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青春の嵐 第9話「担任教諭の憂鬱」

2015年11月17日 19時05分27秒 | 青春の嵐
寛一が自宅ではパソコン、学校ではスマホを使ったデイトレードとアフィリエイト他ネットを使った
ビジネスで莫大な収益を上げていた頃。

ここで、担任教諭の視点に移る。
教諭(といっても寛一のために逮捕され実刑判決を受けて現在、刑務所に収監されているヤツではない)は思った。
この際、判り易く表記するために、この教諭の前任で寛一のために
現在、刑務所に服役している方を藤井伸、それで現在ここに居る方の教諭の姓は石原、名は敬二としよう。
この石原はゴールデンウィークを翌日に控えるというのに、心が晴れなかった。
それというのも、彼にとって悩みの根拠であるのは、他ならない尾場寛一の事である。

彼はかつて大学を卒業はしたものの就職活動は惨憺たる結果だった。
それで事実上の自宅待機状態であったのだ。
この状況を懸念した親が大学時代に掛け合ったところ大学が
教育委員会と交渉したら、小学校教諭に一人欠員が出たという情報が得られた。
すると大学の方も石原が自校で教員免許を取得している事を挙げたため
教育委員会の方も渡りに船とばかりに快諾し、すぐ石原に面接に来るよう電話させた。
翌日に彼は教育委員会に赴き、面接した。
教育委員会の方は、もう最初から採用ありきのようでわずかな面接したあと
石原の教師採用を即日決定した。そして石原を前任者を欠いた小学校へ着任させる手続きに入り
現地の小学校校長に彼を推挙した。校長の方も欠員を今すぐにでも埋めたいのか
石原に対して基本的には任せるが、尾場寛一にはくれぐれも注意するよう念を押した。
そして彼は寛一の居る教室の担任となった。
これが寛一にとって小学三年生のときの出来事、すなわち今より二年半前の出来事である。
実際、自分が着任してからの尾場寛一は、噂に違わずかなりの問題児だ。
自分が着任してからのほぼ一年の間に、同学年との喧嘩は日常茶飯事、
上級生に対しても数々の悪態ぶりも著しく、下級生でも自分に対して舐めた言動や振る舞いをする者には
容赦なく憂き目に遭わすという。当然、喧嘩だけでは無い。
街では拾った物を売って金に換えるなど、到底小学生のやるような事とは思えないような事を
繰り返していた。それをやったかと思えば、小学四年生を迎えると一転して
風の無い日の瀬戸内の海の如く穏やかになった。その代わりあちこちでバイトして金稼ぎをやり出し
まるで何かに憑依されたかのようだ。そこへ来て追い討ちをかけるように
尾場寛一がどうもスマホを使ってデイトレードしているという噂があるらしい。
学校の校則では生徒がスマホとか携帯を持つ事自体は別に禁止はしてないし
むしろ、それを正しく使うことを推奨する教育をしている。
だが寛一、この男に関しては別だ。この男はスマホの使い方が他の児童とは違い
まるで何かに執着しているかのようにスマホを使ったネットトレードとネット収入方法をやり出し
その歳入金額は、小学生の稼ぎ方にあるまじき巨額だ。

敬二は、ときどき寛一を呼びこの件で話をした。だが寛一は明確な回答を与えるはずも無かった。
これを警戒したのか、これ以降寛一はこの件に関してまともに取り合わないばかりか
はぐらかしが多くなった。
無論、敬二としてはこれで断念する訳には行かず、時には母親の加奈子にも
寛一に生徒としての本分を守るよう説得して見るが、加奈子も言葉を濁すに止まった。

敬二としては周囲の安堵とは裏腹に、このほぼ二年半の間の平穏に対してどこか胸騒ぎを覚えて
ならないのである。まるで寛一のいる学年の卒業式までに何か大きな好ましくない出来事が
起こるまでの束の間の平和であるかのように。
(願わくばせめて、このゴールデンウィークの間だけでも平穏であって欲しい。)
敬二はそう願う。だけど、そんなの三十をあと数年に控えた一介の青年教諭の願いなど
果たして、現実の前に届いてくれるものだろうか?
結局、その答えは現実だけしかご存じないのだろう。


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