旦那君が皆既月食を見ようと言ったんどけど、ゆうこは「相棒」が見たくて難色を示した。
何分かおきに「ねえねえ○○%欠けてきたよ!」と呼ぶから、テレビの話の展開がわからなくなる。
「今相棒みてるから。」と断ったらちょっと悲しそうだったから、仕方ないから外に出た。
月は不吉な色に染められたかのように微妙な色合いになっていた。
部屋に戻ると相棒の話は進んでいて、いいところを見逃した。
若い恋人同士なら相手に合わせようと努力するかもしれないが、この年になると自分の都合が優先になることもある。
「ねえねえ、月がね、完全に隠れたよ。ねえ、ねえ。」と玄関から呼ぶ声が。
「わかった。わかった。仕方ないなあ。今いくよ。」
せっかく誘ってくれたのに一緒に見てあげないと、万が一の時に、あのときに一緒につきを見てあげたら…。なんて後悔するのも嫌だし。
外に出ると見たこともない色の月。
ロマンチックというよりも謎めいた感じかな。
「変わった色だね。昔はね、月蝕って不吉なこととして忌み嫌われていたらしいよ。」と月から視線を戻すと誰もいない。
もしかして旦那君は神隠しにあった?
え?え?
玄関がカチャカチャと音をたててる。
な、な、なんと旦那君はさっさと家に戻り、しかも鍵をかけようとしてるではないか。
上着もねえ、スマホもねえ、かぎもなければ閉め出しだ。(←吉幾三のうたかっ!)
寒空のしたにひとりたたずみ、息子の帰りを待つしかない…。
っていうか息子は遅番。いつ帰るかわかりゃしない。
「閉めるでないぞっ!」静寂のなかに響くゆうこの声。
ご近所さんが何事かと思うかも。なんて心配したけど耳が遠い人だらけだから…。
「え?なにが?」と旦那君戸を開けて答える。
「鍵閉めようとしたでしょ?」と、ゆうこ。
「ああ、つい。」と、旦那君。
人の都合などおかまいなしはいつものこと。
「月見たから寝る~っ。」と、部屋に帰ってしまった。
「おかあさん、相棒終わったから部屋に帰るね。」と娘。
やれやれ。結局犯人は誰だったのか。
「録画なんだから戻しゃええやんかあ。」と旦那君は言うけれど…。
めんどくさくなって娘に教えてもらい、さっさと片付けて寝ることにした。
あ、そうだ、お風呂に入ろう。
またまたお風呂でうたた寝。
危険なのはわかってるけど気付けば寝てる。
昔と比べて体力落ちたし疲れがとれない。やっぱ身体は着実に衰えつつあるのだ。
生活も仕事もフルスピードじゃなくてペースダウンしないと長続きしないかも。
老いては子に従えってね。
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