goo流・キャラネタブログ

ニュースなどを扱います。
あと場合によっては小説というかお話を書く事もあるでしょう。

青春の嵐 あとがき

2015年12月08日 19時04分46秒 | webog
ゆうじ「やあ、終わりましたな。」
欲しいよう。「ホントだよね。」
おバカ「はっはっは。どうだ、オレの幼少期譚は?」
ゆうじ「オレは、アンタのタダレっぷりが、理解しかねているよ。」
欲しいよう。「でも、この作中において、おバカの父ちゃん、まだ四歳のおバカの事、
       すごく嫌いまくってたよね?当時から今日のような性格だったの?」
おバカ「んな訳あるかよ。」
ゆうじ「いくら何でも、それは無かろう。まあ、アレのプロローグから読んでいた人なら
    もうお気づきになっているになっとると思うが、例えば最近どっかの女と
    エッチしちまったのは事実だとしても、ちゃんと安全日を確認した上で
    やったのに、しかもその子供はその女が腹を痛めて作ったモノじゃなく、
    『機動戦士ガンダムSEED』に出てくるコーディネイターや『ガンダムOO(ダブルオー)』に
    出てくるソーマ・ピーリスのように、遺伝子操作と人工子宮装置を使って
    作り上げたという、いわば新しい工業製品の試作品というか
    軍事兵器の試作機を開発するやり方に近い方法でこの世に生み出した子供だ。
    その祖父ほどの歳が離れた父親といえど、おバカのことを生理的に受け付けなかったのも
    もしかして本能的におバカに対して、人間としての何かを感じられず
    用いようによっては、まるで人間社会文明を全否定する破壊マシーンか
    何かのようにしか感じられなかったのだろう。無論、これはあくまでオレの想像かつ憶測でしか無いけどな?
    本当のところは、在日による犯罪で死ぬ事になるまでおバカの事を嫌い続けた
    その父親自身にしか判らんよ。こればっかりは。」
欲しいよう。「何か、酷い話だよね。」
ゆうじ「でも、お前が仮におバカの父親の立場なら、受け入れられるか?」
欲しいよう。「そ、それは・・・・」
ゆうじ「無論、これはあくまでもおバカの父親の立場と視点での話しだ。
    当の本人からすれば、『ふざけるなコノヤロー』と言いたいだろう。」
おバカ「正直の所、そういう気持ちはあるが、あんときにどの面下げて頼んだとしても
    同居が叶うって事は限らないし仮に同居がなったとしても、
    待っているのは、ペットでもここまで酷くはないぞと言いたくなるほどの
    扱いしかないのは目に見えているぜ?あんな扱いされるって事になるのを判ってて
    同居に拘るくらいなら、オレに証券取引口座を認めてくれたオフクロの
    先見の明ぶりが如何に有難いか当時としても今としても非常に嬉しいぜ。」
欲しいよう。「何で、それが嬉しいの?」
ゆうじ「お前な?他の母子家庭のようになまじ実母がヘンなヤツと再婚したり
    今まで認知して来なかった裕福な家の相手方のヤツが渋々とはいえ
    急にこっちを認知して同居を認めてやるなんて、そっちの方がかえって地獄を見る場合が多いぞ?
    実際、ここ十年間だけでも再婚相手による子殺しの件を検索して見るがいい。
    少なくとも一件や二件なんて希少なケースでは無いぞ?
    自分の事を戸籍上は被保護者というだけで、嫌々こっちに接している相手に
    本気で面倒を見て貰ってるかどうか判らんばかりか酷ければ虐待受けるリスクばかり高い
    生活するくらいならおバカのように、証券取引口座を開設し金融取引を上手くやって
    世間の世話にならない暮らしが出来るようになった方がいいと思わんか?」
おバカ「まあ、そういう事だな。」
欲しいよう。「そうなの?」
おバカ「仕方ない。現実の世の中には真の正義など存在しないって事だ。」
ゆうじ「まあ、いずれにせよ、このブログでの
    次回の『青春の嵐』シリーズにおいては「花右京メイド隊 La Verite」みたいに
    サブネームつけて内容を改定でもして出直してみるとでもするかね?」
欲しいよう。「内容はどうすんの?シリアス?コメディ路線?
       健全的な展開?それともカオス展開?」
おバカ「そんなの、ここのブログ主が書くことだからオレたちはオレたちの事をやるだけさ。」


    

青春の嵐 エピローグ

2015年12月05日 20時55分09秒 | 青春の嵐
埼玉に降り着いた寛一は、早速その大富豪の豪邸に近い住宅団地にある住宅に居を構えるや
近くの銀行に行き口座開設の手続きをはじめ、ありとあらゆる手続きに奔走した。
後は、どこかの学校の入学手続きでも考えてみようかと思った。
そのときである。どうもいじめられていた自分と同世代のヤツが居るようだ。
一部始終を寛一は見ていたが、どうも寛一が目撃していた所によると
この男は、あそこの大富豪の息子がお気に入りとしている
学校に通いながら大富豪の息子の専属の雑用係をしている専属の下男という。

そいつの事をいじめていたのは、どうもそこの大富豪の従者でコイツの朋輩や先輩らのようだ。
これは寛一の想像かつ憶測での事だが、恐らくコイツが大富豪に出すぎた真似をしたのか?
それとも自分らを差し置いて大富豪の受けが良すぎたからこうなったのか?
いずれにせよ、コイツはこの屋敷の中では他の者と関係は殊の外、良くないのはもう理解した。
このときである。寛一の脳裏に正に奸心必迷のとおり
邪な心が走り新しい土地で心機一転するはずだった寛一の思いを迷わせたのである。
(そうだ。コレはいい機会じゃねーか。上手くコイツに貸しを作ってあの家の
下男の一員に加わって貰おう。まあ、表面としてはコイツの顔を立ててやるとしてだ。)
更に、幸いな事にコイツはボコられたばかりで今すぐには立ち上がれまい。
寛一は、通りすがりの通行人を装って近づき介抱してやる。
そこで、傷の手当をしてやり食事をおごってやる。
どうやらこの男は冷遇されているのか、沢山食べているようだ。
そこで寛一は、しばらく親しげに話しお互いの名前を教える。
どうやら、この男の名前は本田祐二という名前らしい。
コイツは元は児童養護施設で捨てられていたらしく、そこの施設長が
ホンダのバイクが好きなため本田という苗字をつけたという。
そして大富豪の息子が小さいときの誕生日に自分の友達のような下男が欲しいという理由で
その施設から大金の寄付と引き換えにこの屋敷に引っ張ってこられ、
そこから大富豪とその子息に気に入られるために、朋輩や先輩らが
どんなに高い賃金を出しても引き受けたがらない事なら何でもやって来たという。

彼らにボコられたのはどうやら、それを主に取り入る追従と見做されたらしい。
そこで寛一は、祐二に自分の事を推挙して貰えないかを迫った。
最初はあまりいい顔をしなかったけど、助けて貰った恩を徒で返すのは如何なモノかという
考えをこの男はしていたのか、遂に考え込む。
(やはり、コイツはオレの生まれ故郷の連中たちとは違うらしい。
このままタダ食いして帰ろうなんて出来ない性格だよなぁ?)
そこで寛一は、夜になってから返事のために落ち合うという約束をしておいた。

(あの、手の男は良くも悪くも上にバカがつくほど真面目で忘恩の出来ぬ性格のようだ。)
そう寛一は踏んだ。そして夜を迎え、寛一は屋敷の鉄の枠塀の所で落ち合った。
その結果、下男が去年から相次いで主と喧嘩になったり息子を息子と思わぬ
事をやってそれが原因で解雇になったりで
人手不足になってるようだ。それで、祐二はその主に、今度の日曜日に
寛一の事を推挙したいと申し出た所、会っても良いという返事を得られたのである。
これを聞いた寛一は、内心を隠しつつ次の日曜日のための準備をしておく。
そして次の日の日曜日、寛一は大富豪、門摩昭三とその息子の昭介父子の前に紹介された。
数々の非凡なスキルの多さの上に他の朋輩や先輩らが、まったく問題にならぬ能力が
気に入られ、特に息子の昭介が今すぐにでも欲しいと気に入った。
その結果、寛一は祐二の側で共に学校に行きながら働くという条件で採用された。
寛一の旅立ちは、今始まったばかりなのである。




        END

青春の嵐 最終話「卒業、そして追放へ」

2015年12月05日 20時42分31秒 | 青春の嵐
大晦日前にイタリアから帰った寛一は、元旦を迎え三学期を迎えると
更に人が変わったようになった。
敬二は三学期が始まって早々、寛一に対して問う。
「尾場。お前、人より多く休めて良かったよなぁ?」
その言い方は殊更、皮肉っぽい。
「停学にしたのはアンタだろ?オレはオレの方で骨休みさせて貰っただけだ。」
寛一の方も負けじと上から目線で、やり返す。
「俺はアンタの家に何度も足を運んだのに、まったく姿が無かったよな?」
「そいつはご苦労さんだったな。でも、オレもオレでやる事は多かったんでね?」
「何だと?」
「オレと言い合いしたい気持ちも、判らなくは無いがそろそろアンタはそろそろ
自分の仕事をした方が良くないんじゃねーのか?職員会議なんだろ?
まあ、議題はもうオレも大体の想像はつくけどな?」
「そうやって、舐めた態度で居られるのも今だけだ。」
「今も何も、もうすぐ卒業だぜ?何たって三学期なんてあっという間だからな。」
確かに寛一の言うとおりである。
寛一が、このように舐めたような姿勢でいるのも実は根拠がある。
それというのもクリスマスの前に、卒業をもって新潟市からの追放が不可避となった情勢を見越して
寛一は、新年度以降に自分が何処に身を置くか考えていたのである。
そこで実は、JRで関東地方に行きあれこれ聞き込みをしていたのであった。
その際に、寛一にとってひとつのキーワードとなる大富豪を既に目をつけていた。
これが寛一にとって後に重要な意味を持ち、物事の上で要を成す事になるのである。
それを意味するために仮の家としてその大富豪の邸宅に一番近い一般住宅団地の隅っこにある
言い方が悪いが少しくたびれた感じのする建築されたのが昭和の後期という
古い二階建ての住宅を中古物件として買ったのである。
それから寛一は、三学期に入ってからも相変わらずスマホを使ったデイトレードで
お金を大量生産していたのである。しかもその資金は、イタリアでメイド軍とともに
フェミニスト勢力の一部を滅ぼした際に便乗して得た大金も
加わって十億単位にまで及んでいたのである。

おまけに市長に対し、没収というタダでの尾場家の土地の入手を認めず
不動産相場価格での買取を迫り、それなら来年度も居るとゴネ続けた結果
向こうも遂に折れて、市の予算の剰余金の中から土地の買取費用を算出し
議会も市長の苦悩の判断を支持した。
寛一は、二月に入りその買取代金が自分の口座に入金されたのを確認すると
そこから確定申告で税を支払った後、ほとんどは証券口座に振り込む。

そして遂に、やってきた卒業式の日。
多くの卒業生たちが親しかった在校生たちとの別れを惜しむかのように泣いたり
中学に上がったら何をやろうかという夢を見たりする者があったが
尾場寛一、コイツにだけは誰も話しかける者は居なかった。むしろ嫌悪するほどだ。
「今まで散々、やりたい放題の限りを尽くしやがって気楽なものだ。」
「あんなヤツと卒業式までを一緒にしたなんて思い出が穢れるわ。」
そんな彼らの陰口に対し、当の寛一は意に介さない。
(ふん。お前らだって、自分らの狭量ぶりを棚に上げてこっちを嫌い続けて来ただろうが。)
そんなのお互い様だと言いたげに卒業証書を片手に雪の残る校庭を歩き
そして校門を出る。
「さて。もう喧嘩ばっかしていたこの街とも、もうお別れか。」
思い起こせば、物心ついたときから街の大人とも同世代の子らとも
毎日のように喧嘩ばかりしていたような記憶しかなかった気がするなあ。
結局、この街でオレにとっての良い思い出って何かあったのだろうか?
寛一には、そう思えてならなかった。
「まあ、いいや。いつまでも辛い事しか無かった過去ばかり見ていても
オフクロはあの世でガッカリするだろうしオヤジも『このバカたれ』と怒鳴るだろう。」
結局、前を向いて行くしかないんだと自分に言い聞かせるように
寛一は、学校から離れていく。

青春の嵐 第23話「奸心必迷」

2015年12月05日 18時55分31秒 | 青春の嵐
目覚めた寛一の目の前に、当の本人にとって異世界の住人ともいうべき人々が居た。

それというのも欧州貴族の末裔のような老人とその娘と思われる
年齢を感じさせない美貌の熟女がテーブルに座っている。
そして何よりも、寛一にとって驚きに値するのは壁際に揃っている
背の高さも髪形もそれぞれだが、ただ判っているのは紺色で裾の長いスカートを穿き
白いエプロンをしているという絵に描いたようなメイド服の若い女性たちだ。
皆年齢が十代半ばぐらいから二十代前半にかけての顔立ちの美しい娘たちが、身じろきせず立っている。
寛一は、起き上がらされるとテーブルに座らされ、目の前に食事が運ばれる。

「キミは、あのフェミニストに協力して、この屋敷に侵入していたようだが?」
老人の質問に対して寛一は臆する事も答える。
「オレは別に、アイツらのためにこういう事をやったんじゃない。
ただ、アイツらの言ってる事とアイツらと敵対しているメイド軍と、どっちに
正義があるんか知りたくてね?」
「それであんな事を?」
「悪いが、オレはフェミニストもフェミニストの掲げている
男女同権も性差撤廃もジェンダーフリー論と言った文句とか思想も大嫌いでね。
アイツらの言うとおりにして、メイド軍が滅んだりしたら
オレは平家滅亡後に、兄の頼朝に消された義経みたいな結果になるのはゴメンでね。」
寛一は食事に舌鼓を打ちながら言う。
「ほほう。つまりキミは相手方に心から味方している訳じゃないと?」
「そうなる事になる。ところで肝心なのは、何でアンタらが
フェミニストどもと、バルバロッサ作戦直前の独ソの如き関係になっちまったんだ?
それを知りたくてね?それ如何によっちゃ、この対立を終わらせようという余地は
無きにしも非ずって事もあるとは思うんだが。」
「お前は、何を言っておるのだ?我らがあんな連中と相容れる筈も無いでしょう。」
メイドのひとりが発言する。
それを熟女が制する。
「それでワシとしては、キミに頼みたいのだよ。」
「頼み?」
「そうじゃ。我らのために、あの宿敵フェミニストと戦って貰いたい。
その為には、もう今のメイドたちの主人の座には拘らるつもりは無い。」
(そう来ましたか。)
「どうじゃ?」
それに対して、寛一はこう答える。
「奸心必迷(かんしんひつめい)の思いです。」
思わぬ返事をされ老人はどう反応していいか困る。
「どういう意味なのだ?その言葉は?」
「はい。奸は、よこしまの奸。心はこころ。必は必ずと書き迷は、まようと書く。」
思わぬ禅問答をされ、答えに困ってはいた。
「なれどオレは貴方の考えに関しては拒否はしません。されどオレでは遺憾ながら
メイドたちの主人には向いては無いでしょう。」
「それは何故じゃ?」
老人の問いに対し寛一はこう返答する。
「貴方様のお暮らししているこの欧州では虚々実々の駆け引きの応酬は世の習いとして
殊更、それを責める者はあまり居ないかも知れません。ですが、オレの母国日本では
それを真面目に暮らす庶民の金を騙し取る知能犯のような所業として位置づけてしまう
傾向が強く、小さい時から僅かな金と糧をめぐって諍いに終始し、多くの遺恨を買っている
オレではメイドの主人になったとしても誰も支持しないばかりか、オレに対して
第二次世界大戦末期において日独を滅ぼした連合国ばりのごとく
大軍を派遣するは必定でしょう。日本に限っては、メイドの上に立つ者とは
徳がある者で無ければイカンのです。」
「なるほど。指導者とは必ずしもその土地とお国柄によっては違うというのだな?」
「はい。だが、日本とて富裕層は皆無という訳ではありませんし、
とりつく島さえあれば何とかなる余地はあると思います。」
「だが、難しいぞ。」
「何。貴方様の知恵とお力があればもう如何なる事など成功は確約されたようなものです。
その手始めとして、ローマのはずれにあるフェミニストの施設を狼煙としましょう。」
「ほほう。キミはヤツらを裏切るのかね?」
「メイドたちと何処までも際限なく敵対し続け、
この地球上の男性をがん細胞と見做してほぼ死滅させるという彼らの考えは、
オレも男性のひとりとして支持は出来ません。」
もはやすっかり、寛一の心はフェミニストからは離れていた。
この場の話し合いの日の夜、
メイド軍は寛一の先導によって潜入し完全に脱出させられないようすべての
乗り物を押さえた上で、真夜中の就寝時を襲った。
しかも折しもその日は、フェミニストたち主だった幹部の泊り込みでの会合の日も
重なっていたためどうする事も出来ず、現場に居たフェミニストとその同盟関係者たちは
誰も逃げ出す事など出来ず、全員討たれた。
この事件を後に「ローマ深夜の変」と称された。

そして一夜が開け、寛一はもう日本に戻らねばならぬ日が迫っていた。
「日本に帰るというのかい?」
「ああ。所詮、ここ欧州は他人の土地で人ん家だ。人ん家に住まわせて貰っていながら
ブー垂れてばっかりの上に碌な事をしない韓国人や朝鮮人やイスラム人じゃあるまいし
外国人のオレがいつまでも居座っていい場所じゃない。住所がある者は住所のある所へ帰るのが筋だろ?」
こうして荷物をまとめる。
「まあ、オレとしてはアンタらの考えは支持しているし、フェミニストらの考えている世界なんて
実現して欲しくないひとりだよ。もし、気が変わってオレがどこぞの大富豪の所に
下男にでもなったという事が判ったら、その時は、宜しく頼む。」
そう言うと寛一は、タクシーにのってローマの国際空港へと去って行った。

それから屋敷に戻り、父娘は会話を重ねる。
「これでよろしかったのですか?お父様。」
「何。心配には及ばないよ。あの男の子は、このまま市井の者として一生を終われる者では無い。
それに、この世で相容れない敵を我らと同くしたのだ。
そして何よりもだ。あの知謀ぶりは、なかなか大したと思わないか?」
「知謀・・・ですか?」
娘は、不思議そうに問う。
「そうだ。我らにとって、散々こちらを追い詰めてくれたローマのはずれにある
フェミニストの施設をしかも大勢の幹部が泊り込みで来ていた日を知ってた上で深夜に
我がメイド兵たちに奇襲させて全員を一人も逃さず倒させ、ヤツらの持っていた
軍資金や戦利品を多数、押収させたのだからな。」
この老人にとって、あの少年がこのまま市井に埋もれたり敵方に納まったりするのはあり得ない。
そう思えて、仕方が無い。
「ですが・・・」
「何だ、お前としてはまだ信じられないというのか?」
「そういう訳では、ありませんが。」
「まあ、無理も無い。あの少年は日本に帰っても、もうすぐ卒業と同時に
市長によって生まれ故郷からの追放を言い渡され根無し草になろうかという身じゃからのう。」
「そこまでお知りになって、いながら何故あそこまでご期待をするのですか?」
「あの少年の性格の中には、このまま相手によっても世の中によっても望まぬ事を強いられ
屈服させられる事への憎悪と反感が、そうさせるのか、
自分から家族を奪い、世間からの嘲笑だけしかもたらさなかった
彼の中にある貧しさに対する嫌悪がそうさせるのか
その反動で、豊かさ対する憧れと渇望ぶりは他の同世代には無いほどの非凡さがある。
いずれにせよ、あの少年はこのまま貧しさに生き、貧しさに死ぬような事ではないの
だけは確かだよ。まあ、手は打ってはいるがね。」
そう心の中に、呟くように老人は言う。

青春の嵐 第22話「新たなる存在 屋敷の戦乙女(メイド)たち」

2015年12月05日 14時51分18秒 | 青春の嵐
日本国内の年末年始の喧騒を忘れたいかのように寛一は、クリスマスイブの翌日になるや
まるで思い立ったかのように日本を飛び出し欧州に来た。
イタリア南部は何処も観光客が多い。何処に行っても同胞にでも出会うかのように邦人と出くわす。
そこまでなら、ただの観光旅行と何ら違いは何も無い。

だが、寛一にとって思わぬ事があった。
ある日の夜。ナポリのホテルに泊まっていたときの事である。
寛一の泊まってる部屋にメイド服の若い女たち何人かがやって来た。
「此処に、怪しい人が来ませんでしたか?」
そう彼女らが質問するのに対し
「否、申し訳ないが見てない。」
そう返答する。
「そうか。もし、見かけていたら教えて欲しい。」
そう言って彼女らは足早に去って行った。
そして寛一は、部屋の玄関から戻るとクローゼットの方へ行きそのドアを開ける。
「ほれ。行ったぞ?」
「ああ。済まない。」
寛一は、男に言う。
「一体、何をやらかしたんだ?あの女の人らの制服からして
ここのホテルの従業員でも無ければ、
近くのバーやパーラー、カフェの者の類じゃ無さそうだな?
さては金持ちの家にでも泥棒に入って追われたんだろ?」
「ち、違うよ。」
確かにこの男に言わせれば、窃盗やらかしたのであれば自分の事を追いかけてくるのは
必ずしも警察署の捜査員であって、メイドである必要は無い。
「俺は世界フェミニズム連盟のメンバーの一人なだけだ。」
「フェミニズム?何だそりゃ?オレとしては初めて聞く言葉だが。」
寛一は思わず呆れるように言う。
すると男は熱弁をふるう様に語る。
「そもそも、近代に入ってからも人類の文明社会の歴史とは悲しいかな
弱肉強食の名の下に金と力と権力を笠に来て、強い者が
弱い者を傷つける事が当然とされ美化されがちな歴史。
二十世紀に起こった二度の世界大戦とその後の冷戦の中で生まれた副産物である
途上国の紛争や共産圏の独裁政権による人権弾圧政策。
西側は西側で、男性社会の名残りと資本主義経済故の女性に対する男性の意識の低さ。
我らはこれを是正するために、不断の努力を続け遂に人間社会に対して
自分たちの過去にしてきた数々の暴力と大量虐殺の歴史を反省させるに至ったのだ。
だが、彼女らはその我らの思いに違いる事を為したのだ。」
「それが今のメイドさんたち?つうか彼女らの雇い主の金持ちどもか?」
「ああ。アイツらにとっちゃ、我らの掲げるこの世からの性差撤廃思想をはじめとする
考えが受け入れられないようだった。」
つまり、このフェミニストの男性がいう革命思想とは地球上の富裕層らに対し
生活水準をみだりに上げ、広大な土地を持たず巨大な屋敷に住まず
執事やメイドなどの使用人を抱えず一般庶民と同じ暮らしをする事によって
浮世離れした考えに陥ったりせず、消費者でもある庶民と経済界との間の距離感が
開き過ぎるのを防ぐという考えであったし、その他の地球上のありとあらゆる社会に対しても
民族上、宗教上、古くからの伝統や慣習・しきたりを理由とした、これまでのような
女性を道具や動物のように扱いをするのを止め、地球をひとつの女系家族のようにして
一部の男性のみがそれを引き立てる少数派人口として行こうという考え方であった。

聞けば聞くほど寛一にとって内心、だんだん不快に思えてきた。
何故なら、確かに人類の歴史は争いの歴史であり、
そのついでとして生まれた残酷な行為の横行している歴史であるのは自身も
学校の授業で知っているしそれ以外でもテレビや雑誌、専門誌でも知っている。
一部の強い立場の者の自己満足と土豪劣紳ぶりのために、多くの者が割を食う歴史を
未来永劫、続けさせたくは無いという熱意は父母を失い、自身も現在において
不遇に置かれている寛一としても賛同に値すべき考え方ではある。
だが、寛一が問題としているのはその後のくだりである。
それというのも、地球をひとつの女ばかりの住む家にして、それに個人的に気に入られた
一部の男性がそれを引き立てる少数派人口として行くという考えだからだ。
何故なら、昔から美女は美男にしか心を惹かれぬモノである。
そうであれば、この男の所属しているフェミニズム組織にとっちゃ
寛一も含めて地球上の男性の圧倒的多数は、第二次世界大戦当時の欧州において
ナチスドイツに弾圧されたユダヤ人のような末路を辿らねばならぬ存在であり
残存する事を許された一部の男性は、新たな地球上の為政者の女系政権の奉仕者として未来永劫
召し使い同然の民族として存続となるという。
成り代わった地球上の女系人口となった彼女らも決して、争いも何も無い平和であるかといえば
そうでは無い。下手をすれば、良くてもインドばりのカースト制度社会。
悪くすると中国や北朝鮮ばりの人権弾圧のように、どんなにスポーツや芸能や文化で
才能を発揮したとしても国家に対して都合の悪い思想をしているというだけの理由で片付けられ
同じ能力でも政府の役人や官僚に気に入られた者だけが保障された幸せを送れるという
恐怖社会である。要するにお局さまとその取り巻きにとって気に食わない女は
例えどんなに器量よしでも必ず不遇に置かれる恐怖社会だ。
確かに、普段から粗野で血と暴力とセックスを礼賛しがちな男系社会も困ったものだが
かといって女系社会も平和な社会であるかといえば、そうとは言えないのである。

そこで寛一は、思いついた。
少なくともこのフェミニストが天下を取るような事などあってはならない。
味方してやるふりして、敵方をコイツのアジトに引き入れ、コイツとコイツの上司も雇い主も
敵方のメイドとその雇い主の人質にさせて置こう。後の事は上手く行ってからでいい。
「ああ判った。オレの出来る範囲であれば手伝ってあげるよ。」
「そうなのかい?」
「お兄さんは、日本人なんだろ?」
「ああ、そうだよ。」
「なら、ここは観光旅行している兄弟のように振舞っていた方がいいよ。」
「そうだな。」
このお兄さんの名前は、新川幸雄という人で東京にある日本で上位五指に数えられる大学の二年生という。

翌朝、ホテルを出た二人はその足で、ローマの近郊にある海を臨むフェミニスト団体の屋敷に入り
近況報告も兼ねて寛一の事を紹介する。
「ほほう。キミが尾場寛一くんなんだね?数え年十三歳というのにそのウチの者を
メイド軍から見事なまでに匿ってのけるその機転といい非常に頼もしい。」
六十を少し回ったイタリア人の男性は寛一の事を大いに褒める。
そして昼の食事会もそこそこに、今後警備が厳しくなったローマの一等地の屋敷にある
メイド軍とそこの屋敷に対する作戦をどうするかを考えていた。
そのとき寛一は、こう切り出す。
「既に相手方に面が割れている新川さんひとりでは厳しいです。ここはオレが
屋敷の警報を無効化し、メイドたちを引き付けましょう。新川さんは
その隙に屋敷に入り、そこの書斎から秘密文書を入手して下さい。」
すると新川も返答する。
「キミは大丈夫なのかい?」
「心配は要らないさ。故郷の新潟じゃ、ならず者すら追い縋る事は困難とされた脚力の
持ち主のこのオレを信じてくれよ。」
それを聞いて、その場の面々は大いに驚く。
「ははは。それは大いに頼もしいな。」
食事の後の昼下がりになり、二人はローマへ向かい
現地の屋敷を下見する。
「なるほど。あれらがああなってんのか?」
「キミにはあの屋敷の構造は判るのかい?」
「大体、判るよ。ここの建物自体は相当な年代モノだけど、それ以外は
ここの家主の性格を示すからね。」
寛一は、眼で対象物を見ただけで大体の事が脳内で、もう描けている。
彼に言わせれば、警報装置の数とその配置場所と、その性能。
取扱説明書に現れない、誤作動を起こしにくいとか
長年の雨水や強風によって飛んできた物が当ったのが原因で、故障し肝心なときに
作動しなくなったりしないかとか耐用年数によっては取り付け工事から
製品の市場の平均より短命であったりするかどうかも勘案しているし。
何よりも、家主の性格次第では外側ばかり防犯が強くて内側は案外脆いという事もあるとか
そういう事もあるようだ。そして深夜になり、寛一は幸雄とともに屋敷の塀に近づく。
ここで寛一は、スマホを取り出し警報装置を作動させる。
すると屋敷のメイドらが出てくる。そこで寛一らは身を隠す。
そうするとメイドらはやがて屋敷に戻って行った。
「何で、それをやる必要があるんだ?」
「まあ、見てなって。コレを何度もやる事に意味があるんだよ。」
そういうと寛一は、スマホを使って警報機を作動させ、
その度に屋敷のメイドたちを出動させるという事を頻繁にやった。
やがて、警報システムの誤作動があまりにも酷すぎると見做したのか
すべての防犯システムの電源は遮断された。
塀を見張っていた防犯カメラの赤い発光ダイオードも電源を切られたのか
防犯カメラのレンズの傍にあったセンサーの光も消えた。
周りを警戒する。どうやらこの時間帯は午前零時まで、既に一時間を切っているだけあって
誰も人気が無い。慣れた手つきで寛一は屋敷の鉄門のカギを開けた。
ここで泡を食って慌てる事は無い。この屋敷の庭で忍び足を意識してやろうとする必要はない。
そんな事をすれば音を立てまいとする意識がかえって音を立ててしまう事になる。
どちらかといえば、チンタラした歩き方やズンタラした歩き方の方が無駄な足音を立てやすいのである。
出来るだけ足元を確認して、小石にや地面に突起した物に注意すればいいだけの事である。
けれど、寛一にとってそれは心配無用の様だ。
普段、足元のゴミひとつ残さぬ庭の手入れの仕事を滞りも無くしているメイドの仕事ぶりが
寛一を利したようだ。そして屋敷の正門に立つ。
ここで二人は、相談する。
「ここは二手に別れよう。どちらかが裏口に入って書斎にある書類を入手するんだ。」
「そうだな。ここはオレが・・・」
「ん?待てよ。新川さんが過去にココへ来た事があるんだよね?」
「そりゃ、いくつかあるけど。」
「表口から入るのと裏口から入るのと、どちらがこの屋敷の見取り図からして書斎への近道になる?」
すると幸雄は思い出したように言う。
「裏口!確か、以前に宅配業者を装ったときにトイレを借りるふりして場所を確認した事がある」
「なら、裏口から頼む。オレは出来るだけ正門から入って
書斎を捜す振りして、この屋敷の家人を引き付けておくから。」
「判った。」
そういうと幸雄は裏口のある屋敷の正門の反対側へと早歩きで去って行く。
寛一は腕時計を見る。時間は午前零時まであと四十分を控えた。
あと十分ほど待ってから作戦を決行してやるとしよう。寛一は、屋敷の周りを歩き回り
館の上下階を大まかに眺める。
特に灯りは無いようだ。それを確認すると、手許の腕時計を見る。
このとき、窓から寛一の事を眺めていた若い少女の姿を寛一は何も知らなかった。
そろそろ彼は裏口から入ったと思われるようだ。こちらからも入ろう。
そう考えると、寛一も正門のドアのカギを慣れた手つきで開けて見せ、
ドアノブをゆっくりと捻り、中に入る。

そして屋敷内に侵入した寛一は、屋敷内を見渡す。暗いけれど
慌てたりはしない。元々、暗所や夜間、人気の無いところで過ごす事で
目を慣れさせたのだから、それに外の街の灯りも寛一にとっては満月の光と同じ事だ。
屋敷の外見を想像したとおり、この内部も大方の予想どおりの造りとなっている。
懐中電灯や蝋燭を持って館内を巡回しているメイドを巧みに物陰を利して回避しやり過ごす。
メイドらが通り過ぎて行き、角に曲がるのを見届けると寛一は足早に書斎の方を捜すように行く。
散々捜しまくったが、どうやらこの一階には無いと見た。そこで二階へ行く。
二階も遺憾ながら家主の書斎というべき部屋は無い。どうやらこの屋敷の部屋割りとは
一階は、食事をするための食堂と入浴する風呂場と厨房、くつろぐ居間と暖炉と客間、
二階はメイドら使用人の部屋となっており、三階はこの家主とその家族の部屋割りとなっているだろう。
そう考えると、書斎はその三階の家主の寝室に隣接している部屋か
家主の寝室を兼ねている部屋にあると考えるのが妥当と見てもあり得なくはない。
むしろそっちの方が常識的だ。こういう巨大な建物で考えた場合、
会社のケースで考えると社長室に相当する位置で考えれば、
大体、大きな建物を構える会社の多くは社長室は一番上の階に置く事が多いはずだ。
その常識がこの現代のイタリアでも連綿と通用するのであれば、
ここの家主は上の階に書斎を構え、そこにフェミニストにとって重要な秘密文書を所有しているはずだ。
そう考えた寛一は、こんな危険の多い二階を後にして三階へと行く。
三階に行き少し歩くと案の定、イタリア語で書斎と記されたドアに辿り着く。
そこで幸雄と落ち合う。
(どうだ、首尾の方は?)
(オレの方は問題は無い。カギを開けてやる。ここはオレが見張ってやるから
今の時計で午前零時二十分を少し回っている。午前二時までに目的の書類を回収しろ。)
(判った。)
そういって、寛一はドアのカギを開けドアノブをゆっくり回す。
このドアの部屋の方へ開くようだ。
幸雄は、慌てたりせず入って行き早速、書斎を探し出す。
そこから寛一は、ゆっくりと周囲を確認する。あれから少しずつ時間は経過するが
巡回のメイドは来ないようだ。どうやら、この三階はここの家主たちの聖域なのか
メイドたちも流石に、今宵の時間は何も無いと見て寝床に着き就寝したのだろうか。
後は、午前二時を迎えるまでに幸雄が、このドアの所へ戻ってくれればいい。
時間を経過するのを待つ。時間は午前一時を過ぎ、そして一時半となった。
ここの書斎はあまり広くないし本もあまり充実してない所からして
そろそろ戻っててもおかしくは無いのだが。一体何を手間取っているのだろうか?
そう考えていた所、寛一の許へ書斎から来る人影がある。
(ようやく、戻ってきたか?)
だが、それは幸雄では無かった。
「残念だったようね?方や?」
現れたのは蝋燭を手に持ったメイド長と思われる二十代前半らしき女性だ。
「!?」
すると、後ろから羽交い絞めにされ何かを染み込ませたのを嗅がされる。
必死にもがいた寛一ではあったが、やがて深夜の時間帯の眠気もあったのも手伝ってか
意識が混濁になる。

次に目覚めた所は、一人の老人とそれの娘と思われる熟女と
それを囲うメイドたちの場であった。

青春の嵐 第21話「ラストサンタクロース2」

2015年12月04日 20時32分38秒 | 青春の嵐
サンタが隠れ潜んでいる廃屋に、トナカイと寛一が現れた。
「アンタが、このトナカイのパートナーのサンタかい?」
寛一は開口一番に言う。
「老師!こんなところで何をやってるんですよ!?」
トナカイも非難するように言う。
これに対しサンタは
「儂はもう、何もしたくないんじゃ」
と半ば不貞腐れるように言う。
「アンタの組織からもっと働けと言われたからかい?」
寛一はそこで踏み込むように言う。
「何でお前がそれを知っているッ!?」
「おっと、ここで声を荒げるんじゃないぜ。オレもアンタもこの廃屋とはいえ
ここの持ち主は元は赤の他人の名義の家だ。そこに居るって誰かが知ったら
お互い犯罪者として処断だぞ?ここじゃ何だから人気の無い所に行こうや。
幸い、あそこの森林はオヤジが在日と中国人のヤツに殺されたとはいえ、
土地はまだ国か県のモノになった訳じゃねえからな。」
寛一が知る限りによると、尾場家の土地の所有権は新年度にならない限り
国か県の所有にはならないという。つまり小学校を卒業する今年度いっぱいまでは
寛一はその土地に何度でも出入りが許されているし、他者は寛一に一言の相談も無しに
その土地に指ひとつ加える事など許されないというのである。
法とは時として用いようによっては兵法の如き有効なのである。
そこで、廃屋から離れ尾場家の所有であった広大な土地の森林内へと移った。

「話は聞いたよ。そろそろ歳も歳だし引退を申し出たんだけどお偉いさん方から
それを怠け者の態度として見做され、今年は前年の三倍の仕事量を押し付けられ
しかも給与は無しっていう処分を下されたんだってな?」
「ふん。悪いかい?今まで散々、頑張って来たのに、あんなやり方ってあるんかい。
馬鹿にするのも大概にして欲しいというものじゃ。」
寛一とサンタは言い合う。
「でも、このまま何もしないで過ごしたらタダでは済まないよ?
懲戒免職で済めば良い方で最悪な場合、職務放棄で粛清だよ!?」
トナカイはそこで口を挟む。
「何?子供たちにプレゼントを配るノルマを達成しないばかりか、
仕事をサボって、何処かで逃げ隠れした場合は理由によっては処刑する?
そんな規定が、その業界にゃあるんか?」
寛一は半ばドン引き気味に訊く。
「うん。あるよ。ボクの前の相方もその前の相方も、無能でノルマを達成出来なかったり
怠け者で仕事嫌いの性格で、毎年クリスマスになると何処かに雲隠れしてばかりいたために
前者は懲戒免職になり、後者は粛清されて死んだよ。この人ボクの代で三人目の相方なんだ。」
トナカイはそう答える。
「ふん。もう儂はもう老い先短いジジイじゃい。もう粛清なんぞ恐れてないわい。」
サンタはもう完全に意地になっている。
「・・・なあ、サンタさんよ。」
寛一は呼びかける。
「何じゃ。儂は何もせんと言ったじゃろうが。」
「オレはまだ何も言ってないぜ?」
「どうせ、この儂にサンタとしての責務を死ぬまで果たせっていうんじゃろ!?
もう儂は散々、尽くして来たのにアイツらはこの儂に対し、
働きに見合った報いも無ければ何の労いも無い!それどころか年寄りのこの儂に向かって
言うに事欠いて『これだから爺は鈍間でドン臭くて使えない』だの
『お前、給料の割には能力に見合ってない』とか酷い言い様じゃ!
何をやっても報われないんだったら、もうこれっきりにさせてくれッ!!」
もう完全に投げやりだ。
「オレは別にアンタにこの仕事を死ぬまでやれとは一言も言わねえよ。
それにオレも出来る限りの手伝いをするから、今回の仕事を最後に
アンタはアンタの道を行くっていうのはどうだ?」
「何?この仕事を最後に、この儂に自分の道を行けと?」
「ああ。そうだ。悪くは無かろう?」
「だ、だがしかし。」
それはそう思うだろう。サンタの方とて、組織のお偉方に反感を持って今年の
クリスマスの業務をボイコットしようとしたとはいえ、本来は働き者の性格だったのだ。
「このまま仕事を終えて戻っても又、お偉い方のために犠牲になるだけだぜ?
そんな事になるくらいなら、やるべき事をやって達成感を得てから
造反し自由の身になった方が良くないか?」
寛一は、サンタにそう説得して見る。
「うん。ボクもそう思う。実はボクもあのお偉方には、いい加減にウンザリして来た所なんだ。
それに最近、外で出来た彼女と添い遂げたいし。」
「お、お前・・・」
サンタも驚いたであろう。何時の間にか、自分のソリを引くだけだった相方に
そんな事情が出来ていたとは。
「なあ。アンタの責務のためじゃないし、アンタの組織のためにやるんじゃない。
アンタら二人の幸せを望むためにやるんだ。」
「・・・そうじゃな。」
「・・・そうだね。」
この両者にもう迷いは無くなった。心なしか両者の思いに応え
未来の幸せを祝福するかのように真っ暗な夜空から粉雪が降り注ぐ。
サンタは片手を寛一に向けてかざすと寛一はサンタの姿になった。
「こ、これは!?」
「その姿になっている間は、空を飛べれるし、壁を抜けれるし、その姿を誰にも見られぬ。」
「それじゃオレはこれで手伝えるんだね!?」
「ああ。これまでの遅れを今からにでも取り戻そう。」
そういうとサンタとサンタ姿の寛一はトナカイの引くソリに乗って次々と
多くの家々の眠っている子供たちの枕元にどんどん配っていった。
その手捌きは、寛一の過去のバイトで鍛えたノウハウも手伝ってか
サンタに押し付けられた前年の三倍に及ぶノルマ分のプレゼントは瞬く間に跡形も無く消えた。

「キミってホントに凄い子だねえ。感心するくらいだよ。」
サンタはすっかり、これまでの不貞腐れていた表情がまるで嘘のように嬉しそうである。
「いえいえ。これでアンタの仕事の有終の美を飾れたというのなら、
これくらいの事など骨折りの内には入りませんって」
寛一も、サンタの事を手伝えて殊の外、満足である。
「謝礼とは何だが、キミの欲しいモノって何か無いかね?」
「そうだねぇ・・・」
寛一は考えた。今の自分はお金の事に関してとりあえず懸念は無い。
ただ寛一にとって何とかすべきなのは来年度以降の自分の居場所の確保が
最重要課題となってしまったからである。それというのも
父母は既に亡く、それに追い討ちをかけるように市長から寛一に対し
来春の小学校卒業を以って、この新潟市からの退去の通告を三日ほど前に受けたのである。
それというのも前年に市長選で当選した若い女性市長は、コレが非常にキツイ性格の上に
サイコパスと問題児と暗愚な人間が大嫌いという厳格原理主義者なのである。
その市長が、長年に亘って街の人々や街の子供らを煩わせてきた尾場寛一の事を知り
何とか出来ないものかと常に苦々しく思っていたのである。
それが今年に入り、市と議会にとって宿敵であった尾場勘吉が、そしてそのすぐあとに
寛一の母親の皆村加奈子が相次いで在日と中国人による犯罪で殺害され
市長にとって、もはや子供の寛一は恐れるに足らないと判断し、叩き潰しにかかったのである。
具体的に、市長は故加奈子の家を固定資産税滞納という理由で没収し
故勘吉の土地を接収しようとしたのである。
だが寛一の方もそれを百も承知で容易に手出しを出来ぬように
あれこれと打てるだけの手を打っており、少なくとも寛一は小学校卒業までは加奈子の自宅に
居られるし、故勘吉の土地も現在は寛一が所有権を息子として名義を引き継ぎ所有しているのである。

深く考えた結果、寛一はこう返答した。
「心の友と、多数のメイドらと一緒に広い土地の大富豪の屋敷に住むっていう夢が叶うのなら
それで、贅沢は言わないよ。今のオレはもう、同世代の他の子よりも底辺に位置する惨めさだからね。」
半ば自嘲気味に言う。
「はっはっは。大きく出たねえ。まあいいだろう。
折角、この儂の最後の仕事を手伝ってくれたんだ。拒否するのは失礼だし
身勝手な大人たちの為に子供が不遇を囲う謂れも無かろう。」
そういうとサンタは自身の最後の力を振り絞るかのように寛一の前で全身を眩く光らせた。
すると、寛一の目の前に居たはずのサンタとトナカイは何処にも居なかった。
だが寛一には何の心残りは無かった。むしろ充実感に満ち溢れたクリスマスイブの夜になった。


青春の嵐 第20話「ラストサンタクロース1」

2015年12月04日 08時21分51秒 | 青春の嵐
そして、クリスマスイブの日を迎える。
その日は心なしか未明から大雪で、屋根に積もった雪かきを命じられた一角の商店の男性店員は、
安い月給の割りに、転落事故の危険性の多い仕事に、愚痴が多いようだ。
それとは対照的に商店の店主はというと、店員の苦労など知った事かと言わんばかりに
来店している若い女性客相手に暖房を挟んで楽しそうに談笑しているし
その鼻の下も伸びて緩んでいる。

それを傍で見つめる寛一は、
(大変だろう。だが、他人に使われている立場から脱しない限りどうにもならぬ苦しみだ。)
と心の中で呟くしか無かった。
この雪国での労働は、報われざる者には生き地獄でしないのかも知れない。
そうならないためにも、自分は、デイトレードによって
もうすぐ来春は中学に上がろうかという身にして労働に依存しない収入生活をしている。
コレをして生活費と貯蓄を作り上げれば、もう経済面で懸念する事など何も無い。
そう思って少し眺めると、やがて寛一は屋根からスコップで放り出す雪を
掛けられてしまう前に足早に通り過ぎる。
そうして、商店街にやって来る。時間は朝の九時を少し回ったところか。
今頃、学校は体育館に全校生徒を集めた終業式の最中だろう。
寛一は、近くのATMでお金を要る分だけ下ろして財布に収めると、
近くの建物の二階にある喫茶店に入る。
そこに入るなりマスターは寛一に言う。
「おや、珍しいね?この時間帯じゃウチの息子と同じで学校の終業式のはずじゃ?」
その問いに対し寛一は答える。
「ああ。実は、先生とちょっくらやり合っちまってね。三学期迎えるまで来なくていいって言われた。」
「何でそうなっちまったんだい?」
「クラスに居るバカたれどもが、教室に持ち込んだお菓子とジュースで
オレのオフクロが死んだのを祝う祝杯を挙げたのがムカつくんでシメてやったんだよ。
そしたら敬二のヤロー、オレの方が先に謝れば何とかなるっていう言い方するんで
どうしても納得が行かないんで、とうとう大喧嘩になりキレた敬二のヤツが
もうお前の顔なんか当面見たくない、三学期になるまで出てくんなボケと怒鳴りやがったんでな?
オレの方もお前にゃガッカリだと、ガチ切れってヤツだよ。」
寛一は、得意気に武勇伝じみた口調で言う。
そして寛一は、洋食のモーニングセットを頼み。
トーストとサラダを頬張りコーヒーに小さい容器を開けて白いコーヒーフレッシュを注ぎ
スティックシュガーを入れてから銀色のスプーンで混ぜる。
そしておもむろに飲む。
「そ、それは凄い事になってたなあ。それにしても、他所様のご家庭の不幸を祝うとは
そのクラスの男子らも、えらい不謹慎な事をしたなぁ。」
「まあ、詳しくは博之くんに訊けばいいよ。あんとき博之くんはアイツらを止めはしたけど
アイツらかに博之くん、"殴られたいのか"って脅され、よってたかってボコられるのは
流石に拙いと察したのかこれ以上は強く言えなかったってクラスの女子から聞いたし。」
それを聞いたマスターは懸念した。息子の博之は幼少時から温和で争いごとを好まない性格ではある。
だがこれから先、他者に対して暴力的・攻撃的な人間が多くなる中学に上がることを鑑みて
その事が徒にならないかが心配でならなかったのである。
そして案の定、寛一の一件でその懸念すべき点が露呈したのである。
寛一は、モーニングセットを平らげた後、勘定を払った後、店の外に出て行った。
それからしばらくしてその博之が学校から戻って来た。
マスターは早速、息子の博之からその事を訊くと博之は寛一が言ったのと同じが如く
内容を父親に語ったのである。それを訊いてマスターは声を失った。

寛一の方に視点を戻して見る。
ポケットからスマホを取り出しデイトレードをしようかと思った。
(いや、今日はよそう。折角のクリスマスイブの日だ。商売っ気は無しでいいだろ)
そう心に呟くと、取り出したスマホを再びポケットにしまい込む。
そして歩き出す。
人気の無い路地裏にやって来ると、そこに白い雪を鮮血に染めて横たえているトナカイが居た。
寛一は、思わず駆け寄りそのトナカイの傷をポケットから取り出した消毒液で消毒し
応急処置を施す。
「何たることを。今日はクリスマスだというに。こんな縁起でもない事をして何の得があろう。」
寛一は目の前のトナカイが傷ついた事に義憤を感じる。すると次の瞬間トナカイが
「あ、ありがとうな。キミは命の恩人だよ。」
そう呟くように言った。
「おぉっ!と、トナカイが喋った!?」
寛一は思わず驚いた。
それもそのはず。普通、動物とは人語を喋れるはずは無い。
「はは。キミを驚かしてしまったみたいだね。」
「だ、だが何でキミがこんなところで傷ついて倒れていたんだ?」
「実は、老師がおかしくなってしまったんだよ。何かに憑依されてね」
「老師?」
「老師か、その表現じゃ判りにくいか。キミら人間の世界じゃ
サンタクロースっていう名で呼ばれているんだけどね。」
「その老師が何で、キミにこんな怪我をさせて何処かに行ってしまったんだ?」
寛一はトナカイに訊ねる。
「実は、今年の冬が近づくある日の事だった。老師は苦労ばかり多くて報われない上に
年齢的にもう限界だからと言ってたので今の仕事をそろそろ今年の冬を最後に
引退したいと、上の者に言ってたんだよ。そしたら上の者たちから
『甘えるな』『楽したいとは何事だ』『苦労が多いのはお前だけでは無いんだぞ』と言われ
拒否されたばかりか、今年は去年の三倍以上のノルマを課せられたんだ。」
「ひっでぇな。」
それを聞いて寛一は思った。
働く者が報われない環境は、何処も同じかそれ以上なモノなんだなと思い、住宅費から
医療費までを職場からの給与に依存しない歳入方法を作る事が如何に大事かを改めて思い知った。
「なあ。もし、このオレが出来る程度でなら手伝わせてくれよ。」
「キミにかい?」
「ああ。これは老師の上の連中の為にやるんじゃない。あくまでも
キミとキミの老師に今度だけでいい。今度の"最後のサンタクロース"を務めるためにやるんだ。」
「うん。それでいい。それで僕もトナカイに戻れるのなら。」
こうして、ひとりの少年と一頭のトナカイは失踪したサンタクロースを探す事になった。

人気が疎らになる夜間を狙って寛一とトナカイは動き出した。
何処もサンタの衣装を着ていて、どれも寛一には紛らわしく思えた。
だがトナカイはすべて違うと見抜き、彼なら照れ屋な性格からしても人気の無い所を好むはずだと
寛一にアドバイスした。
「この街で、人気が無い場所・・・・・・もしかして、あそこか!?」
まるで何かに、気づいたように寛一は言う。
「何か判ったのかい!?」
トナカイは寛一に問う。
「この街において、人気が無くキミのパートナーが逃げ隠れにうってつけになるといえば
空き家しか無いよ。」
「そうなの?」
「ああ。最近、我が国日本は空き家が増えているみたいだ。この街の空き家の多くは
元の家主は息子が家を出てったきり戻って来なかったり、家主が若いときから
生涯独身のまま人生を終わってその家が空き家になったりしているのが多いんだ。
オレが学校へ行く道にもいくつか空き家があるんだ。その中で、カギがかかっておらず
誰でも出入り出来るという条件を満たしているという空き家なら心当たりある。」
「そ、それじゃ!?」
「ああ。もし、オレの予感が間違って無ければ、キミのパートナーはあそこに居る。」
そう言って寛一はトナカイとともにその空き家の方を目指す。

街の一軒の空き家。
そこに赤色の帽子を被り、赤色の服を着ていて白い口ひげを豊富に蓄えた老人が
半ば不貞腐れているように身を横たえている。
その見覚えのある姿とは俗にサンタクロースと呼ばれているその人である。
本来、子供たちにとって夢を与えるべき存在であるのが何でこの廃屋に無断で入り込み
毛布に身を包めて不貞寝するという事を成しているのか?
実は、先に寛一とトナカイとの会話にあったように、よる年波に抗えぬのに加え
これを機に引退を申し出たにも拘らず、
上の立場の者たちから数々の罵声と難詰の混じった非難を浴び、仕事から逃れようとしたと見做され
懲罰として前年を遥かに超過した制裁的仕事量を課されトナカイとともに日本へ
派遣されたのであった。だが、生憎な事に日本も全世界と同様、経済のグローバル化による
貧富の格差の暴力の嵐が吹き荒れている最中にあるのか、子供たちのクリスマスと
サンタクロースに対する思いは半ば覚めてしまっている。
それを見るにつけ何もかもが嫌になり、業務を放擲しようとしてそれを制しようとした
相方のトナカイを傷つけて逃亡を謀り、現在に至るのである。
(ふん。あんな上の連中にゃ、もうついていけないわい。)
サンタはそう思った。今まで、自分は身を粉にして散々尽くしてきたのに
上の立場の連中は、自分のことを一向に末端の他のありきたりのサンタクロースの一人としか
扱おうとしなかった。そればかりか、最近では自分より後から出てきたヤツばかりを
出世させ若い時から仕事を只のミスを何ひとつ無くこなして来た自分を疎んじ
飼い殺し同然の位置づけに扱って来たのではないか。それなのに引退は許さないばかりか
今年の仕事を前年の三倍あまりを給与なしでこなして来いとは、あまりにも理不尽ではないか。
思い出せば思い出すほどサンタは余計に、仕えている組織の論理に腹が立って仕方が無い。
(こうなったら、今日と明日だけでいい。ここで隠れ潜んでおけば・・・)
そうすれば、サンタは組織からの怒りを買い懲戒免職処分となるだろう。
でもそれで、長年に亘る対価に見合わぬ酷使の歴史に終止符を打てるのなら
それでも構わないと彼にはそう思えて仕方ないのであった。
だが、そこへ共に仕事を組んだ見覚えのある存在がひとりの少年とともに姿を現す。

青春の嵐 第19話「孤独の12月」

2015年12月02日 21時13分03秒 | 青春の嵐
「とうとう、遂にオレひとりになってしまったか・・・・・・。」
夜の街の灯りを見るなり寛一は思わずそう呟かざるを得ない。
父を失い、母を失い、そして今は孤独な我が身が。
多くの店内のあちこちからクリスマスソングが流れてくる。
その明るい調子の曲が、今の寛一にとっては、かえって悲哀さを奏でるように
聞こえてくるのだから何となく複雑な心境である。

寛一は、昼間の事を思い返していた。
昼間、学校において寛一はクラスの男子らと久々にやり合い、彼らを
完全にぐうの音も出ない程までに叩きのめして、その事で担任の敬二に生徒指導室に呼ばれ
そこでも敬二と大口論となった。何故そうなったのか?
実は、母加奈子が相次いで死んだ後、日頃から寛一と仲があまりにも良くないクラスの男子数名が
寛一の父勘吉と母加奈子が
中国籍、在日韓国籍・朝鮮籍の犯罪によって相次いで殺され、とうとう残るは
寛一ただひとりを残すのみとなったのを知り
教室に持ち込んだお菓子とジュースで祝杯を挙げたのが原因だからである。
普通の一般社会の常識と節度を弁えている者であれば、どんなに日頃から不仲であろうとも
相手の家庭内に起こった不幸を祝うなどという非常識は、普通はやらぬし出来ないはずである。
けれど、幼いっていうのは時として無知であり無知であるが故に残酷な面もある。
彼らは、給食の終わった後の昼休み時に学校に密かに持ち込んだお菓子やらジュースやらを
テーブルの上に並べて、尾場・皆村衰亡を祝う祝杯を挙げるパーティーをやったのである。
学校にお菓子やジュースを持ち込むだけでも校則としても如何なモノかというのに
あろう事か、自分らの気に入らない相手の生徒の家庭の不幸を祝うパーティーをやるという
とんでも無いことをやらかしたのである。
それを目撃していた寛一は、当然彼らと口論となり、相手が吹っ掛けて来たのをきっかけに
大乱闘になり、わずか数分で叩きのめしたのである。
その事で敬二に呼ばれ、そこでも喧嘩の理由に相手が自分の家庭に起こった事で
祝杯を挙げた件を述べ、ただでさえ家庭も人生も最悪な状況下に陥っているのに
それを祝うという神経を逆撫でする行為をするヤツに対して、
殴って判らせる事をやって何が悪いのかと持論を述べ、
敬二は理由はともあれ暴力はよくないと寛一を責める。
両者の意見はどこまでも平行線を辿り続け一向に埒が明かない。

あまりの寛一の理屈っぽさに敬二はキレたのか、とうとう感情的になり
寛一に対し、三学期が始まるまでの停学処分を言い渡したのである。
それを聞いてカチンと来た、寛一は去り際に
「この無能教諭め!お前がそこまで田夫野人の暗愚な男だったとはガッカリだぞ!?」
と喚き散らして生徒指導室から飛び出し走り去って行った。
敬二の方も感情的だっただけに、この時点においても冷静的になれない。
そして、二日経った現在に至るのである。
(まあ、考えようによっちゃあ、他の者より冬休みが一週間多く取れたと思えばいいか。)
こうして寛一は、もうすぐクリスマスイブを控えた街を流離い歩くのであった。