ウクレレとSwing(スヰング)音盤

ブログは「ほぼ隔週月曜更新」を目安に、のんびりやっています。レコードやCDはすべて趣味で集めたもので販売はしていません。

I Wish You Love (2007) / Lyle Ritz & Rebecca Kilgore

2024年02月26日 | US & Canada Ukulele
2007年、PDX Uke Recordsからリリース。ジャズ・ウクレレの名手ライル・リッツが移住先だったハワイを離れてアメリカ本土へ戻り、オレゴン州ポートランドに新居を構えた結果、そこで新たに得た地縁から生まれたのが本作。リリース元となったPDX Uke Recordsなるレコード会社も実体は地元オレゴン州のウクレレ愛好者の団体(Portland Ukulele Association)による自主制作レーベルだったようだ。

ともあれ晩年のライル氏にとってポートランドでの活動は輝かしい音楽家としてのキャリアの最終地点となった(2017年3月にライル氏はこの地で亡くなった)。本作で組んだ地元ポートランドで活動する女声ジャズ・ボーカリストのRebecca Kilgoreと吹き込んだ二作のうち、本盤がその一作目にあたる。ウクレレ伴奏によるジャズ・ボーカル作品というと、オーストラリアのジャネット・サイデルのアルバム「マナクーラの月(2005)」が日本でも人気を博したが、本作もほぼ同じ時期にリリースされた同趣向の作品といえるだろう。楽曲は2.の「シャレード」63年と8.の「Sway」53年と10.のタイトル曲でもある「I Wish You Love」46年作の3曲を除き、すべて戦前のオールドタイムなジャズソングばかりで構成されている。

1.I LOVE A UKULELE
2.CHARADE
3.AREN'T YOU GLAD YOU'RE YOU
4.THAT OLD GANG OF MINE
5.GIVE ME THE SIMPLE LIFE
6.I AIN'T GOT NOTHIN' BUT THE BLUES
7.I CRIED FOR YOU
8.SWAY
9.RUNNIN' WILD
10.I WISH YOU LOVE
11.SURREY WITH THE FRINGE ON TOP
12.REACHING FOR THE MOON
13.THEN I'LL BE HAPPY

演奏にはオレゴン大学で音楽講師を長年勤めていたDave Capteinがベースで加わり、録音は地元ポートランドのFalcon Recording Studioにて行われた。プロデューサーはPortland Ukulele Associationの代表でもあるMarianne Brogan と、Ann Smithが担当した。



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No Frills (2006) / Lyle Ritz

2024年02月12日 | US & Canada Ukulele
ジャズ・ウクレレの名手Lyle Ritzの2006年作。Jim BeloffのFlea Market Musicからのリリース。

まずタイトルの意味するところだが、「実質本位の,余分なサービスは提供しない」といった意味があり、ジャケット写真にある”如何にも良いサービスは期待できそうもない”レトロなモーテルの写真と、アルバムの内容が自身の多重録音によるウクレレとベースだけによる超・シンプルな内容である謙遜の二つの意味をかけたのだろう。駄洒落好きのライル氏らしいタイトルだ。

ジャケット写真に写るライル氏の苗字と同じ名前のRitzモーテルだが、これはCG処理などによるものではなくNorth Hollywoodに実在した宿(現在は閉鎖)。North Hollywoodはスタジオが点在しミュージシャンも多く住む地域で、Ritzモーテルはアメリカンなヴィンテージ・モーテル看板マニアの間では少々知られた存在だったようだが、それはあくまで看板の意匠によるものであり宿自体は最低の星ひとつ評価を受け、クチコミは不名誉な書き込みで溢れかえらんばかりであった。そもそも北ハリウッド自体あまり治安が良い地域とはいえないが、文字通り素敵な旅のサービスが受けられるような宿ではなかったようだ。写真にも「AIR OND」と見えるが恐らくAIR CONDITIONEDの数文字が欠落したままになっていて、この宿のセールスポイントが「(少なくとも)空調はついている」、文字の欠落によってそれすら疑わしいレベルであることを示唆している。

2006年というとリリース時点で1930年生まれのライル氏は御年76歳だった計算になる。2000年頃にハワイを離れオレゴン州ポートランドに新居を構えたのち、マッキントッシュのコンピューターにGarage Bandというソフトウエアをインストール。コンピューターを介した自宅録音により本作を完成させた。立派なスタジオ機材もエンジニアもいなかったことを思えばそれもタイトルの「実質本位の,余分なサービスは提供しない」の意図にも繋がりそうだ。しかしウクレレ奏者としてはかのバーニー・ケッセルに見出されて1950年代にアルバムをジャズの大手Verveから二枚も出したジャズ・ウクレレの先駆者であり、ベース・プレーヤーとしては有名なレッキング・クルー(LAのスタジオ・ミュージシャン集団)の一員として数多のアメリカ音楽史に残る名盤に参加した伝説的存在だけに、素朴な出来ではあるが本人による「宅録」演奏だけでも充分傾聴に値する作品として成立している。

1.A Felicidade
2.Satin Doll
3.Lil' Darlin'
4.No Moon At All
5.Besame Mucho
6.The Girl From Ipanema
7.Beginner's Luck
8.Rainforest Waltz
9.Emily
10.Blue Monk
11.I'm Old Fashioned
12.Old In New Mexico

もうひとつこれは推測だが、ライル氏はハワイに移住していた90年代にオータサンのアルバムのほとんどをベーシトとして支えており、本作でのウクレレを中心としたミニマルな音楽制作は、オータサンとの交流から得た相互間の影響もあった事だろう。オータサンはこの少し前の時期からウクレレ一本での独奏によるアルバム制作に挑戦し成果を上げていたが、本作でライル氏が先行したベースとのデュオというフォーマットはオータサンものちに 「Stardust - 4 strings - (2011)」で取り入れている。トラック8はそのオータサンのオリジナル曲である。



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