ある日の気づき

国際司法制度の問題点

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1. 国内法での司法制度との比較
2. 事実認定の問題
3. 「起訴便宜主義」の国際刑法版の問題
- 事例:コソボ
- 事例:国際刑事裁判所 (ICC)
- 事例:イラク戦争とケイトリン・ジョンストンの論点
- 事例:ICC によるプーチンへの「逮捕状」発行←別記事に分離
- 事例:ICCのアフリカでの所業と御用学者の言説
4. Karim Ahmad Khan
付録:用語の意味:国内法での司法権の範囲および限界について
更新履歴と同カテゴリの記事←別記事に分離

はじめに^

本ブログでは、現在進行中のウクライナでの武力紛争を国際法の観点から議論する記事を多く
書いてきた。1つには、善/悪の議論より合法/違法の議論の方が客観性を確保しやすいから、
もう1つ、現在、日本を含む西側諸国での国際法に関連する議論の歪みを指摘したかったという
のが、主な動機である。事実について意見の一致を見れば、法学の概念や条文の適用については、
ある程度まで個人の価値観と切り離した議論は可能だからだ。

しかし、法学という学問では、国際法を*実際の司法手続きとして*現実に適用する際の問題
全ては扱わないし、そもそも扱えない。法は「規範」であって「事実」ではなく、「事実」の
大半の側面は法学の範囲外にある。さらに、司法制度そのものは、通常、法学上の議論において
(暗黙の)「前提」であって、議論の対象にならないことに注意する必要もある。

とは言え、一般論としてなら、国際司法制度の問題点についての法学者による考察は存在する。
下記の論説は、多くの論点を整理していて、貴重なものだと思う。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yearbookofworldlaw/35/0/35_7/_pdf/-char/ja
「時代に迎合することなく,そのときどきの国際社会の現実を見極めたうえで,現行の制度を,
その根源から深く分析し,そして,あるべき制度の姿を求めていくという手法が国際法学の
普遍的な道であるということは,筆者も信奉するところである。」

下記も、簡単にネット検索して見つかる範囲での他の記事にはない観点を提示している。
https://www.waseda.jp/top/news/37875
「武力紛争における犠牲者の救済 国際法の役割と限界」
なお、国際法の限界について、下記の書籍(英文)が無料公開されている。
https://iuristebi.files.wordpress.com/2011/07/the-limits-of-international-law.pdf
Jack Goldsmith and Eric Poser, The Limits of International Law.
http://www1.tcue.ac.jp/home1/k-gakkai/ronsyuu/ronsyuukeisai/49_2/takeuchi.pdf
〈書評〉ジャック・ゴールドスミス、エリック・ポズナー著『国際法の限界』
オックスフォード大学出版、2005年 竹内 雅俊
英語の書評
とは言え、少し眺めた範囲では、問題意識が筆者と必ずしも重なっているわけでもなさそう。
つまり、以下の議論での論点は、上記の諸文献の内容とは独立に考えたものだと断っておく。

1. 国内法での司法制度との比較^

さて、よりなじみがある国内法での司法制度と比較対照して、国際司法制度の問題を考えて見る。
まず、国家間の関係についての国際法(国際公法)は、国家主権の尊重と、主権国家の対等性
という2大原則から、安全保障理事会の決定を根拠にする場合以外については、民法的な性質に
ならざるを得ない。というか、民法とは異なり、当事者の合意なしには、そもそも裁判を開始
できない場合が大半。
https://www.enotes.com/homework-help/what-main-limitations-international-law-provide-474806
What are the main limitations of international law? Provide examples.

次に、個人を適用対象とする国際法、つまり国際私法や国際刑法については、裁判所の管轄権が、
まず問題になる。「国内法の域外適用」つまり、ある主権国家の国内法を、その国家の主権が
及ばない地域での出来事に適用する事が、どこまで正当化されうるかという問題とも関連する。
つまり、そもそも、どこにある、どういう裁判所が、どんな根拠法を元に裁判を行い得るかが、
大問題になってしまう場合も多い。一つの国の中での「事件」については、あり得ない問題だ。
なお、国内法の域外適用の問題については、アメリカの横暴ぶりを例にとるのが分かりやすい。
中国企業ファーウェイの幹部が、カナダで長期間拘束されていた事件は、典型的なものの一つ。
https://www.asahi.com/articles/ASP9T02QPP9SUHBI024.html
「米国から詐欺罪などで起訴され、カナダで拘束されていた」
という記事では、肝心な背景事情が明らかにされていない。下記の記事の一節に注目しよう。
https://www.bbc.com/japanese/58688387
「米政府は、孟氏が英金融大手HSBCに対してファーウェイと関連会社スカイコムの関係を偽り、
アメリカのイラン制裁に違反させようと仕向けたものとみている。」

これが問題の「国内法の域外適用」。「アメリカのイラン制裁」についての*国内法*を根拠に
アメリカ司法省が、アメリカの主権が及ぶはずのない場所での出来事について、アメリカ国籍を
持たない個人について、カナダ政府に拘束を要請し、カナダ政府は、要請に従ったのである。
なお、アメリカの「イラン制裁」が6か国協議結果を一方的に破棄した違法なものである件は
ウクライナでの武力紛争に関連する国際法」で触れた。
こういう案件について歯切れよい議論をしてくれる法学者は、少なくとも西側諸国の言論空間に
おいては、ほとんど、お目にかかれないので、個人の倫理観で判断しよう。アメリカとカナダの
所業は「無法」としか言いようがない。対抗措置である中国によるカナダ人の拘束と訴追は「自助」
(もしファーウェイ幹部が訴追されてしまっていた場合には「復仇」)にあたり、国際法上は合法
である。そして、アメリカとカナダのした事の違法性は、変わらず残っている。

2. 事実認定の問題^

国内法での裁判においても、重大な誤審の主要原因は、法の解釈ではなく事実認定の誤りである。
事実認定は法学の範囲外であり、大半の法の専門家は、事実認定の方法論についての特別な訓練を
受けてなどいない。事実認定は、さまざまな科学の手法を応用して、解決されなければならない。
例えば、社会科学的な聞き取り調査や自然科学の応用などがありうる。

しかし、司法制度における事実認定での最大の問題は、「誰が、どのように、事実を調査するか」
という部分での公平性/妥当性の確保だと考える。典型的な問題例を挙げよう。
https://newsphere.jp/world-report/20180503-1/
「シリアへの人道的介入に見える国際法の限界」
という記事がある。この記事では、「シリアが一般市民への化学兵器攻撃を行った」と当然の
ように前提されているが、これは、「極めて疑わしい」というより「虚偽のプロパガンダ」と
判断すべきだろう。
オルタナメディア上では、さまざまな具体的な議論があるわけだが、ここでは、もっと素朴に
「「動機」から「容疑者」を絞る」ことを考えよう。シリアは、反政府勢力に対し、通常兵器
での戦闘で優勢を確保していた。化学兵器の使用は明示的に国際法で禁止されているため、
これまでの数多くの国際紛争において西側諸国が武力介入する*口実(根拠ではない)*として
利用されてきた経緯(というか歴史的事実)がある。つまり、シリアには化学兵器を使用する
動機がない。一方、反政府勢力側には、支援者である西側諸国の介入の*口実*を用意すると
いう明白な動機がある。この、あまりにバカバカしいほど明白な構図は、頻繁に繰り返されて
来たため、西側言論空間での「化学兵器使用への非難」めいた話に対しては、プロパガンダと
判断しておいて、明白な証拠が公開されない限りは、その判断を維持するのが妥当と考える。
(「証拠の公開」という基準は重要。ナウリヌイとかスクリバリとか「ノビチョク」による
「毒殺未遂事件」が繰り返されるたびに、ロシア側は証拠となるサンプルの公開/提出を要求
して、西側諸国は拒否する構図が繰り返された。なお、ノビチョクによる「毒殺未遂」という
事態そのものが、そもそも奇妙なのだが、西側言論空間では、なぜか、誰も突っ込まない)。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yakushijihiromasa/20200904-00196587
「ノビチョクは、VXの数倍の毒性があるとされます。」
「ノビチョクは、いくつかの神経剤をあらわし、ロシア語で「新人」を意味します。医学的
にはコリンエステラーゼ阻害剤に分類されます。」
「主にアセチルコリンエステラーゼを阻害するものとして、有機リン系農薬(マラチオン
[商品名マラソン]、フェニトロチオン[スミチオン]など)が有名です。その他、悪名高き
VXやサリンなどもコリンエステラーゼ阻害剤です。」
「ノビチョクはもともとVR製剤でしたが、改良(改悪と言いたいが)が加えられ、VXよりも
遥かに高い致死性を持ちました。」
「VXは短時間で症状発現して死に至るので、助かった例はありません。」
さらに、サリンが地下鉄で撒かれたとき、防護服なしで被害者に近づいた人が二次被害を受け
ていたが、「ノビチョクでの毒殺未遂事件」では「被害者」当人以外で「被害」直後に現場に
近づいた人物には、影響を受けたらしき人はいない。そもそも、ノビチョクの製法は西側諸国
にも知られているのに、なぜいきなり「ロシアによる毒殺説」が、他に証拠らしきものが何も
ないにも関わらず、大見出しで事件直後に報道されるのだろうか?日本の戦後「 逆コース」が
始まった頃、「松川事件」の 発生翌日に、何も捜査がされていない中で共産党犯行説の談話
政府から出された件とか、少し歴史を学べば、こういう使い古されたプロパガンダへの対応は
難しくないはずなのだが ....

なお、西側諸国が、本当に化学兵器使用を憂慮しているかは、大いに疑問である。かって
イラクが「アメリカの友人」であった頃、イラクはイランとの紛争化学兵器を使用した
それで、イラクは西側諸国から制裁を受けただろうか?いや,制裁を受けたのはイランで
イラクは、アメリカを後ろだてにした湾岸諸国から、ますます多くの支援を受け続けたため、
紛争初期のイラン優勢は、覆されていった。そもそも、イラクが「何の前触れもなく、突然
始めた侵略」だが、西側諸国が国際法違反と大騒ぎしてフセインを非難することもなかった。

3. 「起訴便宜主義」の国際刑法版の問題^

日本の国内法では、検察が起訴するか不起訴にするかを決める事について、特に説明責任は
課されていない。これが「起訴便宜主義」である。このことから、検察官が公平/公正だと
前提できない状況では、裁判以前の問題で、「法の執行」が「正義」と乖離してしまう。
日本の国内法では、検察審査会という制度が問題の「歯止め」だと想定されているが、その
検察審査会制度の運用の公平/公正性が確保されているかについての疑問もある。
一方、国際刑法では、同様な問題への「歯止め」らしきものが、そもそもない。

事例: コソボ^
https://ja.wikipedia.org/wiki/コソボ紛争
「セルビア政府や多数の国際的な圧力団体は、NATOが紛争中に戦争犯罪をしたと主張している。
特に、ベオグラードにあるセルビア公共放送の本社など、軍民共用の施設に対する攻撃に関して
このような見方がもたれている。ICTYはこれらについても調査を命じた。
ICTYは、NATOの民間人に対する戦争犯罪について訴追を進める権限がないと宣言した。」 
つまり、NATO 関係者は不起訴。なお、「多数の国際的な*圧力団体*」なる表現は、中立性を
疑わせる。これが、ロシアや中国の問題なら、ほぼ確実に*人権団体*などと書かれただろう。
# ↑「基本中の基本」の「衡平の原則」」を忘れている ICTY は「法理」で落第。
# 下記は「事実認定」でも落第であることを示す事例。
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2138.html
「戦争犯罪の罪に問われていた元セルビア大統領ミロシェビッは無罪だった!」
スロボダン・ミロシェビッチは、全ての西側諸国の報道陣と、事実上すべてのNATO諸国の
政治家から中傷された。ミロシェビッチは、「バルカンの虐殺者」呼ばわりされ、ヒトラーと
比較され、大量虐殺を起こしたとして非難された。さらに、その虚像を利用して、セルビアに
対する経済制裁だけでなく、1999年のNATOによるセルビア空爆とコソボ戦争を正当化した。」
「ミロシェビッチの死後10年経った今、ICTYは彼が結局有罪ではなかったことを認めた」
ICTYは、2590ページからなるカラジッチ評決文の中の1303ページを使って、その事実を
ひっそりと記載していたのだ。こんな長文の判決文をおそらくほとんどの人が読む気に
ならないであろうことを十分わかった上でのことだ。」
# 困った事に、こういう「司法関係者による犯罪」としか表現しようのない不正を裁く
# 仕組みや予防する仕組みは、国際刑法には用意されていない。ミロシェビッチは、
# 暗殺された疑いがあり、状況は真っ黒。∵ICTY 以外の医師による医療検査が阻止された。
「ミロシェビッチが心臓発作で死んだのは、ロシアでの心臓手術の要請を法廷が却下した
わずか2週間後のことだった。彼が独房で死んでいるのを発見されたのは、彼の弁護士が
ロシア外務省に「毒殺される恐れがある」と書いた手紙を届けてから72時間も経たない
うちのことだった。」
そもそもセルビアへの「告発」自体、権限のない人物が根拠を示さず行なったデタラメ
∴事件全体の構図から、「西側マスコミも加担した意図的なデッチ上げ」にしか見えない。
特に「仮に告発が事実だったとしても、NATO の空爆を含む武力攻撃は、違法=戦争犯罪」
という国際法の法理を無視した報道は、西側マスコミのデッチ上げへの加担の有力な証拠。
また、明らかに組織的な犯罪を行ったコソボ解放軍の指揮官が無罪になるなど、西側諸国が支援
していた側への対応と、西側諸国の不法な攻撃対象となったセルビアへの対応の差も、不公平/
不公正の極みとしか思えない。
「セルビア政府の報告によると、1998年1月1日から1999年6月10日までの間に、コソボ解放軍は
998人を殺害し、287人を拉致したとしている。また、NATOによる統治が行われていた1999年6月
10日から2001年11月11日までの期間で、847人が殺害され、1154人が拉致された。」「アルバニア人のハラディナイ首相は、コソボ解放軍の部隊を指揮した元指揮官であり、2004年
12月にコソボ議会で72票の賛成をうけて首相に就任したばかりであった。ハラディナイ首相は
2008年4月、一審で全ての容疑について無罪となった。」
↑結論: ICTY が行った事は、裁判の名に値しない、単なる茶番劇。

セルビア空爆被害についての写真や、コソボ紛争の背景については、下記などを参照。
https://on-the-road.co/?p=3967
https://world-note.com/kosovo-conflict/

つまり、裁判官の公平/公正性の確保だけでなく、検察官、さらには、事実調査/捜査担当者の
公平/公正性確保において、国際刑法は大きな問題をいくつも抱えている。

事例:国際刑事裁判所 (ICC)^
たとえば、国際刑事裁判所には、基本方針に問題があり、真の公平/公正性が期待できそうな
組織とは思えない。つまり、「西側諸国の(人種的?)偏見や勝手な政治的思惑」を排除する
歯止めが、一切考えられていないからだ。この観点は「(西側諸国の)国際刑法の専門家」や
「(西側諸国の)人権団体」から、残念ながら、しばしば無視されている。
https://hrn.or.jp/activity2/j-ICC%20crime%20of%20aggression%20statement.pdf
「安保理は、平和と安全に関し責任を負う機関であり、侵略の罪に関して認定を行う第一義的
責務を負う機関であるが、安保理が侵略に関する排他的な権限を有すると考えるべきではない。
過去の事例に鑑みても、安保理が違法な武力行使に対して、機能を適切に果たさないことは
少なくなく、常任理事国による拒否権の行使によって明らかな侵略の事例も侵略と認定され
ない危険性もある。
安保理が何らの行動にでない場合、ICCが侵略罪に関し、管轄権を一切行使できないことに
なるならば、ICCの独立性は大きく損なわれることとなる。」
などと、無邪気に書いているが、ICC が公平/公正に「侵略」を判定できる保証もないまま、
その「独立性」だの「管轄権付与」だのが軽々しく論じられると思っているらしい。
# 別記事で言及 した国際法の意味についてのケイトリン・ジョンストンの論点と関連
# 下記のニュースは、ICC は組織原理自体に根本的な欠陥があることを浮き彫りにする。
米国上院議員12人 ICCカーン首席判事に警告書送付
イスラエルを標的にしたらお前を標的にする
「ICC は憲章により、関連政府が自ら取り締まることを望まない、または取り締まることの
できない場合を除き、いかなる場合でも手続きを進めることを禁じられている」
# 「関連政府が自ら取り締まることを望まない、または取り締まることのできない場合」とは、
# 「西側諸国の人間は*何をしようと*」の言い換えに過ぎない。
「令状を発行するということは、イスラエルの法律、法制度、民主的な政府の形態の正当性に
疑問を投げかけることになる」
# 歴史を客観的に見れば「イスラエルには正当性がない」との主張の方に説得力があるわけだが、
# *疑問視することすら容認しない*わけだ。「イスラエルの…民主的な政府の形態」とやらは、
# パレスチナ人への差別が前提な点では、以前の南アフリカでのアパルトヘイト前提の民主制同様
# (e.g.↑悪名高かった「パス法」同様の法律が存在する)、パレスチナ人を殺し続けている点では、
# 原住民を殺しまくっていた頃のアメりカと同様で、全人類的視野からは正当性のかけらもない。
「もしあなたがイスラエル指導部の逮捕状を発行した場合、我々はこれをイスラエルの主権に
対する脅威であるだけでなく、米国の主権に対する脅威であると解釈する」
# 要約: 法制度としての ICC は、*米国など西側の無法国家が存在するという現実*に合わない。
# ∴実際的な意味は、*米国など西側無法国家集団プロパガンダ機関の一部*でしかない。

事例:イラク戦争とケイトリン・ジョンストンの論点^
イラク戦争を「過ち」と呼ぶのはやめろ:物語のマトリックスの端からのメモ
「もしイラク侵略が「過ち」だったら、欧米政府高官はハーグの独房で暮らし、無数の
専門家やジャーナリストは小売店のレジで働き、アメリカ外交政策は大規模な劇的見直しを
受けたはず」
「それは冷静に計算された決定で、まさに意図した効果をもたらしたのだ。欧米エネルギー
権益の増大、より広大な地政学的支配、主要地政学的地域におけるアメリカ戦争機械の拡大」
「イラク侵攻が過ちだったら、そのようなことが二度と起こらないようにするため変更が加え
られていたはずだ。将来同じ様なことをするのを徹底的に意図しているので、こうした変更は
決して行われなかった」
「法律が全ての人に適用されない場合、それは法律ではなく、ただの腐敗」
「イラク侵攻20周年というだけでなく、アメリカの戦争犯罪に対する国際刑事裁判所ICCによる
起訴を招く可能性があるため、ICCによるロシア戦争犯罪の証拠収集のパイデン政権による支援を
阻止するため国防総省が介入した数日後に、プーチン大統領が国際刑事裁判所から逮捕状を出さ
れたのは滑稽」
イラク戦争での欧米の行為/Daniel Mayakovski
「最初の1カ月だけで1万5000人以上のイラク人が死亡した。
その後も100万人以上のイラク人を殺害し続けることになる」
「サダム・フセイン(かつてのアメリカの同盟国)がアルカイダとつながりがあると捏造した。
アルカイダは彼ら自身が東洋で資金を提供し武装した組織だ。
「実際、10年後、現在の国家安全保障顧問のジェイク・サリバンは、ヒラリー・クリントンと
共に、対シリア戦争でアルカイダはアメリカと同じ側にいたと認めている」
「これを糾弾したウィキリークスのジャーナリスト、ジュリアン・アサンジは投獄され、
175年の禁固刑を言い渡された」
「イラクで犯罪を犯したのはアメリカだけでなく、その同盟国も同じだった」
「国の国際資金、イラク博物館の金と考古学的な宝石を本物の盗賊のように略奪」
「「ジャーナリスト」ですら、米軍とともにイラク人から盗賊をしていた」
「米国と英国の税関は、アトランタ、ボストン、ワシントン、ロンドンの各空港で、
イラク侵攻の取材から戻ったジャーナリストから、最大15点の絵画、各種武器、
金メッキの装飾品を押収」
「イラクには500億円以上の金準備があったが、米国とその大量虐殺の協力者がイラク侵攻の
際に盗んだものである」
「盗まれた金塊はどこに行ったのか、サダムではなく明らかにイラク国民のものであった」

事例:ICCのアフリカでの所業と御用学者の言説^
下記の記事は、国際刑法の専門家によるものらしいが、歴史への無知か、それとも恥知らず
なのかは知らないが、平然と、以下のように書いている。
https://www.waseda.jp/inst/weekly/academics/2017/11/17/29478/
「国際刑事裁判所は、犯罪にかかわる国家の国内の刑事司法制度が十分に機能していない、
あるいは機能できない場合に審理を行う裁判所である。先進国の国内で条約の対象となる
犯罪行為が行われた場合、一般的には自国の刑事司法制度での裁判が行われる。そのため、
国際刑事裁判所が主に役割を果たすのは発展途上国の場合に絞られる。実際、現在手続きが
進行中の事案のほとんどは、アフリカ諸国に関するものである。

かって日本も苦しんだ不平等条約の問題、例えば「一方的な治外法権」問題など知らぬ存ぜぬ
フリで済んでしまうらしい。国際刑法学者とは、ずいぶん気楽な商売のように見受けられる。
そもそも上の文章を書いていて「偏見」に満ちている自覚が持てないとは、どんな感性なのか。
# ICC の実態については、下記のような痛烈かつ正当な批判がある。
国際刑事裁判所 - アフリカへの外国介入への反対を犯罪化するメカニズム
「アフリカの ICC は、米国/EU/NATO 軸の法的機関として機能しており、その役割は、
アフリカにおけるこれらの勢力の干渉に対するあらゆる反対を犯罪化すること」
「ハーグの偽善」-国際刑事裁判所が
ロシア人を簡単に起訴し、イスラエル人を起訴しないのはなぜか?
「国際刑事裁判所(ICC)の起訴の大半がアフリカ大陸の人々に下されたものである
ことから、ICCをアフリカ刑事裁判所と改名すべきだという意見さえある。」
12年前、NATOは「民間人を保護する」ためにリビアを空爆し、数万人が死亡、国を廃墟に
「リビアに対するNATOの攻撃に至るまで、... ICCは ムアンマル・カダフィとリビア政府の
他の主要メンバーに対する起訴を急いだ」
「このように、 ICCは、アフリカへの攻撃を正当化し、これらの攻撃への反対を犯罪化する」
カダフィ大佐のリビア/BykahC著
「国家資源を国民のために利用した政治家」
「医療費、教育費は無料、約2000ユーロの高給、アパートや車の購入のための無利子ローン、
個人事業を 始めるための2万ユーロの補助金などが提供された」
「2011年、リビアはNATOとアメリカによって破壊され、現在に至るまで混乱が続いている。
NATOが最初に破壊したのは、リビア全土をきれいな水で灌漑し、現代世界の奇跡と考えられて
いた地下水路システムだった」
「リビアの人々は、進行中の戦争だけでなく、きれいな飲み水の不足からも命を落としている」
# ↑ NATO の所業は、どう見ても戦争犯罪だが、ICC は捜査しない。

国際刑法の適用は、前記のコソボ紛争の場合もそうだったように、特別法廷を設置して行う事も
できるが、事例を眺める限り、国際刑事裁判所と同じ問題を抱えている。
https://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/sc/special_courts/
https://www.hrw.org/ja/news/2009/06/01/236735
「ルワンダ国際刑事裁判所が“勝者の裁き”を下す危険
法廷はルワンダ愛国戦線による犯罪も、しっかり追及を」

こんな願望が、実現しなかったのは、言うまでもない。公平/公正性を担保する仕組みのない
現時点での国際刑法制度で、裁判官や検察官の良心に期待するなど、机上の空論に過ぎない。

4. Karim Ahmad Khan^

ウクライナでの「ロシアの戦争犯罪」の捜査を担当する国際刑事裁判所の検察官になった
*イギリスの弁護士*について、少しだけだが、関連情報を引用しておく。
なお、ウクライナがドンバス地方で行った戦争犯罪について、ICC が捜査を行う気配はない
ことや特別法廷設置の話もない事に、まず注意しておくべきであることは、言うまでもない。

Karim Ahmad Khan: The punchy lawyer who uses weaknesses to win cases
"Many have heard about him, but have you read about him? Karim Ahmad Khan, the
defence lawyer representing Kenya’s Deputy President William Ruto at ICC is a British
lawyer, a specialist in international criminal law and international human rights law.

He is also the lead lawyer who saw former secretary to the cabinet and head of civil
service Francis Muthaura acquitted of his charges at ICC, prompting DP Ruto to take
him on board to lead his defence team, comprising David Hooper, Shyamala Alagendra,
Venkateswari Alegandra and Essa Faal.

One of his legal duties was working as a Senior Crown Prosecutor at the British Law
Commission. Khan is also a member of the Queens Council. The approved counsel for
Britain’s Attorney General is also a pundit in asylum law. In 2005, due to his
rigorous knowledge in international criminal and human rights, he was offered a post
in Iraqi Special Tribunal (IST) at the Appeals Chamber.

Khan’s admirers regard him as a guy who has a plethora of knowledge in law, while 
his critics argue that he is fond of politicising legal debates."

本ブログの筆者としては、引用箇所の最後の一文に注意を喚起しておこう。イギリスは NATO
諸国の中でもウクライナへの武器援助などの推進に熱心な国であるという*政治的*事情にも。
なお、ここでの政治とは、具体的には、「 アフガニスタンでの米軍の戦争犯罪全てを免責する
などと提案したことなどを指すようだ。

ところで、Karim Ahmad Khan は、ケニアでは国際刑事犯 Francis Muthaura の弁護を担当し、
無罪を勝ちとった人でもあるということだ。
https://www.bbc.com/news/world-africa-21742410
Francis Muthaura: ICC drops case against Kenyan accused

この Francis Muthaura という人物は、下記の記事を読んだ限り、かなりいかがわしい人物に
思える。つまり、そういう人物の弁護を引き受ける弁護士だという事実にも注意しておきたい。
https://kenyastockholm.com/2011/02/14/stolen-presidency-who-is-francis-muthaura/
# 前記アフリカでの ICC の悪評の引用元記事で、実務上の資質への疑問も示されている。
「著名なアメリカ人弁護士スタンリー・コーエンが、カリム・カーンのカイロでの発言を
取り上げた。コーエンは、カーンは「ハマスが、カッサム旅団が、何をしたか、いつ、
どこで、どのように、何が起こったかについて、むしろ断言的な主張をした。独立した
調査もなく、独立した証拠もない中で、ある程度プロパガンダの歪曲や代替的な情報に
基づいている」と述べた。さらにコーエンは、「もし私がICCでパレスチナ人を弁護する
弁護士の一人であったなら、検察官の発言を考慮し、彼に退席を求めるかもしれない」と
付け加えた。」
「さらに悪いことに、国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン検事がイスラエルに出張...
彼はすぐにパレスチナのマフムード・アッバス大統領やパレスチナの人権団体と会う計画を
立てた。しかし、占領地に拠点を置く人権団体は、彼の面会要請を拒否した。
独立人権委員会(ICHR)のアマル・アルドワイク事務局長は、「この訪問の扱われ方は、
カーン氏が独立したプロフェッショナルな方法で仕事を扱っていないことを示している」
と述べた。」

付録:用語の意味:国内法での司法権の範囲および限界について^

https://www.watatani-houmu.com/2040
司法権の範囲内?範囲外?司法権の限界?について
2016.09.06
司法権について
司法権とは具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する
国家の作用のことを言います。(通説)
具体的な争訟(法律上の争訟)とは
1、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であること。
2、法律を適用することにより終局的に解決することができるのものであること。
が必要であるとされています。
よって、上記2つがそろって初めて、法律上の争訟となり司法権の範囲内に入ってくることに
なります。つまり、上記の内1つでもかけると司法権の範囲外となり裁判所は判断ができない
ものになります。これが司法権の範囲外ということです。

司法権の限界とは?
司法権の限界とは、司法権の範囲内ではあるけれど、裁判所が司法審査をしない、又は司法
審査ができない場合があることをいいます。
司法権の範囲外と限界の違いには注意してください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/司法
「具体的な争訟」にあたる事件であっても、憲法76条1項に規定する裁判所が審査できない
事項がある。これを司法権の限界という。司法権の限界には、憲法が明文で定めた限界や
国際法上認められた限界、憲法の解釈による限界がある。
憲法の明文に定めた限界による裁判に不服があっても、更に通常の裁判所に訴えることは
できないと解されている。
 1.   憲法が明文で定めた限界
        議員の資格争訟の裁判(55条):議員が所属する議院の権限
        裁判官の弾劾裁判(64条):国会議員で構成される裁判官弾劾裁判所の権限
 2.   国際法によって認められた限界
        国際法上の治外法権(外交官、外交施設の治外法権など)
        条約による裁判権の制限(日米安全保障条約に基づく行政協定による特例など)
 3.  憲法の解釈上の限界

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