けんちゃんが一番好きなのはかあちゃん
かあちゃんが一番好きなのはけんちゃん
相思相愛
この人生でも貴重な経験
お風呂の前
かあちゃんの父ちゃんから電話
年に何度もない電話
まさかの
昨日だったな誕生日
おめでとうな
耳を疑う
辞書の用例に載るならこれでしょ
でも
平静を保ち冷静に静かに礼を言い
ちょうどいい
様子を伺うけんちゃんに受話器を渡した
けんちゃんは電話で話すってことがしたいし
かあちゃんの父ちゃんだって
けんちゃんと話せて嬉しくないはずがない
・・・・・・・
まだ
・・・・・・・・
おとうちゃんがじゅんびちてる
・・・・・・・
ううん
おとうちゃんがじゅんびちてる
・・・・・・・・
うん
・・・・・・・・
うん
・・・・・・・
うん
・・・・・・・・
はぁーい
話がまとまった様子だから受話器を取って
もう一度礼を言って
また行くって言って
受話器を置いた
なんとなく合点がいった
去年と一昨年
じーちゃんの誕生日にけんちゃんの手形捺して
メッセージ書いた色紙
けんちゃんの写真貼って・・・
けんちゃんに手渡しするよう言って
届けていた
けんちゃんこそ孫だってアピール
『お風呂に入る』準備をしている
父ちゃんに電話のことを言うと
驚いていた
誰に失礼かもう分からなくなるけど
感情表現が稀な父ちゃんが驚いたのが分かった
かあちゃんだって
この人生で
記憶のある限り
かあちゃんの父ちゃんが
かあちゃんの誕生日を祝う言動したのは
3回
これで4回目
かあちゃんだって
かあちゃんの父ちゃんの誕生日祝ったこと
ない
仕方ない
そんなことより
お風呂の準備をしたのはかあちゃんでしょ!
父ちゃんは入る準備をしてるんだし
と
言葉足らずで誤解を招くけんちゃん
お風呂に入るため服を脱ぎつつ
じーちゃんちょっときらい
という
仕方がないけど、
けんちゃんのために言った
じーちゃんはけんちゃんのこと
大好きなのになぁ
じぇんぶ?
そうだよぉ
じーちゃんはけんちゃんのこと
全部好きだよ
ふーん
ちょーなんだぁ
自分が身近な人に全面的に愛されてるって感覚
それ
けんちゃんには感じて欲しい
でも
ちょっと
意外な嫉妬心がわくかあちゃん
けんちゃんに聞かざるを得ない
ねえ、けんちゃん
○○(←父ちゃん実家)のじーちゃんは好き?
お風呂前に必須のトイレ中のけんちゃん
うーんとねぇ
だいたいちょっとやだ
そうなの?
○○のじーちゃんもけんちゃんのこと
大好きだよ
じゃあ
○○のばーちゃんは?
ここまでくると
もう
完全にかあちゃんはふざけ心
うーん
ばーちゃんはねぇ
ちょっとへんでちょー?
え?
変?変じゃないと思うけど
どうして変なの?
ここは否定せず同調もしない
けんちゃんの記憶力と
言っていいこと悪いことの線引きの甘さを考慮
うーんとねぇ
このへんがちょっと変だから・・・
え、
変って・・・お顔??
うん、このへんがへんでちょ
自分の顔
頬を撫でながら笑ってる・・・
けんちゃん
お顔が変とか
お顔のこと言うのはだめだよぉ
ばーちゃん悲しくて泣いちゃうよぉ
もしくは
怒る
浴室からククッと笑う声が聞こえる
父ちゃんが笑ったりするの
けんちゃんの言動にだけ
もういい
裸ん坊のけんちゃんをお風呂に送った
おかあちゃんがいい!!
保育園に送った別れ際
かあちゃんにしがみついて言うけんちゃん
うまく別れたと思った今朝
背後で「けんちゃーん!」って声
どこのけんちゃんが呼ばれているのか
ふと振り返ると
靴下で園庭を疾走するけんちゃん
けんちゃんがこんな華麗に走るの初めて見た
だいたい運動会でもまともに走らない
走るのきらいって言うのに
生き別れになって
どれだけぶりかに出会えた母子のよう
園庭のど真ん中
けんちゃんを抱き上げる
けんちゃん!
靴下でお庭出たらいけません
おかあちゃんがいいのぉ!!
話は噛み合わない
お母さんもけんちゃんがいいけどさぁ
やっと追いついた先生も室内ばきのまま
こんな時間
あとどれくらい味わえるのかなぁ