goo流・キャラネタブログ

ニュースなどを扱います。
あと場合によっては小説というかお話を書く事もあるでしょう。

青春の嵐 エピローグ

2015年12月05日 20時55分09秒 | 青春の嵐
埼玉に降り着いた寛一は、早速その大富豪の豪邸に近い住宅団地にある住宅に居を構えるや
近くの銀行に行き口座開設の手続きをはじめ、ありとあらゆる手続きに奔走した。
後は、どこかの学校の入学手続きでも考えてみようかと思った。
そのときである。どうもいじめられていた自分と同世代のヤツが居るようだ。
一部始終を寛一は見ていたが、どうも寛一が目撃していた所によると
この男は、あそこの大富豪の息子がお気に入りとしている
学校に通いながら大富豪の息子の専属の雑用係をしている専属の下男という。

そいつの事をいじめていたのは、どうもそこの大富豪の従者でコイツの朋輩や先輩らのようだ。
これは寛一の想像かつ憶測での事だが、恐らくコイツが大富豪に出すぎた真似をしたのか?
それとも自分らを差し置いて大富豪の受けが良すぎたからこうなったのか?
いずれにせよ、コイツはこの屋敷の中では他の者と関係は殊の外、良くないのはもう理解した。
このときである。寛一の脳裏に正に奸心必迷のとおり
邪な心が走り新しい土地で心機一転するはずだった寛一の思いを迷わせたのである。
(そうだ。コレはいい機会じゃねーか。上手くコイツに貸しを作ってあの家の
下男の一員に加わって貰おう。まあ、表面としてはコイツの顔を立ててやるとしてだ。)
更に、幸いな事にコイツはボコられたばかりで今すぐには立ち上がれまい。
寛一は、通りすがりの通行人を装って近づき介抱してやる。
そこで、傷の手当をしてやり食事をおごってやる。
どうやらこの男は冷遇されているのか、沢山食べているようだ。
そこで寛一は、しばらく親しげに話しお互いの名前を教える。
どうやら、この男の名前は本田祐二という名前らしい。
コイツは元は児童養護施設で捨てられていたらしく、そこの施設長が
ホンダのバイクが好きなため本田という苗字をつけたという。
そして大富豪の息子が小さいときの誕生日に自分の友達のような下男が欲しいという理由で
その施設から大金の寄付と引き換えにこの屋敷に引っ張ってこられ、
そこから大富豪とその子息に気に入られるために、朋輩や先輩らが
どんなに高い賃金を出しても引き受けたがらない事なら何でもやって来たという。

彼らにボコられたのはどうやら、それを主に取り入る追従と見做されたらしい。
そこで寛一は、祐二に自分の事を推挙して貰えないかを迫った。
最初はあまりいい顔をしなかったけど、助けて貰った恩を徒で返すのは如何なモノかという
考えをこの男はしていたのか、遂に考え込む。
(やはり、コイツはオレの生まれ故郷の連中たちとは違うらしい。
このままタダ食いして帰ろうなんて出来ない性格だよなぁ?)
そこで寛一は、夜になってから返事のために落ち合うという約束をしておいた。

(あの、手の男は良くも悪くも上にバカがつくほど真面目で忘恩の出来ぬ性格のようだ。)
そう寛一は踏んだ。そして夜を迎え、寛一は屋敷の鉄の枠塀の所で落ち合った。
その結果、下男が去年から相次いで主と喧嘩になったり息子を息子と思わぬ
事をやってそれが原因で解雇になったりで
人手不足になってるようだ。それで、祐二はその主に、今度の日曜日に
寛一の事を推挙したいと申し出た所、会っても良いという返事を得られたのである。
これを聞いた寛一は、内心を隠しつつ次の日曜日のための準備をしておく。
そして次の日の日曜日、寛一は大富豪、門摩昭三とその息子の昭介父子の前に紹介された。
数々の非凡なスキルの多さの上に他の朋輩や先輩らが、まったく問題にならぬ能力が
気に入られ、特に息子の昭介が今すぐにでも欲しいと気に入った。
その結果、寛一は祐二の側で共に学校に行きながら働くという条件で採用された。
寛一の旅立ちは、今始まったばかりなのである。




        END

青春の嵐 最終話「卒業、そして追放へ」

2015年12月05日 20時42分31秒 | 青春の嵐
大晦日前にイタリアから帰った寛一は、元旦を迎え三学期を迎えると
更に人が変わったようになった。
敬二は三学期が始まって早々、寛一に対して問う。
「尾場。お前、人より多く休めて良かったよなぁ?」
その言い方は殊更、皮肉っぽい。
「停学にしたのはアンタだろ?オレはオレの方で骨休みさせて貰っただけだ。」
寛一の方も負けじと上から目線で、やり返す。
「俺はアンタの家に何度も足を運んだのに、まったく姿が無かったよな?」
「そいつはご苦労さんだったな。でも、オレもオレでやる事は多かったんでね?」
「何だと?」
「オレと言い合いしたい気持ちも、判らなくは無いがそろそろアンタはそろそろ
自分の仕事をした方が良くないんじゃねーのか?職員会議なんだろ?
まあ、議題はもうオレも大体の想像はつくけどな?」
「そうやって、舐めた態度で居られるのも今だけだ。」
「今も何も、もうすぐ卒業だぜ?何たって三学期なんてあっという間だからな。」
確かに寛一の言うとおりである。
寛一が、このように舐めたような姿勢でいるのも実は根拠がある。
それというのもクリスマスの前に、卒業をもって新潟市からの追放が不可避となった情勢を見越して
寛一は、新年度以降に自分が何処に身を置くか考えていたのである。
そこで実は、JRで関東地方に行きあれこれ聞き込みをしていたのであった。
その際に、寛一にとってひとつのキーワードとなる大富豪を既に目をつけていた。
これが寛一にとって後に重要な意味を持ち、物事の上で要を成す事になるのである。
それを意味するために仮の家としてその大富豪の邸宅に一番近い一般住宅団地の隅っこにある
言い方が悪いが少しくたびれた感じのする建築されたのが昭和の後期という
古い二階建ての住宅を中古物件として買ったのである。
それから寛一は、三学期に入ってからも相変わらずスマホを使ったデイトレードで
お金を大量生産していたのである。しかもその資金は、イタリアでメイド軍とともに
フェミニスト勢力の一部を滅ぼした際に便乗して得た大金も
加わって十億単位にまで及んでいたのである。

おまけに市長に対し、没収というタダでの尾場家の土地の入手を認めず
不動産相場価格での買取を迫り、それなら来年度も居るとゴネ続けた結果
向こうも遂に折れて、市の予算の剰余金の中から土地の買取費用を算出し
議会も市長の苦悩の判断を支持した。
寛一は、二月に入りその買取代金が自分の口座に入金されたのを確認すると
そこから確定申告で税を支払った後、ほとんどは証券口座に振り込む。

そして遂に、やってきた卒業式の日。
多くの卒業生たちが親しかった在校生たちとの別れを惜しむかのように泣いたり
中学に上がったら何をやろうかという夢を見たりする者があったが
尾場寛一、コイツにだけは誰も話しかける者は居なかった。むしろ嫌悪するほどだ。
「今まで散々、やりたい放題の限りを尽くしやがって気楽なものだ。」
「あんなヤツと卒業式までを一緒にしたなんて思い出が穢れるわ。」
そんな彼らの陰口に対し、当の寛一は意に介さない。
(ふん。お前らだって、自分らの狭量ぶりを棚に上げてこっちを嫌い続けて来ただろうが。)
そんなのお互い様だと言いたげに卒業証書を片手に雪の残る校庭を歩き
そして校門を出る。
「さて。もう喧嘩ばっかしていたこの街とも、もうお別れか。」
思い起こせば、物心ついたときから街の大人とも同世代の子らとも
毎日のように喧嘩ばかりしていたような記憶しかなかった気がするなあ。
結局、この街でオレにとっての良い思い出って何かあったのだろうか?
寛一には、そう思えてならなかった。
「まあ、いいや。いつまでも辛い事しか無かった過去ばかり見ていても
オフクロはあの世でガッカリするだろうしオヤジも『このバカたれ』と怒鳴るだろう。」
結局、前を向いて行くしかないんだと自分に言い聞かせるように
寛一は、学校から離れていく。

青春の嵐 第23話「奸心必迷」

2015年12月05日 18時55分31秒 | 青春の嵐
目覚めた寛一の目の前に、当の本人にとって異世界の住人ともいうべき人々が居た。

それというのも欧州貴族の末裔のような老人とその娘と思われる
年齢を感じさせない美貌の熟女がテーブルに座っている。
そして何よりも、寛一にとって驚きに値するのは壁際に揃っている
背の高さも髪形もそれぞれだが、ただ判っているのは紺色で裾の長いスカートを穿き
白いエプロンをしているという絵に描いたようなメイド服の若い女性たちだ。
皆年齢が十代半ばぐらいから二十代前半にかけての顔立ちの美しい娘たちが、身じろきせず立っている。
寛一は、起き上がらされるとテーブルに座らされ、目の前に食事が運ばれる。

「キミは、あのフェミニストに協力して、この屋敷に侵入していたようだが?」
老人の質問に対して寛一は臆する事も答える。
「オレは別に、アイツらのためにこういう事をやったんじゃない。
ただ、アイツらの言ってる事とアイツらと敵対しているメイド軍と、どっちに
正義があるんか知りたくてね?」
「それであんな事を?」
「悪いが、オレはフェミニストもフェミニストの掲げている
男女同権も性差撤廃もジェンダーフリー論と言った文句とか思想も大嫌いでね。
アイツらの言うとおりにして、メイド軍が滅んだりしたら
オレは平家滅亡後に、兄の頼朝に消された義経みたいな結果になるのはゴメンでね。」
寛一は食事に舌鼓を打ちながら言う。
「ほほう。つまりキミは相手方に心から味方している訳じゃないと?」
「そうなる事になる。ところで肝心なのは、何でアンタらが
フェミニストどもと、バルバロッサ作戦直前の独ソの如き関係になっちまったんだ?
それを知りたくてね?それ如何によっちゃ、この対立を終わらせようという余地は
無きにしも非ずって事もあるとは思うんだが。」
「お前は、何を言っておるのだ?我らがあんな連中と相容れる筈も無いでしょう。」
メイドのひとりが発言する。
それを熟女が制する。
「それでワシとしては、キミに頼みたいのだよ。」
「頼み?」
「そうじゃ。我らのために、あの宿敵フェミニストと戦って貰いたい。
その為には、もう今のメイドたちの主人の座には拘らるつもりは無い。」
(そう来ましたか。)
「どうじゃ?」
それに対して、寛一はこう答える。
「奸心必迷(かんしんひつめい)の思いです。」
思わぬ返事をされ老人はどう反応していいか困る。
「どういう意味なのだ?その言葉は?」
「はい。奸は、よこしまの奸。心はこころ。必は必ずと書き迷は、まようと書く。」
思わぬ禅問答をされ、答えに困ってはいた。
「なれどオレは貴方の考えに関しては拒否はしません。されどオレでは遺憾ながら
メイドたちの主人には向いては無いでしょう。」
「それは何故じゃ?」
老人の問いに対し寛一はこう返答する。
「貴方様のお暮らししているこの欧州では虚々実々の駆け引きの応酬は世の習いとして
殊更、それを責める者はあまり居ないかも知れません。ですが、オレの母国日本では
それを真面目に暮らす庶民の金を騙し取る知能犯のような所業として位置づけてしまう
傾向が強く、小さい時から僅かな金と糧をめぐって諍いに終始し、多くの遺恨を買っている
オレではメイドの主人になったとしても誰も支持しないばかりか、オレに対して
第二次世界大戦末期において日独を滅ぼした連合国ばりのごとく
大軍を派遣するは必定でしょう。日本に限っては、メイドの上に立つ者とは
徳がある者で無ければイカンのです。」
「なるほど。指導者とは必ずしもその土地とお国柄によっては違うというのだな?」
「はい。だが、日本とて富裕層は皆無という訳ではありませんし、
とりつく島さえあれば何とかなる余地はあると思います。」
「だが、難しいぞ。」
「何。貴方様の知恵とお力があればもう如何なる事など成功は確約されたようなものです。
その手始めとして、ローマのはずれにあるフェミニストの施設を狼煙としましょう。」
「ほほう。キミはヤツらを裏切るのかね?」
「メイドたちと何処までも際限なく敵対し続け、
この地球上の男性をがん細胞と見做してほぼ死滅させるという彼らの考えは、
オレも男性のひとりとして支持は出来ません。」
もはやすっかり、寛一の心はフェミニストからは離れていた。
この場の話し合いの日の夜、
メイド軍は寛一の先導によって潜入し完全に脱出させられないようすべての
乗り物を押さえた上で、真夜中の就寝時を襲った。
しかも折しもその日は、フェミニストたち主だった幹部の泊り込みでの会合の日も
重なっていたためどうする事も出来ず、現場に居たフェミニストとその同盟関係者たちは
誰も逃げ出す事など出来ず、全員討たれた。
この事件を後に「ローマ深夜の変」と称された。

そして一夜が開け、寛一はもう日本に戻らねばならぬ日が迫っていた。
「日本に帰るというのかい?」
「ああ。所詮、ここ欧州は他人の土地で人ん家だ。人ん家に住まわせて貰っていながら
ブー垂れてばっかりの上に碌な事をしない韓国人や朝鮮人やイスラム人じゃあるまいし
外国人のオレがいつまでも居座っていい場所じゃない。住所がある者は住所のある所へ帰るのが筋だろ?」
こうして荷物をまとめる。
「まあ、オレとしてはアンタらの考えは支持しているし、フェミニストらの考えている世界なんて
実現して欲しくないひとりだよ。もし、気が変わってオレがどこぞの大富豪の所に
下男にでもなったという事が判ったら、その時は、宜しく頼む。」
そう言うと寛一は、タクシーにのってローマの国際空港へと去って行った。

それから屋敷に戻り、父娘は会話を重ねる。
「これでよろしかったのですか?お父様。」
「何。心配には及ばないよ。あの男の子は、このまま市井の者として一生を終われる者では無い。
それに、この世で相容れない敵を我らと同くしたのだ。
そして何よりもだ。あの知謀ぶりは、なかなか大したと思わないか?」
「知謀・・・ですか?」
娘は、不思議そうに問う。
「そうだ。我らにとって、散々こちらを追い詰めてくれたローマのはずれにある
フェミニストの施設をしかも大勢の幹部が泊り込みで来ていた日を知ってた上で深夜に
我がメイド兵たちに奇襲させて全員を一人も逃さず倒させ、ヤツらの持っていた
軍資金や戦利品を多数、押収させたのだからな。」
この老人にとって、あの少年がこのまま市井に埋もれたり敵方に納まったりするのはあり得ない。
そう思えて、仕方が無い。
「ですが・・・」
「何だ、お前としてはまだ信じられないというのか?」
「そういう訳では、ありませんが。」
「まあ、無理も無い。あの少年は日本に帰っても、もうすぐ卒業と同時に
市長によって生まれ故郷からの追放を言い渡され根無し草になろうかという身じゃからのう。」
「そこまでお知りになって、いながら何故あそこまでご期待をするのですか?」
「あの少年の性格の中には、このまま相手によっても世の中によっても望まぬ事を強いられ
屈服させられる事への憎悪と反感が、そうさせるのか、
自分から家族を奪い、世間からの嘲笑だけしかもたらさなかった
彼の中にある貧しさに対する嫌悪がそうさせるのか
その反動で、豊かさ対する憧れと渇望ぶりは他の同世代には無いほどの非凡さがある。
いずれにせよ、あの少年はこのまま貧しさに生き、貧しさに死ぬような事ではないの
だけは確かだよ。まあ、手は打ってはいるがね。」
そう心の中に、呟くように老人は言う。

青春の嵐 第22話「新たなる存在 屋敷の戦乙女(メイド)たち」

2015年12月05日 14時51分18秒 | 青春の嵐
日本国内の年末年始の喧騒を忘れたいかのように寛一は、クリスマスイブの翌日になるや
まるで思い立ったかのように日本を飛び出し欧州に来た。
イタリア南部は何処も観光客が多い。何処に行っても同胞にでも出会うかのように邦人と出くわす。
そこまでなら、ただの観光旅行と何ら違いは何も無い。

だが、寛一にとって思わぬ事があった。
ある日の夜。ナポリのホテルに泊まっていたときの事である。
寛一の泊まってる部屋にメイド服の若い女たち何人かがやって来た。
「此処に、怪しい人が来ませんでしたか?」
そう彼女らが質問するのに対し
「否、申し訳ないが見てない。」
そう返答する。
「そうか。もし、見かけていたら教えて欲しい。」
そう言って彼女らは足早に去って行った。
そして寛一は、部屋の玄関から戻るとクローゼットの方へ行きそのドアを開ける。
「ほれ。行ったぞ?」
「ああ。済まない。」
寛一は、男に言う。
「一体、何をやらかしたんだ?あの女の人らの制服からして
ここのホテルの従業員でも無ければ、
近くのバーやパーラー、カフェの者の類じゃ無さそうだな?
さては金持ちの家にでも泥棒に入って追われたんだろ?」
「ち、違うよ。」
確かにこの男に言わせれば、窃盗やらかしたのであれば自分の事を追いかけてくるのは
必ずしも警察署の捜査員であって、メイドである必要は無い。
「俺は世界フェミニズム連盟のメンバーの一人なだけだ。」
「フェミニズム?何だそりゃ?オレとしては初めて聞く言葉だが。」
寛一は思わず呆れるように言う。
すると男は熱弁をふるう様に語る。
「そもそも、近代に入ってからも人類の文明社会の歴史とは悲しいかな
弱肉強食の名の下に金と力と権力を笠に来て、強い者が
弱い者を傷つける事が当然とされ美化されがちな歴史。
二十世紀に起こった二度の世界大戦とその後の冷戦の中で生まれた副産物である
途上国の紛争や共産圏の独裁政権による人権弾圧政策。
西側は西側で、男性社会の名残りと資本主義経済故の女性に対する男性の意識の低さ。
我らはこれを是正するために、不断の努力を続け遂に人間社会に対して
自分たちの過去にしてきた数々の暴力と大量虐殺の歴史を反省させるに至ったのだ。
だが、彼女らはその我らの思いに違いる事を為したのだ。」
「それが今のメイドさんたち?つうか彼女らの雇い主の金持ちどもか?」
「ああ。アイツらにとっちゃ、我らの掲げるこの世からの性差撤廃思想をはじめとする
考えが受け入れられないようだった。」
つまり、このフェミニストの男性がいう革命思想とは地球上の富裕層らに対し
生活水準をみだりに上げ、広大な土地を持たず巨大な屋敷に住まず
執事やメイドなどの使用人を抱えず一般庶民と同じ暮らしをする事によって
浮世離れした考えに陥ったりせず、消費者でもある庶民と経済界との間の距離感が
開き過ぎるのを防ぐという考えであったし、その他の地球上のありとあらゆる社会に対しても
民族上、宗教上、古くからの伝統や慣習・しきたりを理由とした、これまでのような
女性を道具や動物のように扱いをするのを止め、地球をひとつの女系家族のようにして
一部の男性のみがそれを引き立てる少数派人口として行こうという考え方であった。

聞けば聞くほど寛一にとって内心、だんだん不快に思えてきた。
何故なら、確かに人類の歴史は争いの歴史であり、
そのついでとして生まれた残酷な行為の横行している歴史であるのは自身も
学校の授業で知っているしそれ以外でもテレビや雑誌、専門誌でも知っている。
一部の強い立場の者の自己満足と土豪劣紳ぶりのために、多くの者が割を食う歴史を
未来永劫、続けさせたくは無いという熱意は父母を失い、自身も現在において
不遇に置かれている寛一としても賛同に値すべき考え方ではある。
だが、寛一が問題としているのはその後のくだりである。
それというのも、地球をひとつの女ばかりの住む家にして、それに個人的に気に入られた
一部の男性がそれを引き立てる少数派人口として行くという考えだからだ。
何故なら、昔から美女は美男にしか心を惹かれぬモノである。
そうであれば、この男の所属しているフェミニズム組織にとっちゃ
寛一も含めて地球上の男性の圧倒的多数は、第二次世界大戦当時の欧州において
ナチスドイツに弾圧されたユダヤ人のような末路を辿らねばならぬ存在であり
残存する事を許された一部の男性は、新たな地球上の為政者の女系政権の奉仕者として未来永劫
召し使い同然の民族として存続となるという。
成り代わった地球上の女系人口となった彼女らも決して、争いも何も無い平和であるかといえば
そうでは無い。下手をすれば、良くてもインドばりのカースト制度社会。
悪くすると中国や北朝鮮ばりの人権弾圧のように、どんなにスポーツや芸能や文化で
才能を発揮したとしても国家に対して都合の悪い思想をしているというだけの理由で片付けられ
同じ能力でも政府の役人や官僚に気に入られた者だけが保障された幸せを送れるという
恐怖社会である。要するにお局さまとその取り巻きにとって気に食わない女は
例えどんなに器量よしでも必ず不遇に置かれる恐怖社会だ。
確かに、普段から粗野で血と暴力とセックスを礼賛しがちな男系社会も困ったものだが
かといって女系社会も平和な社会であるかといえば、そうとは言えないのである。

そこで寛一は、思いついた。
少なくともこのフェミニストが天下を取るような事などあってはならない。
味方してやるふりして、敵方をコイツのアジトに引き入れ、コイツとコイツの上司も雇い主も
敵方のメイドとその雇い主の人質にさせて置こう。後の事は上手く行ってからでいい。
「ああ判った。オレの出来る範囲であれば手伝ってあげるよ。」
「そうなのかい?」
「お兄さんは、日本人なんだろ?」
「ああ、そうだよ。」
「なら、ここは観光旅行している兄弟のように振舞っていた方がいいよ。」
「そうだな。」
このお兄さんの名前は、新川幸雄という人で東京にある日本で上位五指に数えられる大学の二年生という。

翌朝、ホテルを出た二人はその足で、ローマの近郊にある海を臨むフェミニスト団体の屋敷に入り
近況報告も兼ねて寛一の事を紹介する。
「ほほう。キミが尾場寛一くんなんだね?数え年十三歳というのにそのウチの者を
メイド軍から見事なまでに匿ってのけるその機転といい非常に頼もしい。」
六十を少し回ったイタリア人の男性は寛一の事を大いに褒める。
そして昼の食事会もそこそこに、今後警備が厳しくなったローマの一等地の屋敷にある
メイド軍とそこの屋敷に対する作戦をどうするかを考えていた。
そのとき寛一は、こう切り出す。
「既に相手方に面が割れている新川さんひとりでは厳しいです。ここはオレが
屋敷の警報を無効化し、メイドたちを引き付けましょう。新川さんは
その隙に屋敷に入り、そこの書斎から秘密文書を入手して下さい。」
すると新川も返答する。
「キミは大丈夫なのかい?」
「心配は要らないさ。故郷の新潟じゃ、ならず者すら追い縋る事は困難とされた脚力の
持ち主のこのオレを信じてくれよ。」
それを聞いて、その場の面々は大いに驚く。
「ははは。それは大いに頼もしいな。」
食事の後の昼下がりになり、二人はローマへ向かい
現地の屋敷を下見する。
「なるほど。あれらがああなってんのか?」
「キミにはあの屋敷の構造は判るのかい?」
「大体、判るよ。ここの建物自体は相当な年代モノだけど、それ以外は
ここの家主の性格を示すからね。」
寛一は、眼で対象物を見ただけで大体の事が脳内で、もう描けている。
彼に言わせれば、警報装置の数とその配置場所と、その性能。
取扱説明書に現れない、誤作動を起こしにくいとか
長年の雨水や強風によって飛んできた物が当ったのが原因で、故障し肝心なときに
作動しなくなったりしないかとか耐用年数によっては取り付け工事から
製品の市場の平均より短命であったりするかどうかも勘案しているし。
何よりも、家主の性格次第では外側ばかり防犯が強くて内側は案外脆いという事もあるとか
そういう事もあるようだ。そして深夜になり、寛一は幸雄とともに屋敷の塀に近づく。
ここで寛一は、スマホを取り出し警報装置を作動させる。
すると屋敷のメイドらが出てくる。そこで寛一らは身を隠す。
そうするとメイドらはやがて屋敷に戻って行った。
「何で、それをやる必要があるんだ?」
「まあ、見てなって。コレを何度もやる事に意味があるんだよ。」
そういうと寛一は、スマホを使って警報機を作動させ、
その度に屋敷のメイドたちを出動させるという事を頻繁にやった。
やがて、警報システムの誤作動があまりにも酷すぎると見做したのか
すべての防犯システムの電源は遮断された。
塀を見張っていた防犯カメラの赤い発光ダイオードも電源を切られたのか
防犯カメラのレンズの傍にあったセンサーの光も消えた。
周りを警戒する。どうやらこの時間帯は午前零時まで、既に一時間を切っているだけあって
誰も人気が無い。慣れた手つきで寛一は屋敷の鉄門のカギを開けた。
ここで泡を食って慌てる事は無い。この屋敷の庭で忍び足を意識してやろうとする必要はない。
そんな事をすれば音を立てまいとする意識がかえって音を立ててしまう事になる。
どちらかといえば、チンタラした歩き方やズンタラした歩き方の方が無駄な足音を立てやすいのである。
出来るだけ足元を確認して、小石にや地面に突起した物に注意すればいいだけの事である。
けれど、寛一にとってそれは心配無用の様だ。
普段、足元のゴミひとつ残さぬ庭の手入れの仕事を滞りも無くしているメイドの仕事ぶりが
寛一を利したようだ。そして屋敷の正門に立つ。
ここで二人は、相談する。
「ここは二手に別れよう。どちらかが裏口に入って書斎にある書類を入手するんだ。」
「そうだな。ここはオレが・・・」
「ん?待てよ。新川さんが過去にココへ来た事があるんだよね?」
「そりゃ、いくつかあるけど。」
「表口から入るのと裏口から入るのと、どちらがこの屋敷の見取り図からして書斎への近道になる?」
すると幸雄は思い出したように言う。
「裏口!確か、以前に宅配業者を装ったときにトイレを借りるふりして場所を確認した事がある」
「なら、裏口から頼む。オレは出来るだけ正門から入って
書斎を捜す振りして、この屋敷の家人を引き付けておくから。」
「判った。」
そういうと幸雄は裏口のある屋敷の正門の反対側へと早歩きで去って行く。
寛一は腕時計を見る。時間は午前零時まであと四十分を控えた。
あと十分ほど待ってから作戦を決行してやるとしよう。寛一は、屋敷の周りを歩き回り
館の上下階を大まかに眺める。
特に灯りは無いようだ。それを確認すると、手許の腕時計を見る。
このとき、窓から寛一の事を眺めていた若い少女の姿を寛一は何も知らなかった。
そろそろ彼は裏口から入ったと思われるようだ。こちらからも入ろう。
そう考えると、寛一も正門のドアのカギを慣れた手つきで開けて見せ、
ドアノブをゆっくりと捻り、中に入る。

そして屋敷内に侵入した寛一は、屋敷内を見渡す。暗いけれど
慌てたりはしない。元々、暗所や夜間、人気の無いところで過ごす事で
目を慣れさせたのだから、それに外の街の灯りも寛一にとっては満月の光と同じ事だ。
屋敷の外見を想像したとおり、この内部も大方の予想どおりの造りとなっている。
懐中電灯や蝋燭を持って館内を巡回しているメイドを巧みに物陰を利して回避しやり過ごす。
メイドらが通り過ぎて行き、角に曲がるのを見届けると寛一は足早に書斎の方を捜すように行く。
散々捜しまくったが、どうやらこの一階には無いと見た。そこで二階へ行く。
二階も遺憾ながら家主の書斎というべき部屋は無い。どうやらこの屋敷の部屋割りとは
一階は、食事をするための食堂と入浴する風呂場と厨房、くつろぐ居間と暖炉と客間、
二階はメイドら使用人の部屋となっており、三階はこの家主とその家族の部屋割りとなっているだろう。
そう考えると、書斎はその三階の家主の寝室に隣接している部屋か
家主の寝室を兼ねている部屋にあると考えるのが妥当と見てもあり得なくはない。
むしろそっちの方が常識的だ。こういう巨大な建物で考えた場合、
会社のケースで考えると社長室に相当する位置で考えれば、
大体、大きな建物を構える会社の多くは社長室は一番上の階に置く事が多いはずだ。
その常識がこの現代のイタリアでも連綿と通用するのであれば、
ここの家主は上の階に書斎を構え、そこにフェミニストにとって重要な秘密文書を所有しているはずだ。
そう考えた寛一は、こんな危険の多い二階を後にして三階へと行く。
三階に行き少し歩くと案の定、イタリア語で書斎と記されたドアに辿り着く。
そこで幸雄と落ち合う。
(どうだ、首尾の方は?)
(オレの方は問題は無い。カギを開けてやる。ここはオレが見張ってやるから
今の時計で午前零時二十分を少し回っている。午前二時までに目的の書類を回収しろ。)
(判った。)
そういって、寛一はドアのカギを開けドアノブをゆっくり回す。
このドアの部屋の方へ開くようだ。
幸雄は、慌てたりせず入って行き早速、書斎を探し出す。
そこから寛一は、ゆっくりと周囲を確認する。あれから少しずつ時間は経過するが
巡回のメイドは来ないようだ。どうやら、この三階はここの家主たちの聖域なのか
メイドたちも流石に、今宵の時間は何も無いと見て寝床に着き就寝したのだろうか。
後は、午前二時を迎えるまでに幸雄が、このドアの所へ戻ってくれればいい。
時間を経過するのを待つ。時間は午前一時を過ぎ、そして一時半となった。
ここの書斎はあまり広くないし本もあまり充実してない所からして
そろそろ戻っててもおかしくは無いのだが。一体何を手間取っているのだろうか?
そう考えていた所、寛一の許へ書斎から来る人影がある。
(ようやく、戻ってきたか?)
だが、それは幸雄では無かった。
「残念だったようね?方や?」
現れたのは蝋燭を手に持ったメイド長と思われる二十代前半らしき女性だ。
「!?」
すると、後ろから羽交い絞めにされ何かを染み込ませたのを嗅がされる。
必死にもがいた寛一ではあったが、やがて深夜の時間帯の眠気もあったのも手伝ってか
意識が混濁になる。

次に目覚めた所は、一人の老人とそれの娘と思われる熟女と
それを囲うメイドたちの場であった。

青春の嵐 第21話「ラストサンタクロース2」

2015年12月04日 20時32分38秒 | 青春の嵐
サンタが隠れ潜んでいる廃屋に、トナカイと寛一が現れた。
「アンタが、このトナカイのパートナーのサンタかい?」
寛一は開口一番に言う。
「老師!こんなところで何をやってるんですよ!?」
トナカイも非難するように言う。
これに対しサンタは
「儂はもう、何もしたくないんじゃ」
と半ば不貞腐れるように言う。
「アンタの組織からもっと働けと言われたからかい?」
寛一はそこで踏み込むように言う。
「何でお前がそれを知っているッ!?」
「おっと、ここで声を荒げるんじゃないぜ。オレもアンタもこの廃屋とはいえ
ここの持ち主は元は赤の他人の名義の家だ。そこに居るって誰かが知ったら
お互い犯罪者として処断だぞ?ここじゃ何だから人気の無い所に行こうや。
幸い、あそこの森林はオヤジが在日と中国人のヤツに殺されたとはいえ、
土地はまだ国か県のモノになった訳じゃねえからな。」
寛一が知る限りによると、尾場家の土地の所有権は新年度にならない限り
国か県の所有にはならないという。つまり小学校を卒業する今年度いっぱいまでは
寛一はその土地に何度でも出入りが許されているし、他者は寛一に一言の相談も無しに
その土地に指ひとつ加える事など許されないというのである。
法とは時として用いようによっては兵法の如き有効なのである。
そこで、廃屋から離れ尾場家の所有であった広大な土地の森林内へと移った。

「話は聞いたよ。そろそろ歳も歳だし引退を申し出たんだけどお偉いさん方から
それを怠け者の態度として見做され、今年は前年の三倍の仕事量を押し付けられ
しかも給与は無しっていう処分を下されたんだってな?」
「ふん。悪いかい?今まで散々、頑張って来たのに、あんなやり方ってあるんかい。
馬鹿にするのも大概にして欲しいというものじゃ。」
寛一とサンタは言い合う。
「でも、このまま何もしないで過ごしたらタダでは済まないよ?
懲戒免職で済めば良い方で最悪な場合、職務放棄で粛清だよ!?」
トナカイはそこで口を挟む。
「何?子供たちにプレゼントを配るノルマを達成しないばかりか、
仕事をサボって、何処かで逃げ隠れした場合は理由によっては処刑する?
そんな規定が、その業界にゃあるんか?」
寛一は半ばドン引き気味に訊く。
「うん。あるよ。ボクの前の相方もその前の相方も、無能でノルマを達成出来なかったり
怠け者で仕事嫌いの性格で、毎年クリスマスになると何処かに雲隠れしてばかりいたために
前者は懲戒免職になり、後者は粛清されて死んだよ。この人ボクの代で三人目の相方なんだ。」
トナカイはそう答える。
「ふん。もう儂はもう老い先短いジジイじゃい。もう粛清なんぞ恐れてないわい。」
サンタはもう完全に意地になっている。
「・・・なあ、サンタさんよ。」
寛一は呼びかける。
「何じゃ。儂は何もせんと言ったじゃろうが。」
「オレはまだ何も言ってないぜ?」
「どうせ、この儂にサンタとしての責務を死ぬまで果たせっていうんじゃろ!?
もう儂は散々、尽くして来たのにアイツらはこの儂に対し、
働きに見合った報いも無ければ何の労いも無い!それどころか年寄りのこの儂に向かって
言うに事欠いて『これだから爺は鈍間でドン臭くて使えない』だの
『お前、給料の割には能力に見合ってない』とか酷い言い様じゃ!
何をやっても報われないんだったら、もうこれっきりにさせてくれッ!!」
もう完全に投げやりだ。
「オレは別にアンタにこの仕事を死ぬまでやれとは一言も言わねえよ。
それにオレも出来る限りの手伝いをするから、今回の仕事を最後に
アンタはアンタの道を行くっていうのはどうだ?」
「何?この仕事を最後に、この儂に自分の道を行けと?」
「ああ。そうだ。悪くは無かろう?」
「だ、だがしかし。」
それはそう思うだろう。サンタの方とて、組織のお偉方に反感を持って今年の
クリスマスの業務をボイコットしようとしたとはいえ、本来は働き者の性格だったのだ。
「このまま仕事を終えて戻っても又、お偉い方のために犠牲になるだけだぜ?
そんな事になるくらいなら、やるべき事をやって達成感を得てから
造反し自由の身になった方が良くないか?」
寛一は、サンタにそう説得して見る。
「うん。ボクもそう思う。実はボクもあのお偉方には、いい加減にウンザリして来た所なんだ。
それに最近、外で出来た彼女と添い遂げたいし。」
「お、お前・・・」
サンタも驚いたであろう。何時の間にか、自分のソリを引くだけだった相方に
そんな事情が出来ていたとは。
「なあ。アンタの責務のためじゃないし、アンタの組織のためにやるんじゃない。
アンタら二人の幸せを望むためにやるんだ。」
「・・・そうじゃな。」
「・・・そうだね。」
この両者にもう迷いは無くなった。心なしか両者の思いに応え
未来の幸せを祝福するかのように真っ暗な夜空から粉雪が降り注ぐ。
サンタは片手を寛一に向けてかざすと寛一はサンタの姿になった。
「こ、これは!?」
「その姿になっている間は、空を飛べれるし、壁を抜けれるし、その姿を誰にも見られぬ。」
「それじゃオレはこれで手伝えるんだね!?」
「ああ。これまでの遅れを今からにでも取り戻そう。」
そういうとサンタとサンタ姿の寛一はトナカイの引くソリに乗って次々と
多くの家々の眠っている子供たちの枕元にどんどん配っていった。
その手捌きは、寛一の過去のバイトで鍛えたノウハウも手伝ってか
サンタに押し付けられた前年の三倍に及ぶノルマ分のプレゼントは瞬く間に跡形も無く消えた。

「キミってホントに凄い子だねえ。感心するくらいだよ。」
サンタはすっかり、これまでの不貞腐れていた表情がまるで嘘のように嬉しそうである。
「いえいえ。これでアンタの仕事の有終の美を飾れたというのなら、
これくらいの事など骨折りの内には入りませんって」
寛一も、サンタの事を手伝えて殊の外、満足である。
「謝礼とは何だが、キミの欲しいモノって何か無いかね?」
「そうだねぇ・・・」
寛一は考えた。今の自分はお金の事に関してとりあえず懸念は無い。
ただ寛一にとって何とかすべきなのは来年度以降の自分の居場所の確保が
最重要課題となってしまったからである。それというのも
父母は既に亡く、それに追い討ちをかけるように市長から寛一に対し
来春の小学校卒業を以って、この新潟市からの退去の通告を三日ほど前に受けたのである。
それというのも前年に市長選で当選した若い女性市長は、コレが非常にキツイ性格の上に
サイコパスと問題児と暗愚な人間が大嫌いという厳格原理主義者なのである。
その市長が、長年に亘って街の人々や街の子供らを煩わせてきた尾場寛一の事を知り
何とか出来ないものかと常に苦々しく思っていたのである。
それが今年に入り、市と議会にとって宿敵であった尾場勘吉が、そしてそのすぐあとに
寛一の母親の皆村加奈子が相次いで在日と中国人による犯罪で殺害され
市長にとって、もはや子供の寛一は恐れるに足らないと判断し、叩き潰しにかかったのである。
具体的に、市長は故加奈子の家を固定資産税滞納という理由で没収し
故勘吉の土地を接収しようとしたのである。
だが寛一の方もそれを百も承知で容易に手出しを出来ぬように
あれこれと打てるだけの手を打っており、少なくとも寛一は小学校卒業までは加奈子の自宅に
居られるし、故勘吉の土地も現在は寛一が所有権を息子として名義を引き継ぎ所有しているのである。

深く考えた結果、寛一はこう返答した。
「心の友と、多数のメイドらと一緒に広い土地の大富豪の屋敷に住むっていう夢が叶うのなら
それで、贅沢は言わないよ。今のオレはもう、同世代の他の子よりも底辺に位置する惨めさだからね。」
半ば自嘲気味に言う。
「はっはっは。大きく出たねえ。まあいいだろう。
折角、この儂の最後の仕事を手伝ってくれたんだ。拒否するのは失礼だし
身勝手な大人たちの為に子供が不遇を囲う謂れも無かろう。」
そういうとサンタは自身の最後の力を振り絞るかのように寛一の前で全身を眩く光らせた。
すると、寛一の目の前に居たはずのサンタとトナカイは何処にも居なかった。
だが寛一には何の心残りは無かった。むしろ充実感に満ち溢れたクリスマスイブの夜になった。


青春の嵐 第20話「ラストサンタクロース1」

2015年12月04日 08時21分51秒 | 青春の嵐
そして、クリスマスイブの日を迎える。
その日は心なしか未明から大雪で、屋根に積もった雪かきを命じられた一角の商店の男性店員は、
安い月給の割りに、転落事故の危険性の多い仕事に、愚痴が多いようだ。
それとは対照的に商店の店主はというと、店員の苦労など知った事かと言わんばかりに
来店している若い女性客相手に暖房を挟んで楽しそうに談笑しているし
その鼻の下も伸びて緩んでいる。

それを傍で見つめる寛一は、
(大変だろう。だが、他人に使われている立場から脱しない限りどうにもならぬ苦しみだ。)
と心の中で呟くしか無かった。
この雪国での労働は、報われざる者には生き地獄でしないのかも知れない。
そうならないためにも、自分は、デイトレードによって
もうすぐ来春は中学に上がろうかという身にして労働に依存しない収入生活をしている。
コレをして生活費と貯蓄を作り上げれば、もう経済面で懸念する事など何も無い。
そう思って少し眺めると、やがて寛一は屋根からスコップで放り出す雪を
掛けられてしまう前に足早に通り過ぎる。
そうして、商店街にやって来る。時間は朝の九時を少し回ったところか。
今頃、学校は体育館に全校生徒を集めた終業式の最中だろう。
寛一は、近くのATMでお金を要る分だけ下ろして財布に収めると、
近くの建物の二階にある喫茶店に入る。
そこに入るなりマスターは寛一に言う。
「おや、珍しいね?この時間帯じゃウチの息子と同じで学校の終業式のはずじゃ?」
その問いに対し寛一は答える。
「ああ。実は、先生とちょっくらやり合っちまってね。三学期迎えるまで来なくていいって言われた。」
「何でそうなっちまったんだい?」
「クラスに居るバカたれどもが、教室に持ち込んだお菓子とジュースで
オレのオフクロが死んだのを祝う祝杯を挙げたのがムカつくんでシメてやったんだよ。
そしたら敬二のヤロー、オレの方が先に謝れば何とかなるっていう言い方するんで
どうしても納得が行かないんで、とうとう大喧嘩になりキレた敬二のヤツが
もうお前の顔なんか当面見たくない、三学期になるまで出てくんなボケと怒鳴りやがったんでな?
オレの方もお前にゃガッカリだと、ガチ切れってヤツだよ。」
寛一は、得意気に武勇伝じみた口調で言う。
そして寛一は、洋食のモーニングセットを頼み。
トーストとサラダを頬張りコーヒーに小さい容器を開けて白いコーヒーフレッシュを注ぎ
スティックシュガーを入れてから銀色のスプーンで混ぜる。
そしておもむろに飲む。
「そ、それは凄い事になってたなあ。それにしても、他所様のご家庭の不幸を祝うとは
そのクラスの男子らも、えらい不謹慎な事をしたなぁ。」
「まあ、詳しくは博之くんに訊けばいいよ。あんとき博之くんはアイツらを止めはしたけど
アイツらかに博之くん、"殴られたいのか"って脅され、よってたかってボコられるのは
流石に拙いと察したのかこれ以上は強く言えなかったってクラスの女子から聞いたし。」
それを聞いたマスターは懸念した。息子の博之は幼少時から温和で争いごとを好まない性格ではある。
だがこれから先、他者に対して暴力的・攻撃的な人間が多くなる中学に上がることを鑑みて
その事が徒にならないかが心配でならなかったのである。
そして案の定、寛一の一件でその懸念すべき点が露呈したのである。
寛一は、モーニングセットを平らげた後、勘定を払った後、店の外に出て行った。
それからしばらくしてその博之が学校から戻って来た。
マスターは早速、息子の博之からその事を訊くと博之は寛一が言ったのと同じが如く
内容を父親に語ったのである。それを訊いてマスターは声を失った。

寛一の方に視点を戻して見る。
ポケットからスマホを取り出しデイトレードをしようかと思った。
(いや、今日はよそう。折角のクリスマスイブの日だ。商売っ気は無しでいいだろ)
そう心に呟くと、取り出したスマホを再びポケットにしまい込む。
そして歩き出す。
人気の無い路地裏にやって来ると、そこに白い雪を鮮血に染めて横たえているトナカイが居た。
寛一は、思わず駆け寄りそのトナカイの傷をポケットから取り出した消毒液で消毒し
応急処置を施す。
「何たることを。今日はクリスマスだというに。こんな縁起でもない事をして何の得があろう。」
寛一は目の前のトナカイが傷ついた事に義憤を感じる。すると次の瞬間トナカイが
「あ、ありがとうな。キミは命の恩人だよ。」
そう呟くように言った。
「おぉっ!と、トナカイが喋った!?」
寛一は思わず驚いた。
それもそのはず。普通、動物とは人語を喋れるはずは無い。
「はは。キミを驚かしてしまったみたいだね。」
「だ、だが何でキミがこんなところで傷ついて倒れていたんだ?」
「実は、老師がおかしくなってしまったんだよ。何かに憑依されてね」
「老師?」
「老師か、その表現じゃ判りにくいか。キミら人間の世界じゃ
サンタクロースっていう名で呼ばれているんだけどね。」
「その老師が何で、キミにこんな怪我をさせて何処かに行ってしまったんだ?」
寛一はトナカイに訊ねる。
「実は、今年の冬が近づくある日の事だった。老師は苦労ばかり多くて報われない上に
年齢的にもう限界だからと言ってたので今の仕事をそろそろ今年の冬を最後に
引退したいと、上の者に言ってたんだよ。そしたら上の者たちから
『甘えるな』『楽したいとは何事だ』『苦労が多いのはお前だけでは無いんだぞ』と言われ
拒否されたばかりか、今年は去年の三倍以上のノルマを課せられたんだ。」
「ひっでぇな。」
それを聞いて寛一は思った。
働く者が報われない環境は、何処も同じかそれ以上なモノなんだなと思い、住宅費から
医療費までを職場からの給与に依存しない歳入方法を作る事が如何に大事かを改めて思い知った。
「なあ。もし、このオレが出来る程度でなら手伝わせてくれよ。」
「キミにかい?」
「ああ。これは老師の上の連中の為にやるんじゃない。あくまでも
キミとキミの老師に今度だけでいい。今度の"最後のサンタクロース"を務めるためにやるんだ。」
「うん。それでいい。それで僕もトナカイに戻れるのなら。」
こうして、ひとりの少年と一頭のトナカイは失踪したサンタクロースを探す事になった。

人気が疎らになる夜間を狙って寛一とトナカイは動き出した。
何処もサンタの衣装を着ていて、どれも寛一には紛らわしく思えた。
だがトナカイはすべて違うと見抜き、彼なら照れ屋な性格からしても人気の無い所を好むはずだと
寛一にアドバイスした。
「この街で、人気が無い場所・・・・・・もしかして、あそこか!?」
まるで何かに、気づいたように寛一は言う。
「何か判ったのかい!?」
トナカイは寛一に問う。
「この街において、人気が無くキミのパートナーが逃げ隠れにうってつけになるといえば
空き家しか無いよ。」
「そうなの?」
「ああ。最近、我が国日本は空き家が増えているみたいだ。この街の空き家の多くは
元の家主は息子が家を出てったきり戻って来なかったり、家主が若いときから
生涯独身のまま人生を終わってその家が空き家になったりしているのが多いんだ。
オレが学校へ行く道にもいくつか空き家があるんだ。その中で、カギがかかっておらず
誰でも出入り出来るという条件を満たしているという空き家なら心当たりある。」
「そ、それじゃ!?」
「ああ。もし、オレの予感が間違って無ければ、キミのパートナーはあそこに居る。」
そう言って寛一はトナカイとともにその空き家の方を目指す。

街の一軒の空き家。
そこに赤色の帽子を被り、赤色の服を着ていて白い口ひげを豊富に蓄えた老人が
半ば不貞腐れているように身を横たえている。
その見覚えのある姿とは俗にサンタクロースと呼ばれているその人である。
本来、子供たちにとって夢を与えるべき存在であるのが何でこの廃屋に無断で入り込み
毛布に身を包めて不貞寝するという事を成しているのか?
実は、先に寛一とトナカイとの会話にあったように、よる年波に抗えぬのに加え
これを機に引退を申し出たにも拘らず、
上の立場の者たちから数々の罵声と難詰の混じった非難を浴び、仕事から逃れようとしたと見做され
懲罰として前年を遥かに超過した制裁的仕事量を課されトナカイとともに日本へ
派遣されたのであった。だが、生憎な事に日本も全世界と同様、経済のグローバル化による
貧富の格差の暴力の嵐が吹き荒れている最中にあるのか、子供たちのクリスマスと
サンタクロースに対する思いは半ば覚めてしまっている。
それを見るにつけ何もかもが嫌になり、業務を放擲しようとしてそれを制しようとした
相方のトナカイを傷つけて逃亡を謀り、現在に至るのである。
(ふん。あんな上の連中にゃ、もうついていけないわい。)
サンタはそう思った。今まで、自分は身を粉にして散々尽くしてきたのに
上の立場の連中は、自分のことを一向に末端の他のありきたりのサンタクロースの一人としか
扱おうとしなかった。そればかりか、最近では自分より後から出てきたヤツばかりを
出世させ若い時から仕事を只のミスを何ひとつ無くこなして来た自分を疎んじ
飼い殺し同然の位置づけに扱って来たのではないか。それなのに引退は許さないばかりか
今年の仕事を前年の三倍あまりを給与なしでこなして来いとは、あまりにも理不尽ではないか。
思い出せば思い出すほどサンタは余計に、仕えている組織の論理に腹が立って仕方が無い。
(こうなったら、今日と明日だけでいい。ここで隠れ潜んでおけば・・・)
そうすれば、サンタは組織からの怒りを買い懲戒免職処分となるだろう。
でもそれで、長年に亘る対価に見合わぬ酷使の歴史に終止符を打てるのなら
それでも構わないと彼にはそう思えて仕方ないのであった。
だが、そこへ共に仕事を組んだ見覚えのある存在がひとりの少年とともに姿を現す。

青春の嵐 第19話「孤独の12月」

2015年12月02日 21時13分03秒 | 青春の嵐
「とうとう、遂にオレひとりになってしまったか・・・・・・。」
夜の街の灯りを見るなり寛一は思わずそう呟かざるを得ない。
父を失い、母を失い、そして今は孤独な我が身が。
多くの店内のあちこちからクリスマスソングが流れてくる。
その明るい調子の曲が、今の寛一にとっては、かえって悲哀さを奏でるように
聞こえてくるのだから何となく複雑な心境である。

寛一は、昼間の事を思い返していた。
昼間、学校において寛一はクラスの男子らと久々にやり合い、彼らを
完全にぐうの音も出ない程までに叩きのめして、その事で担任の敬二に生徒指導室に呼ばれ
そこでも敬二と大口論となった。何故そうなったのか?
実は、母加奈子が相次いで死んだ後、日頃から寛一と仲があまりにも良くないクラスの男子数名が
寛一の父勘吉と母加奈子が
中国籍、在日韓国籍・朝鮮籍の犯罪によって相次いで殺され、とうとう残るは
寛一ただひとりを残すのみとなったのを知り
教室に持ち込んだお菓子とジュースで祝杯を挙げたのが原因だからである。
普通の一般社会の常識と節度を弁えている者であれば、どんなに日頃から不仲であろうとも
相手の家庭内に起こった不幸を祝うなどという非常識は、普通はやらぬし出来ないはずである。
けれど、幼いっていうのは時として無知であり無知であるが故に残酷な面もある。
彼らは、給食の終わった後の昼休み時に学校に密かに持ち込んだお菓子やらジュースやらを
テーブルの上に並べて、尾場・皆村衰亡を祝う祝杯を挙げるパーティーをやったのである。
学校にお菓子やジュースを持ち込むだけでも校則としても如何なモノかというのに
あろう事か、自分らの気に入らない相手の生徒の家庭の不幸を祝うパーティーをやるという
とんでも無いことをやらかしたのである。
それを目撃していた寛一は、当然彼らと口論となり、相手が吹っ掛けて来たのをきっかけに
大乱闘になり、わずか数分で叩きのめしたのである。
その事で敬二に呼ばれ、そこでも喧嘩の理由に相手が自分の家庭に起こった事で
祝杯を挙げた件を述べ、ただでさえ家庭も人生も最悪な状況下に陥っているのに
それを祝うという神経を逆撫でする行為をするヤツに対して、
殴って判らせる事をやって何が悪いのかと持論を述べ、
敬二は理由はともあれ暴力はよくないと寛一を責める。
両者の意見はどこまでも平行線を辿り続け一向に埒が明かない。

あまりの寛一の理屈っぽさに敬二はキレたのか、とうとう感情的になり
寛一に対し、三学期が始まるまでの停学処分を言い渡したのである。
それを聞いてカチンと来た、寛一は去り際に
「この無能教諭め!お前がそこまで田夫野人の暗愚な男だったとはガッカリだぞ!?」
と喚き散らして生徒指導室から飛び出し走り去って行った。
敬二の方も感情的だっただけに、この時点においても冷静的になれない。
そして、二日経った現在に至るのである。
(まあ、考えようによっちゃあ、他の者より冬休みが一週間多く取れたと思えばいいか。)
こうして寛一は、もうすぐクリスマスイブを控えた街を流離い歩くのであった。

青春の嵐 第18話「母と子と」

2015年11月30日 21時46分35秒 | 青春の嵐
勘吉の初七日の法要が過ぎてから、加奈子にはまるで縋る者が
何も無くなってしまった思いのようだった。
法要が過ぎてからの加奈子は何においてもやる気が無く
家事全般において手抜きが目立ち出した。

それを見て、寛一は加奈子がこのまま魂の抜け殻のようになり
若くして呆けてしまい耄碌してしまわなければ良いのだがと周りの誰もが懸念せずには居られなかった。
このとき母である皆村加奈子は四十歳であった。
だが、彼女にはまるで人生の目標とという生き甲斐と感じられるモノが何も感じられない。
それを見るにつけ寛一は子供とは思えぬほど考え込む。
(まあ、無理も無いだろうな。)
そう思うしかない。いくら最後まで自分ら母子を歓迎しなかったとはいえ
自分にとっては亭主だったんだし、世が世なら自分は継母としてあの屋敷に
寛一の母親にして後見人として君臨しようと思えば、情勢とやり方次第では
出来なくも無かっただろう。だが、その夢を台無しにしたのが
戦後から今日まで、古くから日本国内で悪事の限りを尽くし
その度に日本の社会に対し戦前や戦中における、自分らと日本との間に起こった出来事を
盾にして、数々の悪事を正当化し続けて来た在日韓国籍や朝鮮籍の人間と中国人たちだ。
あの窃盗と殺人に加え放火まてしておきながら、戦前・戦中において自分らや自分らの国と
日本との間に起こった出来事の数々を理由にして、無罪を主張し
償うべき罪から逃れようとしたあの糞忌々しさは今でも腹が立つし、
今の母加奈子がこのようになった原因もアイツらだ。
だが、今の寛一にとって問題とすべきなのは今後、もう生ける屍も同然と化した
魂の抜け殻に等しい、加奈子はどうするのかである。
いくら同世代の子らを既に問題にせぬ非凡な寛一といっても所詮は、
来春、中学に上がるべきの子供でしかないのである。
いくら寛一がデイトレードで一日に今の時点で、三千七百万円の平均五パーセントを稼ぐとはいえ
その稼ぎをもってして人に頼むというという事って果たして出来るのだろうか?
本来、義務教育を受ける子の面倒を見るべき保護者である立場の母親が
認知症の老人の如き呆けようを為しているというだけでも世間からは、
如何なものかというのに、小学生の息子に行政福祉とそのための金を出して貰うというのでは
寛一からすれば親孝行をしたつもりでも、
加奈子にとっては母親としての面目を傷つけることでしかない行為でしかない。
学校を休んで母加奈子の面倒を見るという事も又、義務教育を受けねばならぬ立場として
出来ぬ話であるのも、寛一にとって現実に対する呪わしい思いである。
そうあれこれ悩みながら、学校生活をそこそこに奔走している日々を送ってた。

そんなとある晩秋の日の夕暮れ時。
並木道の紅葉が朱に染まるように色づき、黄色くなった銀杏の葉も地面に落ち
それを竹箒で折角かき集めたのを風が撒き散らし、それに竹箒で集めていた
並木道の落ち葉を竹箒で掃いていた人たちが恨めしげにしている。
そんな彼らを横目に、寛一は屋台で買った鯛焼きを食べホットの緑茶を飲みながら
物思いに耽っていた。ところがである。
鯛焼きを食べ、緑茶を飲み干した後、家路に着こうと歩き始めたら
懐のスマホが鳴り響く。それを受け取った寛一はそれを耳に当てる。
通話の相手は警察からであった。それというのも母加奈子が自宅に押し入った
犯人に強姦された挙句、台所にあった包丁で殺されたというのであった。
それを聞いた寛一は、警察署に向かった。
死体の確認に立ち会った寛一は、その死体は間違いなく母加奈子である事を認めざるを得なかった。
それだけでもショックなのに、それから数時間後に別件で逮捕された犯人が
あろうことか父勘吉一家の件で犯行グループの一員として事件に関与し、
その事で裁判所から懲役八年、執行猶予五年の
有罪判決を受けて、今その執行猶予中の在日韓国籍の男性であったという事が
次の日の朝に警察から知らされるにつれ
寛一にとって在日も含む、極東アジア系外国人に対する感情は遂に決定的となった。


青春の嵐 第17話「中秋に滅んだ実家」

2015年11月29日 20時12分06秒 | 青春の嵐
街は賑わっていた。
それというのも街は、毎年の秋に行われている秋祭りだ。
多くの出店も出ており人々の賑わいで活気付いていた。
まるで世の中の不況に対する人々の苛立ちを発散するかのようだ。

寛一はその人混みに混ざりながら色んな所を歩き、
神社に御参りして自分のやる事がすべて上手く行く事を祈願し
御神籤を引く。するとその結果は大吉であった。
そして家路に着く。
だが、それとは裏腹に何か悪い予感がしたのか煙が立ち上っている。
その煙が立ち上っている方角とは、自分や母加奈子をあれほど疎んじていた
父勘吉の屋敷の方角だ。何やら悪い胸騒ぎすると寛一は
自転車を飛ばし駆けつける。だが、現場は消防車と警察が規制線の黄色いテープを張って
人々を規制しているため入れないだが、それでも消防車がまともに入れないほどの
狭い道路があるためかまともに消火活動出来ず屋敷を包む炎が凄まじく
隣接している四方の住宅にも延焼させ全焼させかねないほどの勢いだ。
無論、消防だって手を拱いている訳では無い。消火車両が入れず
消火装備一式を持ったバイクだけでは、たかが知れている。
ならばと、ヘリコプターを使って低空からの消火活動に徹する。
何度もヘリコプターによる消火活動と地上からは消火装備をもったバイク隊員と
地元の人々の協力によって、ひとつのピークは終えた。
だが、火災はまだまだ続く。
寛一には、これをどうする事も出来ず、ただ火災を見ている人々とともに
立ち尽くすしか無かった。結局、火災が鎮火したのは夜に入ってからだった。

そして、その屋敷で焼死体となって発見されたのは
家主の勘吉を筆頭に、寛一にとっては写真でしか見た事がない
歳が離れた腹違いの兄や姉ら、更には顔も知らなければ
名前を聞くのも初めてな親戚、親類縁者全員およそ八十八名という。
更に、寛一が驚いたのはその火災の原因は放火によるものだという。
その証拠に、その焼死体には刃物による傷があったという。
更に決定的な事に、この火災を犯罪行為由来とする案件と成さしめたのは
金目のモノが荒らされたのか金に換えられそうなモノがあらかじめ
この屋敷から無くなっていた形跡があるという。

それから二日後の午後、寛一にとって非常に大激怒すべき結果となった事件があった。
それというのも逮捕された犯人が中国人が五人、韓国人が三人、朝鮮人が二人
在日韓国籍が六人の犯行グループであったのだからだ。
父を親戚たちとともに殺し、金目のモノを奪った上で放火しただけでも許し難いのに
韓国人や朝鮮人に至っては、幼い子ですら輪姦して楽しんだ後、殺害したという。
これだけでも寛一にとって復讐心に駆られかねないのに
彼らは警察の取調室は元より裁判所の法廷でも
「かつて日本が我が国中国や朝鮮を長年に亘って支配し、多くの人民を蹂躙し続けてきた
歴史と比べれば、我等のした今回の事など大目に見て然るべきに値する」
などと持論を展開し、自らの非を認めようとしなかった。
結局、彼らは首魁の中国人の何人かは最高刑となり他の被告もそれなりの有罪を受ける結果となったが
このときを境に、寛一の中国人と朝鮮半島の人間に対する憎悪は深まった。

青春の嵐 第16話「初秋での豹変」

2015年11月29日 15時39分09秒 | 青春の嵐
あの廃墟と化した、施設での件から寛一は人が変わったかのようになった。
相変わらず、バイトとスマホを使った株と外為のデイトレードで大金を増産しては居るようだ。

ただ夏休み前と違うのは、今までのように子供である故の幼さと我侭さ気侭さから来る
小児的な気紛れや生意気さから来る粗暴で尊大さばかりを突出させていたような姿勢は
影を潜め、下手な大人よりも成熟した思考や判断に基づいて深い考えを出す、
まるですべてを見透かした上で戦略と戦術を練り、それを実行したりする偉い方並みのような
器量が身につき出した。要するに、寛一はもはや勉強と喧嘩に強いだけの人間では
無くなってしまったという事である。
そのような在り方から、そのまま遂に小学校生活最後の学年の二学期を迎えた。
学級内の何人かは会話をしては居る。だが、いつものような他愛も無い会話は少なく
その多くは尾場寛一が夏休み前と比べて著しく人が変わったようになってる事だ。
クラスの女子のひとりに言わせれば寛一は今学期を迎えた日からまるで、
偉い立場のオジサンのような難しい表情する事が多くなり、何か神経質になったモノを感じる。

そこへ担任の教諭である石原敬二が現れ朝のホームルームを始める。
いくつか話しをした後、生徒が一度起立し、先生に一礼して着席する作法をした後
ホームルームは終わる。すると敬二は
「尾場。お前に、話がある。職員室に来い。いいな?」
それに対し寛一は、これまでのような何だよ文句あるんかと言いたげな感情を表に出さず
「ああ、判ったよ。」
と素直に答えた。
それを見て、周りのクラスの面々は大いに驚愕した。少なくとも自分らが最後に見た
夏休み前のような姿勢とはまったく違うだけでもというだけでも驚くのに
これまでのような屁理屈や悪態を敬二にしなかったというのが
彼らにとっては、とんでもないほどだ。
そして職員室にやって来る。
そこで寛一は、敬二に対して開口一番に言う。
「んで、何を訊きたいんだ?夏休みに入る前までの事を今頃になって
言うために呼んだんじゃ無かろう?」
そういう寛一の言葉に対し、敬二も
「そうだな。俺も過去の事を今頃になって言い出すほど器の小さい男とは言われたくないんでね。」
敬二もこの、もはやただの生意気な児童では無く絶大な実力と器量に裏打ちされた上での
生意気さ、つまり大人たちと対等に会話し交渉の駆け引きをしてそれなりの譲歩を得るための
術をつけたという、いわば貧しく他人から馬鹿にされ憐れに思われ、
心無い者たちからなけなしの金品を力ずくで奪われたり
舌先三寸や口八丁手八丁で騙し取られる危険性が非常に高く
常に自分らのことを不幸にしかしない人たちが周囲に居る身の上から
成り上がれるなら目的のために手段を選ばず、そのためなら
他者との対立や他者からの憎悪・反感も恐れないという生き方をしてる
強い力と金とそれを生産し続けられる能力を持った者こそが正義という
正に、生き馬の目を抜く現実社会の現実に育てられたような男だ。
いくらサスペンスモノのテレビドラマにおける真犯人に対する言葉みたいな事など
この寛一に言っても、コイツに言わせればそんなの
残酷な人間関係の現実を知らぬ戯言にすら値しないと片付けてしまうだろう。
更に言ってしまえば、寛一にとってテレビドラマ内はおろか
この世に起きてしまうような事件など
現実における人間関係の残酷さと今の社会の致命的な欠点と
国の政策の失敗故に起きてしまった、如何なる存在をしてもどうする事も出来ぬ深い業なのだ。
「何を言いたい?」
その大人びたような姿勢で訊く。
「そうだな。実は、この街の外れにある廃墟と化したモノに
夏休みの間に誰かが入ったという噂があってだな?それがひとりはウチの学校の生徒らしくてな?」
するとそこへ、若手の女性の学年主任が割って入るように言う。
「石原先生。あれは街のならず者が入ってたって新聞では!?」
「おめえは、黙ってろッ!!」
敬二は相手が自分より上の立場である事を意に介さず
その若い学年主任の女性教諭を一喝する。
それとは対照的に寛一は、お前そんな態度をして良いのかよと言いたげに笑みを浮かべ構える。
「さっき、学年主任の先生が言ってたようにウチ(ここの学校)とは関係ない者が
あそこに居たのを確認したんだろ?なら、何を心配する事があろう。」
そう言って寛一は、悠然とした姿勢を崩さない。
来年の卒業式の後、人事によっては東京の日本で高名な一流の学校、
時と場合に遺憾では、生徒は女の子ばかりの学校の教諭か教頭、
運がよければ、雇われの立場とはいえ校長か理事長っていう幸運も無きにしも非ずだろう。
なのに、この寛一の目の前の男性教諭は何をうろたえているのか
余裕のない態度で何の関係ない、しかもいくら若い女とはいえ
自分より上の立場であろう学年主任を怒鳴るという小物っぷりをやらかしたのだ。

無論、寛一とて今日のこのような事まではないにしろ
後になって警察なり、あの廃墟のかつての所有者だった関係者なり何なりを
想定して、自分なりに打てるべき手を実は打っていたのである。
実は夏休みのあの日においてあの廃墟の地下三階で真琴とお楽しみした後、
誰かが上から降りて来る気配を察知した寛一は、既に服を着た後
真琴に、ガンバレルと呼ばれた、その名のとおり形状が砲身状をなした
巨大なガラス製のシリンダーの影に隠れさせると、階段から
降りて来た、男二人組を階段から降りた直後の陰から襲い
当身を喰らわせて気絶させ、意識を失ったのを確認すると
真琴を呼び寄せ、入れ替わるように真琴を先に階段を昇らせ
自分も後に続いた。そして首尾よく出てから、真琴と別れた。
真琴は林の中を去って行った後、寛一自身はしばらくの間は近くの林の潅木に潜んだ。
すると何やら、セダンタイプの白い自動車が現れ、あの廃墟の前で停まり
その車から、四人の男性が降りてあの廃墟の中へ入って行く。
あの男たちが入って行って、六十ほど数えてから寛一は
隠れていた潅木から立ち上がり、ゆっくりと林の中を歩くようにして
立ち去ったのである。
それに寛一は、真琴にあの廃墟の件は安易に口外しない方が身のためだとも言った。
その理由もあの廃墟にあったモノも実は国が、国民にも外国にも口が裂けても言えないような
研究と実験をしていてもし、それが真琴の口から出るなり真琴がネットを使って
拡散するなりやると国は不都合な真実を知られる事を恐れ、
真琴や真琴の家族を口封じで狙う恐れがあると言って置いたのだ。
だから。そのために寛一は別れ際に真琴が舗装されておらずワダチのある道を通らず
林の中を走って行かせたのも実は、途中であの男たちのように
この廃墟に何か用がある者と出逢ったりしないかを懸念した上での
寛一なりの配慮だったのである。

(ふん。コイツ如きにあの施設の何を知っておろうか。あの施設の事を知っているのは
真琴さん以外じゃこのオレとあの車で乗り付けてきたあの四人組みだけさ。)
寛一は、内心を隠していつに無く自信満々で居る。
結局、敬二は寛一が夏休みにあの施設に行った件に関して物証も状況証拠も示せず
画竜点睛を欠いた追求しか出来ず、この日の寛一に対する追求は水入りとなった。

青春の嵐 第15話「姦染」

2015年11月29日 09時16分43秒 | 青春の嵐
かつてガンバレルと呼ばれた、その名のとおり形状が砲身状を成している
ガラス製のシリンダーの巨大容器を色んな角度や倍率で写真撮影して
元の位置に戻ってくる。すると、寛一は背後から抱きつかれてくる。
「な!ま、真琴さん!どうしたんだよ、いきなり何をするんだよッ!?」
寛一は、驚くと同時に真琴が豹変した事に戸惑った。
その表情は、人が変わったかのようにまるで夫との性生活に不満のある
若妻が性的欲求を渇望するかのようだ。
この時、寛一は気づいた。心当たりがあるとすれば、どう考えても
真琴が迂闊に蓋を開けてしまった、あの何らかの薬品が入っていた
パイナップルジュースとヨーグルトを雑巾で拭いたような不快な異臭がした
容器しか考えられない。
こうしている間にも寛一に背後から抱きついた真琴は
顔を赤くさせ恍惚の表情を浮かべる。その目の瞳も心なしか肉体的欲求を渇望しているようだ。

頬や耳元に吐息をかけ、耳の裏を舐めたりしている。
次の瞬間、真琴は寛一にとって耳を疑う事を言った。
「ねえ、寛一くん。お姉さんといい事しよっか?」
それを聞いて寛一は思わず赤面する。
(な、ななな、何を言ってるんだ、こんな時にこんな場所で!?)
寛一は同様してしまったが、すぐに気を正す。
どうやら真琴をおかしくさせてしまったのがあの容器だとしたら
あの容器の中身は、もしかすると元はあのガンバレルに使う材料に使う触媒か何かだったのだろう。
遺伝子操作された人間を胎児の段階で作るに当り、性的機能においてナチュラルを超える
能力を出すために使う化学薬品だったのだろう。ただ、それがここの建物の放置とともに
この容器の中身も経年によって中身が変質し、あの臭いを嗅いだ者に対して
非常に強い催淫効果をもたらしてしまったようだ。
真琴は寛一を自分の前に向かせると、強引に唇を合わせ舌を絡ませる。

彼女と唇を重ね、舌を絡ませ合う内に寛一の股間は何やら始めて男性としての
何かに目覚めるように飛躍的な背伸びを始めだす。
寛一としても、こんなヘソ出しでデニムのホットパンツを穿いた
生足の色っぽい格好しているだけでも
十分、目のやり場に困るくらいなのに抱きつかれた上にキスまでしてもらえて
もうそれだけで、今まで自分の事をまったく相手にしてくれなかったクラスの女子が
この目の前のお姉さんと比較して
凡庸で暗愚で狭量な世間知らずの甘ったれ小娘に思えるほどだ。
このとき寛一は思った。
(そうだな。今は、この状況を楽しませてもらうとするか。今ここで
これを振り払って断ったりしたら、もう二度と無いだろうし。)
ここで彼女からの肉体的な誘いを拒否したら、もう二度とこの人生で訪れないであろう
こんな手の状況を楽しむ方がいいだろう。後の事は、これを済ましてからでも遅くは無かろう。
来年、中学に上がろうかという子供にしては大した思考である。
やがて寛一は真琴と唇を重ね舌を絡ませ合いながら
真琴の乳房を裾を鳩尾で結んだライトグリーンのYシャツ越しに、揉みし抱く。
「ん、んんー。」
乳房を揉まれ思わず真琴は唇を合わせ舌を絡ませながらも喘ぎ声を出した。
そして背負っているリュックと共に羽織っているネイビーブルーのジャンパーを脱がす。
それから一緒にゆっくりと灰色のコンクリートの床に座り込み
更に乳房をシャツの上から揉みし抱く。
そして、シャツのボタンを上から外して行き最後に鳩尾にあるシャツの裾の結びを解いた。
はらりと、はだけて大きめの乳房が露になる。寛一は、真琴の右の乳房を舐め回す。
「あっ!ああーっ」
真琴は顔を赤めながら喘ぐ。
空いてる方の乳房を手の指で巧みに愛撫して愉しむ。
寛一は背後に回るや、真琴の髪の匂いを嗅ぎ耳の裏を舐めて楽しむ。
その度に真琴は、顔を真っ赤にさせながら喘ぎ声を出して悶える。
真琴は寛一にされるがままに乳房を揉まれ乳頭を親指で優しく愛撫されその度に喘ぎ声を出し悶える。
そして、真琴の耳の裏を舌で舐め回し、やがて片方の手でデニムのホットパンツの尻を
撫で回す。そう、次はこの股間に自分のモノを差し込んでくれるという意思表示でもするかのように。
やがて寛一は大股広げている真琴のデニムホットパンツの股間の辺りに手を当てる。
人差し指で、局部の辺りをなぞるように撫で始める。
それに敏感に反応したのか真琴は殊更、苦しそうな息で悶える。
デニムホットパンツの上から局部の辺りを人差し指で上下に撫で、時々グリグリと指先で撫でる。
(おやおや、こんなに過剰に反応するとは。さては・・・・・・かな?)
きっとこのデニムのホットパンツの下は何も下着をつけてないと見た。
そのように寛一は想像した。
彼女は、寛一にせがんでいる。
「そろそろ、いいかい?折角の半ズボン、濡らすのも何だろうし。」
寛一は、そう言って誘いをかけて見る。
「・・・ええ、いいわ。」
真琴は、もう顔を完全に耳まで真っ赤にさせており、意識も性的快楽にしか集中しておらず
半ば他の事も考えられぬほどのようだ。
そう聞くと寛一は、真琴の穿いてるデニムホットパンツにさっきまで生地の上から
股間を触りまくっていた手をやり金色に輝くボタンを親指と人差し指を使って器用に外す。
次にジッパーをじわりじわりと引き下げていく。
そしてジッパーを引き下げられたホットパンツの胴囲を少し広げる。
すると寛一にとって案の定、ホットパンツの下はノーパンのようだ。
真琴はこのホットパンツを下着をつけず直穿きしていたようだ。
(ふふふ。ホットパンツの下は直穿きとは。さぞ動く度に股間が擦れて大変であっただろう?)
それでも尚、その選択肢をあえて採るとは
やはり異性を人一倍渇望しているお年頃故の心の欲求が
そうさせたのかも知れないと寛一は思った。

寛一は両手の指で裾を掴んで真琴が穿いていたデニムのホットパンツを引き摺り下ろしにかかる。
じわりじわりと真琴のホットパンツは引き摺り下ろされていく。
ついに引き摺り下ろされたホットパンツを寛一はおもむろに頬に当てその内側の匂いを嗅ぐ。
さっきまで穿いてただけあって暖かさを感じ、その匂いのかぐわしさを感じる。
流石に、日頃から碌な事をしないために学校や地域のみんなからは
苗字の尾場をもじって"おバカ"と呼ばれるだけの事はある。
そしてそのホットパンツを先に脱がせたライトグリーンのシャツの元に放り出す。
これで真琴はソックスとブーツを履いてる以外は全裸になった。
寛一の方も服を脱いで全裸になる。そして真琴の剥き出しになった股間の局部を
指で愛撫し弄くり回しはじめ、舌で愉しむように舐め回す。
それをされる度に真琴は大いに悶える。やがて寛一が仰向けになりながら
真琴の股間の局部の秘部を舌先で舐め回していると、真琴の方も這うように
やがて寛一の股間に迫り、既に勃起している股間の逸物を手に取り
顔面を赤らめようやく何かを得た目になる。脳内も半ば性的な事以外は
考えられない意識状態なのか目元もあまり焦点が定まらない。
真琴は寛一の逸物を優しく手に取ると、おもむろに舌で舐め始める。
寛一は思わず股間が何か舐め回された感触を覚える。
真琴は最初は寛一の股間の逸物を下で舐めて回したいただけだったが、
やがて口の中に逸物を咥え入れ出し入れを繰り返したり、舌を使って逸物をマッサージしたりする。
寛一も真琴の股間の秘部を舌を使って愛撫したりマッサージするのを続ける。
真琴はしきりに寛一の逸物を口から出し入れしたり口の中で優しくマッサージしたりをを繰り返す。
寛一も真琴の局部を舌先で愛撫し続ける。
お互いの性的なエクスタシーがピークに近づくにつれ、お互いの喘ぎと悶えが早くなる。
やがて真琴は寛一の逸物の先から吹き出た白い粘着液のようなモノが顔にかかり、
寛一も真琴の局部の奥から勢いよく出た体液を顔で受ける。

お互い、息を弾ませながら仰向けになる。けれどそこで終わりでは無い。
真琴は寛一の方に向いて上半身を起こすと、艶やかな色っぽい笑みを浮かべ
今度は自らの乳房を片手で揉み始め、空いてる片方の手を何と自らの股間の局部に
当てるや、中指で股間の自分にとって性的に一番敏感な部分を弄くり出した。
「ねえ・・・・・・寛一くん・・・・・・お姉さんのココに・・・・・・入れて見たい?」
真琴は自らの乳房を揉み、股間の局部の敏感な部分と内径を指で触り続け
その度に苦しそうな息を弾ませながら言う。
それを見せられた途端、寛一の股間の逸物は再び蘇るかのように勃起した。
「ああ・・・したい・・・です。」
寛一は思わず答えてしまう。
「そう・・・なら・・・・・・入れさせて・・・・・あげる・・・ああっ!」
真琴は片手で自らの乳房を揉みし抱き、もう片方の手の指で股間の局部を愛撫している内に
堪らないほどの性的な快楽に近づいて来たようだ。
そして真琴の悶え苦しむのと喘ぎ声は早くなる
「ああぁ――っ!!」
真琴の股間の局部の奥から勢いよく吹き出た体液を寛一は胸で受ける。
それは非常に暖かかったようだ。
ハアハアと息を弾ませながらも真琴は
「さあ、寛一くん。じっとしてて。」と言い、
仰向けになっている寛一の許へ迫り馬乗りになる。
やがて、片手で寛一の勃起している逸物を手に取り自分の股間の位置に合わせる。
「ねえ・・・これから寛一くんのモノ・・・お姉さんのに・・・入れるわよ?」
そう言うと、真琴は寛一の股間の逸物を自らの股間の局部の位置に合わせると
ゆっくりと座るように腰を下ろす。
するとその瞬間、グニュッという感覚とともに
暖かい塊が自分の体内に深々と入り込むような快楽が真琴を包む。
寛一の方でも暖かい粘膜に包まれたモノの中に自分の逸物が深く入って行き
それに自分の逸物が揉まれ始めるような感覚が訪れる。

それから真琴は抜き差しを繰り返すかのように、腰を動かし
悦びに満ちた恍惚の笑顔と表情で悶え喘ぎ声を出す。
寛一も股間の逸物が揉まれ締め付けられる感覚にさいなまれる。
そうしている間にも真琴は腰を上下に動かし続け性的快楽も絶頂に近づく。
「ああ!来る!?寛一くんのモノがお姉さんの奥へと来るわッ!!?ああっ!!」
真琴は息も絶え絶えに悶えながら言う
「ああっ!ま、真琴さんッ!?だ、出しそうですっ!?」
寛一も堪えながら言う。
「い、いいわ!私の中に出していいわッ!!?」
そう聞くと寛一は、心解き放つ思いで全身の力を抜いた。
「うぅっ!」
すると寛一の逸物の先から奥へ何かを注ぐような何かを感じる。
「ああ―っ!」
真琴の方も、自分の体の中に何かが注ぎ込まれる感じを覚えた。
やがて崩れ落ちるように彼女は、自分の体から寛一の逸物を外す様に
離れると体を捻らせ腹這い気味になる。

寛一の方も疲れているだろう。だが、寛一も寛一自身の体も疲れ知らずなのか
真琴のお尻とその肛門と局部を見るにつけ、またしても勃起が始まり
居ても経っても居られなくなる。少しばかり間を置くと真琴の綺麗なお尻に手をやる。
「真琴さん。オレ、まだ足りないんだ。済まん、後ろから入れるよ?」
お尻を突き上げた前のめりに床に伏していた真琴は、
「うふふ。そんなに凄いのね。キミって将来、頼もしい子になりそう。
いいわ、後ろから入れても。」
「それじゃ、やるよ?」
寛一は自分の逸物を手に持って真琴の局部のある位置に合わせ、ゆっくりと迫って行く。
そして、真琴の局部にグニュリと食い込む感触と自分の性的部分が
揉まれたり絞められたりする感触が来る。
寛一は、真琴の背後から何度も抜き差しを繰り返すように腰を動かす。
突いたり抜いたりするような動きをする度に
彼女は大いに悶え喘ぎ声を出す。その表情は狂おしいようだ。
最初は床に伏していた真琴は寛一に後ろから股間の局部を突かれてからは
四つん這いになり乳房はブルブルと震える。
「ああ!いぃ!いいわ~っ!」
真琴は、もう完全に心身とも恍惚に陥っている状態だ。
「だ、出して。出してもいいわよ。出して―っ!ああ―――っ!」
「うぅっ!!」
真琴は自身の体内に再び、何かが噴出されるのを感じた。
寛一の方も、自分の逸物の先から吹き出てしまった思いを感じる。
こうして真琴は、息を弾ませコンクリートの床に伏した。


青春の嵐 第14話「砲身の形状を冠した、生命を創造する機器」

2015年11月24日 22時01分14秒 | 青春の嵐
目の前にある砲身の形をしたガラスのシリンダーを見て寛一は、
思わず目が泳いだ。だが、ここで驚いてる場合では無い。
すぐに寛一はスマホを取り出しこのシリンダーは元よりこの階のほとんどを撮影した。
その撮った写真は少なくとも二十枚はあるだろう。

ひととおり、写真を撮り終えて戻って来ると寛一は
真琴が何かの薬品が入ってると思われる瓶を手に取り
蓋を開けようとするのを見て、何か悪い予感を覚える。
「真琴さんっ!その容器を空けてはダメだッ!!?」
「えっ!?」
真琴は胸の位置で容器の蓋を取る。するとパインジュースとヨーグルトを雑巾で
拭いたような異臭がする。
「嫌っ!何よこれっ!?」
「早くその瓶の蓋を閉めてッ!!」
真琴は寛一に言われるままに、その容器の蓋を急いで閉じる。
「あー臭かったわね。」
「真琴さんも、無闇にそこ等へんにあるモノを触ったり中身を開けようとしてはダメだよ。」
寛一は真琴にそう注意する。
「ごめん。それは拙かったわ。」
真琴は申し訳なさそうに言う。
そうやりとりした後、一緒にこの階を改めて見る。

何かの実験だったのか、あの横向きにある巨大なガラス製のシリンダーで
遺伝子操作とクローンをはじめ各種細胞バイオ技術で人工的に人間を作るための
過程で作られたと思われる人間の胎児らしきモノがある。
どうやら、これらは実験的に作られたものの致命的な短所が判明したため
失敗と判断されたモノがほとんどのようだ。その証拠に、この胎児たちによっては
顔や身体のあちこちが奇形していたり何かマダラのような出来物が皮膚の表面に現れたり
中には、まるで米国のホラー映画に出てくる人外のような異形に成り果てたりしたモノもあった。
それらにしてもこの研究施設が廃墟と化して経年しているだけあって
ガラス容器の中にあるモノ以外は、ほとんどが乾涸びていたり
軒並み腐食劣化や発酵が進んでいた。
当然、近づけばその異臭は想像したくないほどである。
「もう戻りましょう、寛一くん。
「ああ、これの写真を撮ってからな。」
そう言って寛一は、これらの写真をスマホで撮りまくる。
「もう、ここを出ましょう。」
真琴がそうせがむのに対し
「あの水平になってる砲身の形をした巨大なガラスの容器を調べたら
もうここを出るよ。時間からするとこの巨大なガラスの容器を調べ終えて
ここを出ればもう丁度もお昼ご飯どきになるんだし。」
そう言うと寛一は、再びあの例のかつてその名のとおりガンバレルと呼ばれていた
形状が砲身状をした人工子宮装置の元へ行く。

青春の嵐 第13話「我が身の起源」

2015年11月23日 18時47分06秒 | 青春の嵐
廃墟となった建物の中に入った。
外の壁にはコンクリートの黒ずんでいたシミが外壁が
長年放置され、雨風に晒され劣化ぶりを物語っていた。
建物の内部もかなりの荒れ果てぶりのようだ。
足下には、瓦礫や割れたガラスや倒れた物が散乱しており
心なしか微かに異臭も鼻に来る。

足場の悪さに注意しながら、ゆっくり奥へ進むと突き当たりに来る。
そこから左右のどちらかを選ぶ事となった。
左の方を見ると瓦礫と倒れた物が邪魔で向こう側には行けそうない。
結局、右側側を選んでこっちに行く。
少し歩くと、階段の前にたどり着く。
「ここは、上の階に上がるかそれとも下の階に降りるかとなるわね?」
米津真琴は、ここでふと迷う。
「ここは、下に降りた方が妥当みたいだ。」
寛一は答える。
「あら、どうして寛一くん?」
「上の階はどうせ一階と大きな違いは無いよ。それにこういう研究施設は秘匿性を重視する
性格からして肝心の部分は施設から出る機械の騒音や臭いの事を勘案しても
地下に作る方が立ち入り出来る箇所も限る事が出来るし、立ち入る人間も
限られた者しか入れなく出来るし、地下の研究材料を許可無く持ち出そうとするには階段を
利用するしか出来ないようにすればいいんだし。」
これを言われて真琴はハッと思った。確かにそのとおりだ。

自分がここの研究施設をスパイする者の立場ならどう思ったか。
この建物は見たところ地下から一階のに上がるとすれば
エレベーターで一階に行くか階段を上る。これしかない。
だが、自分が研究所の責任者の立場で考えるなら自分らスタッフが必死の思いで研究開発したものを
自分たちの仲間に混じっていたスパイに盗られては堪ったものでは無い。
それならどうするか?自分なら警備員をエレベーターの前と階段の前にそれぞれ一名ずつ配置する。
それまでにスタッフも追いついて取り押さえればいい。

そう考えれば妥当だろう。ましてやこの研究施設は地下に限っては階段しか設けていないようだ。
もしこれが寛一の言うとおりなら、一階の地下への階段口と地下の最深階の上り階段口に
警備員を配置して身元の不審な者が安易に入れないようにするのに加え、駅の自動改札装置や
空港にある国際線の自動チェックイン装置を応用したシステムで
研究所のデータの盗用を困難にする程度のセキュリティは可能になるだろう。
その結果、上の階に上がるより下の階へ降りる方を選択する事にした。
下へと続く階段を一歩一歩と降る。一階から降りる事、地下三階目に到着した。
この部屋の惨状を見るにつけ寛一も真琴もただ呆然とするばかりだ。
「何かもう、瘴気が漂うって感じね。
「ああ。そうだね。正に、これがバイオハザードっていうものならそうだろう。」
寛一は目の前にある生理的に受け入れ難いモノに顔色がはかばかしくない真琴とは対照的に
真剣な表情で今、目の前にある事態を認識しつつ、捜し求めるように足元に中止しつつ
慎重に一歩ずつ足を進めて行く。
すると、そこにあるのは何やらこの研究施設の本命にして心臓部ともいうべき
研究室と思われる広い一室のようだ。
片方の一室はかつて研究スタッフが常駐していたスペースと思われた部屋のようだった。
その証拠に今でこそあちこちガラスが割られ何か化学薬品やら何やらぶちまけられた上に
色んな書類が床やテーブルに散らかっている。
そして、次の大きなガラスの割れている、この部屋を隔てていたとなりの大きな部屋を見ると
そこに形状が砲身状を成しているガラス製のシリンダーを見つけた。

このとき尾場寛一は何もご存知ないが、この砲身の形状をしたガラス製のシリンダーが
実は遺伝子操作をはじめ各種細胞バイオ技術によって作られた精子と卵子を融合し
ナチュラル(自然分娩で生まれた人間)を遥かに凌駕した人間を将来的に工業製品の如く
生み出すための実験装置だったとは知る由も無い。

青春の嵐 第12話「真夏の廃墟の中へ」

2015年11月22日 19時49分14秒 | 青春の嵐
それからも寛一は、相変わらず夏休みをそこそこ過ごしながらもバイトと
ネットトレードに入れあげる日々であった。

とある8月に入って少しの日の事だった。
バイトも休みだし、一学期の終業式に学校から出された宿題も
休みに入って早々に瞬殺の如く完了させたので暇が出来たので
家から出かけて、
街から大きく外た山間の人気の無い場所に行くと何やら廃墟と化した建物がある。
それをじっと見つめる。すると寛一の背後から、年上の女性が話しかける。
「君、ここの建物に何か用?」
振り向くとそこに、ネイビーブルーのジャンパーを羽織り
ライトグリーンのYシャツの裾を鳩尾で結び、ジーパンを内股の所でハサミで切ったかのような
裾になっている薄い青色のデニムのショートパンツを穿いていて、
長さが足首までしかない浅い茶色のブーツにカーキ色のソックスを履いているという
ウェーブのかかった長い髪の若い女が居た。
「お姉さんは、ココを何か知ってるの?」
寛一は質問して見る。
「そうね。少なくとも無関係じゃないわね。そういう君もココに何のなの?
関係ないのなら、立ち入らない方がいいわよ?」
そのお姉さんがそういう。
普通の者なら、ここで引き返しただろう。
だが、寛一は身体能力や器量の非凡さもそうだったが、思考や判断も凡人のような事をやっていては
他人に舐められるという価値観の人だ。"袖振り合うのも他生の縁"という考えに至ったのか
この廃墟となった、かつて何かの研究施設らしき建物の件でこのお姉さんと上手く話を合わせれば
自分の何かが判るかも知れないという考えに辿り着いたからだ。
すると早速、寛一はこのお姉さんにココの建物の件で誘いをかけてみようと考えた。
「いや、実はこの建物、このオレの生い立ちにとって何かのヒントになるんじゃないかと
思えるような気がしてならないんだ。」
「そうなの?この建物って、ジェネティックエンハンスメント(遺伝子強化法=遺伝子操作によって
ヒトの形質を変更・強化すること)において、親という隠語で呼ばれるクライアント(依頼者)の
需要に合わせて技術者のデザインした塩基配列(遺伝子型)どおりの形質(表現型)が
が胚の生育過程で発現出来るように、人工子宮装置を用いる事によって
従来のような胚が母胎からの余計な影響を受けやすく、能力が全体的に拡張性が低く
障害児・奇形児が生まれやすいナチュラル(自然分娩で生まれる従来型のヒューマノイド)に
取って代わる人間を研究していた施設なのよ?それと君が何か関係ってあるの?」
そうお姉さんが言うのに対し寛一はフッと笑い、こう呟いた。
「実はね、お姉さん。オレはこう見えても勉強でも運動でも学校の上級生すら問題にした事はないし
喧嘩でもスポーツの勝負でも負けた事は無いし、この前なんか街のみんなにさんざん
迷惑かけまくってきたオレより目上の歳が七十過ぎのオッサンが、喧嘩勝負で
このオレに負けたのを最後に、頭を丸めて坊主になっちまったほどだぜ?」
それを聞いて、思わず驚くお姉さん。
「何なら、このオレがウソついてないのを証明して見せようか?」
そう言って、寛一は足元にある石の中でも一番硬いと見た石を手に取り
軽く握り潰しにかかる。すると握力で砕かれた石は豆腐のように脆く崩れ地に落ちる。

「ありがとう。もういいわ。君がどれほどの子かよく判ったわ。」
お姉さんは唖然としながら答える。
「この施設を見て回るんだろ?なら一緒に行った方がいいよね?
自己紹介が遅れたね。オレ、尾場寛一。寛一でいいよ?」
寛一がそう答えるとお姉さんも自己紹介する。
「私も紹介するわ。私の名前は米津真琴。真琴さんでいいわ。」
お互いに自己紹介すると、二人はこの廃墟と化していた建物の中へと入って行った。

青春の嵐 第11話「7月に聞こえてくる夢からのメッセージ」

2015年11月22日 10時58分27秒 | 青春の嵐
ゴールデンウィークの出来事からかなりの日数が過ぎ、教室のカレンダーは
もう既に7月である表面の紙が壁に画鋲で押さえられている。
寛一は、相変わらず何か楽しいでも無く、かといって不快という訳でも無く
ただ黙々とスマホを操作している。
無論、ゲームでも無ければLINEでも無い。
では何をやっているのかというと、証券会社にログインしてデイトレードにうつつを抜かし
毎日のように元手の三パーセントを算出していた。

心なしか季節は梅雨時を向かえ、そして蒸し暑い時期を迎えている。
寛一の証券口座における買い付け可能金額は遂に二千万円を超過した。
スマホを使って、授業と授業時間の合間の休憩時間や
昼間の時間を利用してのデイトレードで売買取引による
一日平均二パーセント余りだとしても、小学生高学年としてはかなりの収益である。


とあるまだ梅雨も明けぬ土曜日の昼下がりの事である。
寛一は、昼飯を食べた後、ネット掲示板に昨日の帰り際に
自分に対してカツアゲを試みようと金の無心に来た街のワルを
徹底的に筆舌に尽くし難い憂き目に遭わせたのを自慢する書き込みしてから
パソコンの電源を切ったあと携帯ゲームをしていて何時の間にか眠り込んでいたである。
夢の中で何処かから、寛一に対する怒声とも罵声とも受け取れる声が聞こえてくる。
(一体、何だ?誰がオレに問いかけてるんだ?)
寛一は、足元に霧が立ち込める周りが真っ暗闇の中で、辺りを見回すが
声の主は見つからない。

――尾場寛一よ、思い上がるな!

「な、何だとコノヤローッ!?このオレがいつ、思い上がったッ!!」
思わず声のして来る方向に対して、声を荒げる。
だが、姿を見せぬ声の主は遠慮することなく寛一に対して
年端も行かぬ子供にあるまじき生意気の数々を詰る。

――では、言わせて貰おう。

声の主は、寛一に対してお前には文句が山ほどあるんだと言いたげに、
少し呼吸を整えるかのようにしばらく間を置く。

――お前は父親の勘吉から、母子ともども同居は何で一緒に暮らすことを
  認められないのかお前は、そのことを考えたことはあるのか?

いきなり、核心を突かれ寛一は動揺する。だが、寛一の方とて負けはしない。
「そんなの知ったこっちゃないね。大体オレは屋敷に居る腹違いの兄貴たちと違い、
もともと戸籍上は認められてない男なんだよ。それでも苗字だけ名乗らせてやったのは
向こうとしてはこれが慈悲ってヤツなのさ。
ホントの所はあのジジイにしか判らねえよ。まあ、このオレの
推測かつ憶測で良ければ答えてやるよ。てめえが、もし天の神様だとしたら
あのジジイの職業は何なのか、もういちいち他人に教えられなくても知ってるだろ?
てめえがあのジジイの立場だったら、いくらてめえの女房亡くした寂しさと
抱く女の居ない退屈さはだからって、てめえの屋敷にどこぞの判らん女と子供を
抱え込むを出来ると思うか?おまけに
屋敷にゃ、てめえの息子すなわちオレにとっちゃ腹違いに当る兄貴たちも居るんだ。
ましてや、てめえの職業はこの街じゃ泣く子も黙る街の名士だ。
こういう手の立場にとっちゃ、金にまつわる醜聞だけでも自分を危うくさせるには充分なのに
どっかで素性の判らん女を孕ませた上に、その子供が居るって判れば
世間はどう思うかてめえが世間の人々の声が聞こえない訳じゃねえのなら理解出来るだろーが?」
これに対して、声の主も引き下がらない。

――じゃあ、お前は今の住んでいる家において世帯主の名前が皆村加奈子で
  お前の名前が尾場寛一という、歪であるという現状に関しては疑問に思わないのか?
  お前の家の周囲の家々を見ろ。何処の家庭の表札によっては、家主とそこに
  暮らしている家族の苗字は異なっているだろうか?お前はそれに関して疑問に感じないのか?

「なら、お前はオレに何をしろって言いたいんだ?言っておくが今のジジイにとって
オレもオフクロも異物でしか無いんだぜ?素直に受け入れるっていう
選択肢は向こうには元よりあるはずが無いぜ。」
寛一の持論も間違ってはいない。
ここで寛一の立場になって考えれば母子ともども勘吉の屋敷に寛一が成人になるまででいいから
屋敷に置いて貰えないかと頼み込んでも、断られるのは判りきってるし
仮に認められたとしてもその待遇というか屋敷内におけるカーストは
使用人とか居候よりも格下の最底辺層に位置するのである。
世の中において子供をダシに富裕層の夫人としての主導権を握れるなんて
考えはそう甘くは無いといういい事例であるし子も子で
既にそこに居る子供らより甘えさせてもらえる訳でも無いという事例である。
夢の中で声の主とやりとりしながら、悶々とした想いにかられつつ起き上がり
やがて夢の中での出来事を思い出すように心の中で呟く。
(思い出しても見ろよ。何でオフクロがこのオレが四年生のときに、過去に貰った
お年玉や田舎の農家の手伝いで貰った金やバイトなどで貯めた金で
株や外為をやりたいって言ったときに、反対しなかったばかりかむしろ、
『それらを上手く使って他人からのお金を当てにしない暮らしをしなさい』と言ったか。)
改めて寛一は思った。それというのも過去に優しかった母加奈子が珍しい事に激怒した事があった。
それというのも、寛一が小学三年のときだった。
お年玉と田舎の知り合いの農家の手伝いで得たお金でお菓子や玩具を買ったのが原因だからだ。
お菓子や玩具を買うのは、この歳の子供なら致し方ないモノなのだけど加奈子としては
それを認める訳には行かなかった。加奈子はお菓子や玩具を買ってきた寛一を
暗愚で救いようの無い出来損ないと口汚く罵った。
寛一としては何でそれがいけないのか判らず、ただ泣きじゃくるばかりだった。
そして泣き明かした翌日に加奈子は、寛一に対して打って変わっていつものように優しく穏やかな
笑顔で諭すように、自分が叱った理由を折角、自分も含めて周りの人たちが寛一が
将来、自分の器量と才覚だけで生きていけるために貯めてそれを運用するのを願って
あげてくれたのを寛一が目先の道楽のために使ったのが悪いからいけないのだと説明したのである。

その事を思い出すにつけ、改めて寛一はお金とは自分を助けるために貯めて
自分を援けるために運用するためにあるものなのだと感じるのであった。