集英社文庫
2018年4月 第1刷
252頁
2000年に「小説すばる」に掲載された「座敷わらしの右手」「河童沼の水底から」を加筆・修正したものに書下ろし「天狗の来た道」を加えたオリジナル文庫
大学4年生の高橋真矢(まや)
映画関係の道に進みたいのですが就職活動がうまくいかず、大学院への進学を実家の両親に告げると、父親から家に戻るか結婚するか、とにかく進学は認めない、仕送りは止める、と言われ困っていました
そんな時、声がかかったのが映画研究会に在籍していた時のカメラの腕を買われての民俗学者・布目准教授の現地調査助手のアルバイトでした
岩手県の遠野「座敷わらしの右手」
山梨と静岡の県境にある“三ツ渕”「河童沼の水底から」
広島県の北広島町「天狗の来た道」
真矢の名前をシンヤと勘違いして男子学生と思い込み、宿泊先の旅館を一部屋しか取っていない、など研究以外は全く抜けている布目准教授と、お金の為と割り切ってついて回る真矢
二人のキャラが可笑しく、珍道中が楽しい1冊でした
座敷わらし、河童、天狗の薀蓄も真実かどうかは別にして興味深かったです
自分の進むべき道が判らず悩んでいた真矢が気づいたこと
そうか、日常の近くには非日常がたくさんあるんだ
古さの中にも新しさがあり、平凡の中にも名場面がたくさんある
いまのいままで真矢は、これから自分の撮るべき映画には奇抜な発想と斬新な映像がなければならないと思いこんでいた
そんなことに悩む必要なんてないんだ
驚きや不思議はいつもの毎日にいっぱい詰まっている
見る目を少し変え、感じる心をちょっと変えるだけで
毎日、惰性で過ごしていては気づかないあれこれ
自分の周りにもたくさんの驚きや不思議があるに違いありません
本作にも荻原さんらしい言葉の数々が詰まっています
二人が主人公のお話はこの3編のみとのこと
時々で良いので、また書いて欲しいな^^
元々、荻原さんはデビュー当時のスラップスティック『オロロ畑でつかまえて』とか『ハードボイルド・エッグ』が好きで読み始めました。その後のシリアスなものも好きですけど。
この中の2編も初期に書いたもののリメイクなので、デビュー当時を懐かしみながら読んでました。言われる通り、時々はこういう作品も書いて欲しいですよね。荻原さん持ち味の一つなので。
追伸。
リンク貼らせて頂きました。
初読みはデビューから少したってからで「押入れのちよ」「千年樹」で大好きになり大半を読みました。
「海馬の尻尾」でえ?と思った後の「金魚姫」と本作、荻原さんらしくて安心しました^^
リンクの件
ありがとうございました。