わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

代表取締役のいない株式会社

2017-05-22 09:42:36 | 司法書士
とある方と話をしている時にその方が、
「株式会社には必ず代表取締役がいるじゃないですか?」と言われました。

そのお話の文脈では問題はありませんでしたが、心の中では必ずしも「必ず」とは言い切れないと思っておりました。
(別にその方に意地悪をしたわけではありませんよ。その理解でほとんどの場合問題ありません)

パッと思いつくのが、「指名委員会等設置会社」です。
指名委員会等設置会社は比較的新しい形態の株式会社です。
もともとは委員会等設置会社→委員会設置会社と呼ばれていた会社です。
平成27年に「指名委員会等設置会社」となりました。

この指名委員会等設置会社には取締役会はありますが、業務執行は執行役が行います。
そして、会社を代表するのは代表執行役です。
このため指名委員会等設置会社には、代表取締役は存在しません。

もう一つは、特例有限会社の場合です。
株式会社の話をしているのに有限会社?と感じられるかもしれませんが、
会社法の視点からすれば必ずしもそうではありません。

少し時間を戻しますと、平成18年の商法改正によって会社の規定が大幅に改正されました。
その際、有限会社法は廃止されています。
根拠となる法律がなくなってしまったため、新たに有限会社を設立することはできません。

では根拠となる法律がなくなってしまい、その際に存在していた多くの有限会社はどうなってしまったのか?

それは新しく設けた会社法に特例を設け、その時点で存在している有限会社に限り有限会社を名乗ることができるようしました。
また、商号(名称)は有限会社ですが、法律上は株式会社として存続するものとされました。
このような有限会社を特例有限会社といいます。
つまり、特例有限会社は有限会社と名乗っていますが、法律上は株式会社なのです。

これで話を戻しますと、株式会社の話で、有限会社の話をしても問題はないということになります。

さて、代表取締役のいない株式会社ですが、(特例)有限会社(以下、単に有限会社)の場合はあり得ます。
有限会社には必ず1名以上取締役がいます。
そして、原則として取締役が会社を代表します。
仮に取締役が1名であれば、その取締役が会社を代表する取締役です。
2名以上であれば、各自が会社を代表する取締役です。

ただ、取締役が複数の場合に会社を代表する取締役が何人もいると混乱も生じやすいので、会社を代表する取締役と
代表しない取締役を定めることができるようにしました。
そしてこの定めてがあるときに、代表する取締役と代表取締役を区別するために、代表する取締役を「代表取締役」とすることになりました。
つまり、この定めがあるとき=「会社を代表しない取締役がいる場合」に限り、会社を代表する取締役について「代表取締役」と称することになります。

これを取締役が1名の有限会社に当てはめてみると、唯一の取締役が会社を代表するため「会社を代表しない取締役がいない」会社なので、代表取締役がいない株式会社ということになります。
(あくまで「代表取締役」という取締役がいないのであって、会社を代表する取締役は唯一の取締役です)

このように、株式会社であっても必ずしも代表取締役がいるというわけではない、というお話でした。