カレーです。
“大切なお知らせ”
というものが、
もはや多くの場合においてポジティブなものではないことを、
現代社会を生きる多くの人が経験的にご存知かと存じます。
ことプロレスにおいては特に、年度の後半。
選手のキャリアに関わる報告が主であるこの文言を見るたびに、
身体が強ばる思いです。
9月21日。
プロレスリング我闘雲舞所属の水森由菜選手は、
ChocoProライブストリームの時間を使い、
自らの口で、
9月29日の新木場1stリング大会を以て、
4年7ヶ月を選手として過ごした
団体を去る決断を語りました。
このお知らせが、キャリアを閉ざす決断ではなかったことに個人的には安堵しつつ、
絞り出すような言葉で自身の決断を語る姿を見ながら、
適当な憶測を無遠慮に垂れ流すYouTubeのコメント欄を
片っ端からブロックしながら。
(その一方で、コメント欄に現れた鈴木心選手の“言葉を聞こうぜ”のコメントはグッときた)
例えば、経験値。
例えば、キャリア形成。
例えば、時間的制約。
例えば…
“大切なお知らせ”という文言をみて、
水森由菜選手の心情を想像したとき、
団体を離れる選択肢は…
そうなって欲しくはない、とは思いつつ。
…予期していた、
というか、当人の口からその選択が示されても、
なんとなく、理解できると思いました。
この“大切なお知らせ”の文言を見つけたときから、
私は、一つの光景を思い出していました。
それは、我闘雲舞10周年記念大会のメインイベント。
試合の決着がつき、その疲労から、あるいは安堵からか、
リングに倒れ込んだ水森由菜選手と、
駿河メイ選手。
試合終了のゴングから時間の経過とともに、
少しずつ身体を起こした両者。
と、躊躇することなく。
駿河メイ選手は、水森由菜選手に抱きつきました。
でも。
水森さんの左手は、駿河メイ選手を抱きとめ返すことができなかった。
試合中痛めつけられた右手ではなく、手を回せなかったのは、
試合でダメージを比較的負っていない、左手。
悔しさ…
かもしれないとも思いましたが、
このときおそらくはすでに。
何か別の思いも、同時にあった…
の、かもしれません。
10年という団体の区切りには、
ともに歩むことができた。
でも、その先を一緒には進めないこと。
もしかしたらそうした負い目や、
同期に対する申し訳なさ、みたいなものが。
左手の行方を、失わせたのかもしれない、
と、想像します。
YouTube LIVEで最後に現れたのは、
団体代表であり、師匠であり、
団体所属として、最後の対戦相手となる、さくらえみ選手。
笑顔で、“引退するわけじゃないからね?”というのがまず第一声でした。
そして、このYouTubeLIVEの開始が遅れたことが、
水森由菜選手自身がこのLIVE開始のボタンが
押せなかったことに起因することを明かしました。
「こんなに勇気のない娘なんだよ?」
LIVEスタートのボタンという一歩を、
自身の決断の最後の最後の一歩を、
これを押すと“我闘雲舞の水森由菜”が終わるという一歩を。
その躊躇いには様々な感情が去来したことでしょう。
LIVEが始まれば、様々な感情、様々な憶測に晒される。
でも、それがわかっていながら。
ライブストリームで、
自らの口で、
自らの決断を語ることを選んだのは、
何より、水森由菜選手自身であることもまた、
同時に語りました。
この決断に至るまでの苦悩や葛藤は、
すでにおそらく当の水森由菜選手の中では済んでいる、
というか、済んでいるからこその決断であり発表であったと想像します。
ただ一方で、さくらさんがこの土日2日間を
水森さんにとって「最後の市ヶ谷大会」と形容し、
「この先も(市ヶ谷に参戦することは)…うーん…ないかな」
と言葉にしたとき、一気に“別れ”が現実味を帯びました。
水森由菜選手のプロレスラーとしてのキャリアは続きます。
その先にもしかしたら我闘雲舞と再び巡り合うこともあるかもしれません。
でもこの決断が一つ、確実に迫るのは、
“我闘雲舞の水森由菜”が、
9月29日、見納めになる、という事実。
駿河メイ選手の以下のツイートが、
なによりその現実感を叩きつけます。
#TropicalNight
— Mei Suruga 駿河メイ (@Mei_gtmv) September 23, 2022
水森由菜🍍我闘雲舞所属ラスト☆マッチ
今後、皆さんは色んな場面でゆなもんを観れると思います。
でもこの大会が自分たち我闘雲舞にとっては、本当のお別れです。
ゆなもんが居る我闘雲舞に来て欲しいな。#ChocoPro #gtmv https://t.co/WMhvLe3RLE
どちらかといえば観客の方が、
水森さんの続くプロレスラー人生を目撃することができる。
でも、団体に所属し続けるレスラーたちにとってはこれが、
“本当のお別れ”。
ともに歩んできたその轍が、分かれる日。
それが9月29日。
おそらくは様々な感情を伴って訪れる
少しばかり時期の遅い気もするトロピカルな夜。
それでも、戦いを続けるプロレスラーたちの姿とその感情を、
新木場1stリングでしっかり、目にしてきたいと思います。
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