ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ブログは「ほぼ隔週月曜更新」を目安に、のんびりやっています。レコードやCDはすべて趣味で集めたもので販売はしていません。

Love Story (1970s) / Ohta-San and the Surfside Strings

2020年08月31日 | Ohta-San - Vinyl
8月の5週目となる今回の更新は、順番が前後してしまったが、ディスク未入手のため紹介できていなかったSurfside Recordsのオータサン盤を割り込ませる形で、拙稿の欠けていたカタログを補完したい。今月はオータサン以外のウクレレ奏者による音盤を特集したが、他にも紹介したいアーチストや音盤がまだまだあるため、それらについても今後また機会を設けて紹介してゆきたい。

さて本盤は制作年度が不明だが、カタログナンバー(SFS-108)から推測して1970年ないしは1971年の作品だろう。先に紹介済の「Plays The Theme From Hawaii Five-O (SFS-107)」と「 Stringed Out (SFS-109)」に挟まる同レーベルでの6作目。なおSurfside Recordsはオータサンの為に作られたHula Records傘下の傍系レーベルである為、関連アーチストによるアルバムとシングル数枚を除き、すべてオータサンの作品。

名義上はオータサンとThe Surfside Stringsなる楽団の共演という体裁になっているが、恐らくはパーマネントな活動実態のある楽団ではなかっただろう。なお同レーベルからの二作目で本作と同様に弦楽アンサンブルとの共演盤であった「Cool Strings And Ohta-San」ではライナーノーツに「Cool Strings」という楽団だと記載されていた。

同レーベルの諸作品にはこれまで見てきたように編曲や演奏で平岡精二や八木正生といった昭和の和製ジャズ・ミュージシャンが深くかかわっており、オータサンの初期キャリアにおいて重要な作品群であるばかりか、ハワイ=日本の音楽業界の交流史においても興味深い音源の宝庫といえるのだが、残念なことに同レーベルでの6作目となる本盤にもストリング・オーケストラをアレンジした編曲者がいたはずだがクレジットがなく不明となっている。

アルバムタイトルは副題に"Love Sounds from the Ukulele of Ohta-San and the Surfside Strings, playing love themes from 12 great shows"とあり、楽曲は映画や舞台劇から愛のテーマを集めたセレクションとなっている。サウンド的にはオータサン奏でるウクレレに弦楽アンサンブルを配したムード音楽。

A1  Love Story    
A2  Sound Of Silence
A3  Theme de la Lecon Particuliere
A4  Bali Hai
A5  Theme From Sunflower
A6  Ebb Tide

B1  On A Clear Day
B2  Harbor Lights
B3  It Was A Good Time (Rosy's Theme from Ryan's Daughter)
B4  Theme from The Red Tent
B5  Treize Jours En France
B6  True Love Is Greater Than Friendship

オータサンは60年代に軍隊を退役した時点ですでにウクレレ奏者としては一流の域にあったが、それに慢心することなくプロとして活動してゆくために故郷ハワイの学校で音楽理論を学び、またレコードデビュー後は日本から招かれた平岡精二や八木正生との音盤制作、また逆にオータサンが欧州に招かれアンドレ・ポップとのコラボレーションに至るまで、一流音楽人との仕事を通じて豊富な経験を積んだ結果、どのようなジャンル/趣旨の吹き込みセッションにも対応できるプロフェッショナリズムと音楽的な懐の広さを備えるに至り、ウクレレ奏者として前人未到である大量の音盤吹込み人生へと繋がってゆく。

これまで60年代から70年代までのオータサンの音盤を聴きながらこの偉大なヴァーチュオーゾの初期キャリアをなぞって来たが、9月からはまた隔週での通常更新ペースに戻り、1980年代以降からやがて『ウクレレの神様』とまで称されるに至る、果てしなく膨大なオータサン音盤世界の続きをじっくりと見てゆこう。
裏ジャケットは例によってポエム調の散文があるのみで吹込みに関する情報はほぼ皆無に近い。広告の記載によると、Surfsideでのオータサン全作品はカセットおよび8トラックでもリリースされていた事がわかる。
追記:日本のポリドール盤で『ロマンス/Herbert Ohta』(MR3172) と題した映画音楽集のLPが1971年にリリースされており、ジャケットデザイン含め一見全く別の作品のように見えるが大半の収録曲が本盤と重複する。帯には「来日録音」と明記されているものの、演奏は「サーフサイド・ストリングス・オーケストラ」名義ともなっていることから、筆者は未聴ながら本盤をベースにした日本編集盤ではないかと想像する。もし「来日録音」が事実なら逆にポリドールが日本で吹き込んだ音源をハワイのサーフサイドで流用した可能性もないとは言えないが、名義に「サーフサイド」とつくからにはやはりサーフサイド盤の本作がオリジナルと考えるのが自然な気もするが、どうか。なおポリドールは81年リリースのLP『The Waves and the Sun』(25MX2020)でもやはり「演奏:ハ-バート・オータとサーフサイド・オーケストラ」のクレジットで本盤との重複がある。

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How About Uke?: Wizards Of The Ukelele (1974) / V.A.

2020年08月24日 | Hawaiian Ukulele

タイトルの意味は英語の語呂遊びで「ハウ・アバウト・ユーク=ウクレレは如何?」である。Hui Ohanaの音源等でも知られる、ハワイ・Lehuaレーベルから、所蔵するウクレレ奏者による音源のコンピレーション。異なる演者の音源の寄せ集めながら、各奏者のスタイルの違いを堪能しつつも、違和感なく一枚のウクレレ・ハワイ音楽のアルバムとして楽しむことができる。プロデュースはBill Murata。

オータサンのほか、Eddie Kamae、Eddie Bush、Jesse Kalimaという顔ぶれの当時ハワイのトップ・ウクレレ奏者たちの音源を収録。オータサンと同じく30年代生まれ世代のEddie Bush以外だと、1927年生まれのEddie Kamaeは言うまでもなくSons of Hawaiiを結成しハワイ音楽の復興に尽力した一方、オータサンとは直接に深い親交のあった恩師。Jesse Kalimaは1920年生まれというからさらに上で、アンプにつないで電化ソロ演奏したウクレレ奏者の先駆けである事に加えて、「Low-G」チューニングをいち早く取り入れていた点でも先駆者。1935年にホノルルのプリンセス・シアターで開催されたアマチュア・コンテストで "Stars and Stripes Forever"を披露し、僅か15歳で受賞したというから同曲のウクレレ・レパートリー化はこれが発端であろう。いずれも本場ハワイにおけるウクレレ奏者の歴史を代表する名手ばかりである。

A1 –Jesse Kalima     Liliu E    
A2 –Ohta-San Kawohikukapulani
A3 –Jesse Kalima Kukuna Oka La
A4 –Eddie Kamae Akaka Falls
A5 –Eddie Kamae Ka Ua Loku
A6 –Eddie Bush Blue Hawaii
A7 –Jesse Kalima Kilakila 'O Haleakala

B1 –Jesse Kalima Nani Koolau
B2 –Ohta-San Pua Maeole
B3 –Eddie Kamae Paauau Waltz
B4 –Eddie Kamae Kamehameha Waltz
B5 –Eddie Bush Adventures In Paradise
B6 –Eddie Kamae Aloha Oe

オータサンはアルバム「Pacific Potpourri」から2曲。Eddie Bushは代表アルバム「A Man & His Ukulele」にも未収録の2曲、Jesse Kalimaは「Jess Uke」から4曲、Eddie Kamaeは「Heart Of The Ukulele」から4曲を収録しており、このLPは戦後第一世代ともいうべきハワイのウクレレ名手達の演奏を手軽に楽しめる一枚として重宝している。 



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A Man & His Ukulele (1969) / Eddie Bush

2020年08月17日 | Hawaiian Ukulele

ジャケット写真では、ホノルルのハワイアン・ヴィレッジをバックに、満面の営業スマイルでカマカ・ウクレレを構えるEddie Bushの写真があしらわれている。後年には別のジャケット・デザインに差し替えられ、CD化も果たしている。ハワイ・Sea Shell Recordsからのリリース。60年代らしいサウンドで、内容はとても良い。

収録曲は以下
A1 Malaguena    
A2 Nostro Concerto
A3 Holiday For Strings
A4 Next Door To Paradise
A5 South Pacific Medley

B1 Traces
B2 Somewhere My Love (Theme From Dr. Zhivago)
B3 Under The Double Eagle & Stars & Stripes
B4 The Hands I Love
B5 Waiting For The Robert E. Lee & Swanee
B6 Little Grass Shack, Hukilau & Little Brown Gal

冒頭A1「Malaguena」のっけから熱がこもった大迫力の演奏で飛ばしている。同曲はオータサンも「The Many Moods Of Ohta-San(1976)」や、もっと古い60年代初頭の録音「Legendary Ukulele」でも既に披露しているが、聴き比べてみるのも一興か。アルバムのアレンジはBenny Kalama, Paul Mark and Bernie Hal-Mannとクレジットがある。このうちPaul Markは70年代にPokiレーベルでのオータサン諸作でキーボードを担当した人物で恐らく相違ないだろう。Benny Kalamaはソロ・アルバムが何枚もCD化されている程のウクレレ/歌手で、B4ではハワイアン・ファルセットの歌声も披露している。録音はSounds of Hawaiiスタジオ。

このEddie Bushという人は、昼は銀行マン、夜はミュージシャンという二足のわらじで息の長い活動を続けたウクレレ奏者で、ホテルでの観光客向けルアウ・パーティや、ラウンジ演奏が主戦場だったようだ。このレコードも、ラウンジ演奏で自ら一枚一枚手売りをしていたのか、本人サイン入りの盤が大量に出回っているのが面白い。本業が銀行マンだけに、マメな人だったのだろう。

兼業ミュージシャンながら、アメリカ本土、欧州、豪州、アジアをツアーで回り(有休取ったのだろうか)、ジョニー・カーソンやマイク・ダグラスなどのTVショウや、ラジオ放送のハワイ・コールズにも呼ばれたというから、なかなかのやり手である。1935年生まれというとオータサンとは僅か一歳違い(年下)であり、同世代のライバル的存在と位置付けても差し支え無かろう。

本アルバムのタイトル曲は、ウクレレ音楽のコンピレーションなどにも収録されるなど、非常に印象的な楽曲/演奏だが、実は原型と言えそうな演奏を、57年作と言われるDon Baduriaのレコード中に見出すことができる。同じくオータサンも2001年に同名アルバムでソロ・ウクレレ演奏を披露している。B3後半のStars & Stripes Foreverなども定番ウクレレ曲といえ、いずれも当時ハワイのウクレレ奏者にはお馴染みのレパートリーだったかもしれない。

なお本作が唯一のアルバムかと思いきや、これ以外にも日本での吹き込み盤の存在が海外のコレクターによって確認されている("Ukulele Hawaiian Golden Play"  Eddie Bush and his Blue Islanders / Overseas records)。



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Worlds Greatest Ukulele Stylest (1957) / Don Baduria

2020年08月10日 | Hawaiian Ukulele

レーベルはBertram International Records、1957年作。ライナーノーツによると、本人が録音したテープをホノルルのディスクジョッキーJimmy Walkerに持ち込み、それを放送したところ反響の大きさにレコード会社に推薦したとの事。略歴によると1956年と57年にエド・サリヴァン・ショーに出演。アメリカ空軍バンドの一座に加わり世界ツアーに二度参加したとある。

収録曲は以下
A1 Ukulele In Orbit    
A2 Here Is Happiness (Kokoni Sachiari)
A3 Brazil
A4 I Left My Heart In San Francisco
A5 Bugler's Holiday
A6 Lover Man

B1 Seventy Six Trombones
B2 Granada
B3 Holiday For Strings
B4 Blue Danube
B5 Tea For Two
B6 12TH Street Rag

A1はメドレーで、Mr.Sandman - Stars And Stripes Forever - Yankee Doodle Boy- Limehouse Bluesのジャカソロ・メドレー。A2「ここに幸あり」は1956年に大ヒットした日本映画の主題歌で、ハワイやブラジルの日系移民の間でも愛唱歌となったもの。A5は運動会の徒競走で必ずかかる、あの曲だ。B4はクラシックの「美しく青きドナウ」、A3, A6, A5はジャズスタンダードだし、A6はラグタイム曲だがウクレレではロイ・スメックはじめジャカソロ奏法(コードをジャカジャカ弾きながら演奏する、アメリカ本土・ボードヴィル由来のウクレレ奏法)の定番曲としてお馴染み。

YouTubeを検索すると、1956年放送のエド・サリヴァン・ショウーでアメリカ空軍 "Tops in Blue Show"の一員として「星条旗よ永遠なれ」や「ラヴァー」をメドレーでニコニコしながら軽々と見事に弾きこなす、若々しい制服姿のアジア系のアメリカ兵の映像が見られる。世代的にはオータサンより一回り先輩、という計算になるが、映像を見ると、かなりの名手であったことがわかる。

本アルバムの選曲を見ると、得意のジャカソロ系をはじめ、後にオータサンが弾きそうなジャズ・コードを取り入れた演奏や、ウクレレではエディ・ブッシュのバージョンが知られるB3などがいち早く取り入れられており、モダンな演奏スタイルで後に活躍するハワイの若手ウクレレ奏者たちに影響を与えた先駆者的な存在であったと思われる。

演奏はギターにManny Cuizon、ウッドベースAlbert Kaailau Jr.、ドラムにGregg Malina Jr.のトリオ・コンボが控えめに伴奏を付けている一方、A1, A3, A5, B2, B4, B6はマルチレコーダーによる多重録音で、本人がウクレレの他ギターとベースを多重録音している。こうした手法でも先駆けと言える作品かもしれない。

このDon Baduriaという人は、後にもう一枚Music Of Polynesia Inc.というレーベルから「Ukulele Magic Hawaiian Style」というアルバムを同レーベル・オーナーのJack de Mello によるプロデュースで70年代に出していて、これは90年代にIZやブラザーズ・カジメロの作品等で知られるThe Mountain Apple Company(こちらはJack de Melloの息子Jon de Melloがオーナー)からCD化された。このCDはウクレレ再評価やハワイブームに乗って一時期CDショップでもよく見かけたものであり、決して無名のウクレレ奏者ではない。



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3 Ukuleles (1960s, 不明) / John Lukela

2020年08月03日 | Hawaiian Ukulele

オータサンのアルバムはまだまだ大量にあるのだが、8月中は「夏休みスペシャル」と(勝手に)題して、オータサン以外のウクレレ奏者たちによる音盤を、一か月間だけ更新頻度を上げ週刊ペースで紹介したいと思う。

まず一枚目は、オータサンと同世代でハワイのウクレレ奏者John Lukelaの、恐らくは唯一のアルバム。実際に少年期にはともにウクレレ抱えて弾きあう幼馴染だった、という話もあるようだ。制作年度が不明だが、インナースリーブに広告が印刷されている「Ed Kenny Sings」が1964年の作品であることから、少なくとも64年以降と推測できる。

ルケラ氏唯一のアルバムである本作には、他にも二人のウクレレ奏者と、なぜかハープ奏者がそれぞれ楽曲によってソロ奏者としてフィーチャーされており、それでタイトルが「3人のウクレレ」となっている。曲によって奏者が入れ代わっても、ハワイ・コールズ風のサウンドには統一感があり、組曲風の構成でなかなかに楽しめるウクレレ・アルバムとなっている。

A1 –John Lukela Ukulele Lady
A2a –DeWayne Fulton Wailana
A2b –Lukela & Trio Heahoa No O Honolulu
A3a –Lukela You Stepped Out Of A Dream
A3b –Lukela It's Just One Of Those Things
A4 –Leland Isaacs Ka Loa Loa La
A5 –Lukela - Gabby Beautiful Kahana

B1 –Lukela Holo Ka Pohaku Liilii (Little Rock Getaway)
B2a –DeWayne Fulton Kamalani O Keaukaha
B2b –Lukela Farewell My Tane
B3 –Leland Isaacs Slack Key Medley
B3a –Leland Isaacs Malekas Lullaby
B3b –Leland Isaacs Na Puunani O Hawaii
B3c –Leland Isaacs Kuu Ipo Kuu Pua Aloha
B3d –Leland Isaacs Honolulu Town
B4a –Lukela Pua Tuberose
B4b –Alvin Isaacs Mauna Kea
B4c –Alvin Isaacs E Mama E
B5 –Lukela, Leland , & Alvin Nani Wale Na Hala
B6 –Lukela & Leland Hoi Mai Kaua E Pili

ハープ奏者のDe Wayne Fultonはベルリン・フィルに参加を許されたという最初のアメリカ人演奏家。
Alvin Isaacsはマルチな弦楽器奏者で、作曲家としても知られた。
Leland Isaacsは本業はスラックキー・ギター で、ギャビー・パヒヌイとの共演アルバムなどもある。なお、ギャピー自身もA5に参加しているようである。

プロデューサーはTommy Kearns、レーベルはWaikiki Records。ハワイアンのコンピレーション・アルバムなどを多くリリースしていたようである。インナースリーブに記載のある住所はWest Los Angelesなので、アメリカ本土のレコード会社だったようだ。






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