またまた再アップ。近況は最後に。
※これは実話です。
『闇にうごめくもの』
去年の秋に書いた記事ですが熱帯夜が少しでも涼しくなるよう再アップします。
ビル管理会社に勤めている友人が体験した話。
ビル管理業務の中に検針業務というのがある。
テナント等複数の居住者がいる商業ビルの場合、
電気料金はビル一括で請求が来ますがそれを
各テナントに割り振る為、
定期的に個別の電気メーターを検針するという業務。
メーターは各テナントの外にある場合もあるが
設計によってはテナントの中、
店舗や事務所の中にお邪魔して
確認しなければならないところもたくさんある。
築年数が古いビルほど中にある場合が多いらしい。
さて、いつものようにこの友人A君は会社に出勤し
今日の予定しているビルをまわるべく同僚と2人で車に乗り込んだ。
通常2人一組で各ビルをまわるが
一人で手が足りる業務に関しては手分けしてこなしてく。
でないと予定件数を終えることが出来ない。
たとえばエレベーター点検や定期清掃、
貯水槽清掃等のお知らせのチラシを貼る業務。
他にも設備点検等たくさんの業務がある。
通常ビルやマンション一棟につき
一ヶ月サイクルで管理業務がまわっているので
一日ずれると全てが押せ押せになってしまい
業務に狂いが生じてしまう。
目的地へと到着したA君は有料パーキングに
駐車し、作業車を拠点に駅周辺のビル群の点検開始。
A君は同僚と別れ予定のビル点検業務へと向かいました。
そのビルは駅前の繁華街の中にあった。
夜は華やかなネオンと呼び込みや行きかう会社帰りの人々で
にぎわう通りも昼間はネコの子一匹居らず閑散としてる。
ここは商業ビルで上から下まで飲食店や風俗店が入っている。
昼間は浮浪者でも入ってこない限り全く人気配がない。
夜の風俗店は
男と女の情が行き交う空間。
たくさんの思いがフロアにあふれる。
フロアから流れ出した思いは通路から階段を下へ下へと渦をまきながら
落ちていく。
下へ下へと負のスパイラルを・・・。
たくさんの人が出入りする夜と違って昼間のビル内は
シーンと静まりかえっている。
今、何かが後を通ったような錯覚に
みまわれ思わず振り返ってしまうことも。
もちろん気のせい・・・何も居ない。
夜にあふれ出したたくさんの思いはどこへ行ったのだろう。
人の思念もよどみ腐敗するのだろうか。
負のエネルギーの磁場へと変化していくのだろうか。
ビルについたのは午前11時をまわった頃。
居酒屋系だとだとあと一、二時間もすれば板さんが
仕込みの為に出勤してくる時間。
A君は誰とすれ違うこともなく
薄暗いビルのエントランスを抜け
EV(エレベーター)へ小走りで向かう。
ネオンが灯れば夏の虫のように人を呼び込むのだけど。
建物内通路のスタンド付き看板もコンセントからはずされた
コードが路上でひきつぶされた蛇の死骸のように
巻き取ることもなく放置されている。
隣接するビルに日を遮られじめじめと薄暗く、
ビル全体が石棺のよう。
人気のない場所にあるEVはいやなもの。
タバコの火を押し付けられ黒く焦げたボタンを押し
ゆっくりと開きはじめたドアが開ききる前に乗り込み
最上階のボタンを押す。
3,4人乗ればいっぱいの室内は落書きやタバコの吸殻、
前日の客が嘔吐でもしたのだろうか、
うっすらと匂う酸味臭に少しA君の顔がゆがむ。
閉まり際の隙間(もし白い手がここからでてきたら・・・)に
これから起こる出来事の予感からか
一瞬緊張からゴクッとつばを飲み込む。
動作の遅いEVはイラつくA君を乗せズンッと一度大きな振動の後、
ゆっくり、ゆっくりと昇っていく。
最上階へ到着し、上から検針業務スタート。
上階から下へ効率良く作業をこなしていく。
マスターキー(全室対応)で各テナントのドアを開け
早足で中へと入っていく。
要は電気メーターの確認なので効率を優先するため
室内の照明をつけないでペンライトで照らしながら
さっさと目的のメーターの数値を確認、
廊下に出てから記録して次へ向かう。
もちろんなれていないと真っ暗な部屋の中で
壁にぶつかったりモノを落としたりしてしまうが、
何度か作業すれば慣れてしまうもの。
順に検針業務をこなして行き
・・・2F、1Fそして最後に地下1F。
残留した思念は下へと負のスパイラルを・・・
B1のスナック。
こちらは二部屋をぶち抜いて1フロアにしている。
壁は全面鏡張り。
A君はお店の玄関にマスターキーを差込み、
ズンズン奥へと入っていく。
うっすらと香水とタバコの混じったような匂いがする中、
少し毛の長い絨毯に足を沈ませながら足早にメーターへと向う。
暗闇を気にせずフロアを横切り、奥の部屋に通じるドアへと。
正面の壁にペンライトを持った自分の姿が映し出され
一瞬ドキッとする。
左右の壁にもA君が映し出されている。
”きっと振り向けば後ろにも振り向いた自分がいるんだろうな”
そんなことをふと考えてしまう。
余計な事を頭から追い出しドアを開けて、
従業員控室(いくつかのロッカーと申し訳程度の
スペースの小さな部屋)を通り抜け奥の厨房へと
入っていく。
普通の飲食店と違い軽食程度だから、お粗末なキッチンが一つあるだけ。
はたしてメーターはキッチンの右上。
ペンライトの薄明かりの中、目のすみで
キッチンにまな板が放置してあるのが見えた。
ペンライトのメーターにあて急いで数字を読み取る。
なにかヤバイ。頭の中で非常ベルが鳴っている。早くここから出たい!
と、視界の隅に又まな板が見えた。
妙な疑問が頭に浮かんだ。
あれっ、まな板って黒かったっけ。
そのまな板は黒くわずかに光っていた。ざわざわと光っている。
ざわざわと・・・?
ペンライトをまな板の方にむけ、
A君がそこに見たものは・・・。
光を嫌い一目散に四方へ散っていく黒く光るモノたち。
後には、まっ白いまな板が残ったとさ。
P.S.先日、息子とお風呂に入っていた時のこと。
私が頭を洗っていると・・・
『おとうさん!!おとうさん!!』という叫び声。
いたんです。私の胸あたりに親指より大きいのが。
お風呂の後、ジーちゃんバーちゃんに面白おかしく話している息子。
そりゃー悲鳴も上げるよ。
P.S.
その後、A君はめっきりと飲みに行く回数が減り
付き合いで行ってもお酒以外はほとんど口にしなくなったとさ。
最後にキッチンにあるセキュリティのスイッチを
入れてから帰っていたのですが、
明かりがついた瞬間に
四方八方へ逃げる小さな黒い物体が
床にたくさんいました。
材料はもちろん、調理用具も戸棚の中に
しまってありますが、
気持ちのよいものではありませんよ。
私はもちろんだいっきらいです。
昔は見ただけで金縛りにあったものです。
でも今は恐怖克服して知らん振りしてスルーすることが出来るようになりました。
もちろん解決はできません。えっへん