栄養点滴を中止した父への差し入れを考えて、地元のドラッグストアの介護食売り場を見たが、品数はほとんどなかった。結局、父の病院へ持参できたのはウィダーインゼリーと杏仁豆腐だけだった。父は転院する前後から、食べ物をほとんど受け付けなかった。なにかを口に入れても、すぐ、吐き出した。あるいは、手にしたタオルで拭き取った。そのため、転院直後から、点滴が必要だったのだ。 面会に訪れると、父は寝ていた。しかし、話しかけると、目を開いた。そして、なにかを食べたそうにする父の表情が気になり、看護師の応援を頼んだ。父のベッドを斜め上にあげてから、ウィダ―インゼリーをスプーンですくって、口に運んだ。最初、その味にびっくりしていたが、口から吐き出すことはなく、ほぼ半分・・・いや、3分の1程度の量を父は飲んだ。これなら、病院の流動食もそのうち受けいれてくれそうだ。見舞客のほうがなんだか、意気揚々とした気分になり、病院を出た。 固かった櫻の蕾がピンクに染まる季節