カテプシンEという酵素の一種は免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞などに存在し、その活性低下は宿主の免疫応答低下や不調をもたらす。それが原因でアトピー性皮膚炎などの病態を発症させる可能性があるといわれている。
逆にカテプシンE活性が増加すると、慢性関節リウマチなどの疾患の原因になると疑われている。
このようにカテプシンE活性の消長は、自己免疫疾患等の病態と深い関係があることが解明されている。
九州大学大学の山本健二教授らは、「カテプシンE」の抗癌作用を調べてきた。その結果、試験管の中で人の前立腺癌の細胞にカテプシンEを与えると、正常な細胞には影響を与えずに癌細胞だけを死滅させることがわかった。
さらに、人の癌細胞を移植したマウスにカテプシンEを注射した場合も癌細胞が死滅したほか、遺伝子操作によってカテプシンEを増やしたマウスは通常のマウスに比べて癌の転移が抑えられ、生存率も上昇した。
カテプシンEの抗癌作用が明らかになったのは初めてである。カテプシンEを薬として人工的に作った場合、リウマチ等のアレルギー反応など臨床的な検証が必要だが、研究グループは副作用の少ない新たな癌の治療法につながる可能性があるとしている。
今後の研究の成果が待たれる。
(記事)
ヒトの酵素でがん細胞が死滅
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