ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ブログは「ほぼ隔週月曜更新」を目安に、のんびりやっています。レコードやCDはすべて趣味で集めたもので販売はしていません。

Livin' It Live (2009) / Bill Tapia

2024年05月06日 | Hawaiian Ukulele
2009年リリース「世界最高齢プロ・ミュージシャン」ビル・タピア初のライヴ盤。リリース元が前作までと変わりRed Spider Productionsとなっている。本作リリース時の年齢は101歳であったが、ここでも溌剌とした素晴らしいスインギーな演奏が聴ける。

前作「Duke of Uke(2005)」のラストにボーナス・トラック的に1曲だけ収録されていたライヴ音源も素晴らしかったが、本作ではその2005年にサンフランシスコのGreat American Music Hallをはじめ数か所で行われたコンサートからピックアップされたライヴ音源ですべて構成されている。

1. Undecided
2. I Want to Learn to Speak Hawaiian
3. Secret Love
4. Nearness of You
5. E Ku'u Morning Dew
6. Honeysuckle Rose
7. Satin Doll
8. All of Me
9. Sheik of Araby
10. Lady Is a Tramp
11. In a Mellow Tone
12. Stars and Stripes Forever

ゲスト・ミュージシャンが数曲で加わっており、5.8はハワイアン女性ヴォーカルのMihana、6.と9.はハワイ島出身のスラッキー・ギターのレジェンドであるレッドワード・カアパナ、7.と10ではジャズ・ウクレレ名手ライル・リッツと夢の競演を聴くことができる。

伴奏にはベイ・エリアのジャズ・シーンで活動する女性ベーシストのRuth Daviesと、著名な日系ジャズ・ドラマーのAkira Tanaが参加している事でここまでの3作で最もジャズ寄りのサウンドとなっている。プロデュースは前作までと同様Michael Spengler。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Duke Of Uke (2005) / Bill Tapia

2024年04月22日 | Hawaiian Ukulele
"世界最高齢のプロ・ミュージシャン"ビル・タピア翁の堂々たるセカンド・アルバム、2005年MOOnROOmレコーズからのリリース。本作のレコーディングでビル翁は故郷ハワイへの凱旋を果たす。タイトルの意味は英語の語呂遊びで「デューク・オブ・ユーク=ウクレレの公爵」。まさにウクレレの公爵と呼ぶにふさわしい素晴らしい内容のアルバムである。プロデューサーは前作に引き続きMike Spengler、ミキシングはハワイのMountain Appleスタジオで行ったのち、さらにマスタリングはカリフォルニア州に持ち帰りヴェンチュラのJohn Golden Masteringスタジオで完成された。

1. All The Things You Are
2. Black Orpheus
3. Little Grass Shack
4. Crazy
5. In A Mellow Tone
6. Manuela Boy
7. Happy Hula
8. Lady Be Good
9. Chinatown/Avalon
10. Hilo March (1936)
11. Indian Love Call (1936)
12. (Bonus Track) Little Grass Shack (Live)

今回のアルバムで中核をなすのはトラック1から8のハワイAudio Resourceスタジオでの録音で前作より音質も向上、ハワイでのバイロン・ヤスイ(bass)とベニー・チョン(guitar)のトップ・プロ二人が伴奏をつけており、ビル翁は故郷ハワイのミュージシャンにバックアップされ前作以上に伸び伸びとスヰンギーな演奏を聴かせている。前作同様にテナー・ウクレレによるジャズ・アドリブ・ソロが冴える一方、ヴォーカル曲の比重も大幅に増え、ユーモラスな歌声も存分に楽しめる。

トラック9から11は前作に続き(まだあったとは驚き!)1936年にホノルルのメトロノーム・ミュージックストアで「磁気録音機の元祖」といわれるワイヤーレコーダー(鋼線式録音機)で録音された音源で、ジャズ・スタイルの後年とは異なる所謂ジャカソロ・スタイルでかき鳴らす若き日のビル翁のウクレレが聴ける。CDスリーブ内側には同店の前で撮影された当時の写真まで見ることができる。
ラスト12はカリフォルニア州のサンタモニカで2004年に開催されたウクレレ・イベント"UKEtopia(ユークトピア)"からのライヴ音源。同イベント仕掛人はお馴染みJim Beloff。
本アルバムのリリース後に開催されたコンサート会場で配布されていた、ビル翁の100歳記念バースデイ・ライヴの告知チラシ。この時の録音は後年CDとしてリリースされた。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Tropical Swing (2004) / Bill Tapia

2024年04月08日 | Hawaiian Ukulele

"世界最高齢のプロ・ミュージシャン" ビル・タピア翁による、2004年MOOnROOmレコーズからリリースのデビューアルバム。

1908年ハワイ生まれのビル翁はこのとき96歳だった計算になる。まだハワイでカマカ(現存するハワイ最古のウクレレ・メーカー)が創業する以前からウクレレを手に、8歳で既に「星条旗を永遠に」をウクレレでかき鳴らしプロとして生計を立てていたという、ハワイのウクレレ・ミュージシャン第一世代。

1920年代は主にジャズの楽団でギターを弾いていた、という経歴もあってビル翁のウクレレはジャズギターのイディオムに基づく発想力豊かなアドリブ・ラインが特徴。ゆったり目のテンポで緩くスヰングするリズムにのって、ハワイアン(ハパ・ハオレ)やジャズソングをテナー・ウクレレで弾きまくるという痛快なスタイルは誰とも似ていない唯一無二の世界観で癖になる。若輩者には到底真似できそうにない、とぼけたユーモラスな味わいのヴォーカルもトラック1.や8.で聴けるように絶妙の味わいだが、ファースト・アルバムの本作ではインスト中心にスインギーなウクレレを存分に聴かせている。

1. Mack The Knife
2. Stardust
3. Mood Indigo
4. Hawaiian Medley
5. Body & Soul
6. Misty
7. Paradise Isle
8. Hapa Haole Hula Girl
9. Stars and Stripes Forever/Sweethearts on Parade
10. Tropical Swing

プロデュースはMike Spengler。録音は2002年に南カリフォルニアのコスタ・メサにあるThe Distilleryというスタジオで行われ、ハワイのMountain Appleスタジオでミキシング作業が行われた。

ラスト2曲はボーナス・トラックで、9.は1936年にホノルルのメトロノーム・ミュージックストアで「磁気録音機の元祖」といわれるワイヤーレコーダー(鋼線式録音機)で録音された音源で、ギターとベースの伴奏を従え、前述のウクレレをジャカソロ・スタイルでかき鳴らす「星条旗よ永遠に」が聴ける。10.も同じく1936年の録音だがこちらはOkehレーベル(アメリカで黒人アーティストの演奏するブルースを発表した初のレーベル)から同年リリースされた音源。ホノルルのKGMBスタジオ(いまはTV局として現存)でのレコーディングで、ビル翁はギターと編曲を担当。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

To You Sweetheart, Aloha (2006)

2024年03月25日 | Ukulele DVD

2006年作、制作と監督はS.Leo Chiang。ハワイ国際フィルム・フィスティバル公式出品作、L.A.アジアン・パシフィック・フィルムフェスティバルの観客賞受賞作品。

ビル・タピアは1908年ハワイ生まれのウクレレ演奏家で、特に晩年から103歳で亡くなるまでの期間に世界最高齢プロミュージシャンとして世界的に存在を知られるようになった。ジャズギター・イディオムを用いた巧みなテナー・ウクレレ演奏と、とぼけたユーモラスな味わいのヴォーカルが相まって独特の緩くやさしい世界観を持ったスヰング・ウクレレ音楽を創造した。何枚かアルバムがCDでリリースされているがいずれも素晴らしい内容で甲乙つけがたい。

さて本作はビル翁が94歳の時に撮影された生涯唯一の映像作品でありながら、ややビターな味わいを伴う。それはなぜかといえば、ビル本人が生前この内容にハッピーではなかった事が何度も言及されていたからだ。本作のストーリーの核をなすのは、ビルを時にアシスタントとして、時に孫娘のように、あるいは親しい友達として接する26歳の白人女性との関係を軸に語られる。映像ではビルが年甲斐もなくこの女性に恋心を抱いてしまい、それを察知した女性が悩み苦しむ・・・という展開になっている。しかし、のちにビル翁曰く、この女性に恋愛感情を抱いた事実など一度もなかったという。そういわれて見ると、作為的にそのように見せようとする制作者の演出が見え隠れしてしまう。作品としてはそのほうがストーリー性があって面白いだろうが、果たして制作者の真意や如何に。

しかし、ビル・タピアという稀代のスヰング・スタイル・ウクレレの巨人を捉えた貴重な映像作品には違いない。事実はどうであれ、翁が遺した音楽はどこまでやさしく、ユーモラスで、純粋である。


パッケージ表のステッカーから判るように、拙宅の個体はノースカロライナ州イーロン大学図書館からの放出品でした。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Becky & Lyle Bossa Style (2009)

2024年03月11日 | US & Canada Ukulele

前作「 I Wish You Love (2007)」ではLyle Ritz & Rebecca Kilgore名義であったが、二作目の本作ではBecky & Lyle名義となっており、固定ユニットとしてパーマネントな活動を志向していたことが伺える。メンバーは前作に引き続きLyle Ritzのジャズ・ウクレレとRebecca Kilgoreのヴォーカル、Dave Capteinのベースに加え、新たにギター&パーカッションでJohn Stowell、パーカッションでPiper Heisigが加わりサウンド面でも多彩さを増した。

リリース元は前作同様PDX Ukeで、地元ポートランド・ウクレレ・アソシエイション(PUA)による自主制作盤。録音はオレゴン州ポートランドからコロンビア河を越えて対岸に位置するお隣のワシントン州バンクーバーにあるNettleingham Audio にて。パーカッションはわざわざカリフォルニアにあるSutton Sound Studioで別録りされており、前作以上に手の込んだ制作が行われ、自主制作ながら作品としての完成度を上げる事に成功している。

1 A Moment Later
2 Take Me To Aruanda
3 Abobora
4 Love Me Or Leave Me
5 Easy Come, Easy Go
6 Happy Talk
7 I Will
8 I'm Looking Over a Four Leaf Clover
9 Once I Loved
10 What The World Needs Now
11 Triste
12 Old In New Mexico

ボッサ・スタイルというタイトルの通り、アントニオ・カルロス・ジョビンやカルロス・リラのボサノヴァ曲だけでなく、ビートルズの「I Will」やバート・バカラックなど幅広い選曲をジャズ・ボッサ風味で演奏する趣向。ユニットとしての一体感ある心地よいサウンドの好アルバムに仕上がっている。

ライル氏はこの翌年2010年2月10日、アロハタワー・マーケットプレイスで開催された「一夜限りの4大巨匠ウクレレライブ〜UKULELE LEGENDS IN CONCERT」に出演した模様が日本でDVDリリースされた。そこではハワイのバイロン・ヤスイ(b)とベニー・チョン(ukulele)と共に再びオーソドックスなジャズ・ウクレレ演奏を披露している。実はこの二人、ビル・タピアの2007年発表セカンドアルバム「Duke Of Uke」の伴奏メンバーで、実はライル氏は体調不良の為にアメリカ本土にある自宅からのリモート参加のみとなったビル翁のピンチヒッターとして急遽参加したという経緯だったが、貴重なライヴ映像となった。

2007年にポートランドのウクレレ・フェスティバルで、ライル・リッツ氏はウクレレの殿堂入りを果たし、さらに同年、スタジオミュージシャン集団「レッキング・クルー」の一員としてもミュージシャンの殿堂入りも果たす。2017年3月3日、素晴らしい数々の音楽作品を遺しジャズ・ウクレレの先駆者ライル・リッツはオレゴン州のポートランドにて87歳で亡くなった。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする