《ネット・プロレス大賞2019 〜最優秀試合〜》
語弊を恐れずに言うならば。
結局のところ、里歩選手のシングルからどちらかを選ぶ、
[前半、ほぼロックアップだけで試合を展開。凄え。]
投票内容を晒そうのコーナー6項目め。
この項目についてはここ数年、引っ掛かりのあった試合は全て
Twitterでまず振り返ることにしました。
…というのも、語りたい試合が多すぎるので。
そして振り返るにも振り返ったり、116試合。
およそ2興行に1試合は、後々見返したくなる試合があったという計算になります。
かつては背景にある物語の全てを排除して、
ただただ試合の巧拙、好悪のみを切り出して選んでいたり、
ただ衝動のみで選んでいたりと様々ですが、
最終的に…今はなんだろう。
基準は、ブレにブレている。
1位 里歩vsさくらえみ(7.2 我闘雲舞 新宿)
2位 松本崇寿vs岡田剛史(6.8 ハードヒット 新木場)
3位 高梨将弘vs木高イサミ(12.28 BASARA 後楽園)
最近はもう感情的、感傷的な部分や背景、歴史に引っ張られて、
悩みに悩んだ結果、様々に考えた順位をスコーンッと入れ替えて、
最終的にこの投票内容となりました。
1位は里歩vsさくらえみによる、
所属として最後の“師弟”対決。
女子プロレス界のサンデーサイレンス(勝手に呼んでる)・さくらえみの
“最高傑作”里歩が、世界へと羽ばたく、最後の試合。
個人的には2017年に熊本で行われたこの師弟対決をその年の2位に挙げていて、
無数に行われたこの一騎打ちの中で、さくらさん本人も記憶に残るものとして挙げるほど、
その試合が鮮烈に記憶に残っていて。
熊本の一戦の何が凄かったかといえば、
二人の試合が明らかに会場の空気を変え、
視線を釘付けにし、“凄さ”を伝えたこと。
言葉による説明とか何もなく、“面白いもの”から“凄いもの”へ、
観客の認識や熱量そのものを変えてみせたこと。
語弊を恐れずに言うならば。
この師弟の関係性、この二人による試合はもう、
完全に一つの“作品”だと思ってます。
さくらえみというプロレスラーが、一人の少女とともに紡いだ、
…紡ぎ続けた、作品。
もちろん、プロレスの試合なので全く同じ試合なんてない。
また、それぞれにプロレスラーとして積み上げた歴史があり、
独立した個人であり、それぞれにかける思い入れもまた、異なる。
ただ間違いなく、この二人の試合は、
世界のどこであろうとも、万人を驚かせることができる。
これからも紡がれ続ける、二人による、最高傑作。
この一戦のあとにAEWで再び実現した一騎打ちもまた、
やっぱり素晴らしかった。
と、ともに、この二人の試合が100万人の目を通してしても、
素晴らしいものであるということが改めて証明されたことが、
個人的にはとても嬉しいことでありました。
ケニーありがとう、トニー・カーンありがとう。
この試合に投票することは割とすぐに決めていたのですが、
もう一つ、頭を悩ませた試合が、里歩vs高梨将弘(4.27板橋)。
2019年という年を振り返ったときに、
やっぱりこの二人が一騎打ちしたことの意味って、
改めてとても大きかったと思うんです。
結局のところ、里歩選手のシングルからどちらかを選ぶ、
高梨将弘選手の試合からどちらかを選ぶ…
という選択の末、
票を割り当てることはしませんでした。
ただ、2019年とりわけ充実した試合が多かった中に、
この二人の一戦があったことは言及せざるを得ないなと思い、
一応ここに書き残しておくことにしました。
2位はハードヒットで行われた、松本崇寿vs岡田剛史の一戦。
会場で試合を見たインパクトが一番強かったのがこの試合。
通常のハードヒットルールはロストポイント制で、
ダウンまたはロープブレイクでロストポイント、
その他KOまたはギブアップ等での決着となります。
グラップリング限定大会もありますが、
基本的にはハードヒットの名を冠する通り打撃はもちろんあり。
…にも関わらず。
二人はゴングがなった瞬間、いきなり面と向かってリング中央で座り込みました。
ニコニコプロレスチャンネルで中継もあったので
会場にいらっしゃらなくてもご覧になられている方もいると思いますが、
この試合は、ただ試合時間中ひたすらに組み合う。
もう、ひたすらに。
腕を極め脚を極め首を極め、それを防御し、解き、極め返し、
一歩でも自分の有利な態勢を築こうとする、技巧のせめぎ合い。
ハードヒットはプロレスです。
そしてこの二人のプロレスは、おそらく、
ハードヒットでしか見れないプロレスです。
是非ハードヒットを、松本崇寿を、岡田剛史を、
ご覧いただけるととても楽しいと思います。
今年抜群に好きな試合の一つ。
3位に挙げたのは、高梨将弘vs木高イサミ。
これについてはもはやなんというか、言葉がない。
高梨将弘が、木高イサミに勝った。
そして、傾奇者たちが高梨将弘の背を追うことになった。
その2つの出来事の意味の大きさ。
それは、2020年のプロレスを、確実に楽しくする。
ベストバウトをTwitterでひたすらに挙げていったわけですけど、
やっぱりベルト保持者はシングルで戦う割合が高くなったりするので、
名前が頻繁に挙がりがち。
例年そうなんですが、116試合挙げたうちのトップは
多分アントーニオ本多選手で10試合。
あとおそらく、駿河メイ選手も10試合くらい名前を挙げています。
これは試合を見る頻度も影響してますが、
私個人の好みにあった試合や、
そもそも選手として安定したパフォーマンスを常に良い試合を発揮していることが、
多く名前が挙がる要因のような気がします。
そして個人的な“主戦場”の一つ、
ガンプロで言えばどうしてもインディーJr戦線は欠かせません。
ベストバウトの候補にも、石井慧介、勝村周一朗両選手の名前を多く挙げました。
特に個人的には翔太戦、ベルトを落とした石井慧介戦は観戦できていないのですが、
それでもあまりに幅広い挑戦者相手に、多彩な試合を展開した、
王者・勝村周一朗が凄かった。
勝村周一朗だからこそできるプロレスという形が、
一つ完全に出来上がった年だったような気がします。
あとは1位に挙げた里歩選手ですが、
“スーパーアジア王者・里歩”の戦いがまた凄かった。
引退間際なのに凄い強かったコマンド・ボリショイ選手を相手に果たした防衛戦でまず
“今年のベストバウト候補だ!”と思いましたが、
その後についても前述しましたが、高梨将弘戦がまーあ凄くて。
そしてその後最後の防衛戦となった駿河メイ戦もまた素晴らしく。
戦う度にベストを更新するくらいの充実した戦いぶりでした。
王者としての戦いというところでは、中島翔子選手の名前も頻回に挙げてます。
瑞希選手との2度のシングルは、互いに相手の弱点を作り合うような緻密な展開と、
要所要所でその弱点を先鋭化させる、濃淡のある戦いが目を引きました。
ついに両国で実現することになった坂崎ユカとのタイトルマッチは、なんと全体投票8位。
個人的にはこのカード思い入れがありすぎて全うに評価・判断ができなかったので、
票を回すことはしませんでしたが、
何度でもみたいし、東京女子プロレスとしての大きい大会で、
また実現すると本当に嬉しい。
カードや結果への思い入れで投票できなかった試合はもう一つ、
5.2FREEDOMSでの葛西純vs藤田ミノル。
藤田ミノルが、2018年のガンプロで“できなかった”という
「人生を投影する戦い」。
何かを賭した戦いぶりは、本当に凄まじかった。
そして、勝ってほしかった。
だから、素晴らしい試合だったけれど…
点数はつけられませんでした。
藤田ミノル選手の試合は結構見に行っていて、
ベストバウト候補にもたくさん名前を挙げましたが、
特に印象深いのが、愚連隊興行でのAKIRA戦。
[前半、ほぼロックアップだけで試合を展開。凄え。]
大概にプロレス大好きな藤田ミノル選手ですが、
この日は冒頭から表情に緊張が見て取れるほど気持ちが入っていた…
というか、AKIRA選手への憧れが前面に出ていて(そしてそれを試合後に爆発させた)。
AKIRA選手はAKIRA選手で、そのスタイルの貫き方が見事。
あまりのクラシックな攻防に「2019年だぞ!?」「アンタ最高だ!!」と、
藤田ミノル選手が思わず叫んでしまった様子は、
見ていてとてもワクワクさせられました。
単純好きな試合は、高梨将弘興行で行われた両国式ガントレットマッチ。
これは最優秀興行の項でも写真を貼りまくりましたが、
写真を貼りまくりたくなるほど好き。
振り返っていて、泣きそうになってしまうのが、
今成夢人vs田中将斗と、今成夢人vs竹下幸之介。
今成夢人選手という共通項はありますが、感情が揺さぶられる理由は異なっていて。
後者については最優秀団体で言及したとおり。
前者については、プロレスラーとしてのアイデンティティが不確か(だった)
今成夢人と鷲田周平の練習の模様を
田中将斗が見ていて、「頑張ってる?」と声をかけたエピソードが事前に語られていて。
そしてそのエピソードに田中将斗が「自分も覚えています」と応えた末、
イチプロレスラーとしての今成夢人を、全力で迎え撃ち、全力で叩き潰した。
田中将斗という超一流のプロレスラーが、
今成夢人をプロレスラーとして、承認した。
それは、今成夢人というプロレスラーにとって、どれだけ嬉しいことだっただろう。
そんなことを思うと、なんとも言えず
涙を流したくなる心境になるのです。
文字にしたところで、あまり伝わる気がしないけども。
橋本千紘vsジョーディン・グレースについても是非触れておきたい。
個人的には、女子プロレス界で強さのポテンシャルでは
橋本千紘が世界を見渡しても最上位クラスだと思ってます。
が、その最上位クラスが、いた。
“ビッグ・パパ・パンプ”スコット・スタイナー(スタイナーブラザーズ弟。だけどもはや同一人物と思わないほうがいい。)を
敬愛するジョーディン・グレースはその鍛えに鍛えた肉体から
“ビッグ・ママ・パンプ”の異名を取りますが、
試合ぶりもBPPのようにパワー一辺倒かと思いきや、そんなことまるでなくて。
もう観客の意表を突く仕掛けのオンパレード。
かと思えば見た目通りの膂力も発揮し、橋本千紘を苦しめました。
オブライトで王者が防衛を果たしましたが、
印象は完全にジョーディン・グレースの試合。
売れっ子なので中々再来日の機会があるかはわかりませんが、
ぜひまた見たい選手。
あと、蛍光灯IPPONデスマッチが全体11位に入ったのは、
大変嬉しかったですね。
票を回すことができませんでしたが、
もう皆さん本当によく見てるなと。
投票した人たちとハイタッチを交わしたい。
EXTREME王者としての彰人の試合はとにかく絶妙に面白いので、
もっとベルトを持っていて欲しかったし、
絶対にまたこのベルトを巻いて、このベルトを使って、
その力を遺憾なく発揮してほしい。
えーとあとね、あとね…
…ということで、
あの試合は、この試合はと思い始めると、
語りたいことが止まらなくなるのがプロレスファンの常だと思います。
だからとりあえずここまでで止めることにしました。
また言いたくなったら言いますね。ええ。