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昨日は水道橋の瀟洒なレストランで、学生時代の友人とゆったりランチを楽しんだ。さて、次は何しようと彼女が言うので、私は彼女に帰宅を促した。ご主人の体調を懸念したからだった。でも、彼も久しぶりに会う友だちと世田谷美術館に隣接するレストランで食事をしているから、夕方までは大丈夫なのヨと笑った。私も嬉しい。彼女からご主人も城野が苦しんだ間質性肺炎の初期症状だと聞いて、返す言葉もないほど心が震えた。だが、予想をはるかにうわまわる元気な様子だ。城野の通夜、告別式と両日、彼女は葬儀場に来てくれた。
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告別式の日はご主人と同伴で現れた彼女はダメだったねぇと、私に声をかけた。2年前に入院した折、主治医から回復は諦めてくださいと云われながら、退院し、仕事も始めた城野を知った上での述懐、復帰を信じた末の喪失感が痛いようにわかる。そのとたん、私の瞼から突拍子もなく、涙が溢れた。喪主をつとめる式典のあいだ、涙は流すまいと私は決めていた。それなのに、よくも泣かせたなと軽くいなして、私は友だち夫妻にくるりと背中を向けて、しばらく泣いた。こんな時、自分の顔からとび出すのは涙だけじゃない、鼻水までもがグシャグシャと・・・いやはや、きたなかった。
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水道橋のレストランを出ると、気象予報どおり、雨粒がパラパラ落ちてきた。二人ともそれぞれの折りたたみ傘を開いて、小石川後楽園に向かった。冬の庭園は寂しい。池の周りの枝垂れ桜はこんもりと枝を垂らしていたが、その色彩はグレーがかった焦げ茶色・・・冬色だった。それだけに、植木職人が雪吊り作業の合間に造形した稲藁細工に注目。これはどんな植物の冬ごもり?と、訊いたら、単なる造形だった。唖然。奥の梅林には白やピンクの花が開花・・・ちょっと嬉しい春予報だった。
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写真は小石川後楽園で撮影
梅林、池には鴨2羽、水仙
庭園を飾る稲藁の造形物