"塩野義は症状が快復するまでの期間が8日から7日に1日短縮したという治験の最終結果"
— Dr. Tad (@tak53381102) November 22, 2022
現時点では自分も家族も使わない。唯一使うとすれば(可能性は低いが)将来治験でロングコビッドが減らせられるとわかった時 https://t.co/JVJ2nTOulw
昨日、塩野義製薬開発の新型コロナウイルス感染症治療薬 ensitrelvir (ゾコーバ) の第3相試験について、速報で主要評価項目を達成した発表されたものの、その後に開示された資料では実際には症状改善までの時間の短縮は有意に示されていない件について opinion article を submit しました。(1/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
端的に言うと、塩野義製薬のプレスリリースでは、症状消失までの時間の95%信頼区間が0を跨いでいる「ゾコーバで症状消失が早くなるか遅くなるか分からない」という結果に、群間比較の p 値 0.04 を付記し、まるで前者で有意差があるかのように表記しており不正確です。 (2/14) https://t.co/XIwJhyIN61
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
私の opinion article がいつ掲載されるかはまだ分かりませんが、11月22日に再度ゾコーバの緊急承認申請に関する公開審議が予定されており、その前に第3相試験の統計学的な問題点を指摘しておく必要があると考え、こちらでも一部内容を共有します。 (3/14) https://t.co/G2cN9rtx7X
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
まず、そもそも ensitrelvir は第2相試験でウイルス価の低下は示したものの、主要評価項目であった新型コロナウイルス感染症の12症状の改善までの時間短縮を有意に示すことができませんでした。 (4/14) https://t.co/a3p4y41cRY
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
塩野義製薬は secondary analysis で新型コロナウイルス感染症5症状改善までの時間は有意に短縮したとして緊急承認申請を行いましたが、主要評価項目は満たされておらず、ウイルス価低下のみでは臨床効果は推定できないとして7月20日に却下され継続審議となりました。 (5/14) https://t.co/nFeY9VRcl2
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
そこで塩野義製薬は第2相試験の secondary analysis で有意差を認めた新型コロナウイルス感染症5症状を第3相試験の主要評価項目に変更しました。 (実際には完全に同じではなく、1項目は変更されています) (6/14) https://t.co/kS0NNtMjkq
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
Sample size estimation は第2相試験では log-rank test で行われていましたが、第3相試験では less conservative な Peto-Prentice generalized Wilcoxon test に変更され、症状消失までの時間をゾコーバ群で8.3日、対照群で11.1日の仮定で460名必要と算出されました。 (7/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
しかし、実際の第3相治験では症状消失までの時間らゾコーバ群で7日、対照群で8日と差がかなり縮まってしまい、bootstrap method で算出された症状改善までの時間の中央値は -24.3 [-78.7, 11.7] と 95%CI が0を跨ぎ有意差は認められませんでした。 (8/14) https://t.co/6A0OZylzFH
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
ところが塩野義製薬はここに Peto-Prentice generalized Wilcoxon test の p = 0.04 を付記し「主要評価項目を達成した」と発表しました。これは完全に統計学的な誤りで、ここで言えるのは「ゾコーバ群と対照群の Kaplan–Meier 曲線は一致しない」ということのみです。 (9/14) https://t.co/XIwJhyIN61
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
つまり、事前の推定より実際に観察された症状改善までの時間差がかなり小さかったことで検出力が足りなくなり、less conservative な Peto-Prentice generalized Wilcoxon test では有意だったものの症状改善までの時間差の 95% CI では有意に示せなかったということなのだろうと思います。 (10/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
これらの結果を踏まえると、現時点でのゾコーバの評価は「ウイルス力価は低下させるが、症状改善までの時間を短縮させるのか延長させるのかは不明」としか言いようがなく、この段階での緊急承認には科学的な裏付けに薄いと思います。 (11/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
これらの結果を受けて22日のゾコーバの緊急承認申請が通るかどうかは、政治的な思惑もありなんとも言えませんが、少なくとも (自称) physician-scientist として科学的な誤りを前にただ座して見るわけにはいかないと思いここに共有いたします。 (12/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
私の書いた opinion article はジャーナルに掲載され次第再度共有いたします。新型コロナウイルス感染症の治療薬を国産化することは日本の安全保障上も重要なことだと思いますが、それにより科学的事実が捻じ曲げられるようなことがあってはならないと考えます。 (13/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
個人的には塩野義製薬がとるべき科学的に正しい態度は n 数を増やした国際第3相試験で症状消失までの時間差でもきちんと有意差を示して緊急承認申請を行うべきだと考えます。 (14/14)
— sekkai (@sekkai) November 16, 2022
これが、ゾコーバ投与群とプラセボ(偽薬)投与群を比較したグラフだけど、
— 知念実希人 小説家・医師 (@MIKITO_777) November 22, 2022
これを見て
『これでコロナ禍の出口が見えた!』
なんてまともな判断力があったら思わないでしょ。
全然差がないよ…… pic.twitter.com/CD399XR0eB
ちなみに、ファイザー製のワクチンが承認されたときには、起源株に対してプラセボ群とここまでの差が出ました。 pic.twitter.com/Jb2uZiZoev
— 知念実希人 小説家・医師 (@MIKITO_777) November 22, 2022