カテゴリに「お勉強」を追加してみました。
(画面左側「過去の記事」の年月の下が「カテゴリ」の欄です)
全部Weblogにしたら埋もれてしまいますからね。
私の記憶で、チラッと見直してお勉強になりそうなものは、お勉強に直してみました。
よかったらチェックしてみてください。
で、ちょっと長文ですが・・・
○ 「波のうえの魔術師」石田衣良・著 より No.3
『 小塚老人と猫足のソファにむきあう。コーヒーの香りのなかブラームスの三番が流れていた。昼間からやたらに悲しい音楽だ。老人はにやりと笑っていう。
「今日は新しいレッスンをしよう。ここにいい教材がある」
そういうとなにかのコピーをテーブルに取りだす。目を落とした瞬間に、おれの売買報告書だとわかった。売買の手口と収支決算が最後の一円までのっている。
「気もちはわからないわけではない。きみは手早く仕掛けて、一発どかんとあててみたかった。初めての投資だから、無理もない。それで投資があてもののギャンブルではなく、危険な仕事であることを忘れてしまった。反省点をあげなさい」
老人のいうとおり、初めての投資は見事に失敗だったんだからしかたない。ちいさな声でいった。
「おれは焦っていたと思います。本当ならボックスの両端に値が近づいてきたときに、もっと慎重になるべきなのに、頭から400円が底値だと決めつけていた。それに失敗と感じていながら、リセットできなかった。ただひとつの武器であるマーケット感覚も投げ捨ててしまった」
あげればまだいくらでもありそうだった。老人は楽しそうにいう。
「そうだな。それにいきなり目一杯の二千株を買ったのも問題だ。きみなりに勉強はしているようだが、分割投資をしなかった。資金を細かく分けて動かす、なぜそんなことをするのかわかるかね」
「リスクを分散させるためです」
「正解だ。何度にも分けて売買することで、株価の平均値を有利にし、一点での勝負でなく、時間軸のなかで線の勝負ができるようにする。基本中の基本だ。それから分割投資にはもうひとつ大切なメリットがある。今のきみには特に重要なことだ」
音楽は第二楽章になった。穏やかな緑の丘を思わせるアンダンテ。
「それは自分自身の欲望を分割することだ。マーケットに参加する人間はすべて欲をもっている。だが、欲望をそのままむきだしにするような粗野な人間は、市場では単なる獲物にすぎない。すぐにくい散らされて退場していくだろう。資金を分割することで、自分の欲望も分割する。困難は分割せよというが、マーケットにおいては自分の欲望と闘うことが困難の極致なのだ。それでも、きみの最初の動きは間違っていなかった。わたしもボックスの底はあそこだと思っていたくらいで、買いからはいるのは当然だ。ただし、それは千株に抑えておくべきだった。そして、失敗を感じた時点ですぐに手仕舞いし、今度は売りから新しくはいり直せばよかったのだ。もちろん千株ずつ。わたしがやったように」
思わず、おれは叫んでいた。
「小塚さんも投資していたんですか」
老人は今度は正真正銘、悪魔のような笑みを浮かべる。ポケットから例の財布を取りだし、角でガラスに字が書けそうな一万円の新札を抜いた。象眼細工のテーブルを滑らせ、おれのまえにおく。
「これはきみへのチップだ。わたしも買いだとは思っていたが、きみの商いを見て売りからはいることにした。相場格言にこういうのがある。『焦って捕らえた好機は真の好機にあらず』。おかげで今回の下げ波にうまくのることができた。きみは毎日暗い顔をして、なんとか収支とんとんのところまでもちこたえたと思っているだろうが、そんな我慢大会は投資じゃない。一年にそうはないおおきな波を見逃したんだからな。よく考えてみなさい。今日はここまで」 』
投資家にとっては、心に響くセリフがポンポン出てますね。
「マーケットにおいては自分の欲望と闘うことが困難の極致なのだ。」
「そんな我慢大会は投資じゃない。」
などなど(^-^;
勉強になります。
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全部Weblogにしたら埋もれてしまいますからね。
私の記憶で、チラッと見直してお勉強になりそうなものは、お勉強に直してみました。
よかったらチェックしてみてください。
で、ちょっと長文ですが・・・
○ 「波のうえの魔術師」石田衣良・著 より No.3
『 小塚老人と猫足のソファにむきあう。コーヒーの香りのなかブラームスの三番が流れていた。昼間からやたらに悲しい音楽だ。老人はにやりと笑っていう。
「今日は新しいレッスンをしよう。ここにいい教材がある」
そういうとなにかのコピーをテーブルに取りだす。目を落とした瞬間に、おれの売買報告書だとわかった。売買の手口と収支決算が最後の一円までのっている。
「気もちはわからないわけではない。きみは手早く仕掛けて、一発どかんとあててみたかった。初めての投資だから、無理もない。それで投資があてもののギャンブルではなく、危険な仕事であることを忘れてしまった。反省点をあげなさい」
老人のいうとおり、初めての投資は見事に失敗だったんだからしかたない。ちいさな声でいった。
「おれは焦っていたと思います。本当ならボックスの両端に値が近づいてきたときに、もっと慎重になるべきなのに、頭から400円が底値だと決めつけていた。それに失敗と感じていながら、リセットできなかった。ただひとつの武器であるマーケット感覚も投げ捨ててしまった」
あげればまだいくらでもありそうだった。老人は楽しそうにいう。
「そうだな。それにいきなり目一杯の二千株を買ったのも問題だ。きみなりに勉強はしているようだが、分割投資をしなかった。資金を細かく分けて動かす、なぜそんなことをするのかわかるかね」
「リスクを分散させるためです」
「正解だ。何度にも分けて売買することで、株価の平均値を有利にし、一点での勝負でなく、時間軸のなかで線の勝負ができるようにする。基本中の基本だ。それから分割投資にはもうひとつ大切なメリットがある。今のきみには特に重要なことだ」
音楽は第二楽章になった。穏やかな緑の丘を思わせるアンダンテ。
「それは自分自身の欲望を分割することだ。マーケットに参加する人間はすべて欲をもっている。だが、欲望をそのままむきだしにするような粗野な人間は、市場では単なる獲物にすぎない。すぐにくい散らされて退場していくだろう。資金を分割することで、自分の欲望も分割する。困難は分割せよというが、マーケットにおいては自分の欲望と闘うことが困難の極致なのだ。それでも、きみの最初の動きは間違っていなかった。わたしもボックスの底はあそこだと思っていたくらいで、買いからはいるのは当然だ。ただし、それは千株に抑えておくべきだった。そして、失敗を感じた時点ですぐに手仕舞いし、今度は売りから新しくはいり直せばよかったのだ。もちろん千株ずつ。わたしがやったように」
思わず、おれは叫んでいた。
「小塚さんも投資していたんですか」
老人は今度は正真正銘、悪魔のような笑みを浮かべる。ポケットから例の財布を取りだし、角でガラスに字が書けそうな一万円の新札を抜いた。象眼細工のテーブルを滑らせ、おれのまえにおく。
「これはきみへのチップだ。わたしも買いだとは思っていたが、きみの商いを見て売りからはいることにした。相場格言にこういうのがある。『焦って捕らえた好機は真の好機にあらず』。おかげで今回の下げ波にうまくのることができた。きみは毎日暗い顔をして、なんとか収支とんとんのところまでもちこたえたと思っているだろうが、そんな我慢大会は投資じゃない。一年にそうはないおおきな波を見逃したんだからな。よく考えてみなさい。今日はここまで」 』
投資家にとっては、心に響くセリフがポンポン出てますね。
「マーケットにおいては自分の欲望と闘うことが困難の極致なのだ。」
「そんな我慢大会は投資じゃない。」
などなど(^-^;
勉強になります。