狙いどおり、バアバが登場したのは孫たちがちょうどお昼寝から覚めた時だった。熱のひいた女の子は母親に甘えて、彼女の腕から離れようとしなかったが、男の子とは前日、一緒にランチしたばかりだもの。すぐ仲良く室内で遊び、それから、二人で散歩することにした。
母親が2人目の出産で入院中、私は上の孫を預かった。ちょうど一年前である。母親から引き離された辛さからか、甘えて、いつも抱っこの坊やだった。が、1年の歳月は大きいね。彼は私と手をつなぎ、トコトコ歩きながら、花屋さんはあるかなあ~と言う。駅近くに花屋を見つけると、彼は花をじっと見ていた。どの花が好きなの?と、訊くと、ガラスケースの中の赤いグロリオーサを指さした。
女の子にだけ、花束を贈ったのはバアバのミスだった。さすがに、私も気がついて、グロリオーサをメインに、小さな花束を作ってもらった。意外に、男の子は花が好きである。家に戻ると、彼の花束に熊ちゃんの飾りをつけてもらった。それじゃ、バアバは帰るねと言ったら、男の子は奥のソファに身を隠し、知らぬふりしている。別れたくない意志表示だそうだ。一方、女の子は私を追いかけて、外まで這いずり出してきた。帰り道、振り返ると、孫たちとその母親三人が窓にはりつき、私に手を振っていた。
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