遭難原因の多くを占めるのが「道迷い」だと思いますが、最近はTVなどでも山歩き入門や、遭難対策本・HPなど、参考になる情報ありますので、具体的なことは情報収集していただきたいと思います。
地図と磁石
そういう身に付けた知識を生かして、実際に山に行ったときに使わなければいけないし、山に行かなければ生かせない、と思います。山登りと遭難は、車の運転と事故の関係に似ていると思います。車に乗れば乗るほど事故の確率は高くなりますが、乗らなければ技量が低下し、次に運転した時の事故発生の確率は高くなると思います。山も、行けば遭難の確率が高くなりますが、行かなければ体力は衰え、経験も増えず、判断力は低下します。
特に、道迷い対策はいろいろなコースを歩いて、さまざまな場面に遭遇し、経験を積むことが大事です。 一番問題なのは、山に地図を持たずに行かれる方がいらっしゃいます。よくお見かけするのはパンフレットを地図の代わりに持っていらっしゃいます。多分、そういう方は磁石も持っておられない(家にあっても持って行くのを忘れる)のではないかと思います。いくら知識を学んでも、道具がなければ使えません。
地図を読めても、実際の山で、自分の現在地が把握できないのでは意味がありません。偉そうなことを言っても、私自身、地図と磁石で現在地を正確にポイントできるか、というとなかなか難しいのが現実です。だからと言って、それを判るように努力しないのは山では危険だと思います。私も判らないなりに、現在地を把握するようにいつも努めています。
そして、地図と磁石を見ながら、実際の山を歩くようにしないと、本当に道に迷った時に現在地をつかめる手掛かりが全くない状況になります。 地図と磁石で自分なりに確認しながら歩いていますと、迷っても元の地点(迷う前)まで戻るときの手掛かりなどを記憶しています。また、迷った、と気がついたとき、どの辺から間違っていたか大体推測できます。
経験
地図と実際があわないこともあります。また、細かいところは地図や解説書も書いていないです。(鈴鹿東西縦走)そこは経験を積んでいかないと解決しないと思います。いろいろな山を経験し、様々な場面に遭遇して、思いもつかないことがあるのだということを実体験しないと、読んだり、聞いただけでは理解できないこともあると思います。
たとえば、下りで鋭角に曲がる道では、つい道を見落とし、まっすぐに進んでしまい、気がつくと変なところに下りてしまう。結構みんな同じ所で間違うので、しっかりと踏み跡が付いている。すると益々そこでみんな間違う。正しい道の方が踏み跡が薄いことはよくあります。
急な下りで、鋭角に曲がる道は、視野の外に踏み跡の薄い道があっても、どうしても首を曲げることができにくい。これは林間コースや、岩場、ガレ場でも良くあることです。笹山(黒河内岳)縦走でも書かせていただきましたが、広河内岳頂上で「意識して東に目を転じて」のように事前に情報があれば迷わずに済みますが、事前情報がない場合は現場での対応は相当地図を正確に読めないと迷うケースは多いです。
また、地図にも出ていない枝分かれした道はいくらでもあります。本道より広くしっかりした道が獣道であることもあります。人があまり行かないコースでは、雨のとき水の通り道だったところが、天気になり道のように見えるところもあります。このように、人の踏跡と明らかに違うものが道のように見えたりすることもあります。
そういう判断に迷うところはいくらでもありますが、迷わず行ける、あるいは迷っても、迷ったと気がついて元の地点まで戻るようになるのは、経験を積むしかないと思います。