年末から、母の調子が悪くなっていたのはわかっていた。
1日おきの通院、そして点滴。
会うたびに、手を合わせて「家に連れて帰って」という母にできないこととわかりつつ「もう少し元気になってからね」
救急車で運ばれた時には、話すことはできなかったが、手を握ると微かに握り返した。
それから3時間あまり。
母は逝った。
母がもう苦しまなくていいと思うと、ホッとした。
生きては帰れなかったが、願っていた家に帰れてよかった。
母が施設で書いていた日記は、テンプレートを使ったかのように毎日同じ文章だった。
当番の職員のお名前。
お世話になったこと。
迷惑をかけていること。
それを仕方ないと思っていること。
だから、感謝をしなければいけないこと。
日記の終わりには、
ありがとうと感謝の言葉が
赤ペンで囲んであった。
母の本当の気持ちは、想像することしかできない。
自分でなんでもできていた母が、
病に倒れ、周りの手助けなしに生活ができなくなった時、どんなに辛かっただろうと改めて思った。
今まで、ありがとう。
ゆっくり休んでね。