味わい一筆

季節感ある暮らしをいっしょに楽しみましょう

床の間道徳

2015-02-28 03:28:35 | 日記

 

 

 

子どもの頃の記憶をたどると、床の間には大きく口を開けた虎の掛け軸が掛けてあった。多分父親が寅年生まれなので、家長に敬意を表して掛かっていたのだと思う。それに花瓶や置物まで虎だった。

 床の間のことで、遠い昔のなんとも説明のつかない忘れられない体験を思い出す。児童相談所に勤めていた頃、石井十次が創立した福祉施設を訪問したことがある。そこに「密室教育」の写真が展示してあった。

十次は部屋に子どもたちを一人ずつ呼んで、向かい合いながら、その子どもの悩みを聞いてやったり、十次の考えを伝えたりしたとのことだった。最近では、実の親子でもなかなかできないことである。

教え諭すその部屋の正面には、千尋の谷の虎の絵画が飾ってあったのを今もはっきり覚えている。

私たちも育ちながら、言ってはならぬこと、してはならぬことを床の間から学んだ気がした。ふとその時、床の間道徳という言葉が浮かんだ。

 先日、お茶の先生から案内されて出かけた利休忌では、床の間に利休像がかかげられ、供茶といって天目台に載せられたお茶が菜の花に並べて供えられた。

 床の間は今も変わらず何か教えてくれる。お茶の床の間は特に心に響く掛け軸があり、いつも自分の小さきことに気づかされる。昨日は「脚下を看よ;足もとを見よ」だった。 (;一_一)