〈解説〉
日本人慰安婦山内馨子(芸者菊丸)さんを取材した広田和子の慰安婦についての考察。民間経営の慰安所も軍が管理していたことを述べている。
慰安婦-文字どおり読めば″慰め安んずるオソナ”。岩波書店版『広辞苑』には《戦地の部隊に随行して将兵を慰安した女》とある。
娼妓とも売春婦とも違う。この慰安婦という存在が、いつごろから歴史に登場したのかは、実は明確でない。ふつうの売春宿が軍隊の駐屯地に開業するケースと、ごっちゃになるからである。
だが、少なくともわが国で、軍直轄の慰安所が開設されたのは、日中戦争が激しくなった昭和十三年、上海の楊家屯に《陸軍娯楽所》と称したのが第一号とされている。兵営形式の長屋を建てて、百人あまりの慰安婦がおかれたが、そのすべては娼妓あがりであった、という。
もともと「糧ハ敵二拠ル」というのが日本軍の方針であった。まして兵隊の性欲までは考えてもみなかったのだが、それまでにない長期の遠征と勝利の美感に酔いしれた兵隊たちの婦女暴行が頻発し、現地民衆との間にトラブルが絶えなくなり、治安問題にまで発展した。そこで、当時の上海派遣軍、兵姑病院勤務の麻生軍医が、軍の特務部から相談を受けて、軍直轄の慰安所を新たに開設したのである。
このときの“慰安所規定”の一部を引用してみると、
一、本慰安所ニハ陸軍々人軍属(軍夫ヲ除ク)ノ外入場ヲ許サズ。入場者ハ慰安所外出証ヲ所持スルコト
一、入場者ハ必ズ受付ニオイテ料金ヲ支払イ之卜引替二入場券及ビ「サック」一個ヲ受取ルコト
一、入場券ノ料金左ノ如シ
下士官軍属金貳圓
一、入場券ヲ買求メタル者ハ指定セラレタル番号ノ室二人ルコト。但シ時間八三十分トス
一、入室ト同時二入場券ヲ酌婦二渡スコト。
一、室内ニオイテハ飲酒ヲ禁ズ
一、用済ノ上ハ直チニ退室スルコト
一、規定ヲ守ラザル者及ビ軍紀風紀ヲ紊ス者ハ退場セシム
一、サックヲ使用セザル者ハ接婦ヲ禁ズ
-いかにも軍直轄らしい規定である。ここでは慰安婦を《酌婦》と呼んでいるのに客の飲酒を禁じたり、風紀を紊す者は退場とあるが、これも考えてみれば実におかしい話だ。
この公営慰安所にならって、普通の売春宿も慰安所の看板を掲げた。もちろん、軍衛生部の管理を受けながらの営業だったが、こちらは“サービス"を売り物にして、入口にはこんな垂れ幕を下げていた。
-聖戦大勝の勇士大歓迎!
-身も心も捧ぐ大和撫子のサーヴィス!(出典:広田和子『証言記録 従軍慰安婦・看護婦-戦場に生きた女の慟哭-』(新人物往来社 1975年11月15日) 19-21頁)
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