私は、近所にある食べ放題の
店が大好きだ。客人が嬉しそうに料理を
取りに行く姿を見るのも楽しい。
私は、お皿に料理を取って席に着き、
夫を待っていたある日のこと。
私の隣の席に座る小さな女の子が、
料理をひとくち口にする度、
「ん〜😋‼️」と母親に美味しいと
表現をしていた。母親も、それを
微笑ましく見ていた。その光景は、
温かい家庭そのものだった。
私も、幸せな気持ちになった。
と、同時に、
私の脳裏を真逆の光景がよぎった。
私の部署のドライバーさん達の雑談で、
こんな話をしていたのを思い出したのだ。
『俺、借金の回収してたことあんねんけど、
債務者の家行ったとき、貧乏すぎて子供に
ドッグフード食わしてるの見たときは
さすがに心が痛んだで』
そんなことって…。
人間の子が、ドッグフード。
悲しい虚しい光景だ。
貧困とは言え、与えるものを間違っている。
どんな思いで親はドッグフードを
食べさせていたのか。また、
どんな思いで子供はドッグフードを
食べていたのか。
隣で美味しそうに頬ばる女の子を見ながら、
ドッグフードを食べる子供がいる現実に、
不憫で涙が溢れ出そうになった。
親が、子供に食事を与えず放置して餓死させる
といった事件が起こるたび、心が痛む。
しかしながら、そんな劣悪な環境で生き延びる
というのも、それはそれで生き地獄かもしれない。
私は、夫が席に戻る前に悲しい話から
意識を逸らし、今目の前にある料理と、
美味しく食べている女の子の声に意識を戻した。