やねん・・・)
『末期の膵臓癌です』担当の医師からも告知は事務的によそよそしく聞こえた。
患者の心情なんか到底考えていないように、感情もなければ労わりのかけらも感じることは出来なかった。
岳は十年前父親を肺癌で亡くしている。
その時の医師は親切に言葉を選んで話してくれたことを覚えている。
(医者によってこうも受け取り方が違うもんか・・・)
ヘビースモーカだった父は死ぬまで煙草を止めなかった。
父親の主治医は、喫煙すれば百パーセント発癌すると教えてくれた。
だからその話を聞いて岳は煙草を止めた。
止めて十年経つのにどうして自分が癌に侵されなければならないのだろうか。
父親の末期は壮絶だった光景が岳の脳裏に蘇る。
夏至が終わってからは日を追うごとに日昇時刻が遅くなり、このような情景が観られる季節となりました。
季節の移ろいは早いもので気が付けば随分と時の流れに楽しかった過去が遠ざけられている今日この頃です。
私の人生の中で渡欧の演奏旅行は格別なものでした。
遠ざかる過去ですがその記憶は消えることなく日に一度は必ず様々なことが想い出され、深い溜息に変わります。
年齢的にも経済的にももう二度と訪れることの出来ないヨーロッパ。
空を見上げる度、その果てに想い出の町や田園風液が広がっていると想いを馳せるだけになってしまいました。
そんな想いを文章に綴り、携帯小説サイト「魔法のiらんど」に連載していましたが未完のまま終わってしまいました。
今回にブログ投稿することにより更新数を増やして行こうと思います。
小説「Oberalm(オーバーアルム)の風
告知
阪急電車の西宮北口駅は大阪から神戸へ向かう途中の駅である。
またこの駅からは北へ宝塚線、南へ今津線との乗り継ぎ地点でもあり、乗降客はそれぞれのプラットホームから階上のコンコースへ上がると振り分けられるように目的地に向かうホームへと下りて行く。
久保 岳(くぼ たけし)はそのコンコースの片隅に立ってぼんやりとその流れに目をやっている。
その風体は待ち合わせをしているそこらにいる中年男性と変わりはない。
しかし外見と違って岳は心の中で医師から聞かされた過酷な宣告を何度も反芻していたのだ。
岳は今年の春で49歳になるが、婚期を逸していた。
男性として性格や機能的に欠陥がある訳でもないし、結婚願望もないことはない。
しかしこの歳までずるずると独身を通してきた。
神戸の大手保険代理店に勤める岳はどこにでも居る平凡なサラリーマンである。
先月の健康診断で再診を通告され、数日前に西宮市内の病院で検査を受けた。
この日は午前中半休届を出して病院へ行ったが、医師から聞かされた再診結果は自分の耳を疑う内容であった。
コンコースの南側から少し冷たい風が流れて来る。
その風に桜の香りが混ざっているような気がして岳の眼は屋外にその木を求めた。
(このまま須磨浦公園へ行ってみようかなあ・・・きっと桜は満開やろうなあ)
残酷な告知から逃れて一瞬でも何も聞かなかった自分に戻ってみたかった。
(なんで俺が癌やねん・・・)
『末期の膵臓癌です』担当の医師からも告知は事務的によそよそしく聞こえた。
患者の心情なんか到底考えていないように、感情もなければ労わりのかけらも感じることは出来なかった。
岳は十年前父親を肺癌で亡くしている。
その時の医師は親切に言葉を選んで話してくれたことを覚えている。
(医者によってこうも受け取り方が違うもんか・・・)
ヘビースモーカだった父は死ぬまで煙草を止めなかった。
父親の主治医は、喫煙すれば百パーセント発癌すると教えてくれた。
だからその話を聞いて岳は煙草を止めた。
止めて十年経つのにどうして自分が癌に侵されなければならないのだろうか。
父親の末期は壮絶だった光景が岳の脳裏に蘇る。