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冬のソナタに恋をして

対峙


ユジンはチュンサンに会いたくて、タクシーを降りると、エレベーターを使わずに、マンションの階段を上った。あんまり慌てていたので、階段の途中で転んでしまうほどだった。足はずきずきと痛んだものの、それ以上に心が痛い。ユジンはインターフォンを何回も鳴らし、叫びながら玄関のドアをたたいた。しかし、ドアを開けたのはチュンサンではなかった。中にいたのはカンミヒ、つまりチュンサンの母親だった。

ユジンはすました顔のミヒをキッと睨みつけた。しかし、ミヒはそ知らぬ顔で、椅子に座ったユジンの前にゆっくりと紅茶のカップを置いた。

「あなたもチュンサンを探しているの?私もなの。ここ2、3日息子と連絡が取れなくて。」

ユジンは紅茶のカップを持とうとしたが、指が震えてしまい、カップはカタカタと音を立てた。

ユジンはひたとミヒを見据えて言った。



「本当なんですか。チュンサンが、チュンサンが父の子供だというのは、本当なんですか?本当に父の息子なんですか?」

すると、ミヒはとても困った顔をしてうつむいてしまった。ユジンは絶望感でいっぱいになってしまい、ぽろぽろと涙がこぼれてしまった。

「本当に彼は父の息子じゃないですよね?お願いです。否定してください。」

しかしミヒは静かに立ち上がると背を向けて窓際に行ってしまった。

「お願いです。違うと言ってください。」

ミヒは静かな声で言った。



「もういい加減チュンサンをあきらめなさい。何もなかったことにしてちょうだい。」

そんなミヒの話しぶりに、ユジンは呆然としてしまった。目の前にいる女性が、自分の父親と関係をもって未婚で息子を産んだこと、自分が心から愛している男性が兄だということにショックを受けていたのだ。これ以上それをはっきりと言わないミヒを置き去りにして、マンションの部屋から走り去った。どうせ同じ言葉を聞くなら、チュンサンから聞きたい、それまではどうしても信じられないと言う一心で。そしてそのままチュンサンの勤務先であるマルシアンに向かうのだった。後に残されたミヒもまた、悲痛な思いでユジンを見送っていた。チュンサンとユジンの愛は、ミヒが思った以上に深いものだと、目の当たりしていた。これは想像よりも、辛いゲームになるようだ、ミヒは空っぽになった部屋で一人考え込んでしまった。

そのころチュンサンもまた、マルシアンで仕事が手につかずにぼんやりとしていた。髪の毛はぼさぼさで、髭はそらずに、東海から帰ったまま着替えもせずに座っていた。そんな彼にキム次長が困った顔をして話しかけた。

「お前、何日も音信不通でどこに行ってたんだよ。目の下にクマができてるぞ。しばらく寝てないようだけど大丈夫か?」


その時、受付嬢と誰かが押し問答しているのが聞こえた。それはユジンだった。彼女がチュンサンのオフィスに入ろうとするのを受付嬢が止めているのだった。しかし、ユジンは怒った顔でオフィスの中に入ってきた。そして、呆然と立ち尽くして自分を見つめるユジンを前に、チュンサンは言った。

「大丈夫です。彼女を通してください。次長、申し訳ないけれど、彼女と二人にしてもらえますか。」

涙を目にいっぱい溜めて自分を見つめるユジンを前に、チュンサンは冷たく言い放った。


「何の用だよ。サンヒョクに聞いてないか。君とは別れると伝えた。だから来ないでくれ。僕はもうじきアメリカに帰る。もう駄目なんだよ。無駄な真似はよしてくれ。」

しかし、ユジンはひるまなかった。

「どうして?なぜダメなの?教えて。」

するとチュンサンはたまらずに目を伏せて言った。

「君を、、、愛してないんだ。記憶が戻ってやっとわかったんだよ。君を愛してなかった。」

「うそよ」

「嘘じゃない」

「やめて、うそよ。愛してるくせに。愛してるなら、このまま愛し合ってはいけないの?」


ユジンの真剣なまなざしと激しい口調に、チュンサンは気が付いた。彼女はすべてを知っているのだと。彼ははユジンを悲しそうに見つめた。

「本当なの?本当に?」

ユジンのまなざしもまた悲しそうだった。怒りを通り越して、今は悲しい思いでいっぱいだった。


チュンサンはたまらずに泣きながらゆっくりとうなずいた。それを見て、ユジンは崩れ落ちるように座り込んだ。これで、ユジンの一縷の望みはは打ち砕かれてしまったのだった。そして、チュンサンが慌てて駆け寄ろうとすると叫んだ。

「来ないで!来ないで、、、。」

チュンサンは、座り込んだまま泣き続けるユジンを、力なく見つめるしかなかった。ユジンにかける言葉は、もはや何もない。やがてユジンは魂が抜けたように立ち上がると、泣きながら静かに部屋を出て行くのだった。そんなユジンを、チュンサンもまた見送るしかなかった。


チュンサンはユジンを見送った後も、頭を抱えて泣き続けていた。ついにユジンに一番知られたくないことを知られてしまった、傷つけてしまった、悲しませてしまった、もう自分たちは終わりなのだ、そんな気持ちでいっぱいだった。

コメント一覧

kirakira0611
@joiede_ktfp さま、ポップアップストア、頑張ってくださいね。
帽子って顔の周りにあるものだから、似合ってるのをかぶるだけで、一気にパッと明るくおしゃれになりますよね。まるで魔法にかかったみたいに。そんな帽子を生み出すなんて、魔法の手だと思います!
ありがとうございました😊
joiede_ktfp
kirakiraさん、こんにちは。
チュンサンのほうが一学年上だったのかぁ、でもなぜ同級生に?と今更思いますが、それはさておき今回も涙なしにはいられないですね。カンミヒよまだやるか、と言いたくなります。ほんとにまったく。すべてを知ったうえで一緒にいることはできないの?というユジンの問いかけは、もっともですね。

ブログ見て頂いてありがとうございます。なんだか照れてしまいますがうれしいです。頑張ります!
今日はホントに寒いですね。どうぞ風邪などひかれませんように、温かくしてお過ごしください。🧣
kirakira0611
@breezemaster さま、ありがとうございます😊
わたしも妊娠時期が微妙かな、とも思ったんですけどね。はじめは。でも書き直したんですよー。ミヒがきっぱりとヒョンスの子ではないと確信してることや(当時はDNA鑑定はないので)ギョンヒがミヒと修羅場になってるにもかかわらず、チュンサンが同学年だと知っても、これっぽっちもヒョンスの子だと考えていないことから、別れてからそれなりに時間が経っていると思われます。わたしが妻なら、チュンサンの存在を知った段階でまず夫の子では?と産月計算しますね(笑)ミヒからギョンヒに打ち明けた時のギョンヒのリアクションと、ユジンに話してる様子で、可能性がないから(別れてからミヒがチュンサンを産むまでタイムラグがある)ミヒはわたしが略奪したから恨んでるのよー、わたしとお父さんを許してね、になるのかなぁと思ってます。
違うかもしれません。すみません。
それから本当にユジンのひたむきさと無垢な感じがこのドラマを有名にした大きな理由のひとつですよね。チェジウさんのハマり役、すごいです。
寒いのでご自愛くださいませ。
さてさて、今オンライン研修してます(笑)
終わったら出勤です(笑)
breezemaster
おはようございます

心から愛している男性が兄だということにショックを受けたユジン、
否定しないミヒ、ドラマなので、細かいところはさておき、
妊娠時期が、微妙だったのかなぁなんて、
感じましたが、実際はどんな気持ちだったのか、
もう一度、ミヒに聞いてみたいです

やめて、うそよ。愛してるくせに。
「本当なの?本当に?」
チュンサンはたまらずに泣きながらゆっくりとうなずいた
チュンサンの涙を見て、知ってしまうユジン、

このシーンも、あらためて本当に悲しいシーン、
ドラマなんですけどねぇ~
やはり、ユジン無くしては、冬ソナは、ここまで、
残る、名作には、ならなかったのを感じる、
今回でした。

凄い寒波とのこと、
一段と暖かくしてお過ごしくださいね
kirakira0611
@usagimini さま、ありがとうございます😊
あはは🤣本当に意味不明な展開なんですよ。
別に言っちゃえばいいじゃん。だってどうせユジンが知るまでは諦めるはずないもん。会社に来るの分かるよね?サンヒョクはムダに東海に行ってかわいそう、ですよね。
わたしもそう思いました。
しかも、なんで別れる?あとあと分かれば、ひとっつも別れる理由はないのに、ドラマのために別れて行く人たち、、、後半に入って迷走したドラマだとあらためて思ってます(笑)
あと少しなのでお付き合いくださいませ。
kirakira0611
けいこさまー、ありがとうございます😊
そうそうオジマ!って言ってますね。この時のチュンサンとユジンの悲しそうな感じ、本当に悲しくなります。
わたしはチェジウさんから冬のソナタにハマったルートなので、この時のジウさんはかわいいなと思います。
寒くなるのでご自愛くださいませ♪
kirakira0611
@charlotte622 さま、いつもありがとうございます😊
ここからどんどん辛い展開に、、、。
書いてると早くラストにならないかなぁと思ってしまいます(笑)
今日から少しずつ寒くなるみたいですね!
ご自愛くださいませ。
usagimini
こんばんは。内容が切なくていろいろ言いたいことはあるのですが。。。
結局、オフィスに行けば会えちゃうわけで、なのに、、、、
なんでチュンサンは、サンヒョクに迎えに来させてまで、わざと海の家でユジンを置いてけぼりにしたのか…
だったら海の家で正直に話せばよかったのに。。。
冬ソナは、しょうがないわね、という部分がたくさんありあすけど、ここだけは、なんか釈然としないです。
keiko(けいこ)
こんばんは♪
更新ありがとうございます😊

ミヒ 本当にひどい母です。人間としても。
そりゃ ユジン親子許せないのもわかるけどーー。

ユジンが(オジマ!)☜来ないで!
そのセリフ この場面 泣けます。何度見たことか。
それにしてもチェジウさん 可愛いし綺麗ですよね。

明日からの猛烈寒波到来、、どうぞ暖かくしてお過ごしくださいね。
charlotte622
今晩は🌃今第19話ですね。もうすぐ終わりますね。チュンサンとユジンがかわいそうで仕方ありません😢
「辛いゲームになりそう」だなんて、ミヒが許せないです。人の人生を何だと思っているのでしょう。早く誤解が解けますように❗
キラキラさんお体大事になさってください😌
杏子
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