ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ブログは「ほぼ隔週月曜更新」を目安に、のんびりやっています。レコードやCDはすべて趣味で集めたもので販売はしていません。

Cool Strings And Ohta-San (1968)

2020年01月27日 | Ohta-San - Vinyl
ト音記号のような、不思議なジャケット写真は花火だろうか。引き続きハワイ・Surfside Recordsでのオータサン作品で、これが同レーベルからの二枚目。プロデューサーのDon McDiarmid,Jr.は、Hula Records(Surfisideの親会社)の社長であり、数多くのコンテンポラリー・ハワイ音楽作品を制作したハワイ音楽業界の大物。Hula Recordsの創業者は父親のDon McDiarmid,Sr.で、こちらも著名なハパ・ハオレ音楽の作曲家であり、楽団のリーダーだった。オータサンは60年代から70年代の長期にわたるSurfsideとの契約中に、(少なくとも)7枚のアルバムを発表している。その親会社であるHula Recordには、師匠であるエディ・カマエ(サンズ・オブ・ハワイ)も所属していた。

タイトルの通り、「弦楽オーケストラとオータサン」という趣向で制作されたアルバム。

まずは収録曲から見てみよう。
A1  The Girl From Ipanema    
A2  Try To Remember
A3  Ma Belle
A4  Laras' Theme
A5  I Will Wait For You
A6  People

B1  Shadow Of Your Smile
B2  Yesterdays
B3  Days Of Wine And Roses
B4  Hawaii
B5  More
B6  Born Free

一見してわかるように、前作が日本オリジナルの楽曲によるセレクションだったのに対し、ここでは60年代当時のポピュラー音楽の人気曲や映画音楽が選ばれた。なお「Yesterdays」は誤表記で、ビートルズのイエスタデイ(=sなしのほう)。「Ma Belle」は同じく「ミッシェル」。ただこうした誤表記は何故か盤面のレーベル上だけで、ジャケットには正しい曲名が載っており、まだおおらかな時代だった事が伺える。

選曲の変化に加えてこのアルバムで特筆すべきはアレンジャー、ディレクターとしてクレジットされるSeiji Hiraoka の参加で、ジャケット表面に大きく名前が表示されているところを見ても、本作の大きなセールスポイントでもあったに違いない。時代的に考えても、日本の著名ミュージシャン/作編曲家の平岡精二氏で間違いないだろうと思われるが、同氏とはその後も数枚のアルバムでコラボレーションが続く事になり、当時のハワイと日本の音楽業界の結びつきがどのようなものであったかも裏歴史がありそうで興味深い。なお録音はハワイで行われたとジャケット裏面にわざわざ表記されている。

日本の音楽業界から招いたプロのアレンジャー/ディレクター採用により、前作での素朴なウクレレ軽音楽/ラウンジ風コンボ演奏から、本作のサウンドは華麗なるストリングス・オーケストラを配したムード音楽へと大きく変化した。これがまた次作では大きくテイストが変わるところが面白い。時代の流行も柔軟に取り入れつつ、レコードを出すたびに次々と聞かせてくれる音楽的な新しい挑戦もまたオータサン作品の楽しみな聴きどころとなり、同時代のウクレレ奏者が誰も為しえなかったワン・アンド・オンリーの存在となった所以である。




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The Cool Touch Of Ohta-San (1968)

2020年01月13日 | Ohta-San - Vinyl


拙稿の記念すべき一枚目は、ハワイが誇るウクレレのバーチュオーゾ、オータサンのハワイ州Surfside Recordsからのファースト・アルバム。プロデュースはDon McDiarmid,Jr。

このSurfside Recordsというのは、ハワイのHula Recordsが「ウクレレの神様」オータサンのレコードをリリースするために、わざわざ立ち上げた別レーベル、という事らしい。

オータサンのレコードデビューは、師匠でもあるエディ・カマエの紹介で実現したというビクターによる日本吹き込み盤(のちに両者合わせてコンピレーションCD化された)が最初で、アメリカ本土のDeccaや、ここに紹介するハワイ州のSurfside、日本でもビクターに加えてポリドール向けの吹き込みが続いたが、本アルバムにも収録された「Sushi / Little Tree」の先行シングル盤はハワイ州内マーケット向けのSurfside盤だけではなく、アメリカ本土向けのワーナー盤も中古市場にて多く流通している模様。

何はともあれ、このアルバムで面白いのは収録曲!

A1 Sukiyaki    
A2 Sayonara
A3 Sakura
A4 Tropical Lights
A5 Little Tree
A6 There Will Be A Tomorrow     

B1 Sushi  
B2 Walk With Me
B3 Look Up At The Stars
B4 Sunset
B5 Heartless Dream
B6 Hi Baby

このようにスキヤキやらスシやら適当な日本語が並ぶが、要は日本オリジナルの楽曲をハワイの日系奏者であるオータサンが得意のウクレレで料理しました、という趣向のアルバム。坂本九の「上を向いて歩こう」がアメリカでは「スキヤキ」なのは有名な話だが、他にも「There Will Be A Tomorrow」は今やダウンタウンはじめ吉本芸人の歌でも知られる「明日があるさ」だし、「Hi Baby」は昭和の大ヒット「こんにちわ赤ちゃん」、和製ハワイアンの「鈴懸の径」は「スシ」、「Look Up At Stars」が「見上げてごらん夜の星を」で「Sunset」は「夕焼け小焼け」、 という具合。はっきり言って良い曲ばかりであるが、緩急自在のアレンジで飽きさせない。

コンガ入りのラウンジ風コンボ演奏を従え、ラテンありスイングありのアレンジも往時のハワイ音楽シーンを想像させてくれるようで楽しい。ライブ感のあるバックの演奏は他アルバムに比べるとまだ素朴なもので、レコーディング・キャリア最初期にあったオータサンの溌剌とした若々しいウクレレ演奏が堪能できる。もし本作以前のプライベートな音源(90年代になってCDでリリースされた)「レジェンダリー・ウクレレ」でのオータサンが好きなら、きっと本盤の演奏はお気に召すに違いない。

なおジャケットの写真はハワイにあるという「かの有名なパゴダ・レストラン」の池の鯉、という事らしいのだがこのレストラン、ネットによると現存するようだが今も当時と同じ場所かどうかは不明。




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