ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ブログは「ほぼ隔週月曜更新」を目安に、のんびりやっています。レコードやCDはすべて趣味で集めたもので販売はしていません。

Time...(1995) / Lyle Ritz

2024年01月29日 | US & Canada Ukulele

ジャズ・ウクレレの名手ライル・リッツの1995年アルバム。ハワイのRoy Sakuma ProductionsからCDリリースされた。Roy Sakumaは元オータサンの教え子でハワイで最大のウクレレ教室を運営し、世界中のウクレレ・フェスティバルの原型となったハワイのウクレレ・フェスティバルの主催者。ハワイの特にウクレレに関する音楽シーンの顔役の一人である。

ライル・リッツはアメリカ本土でのセッション・ミュージシャン(ベース奏者)としてのキャリアを引退し、ハワイへ移住。特に90年代のオータサンのアルバムではベーシストとして殆どのレコーディングを支えていた。その一方で50年代の二枚のジャズ・ウクレレ・アルバムはまだCD化される10年も前であり、入手困難な幻の貴重盤であった。そこでRoy Sakumaが仕掛け人となりハワイでジャズを弾かせたら一番のトップ・ミュージシャンを集め、ジャズ・ウクレレ奏者としてのライル・リッツの再デビューを実現したのが本アルバムである。Verveでの二枚目のアルバムから数えて実に36年後、65歳にして3枚目のジャズ・ウクレレ作品であり、初の自己名義でのCDリリースであった。

1.LULU’S BACK IN TOWN
2.BLUE HAWAII
3.HERE’S THAT RAINY DAY
4.TIME HAS DONE A FUNNY THING TO ME
5.I’M BEGINNING TO SEE THE LIGHT
6.HANA
7.MY LITTLE GRASS SHACK IN KEALAKEKUA HAWAII
8.LITTLE GIRL BLUE
9.HONOLULU
10.LAURA
11.JUST THE WAY YOU ARE
12.HAVE YOU MET MISS JONES

トラック1, 5, 8, 12はファースト・アルバム「How About Uke? (Verve, 1958) 」、トラック2はセカンド「50th State Jazz (Verve, 1959) 」からの再演である。一方で新曲ではビリー・ジョエルの11.や、ウエス・モンゴメリーのCTIイージーリスニング・ジャズを思い出させてくれる3.のように60年代以降の楽曲も取り入れているが、当時まだ入手困難であった過去作品に代わるものを、といった意味合いもあったのだろう、50年代の二枚のアルバムの雰囲気に近いアコースティックなジャズ・コンボによるアルバムに纏まっている。

伴奏を務めたベースのバイロン・ヤスイの本業はハワイ大学の音楽教授であり、ハワイにおけるトップ・クラスのジャズ・ベーシストの一人。ライルがステージに上がる際は伴奏を務めることが多かったが、自身もウクレレ・プレーヤーとして自己名義のジャズ・ウクレレアルバムをハワイでリリースしている。ドラムのノエル・オキモトは90年代にベーシストとしてのライルと共にオータサンの多くのアルバムに参加していた。一部の曲ではビブラフォンも演奏している。

ライル・リッツは殆どの曲で60年代のマーチン製テナー・ウクレレを使用。6.のみ新しく手に入れたアルヴィン・オカミのハンドクラフトによるコアロハのコンサート・ウクレレを使用とのこと。録音はハワイのAudio Resourceスタジオ。プロデュースはRoy Sakuma。


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50th State Jazz (1959) / Lyle Ritz

2024年01月15日 | US & Canada Ukulele

1959年にジャズ名門レーベルVerveからリリースされた、ライル・リッツによる50年代ジャズ・ウクレレ二部作の二枚目。ファースト「How About Uke? (Verve, 1958) 」はアメリカ人のライル氏が、ウクレレを用いてハワイアン音楽ではなく見事にアメリカのジャズを弾いてみせた、という点が大きなポイントであったが、二枚目の本作では少し目先を変え、(当時のアメリカ人の想像する)ハワイのイメージに寄せて来た。というのも本作がリリースされた同じ年の1959年3月18日、アイゼンハワー大統領はハワイをアメリカ合衆国の州として認める新法案に署名、同年8月21日にハワイは正式にアメリカの50番目の州となった。本作ジャケットもそうしたお祝いムードを反映し、当然セールス面での相乗効果も狙ったものになっている。結果アメリカ本土では期待したほどのセールスは上がらず本作でVerveとの契約は打ち止め、ライル氏はベーシストに転身しセッション・ミュージシャンとしてのキャリアを歩み始める。しかしウクレレの本場ハワイではこの後永らく伝説的名盤として語り継がれていて・・・という話が現在では定説になっている。

サウンド面ではシンプルなジャズ・コンボ演奏だったファーストに対して、本作では曲により木管楽器のアンサンブルやビブラフォンなどを配したジャズ・オーケストラをバックに再び巧みなコード・ソロを基調としたジャズ・ウクレレの見事な演奏を聞かせている。ジャケット裏面には珍しいカッタウエイ付きボディのテナー・ウクレレ(一説によると50年代のギブソン製TU-2のカスタム仕様らしい)を弾くライル氏の写真(ファーストの表ジャケットに使われたものと同じ時の写真と思われる)が興味深い。

01. Leis of Jazz    
02. Rose Room
03. Polka Dots and Moonbeams
04. Blue Hawaii
05. Clean From Porterville
06. Song Is You
07. Perjazz
08. Hana Maui
09. Blue Lou
10. Skylark
11. On the Beach at Waikiki
12. Pick-a-Lili

日本では2003年にアメリカ・ルーツ音楽の研究家・鈴木カツが仕掛け人となった「アコースティック・スウィング」の文脈でユニヴァーサルの「アコースティック・スウィング・コレクション」10枚の一作に選ばれ、紙ジャケットでオリジナル・アナログ盤のデザイン復刻を意識した世界初のCD化が実現したのは快挙だった。プロデュースや編曲に関してクレジットは確認できないが、どの程度までライル氏自身の仕事なのか、Verveのスカウトマンだったバーニー・ケッセルの制作関与はどの程度あったのか(或いはなかったのか)、など興味が尽きない。

(追記) Jim Beloff氏の著書『Uketopia!』によれば本来Verveとは3枚のアルバムリリース契約であったが、発売当時2作の売れ行きが期待にそぐわず3枚目の話はなかったことになった、という事だそうである。同書にはLyle氏愛用のギブソン・カッタウエイの全体が拝める写真も掲載されている。





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How About Uke? (1958) / Lyle Ritz

2024年01月01日 | US & Canada Ukulele
謹賀新年の日にご紹介したい本作、世界のジャズ・ウクレレ史に燦然と輝く1958年の名盤である。ウクレレでジャズを弾く、という条件下においてこれを超えるアルバムはいまだに(おそらくは今後も)存在しないと思う。

このレコードの主役は、ライル・リッツ。LAの楽器店でアルバイトしているときに、お客さんに弾いて見せる必要がありウクレレを習得したという。それをたまたま見かけたのがジャズ・ギター界のレジェンド、バーニー・ケッセルで、当時ヴァーヴ・レコードのA&Rマンも任されていた事からスカウトされ、このアルバムが実現した。よって本アルバムの内容もバーニー同様の西海岸ジャズであり、ベースには名手Red Mitchellが参加している。時代も1958年、ジャズの歴史を代表する名盤が次々と発表されていたジャズにとって最高の時期の作品で、「本物」の空気感をまとった、唯一無二のジャズ・ウクレレ音盤となっている。

A1 Don't Get Around Much Any More    
A2 Have You Met Miss Jones
A3 Little Girl Blue
A4 Solamente Una Vez (You Belong To My Heart)
A5 Moonlight In Vermont
A6 Ritz Cracker

B1 Lulu's Back In Town
B2 Playmates
B3 I'm Beginning To See The Light
B4 How About You
B5 Sunday
B6 Tangerine
B7 Sweet Joan

Bass – Red Mitchell
Drums – Gene Estes
Flute – Don Shelton
Ukulele – Lyle Ritz

B1やA1はライル氏のシグニチュア・チューンであり、晩年まで何度も再演された。A1はエリントン・ナンバーだが、ポピュラー・ファンにはポール・マッカートニーのバージョンでもお馴染みか。

このあと、もう一枚ウクレレのアルバムを同レーベルに吹き込むが、どちらもセールス的には伸び悩み、ライル氏はベースに転向。セッション・ミュージシャンとなり有名なレッキング・クルーの一員として多くのアメリカン・ポピュラー音楽のレコーディングに参加。晩年はハワイへ一時期移住し、そこでこの二枚のアルバムがウクレレの本場では伝説的な名盤として長年評価されていたことを知り、時にベーシスト、時にウクレレを手に活躍。一回り年下であるオータサンとの共演盤も大量に残している。2017年オレゴン州ポートランドにて死去、87歳だった。アメリカ本土におけるウクレレのレジェンドである。
 
ところで今日に至るウクレレ復権から再ブームへの原動力を担った功績者は世界に二人いる。日本においてはサザンの関口氏であり、ハワイおよびウクレレに対する狂おしいまでの愛と行動力に加え、芸能人という立場も最大限に利用し、オータサン再評価の立役者ともなった。一方アメリカにおいてはFlea Market Music主催者のJim Beloff氏をおいて他にない。このJim氏が「ジャズ・ウクレレの大名盤が奇跡的にCD復刻されたが、プレス枚数も少なく、間もなく在庫終了したら入手できなくなる。もう二度と再版されない可能性があるから、絶対今のうちに手に入れたほうが良い」と強力に推していたのが、このアルバムだった(最初のアメリカでのCD化は「Limited edition available until March 2007」という限定盤)。

その後、ウクレレの復権に伴い本作も廃盤どころか日本盤CDまで発売されたが、その時の日本語タイトルが「ハウ・アバウト・ウケ?」とデカデカと帯に印刷されていたのにはひっくり返った。Ukeはウクレレの事で、正しい発音は「ユーク」である。本番ハワイでは日本と同様「ウクレレ」だが、アメリカ本土だとウクレレの発音は「ユークレイリィ」或いは「ユーカレイリィ」となる。それでUkeは「ユーク」。つまりHow about Uke?は「ハウ・アバウト・ユー?(あなたの意見はどう?)」(=収録曲B4タイトル)を「ハウ・アバウト・ユーク?(ウクレレなんてどう?)」としたダジャレである。それを意味不明な「ハウ・アバウト・ウケ?」ではライル氏渾身のダジャレも台無しだ。きちんと確認しなかったレコード会社のせいで、50年以上もたって、異国でギャグがスベるとは、ライル氏の立場がない。しかし、その後もCDは再発が継続し、現在はもう一枚のヴァーヴでのアルバムと2in1になったものが出ているようだ。



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