ベッドに仰向けになりながら私は帰り道のことを繰り返し考えていた。
部屋は暗めの電気をつけてテレビなどをつけてもないしとても静かである。
少し遠かったけれども、あれは他人の空似ではない。
長辻くんはどこでもいるっちやどこにでもいるようなルックスだけど
関係が希薄なクラスメイトならともかく
私が見間違えるわけがない。
長辻くん全く動く気無かったな。
後輩ちゃんにされるがまま抱きしめられてた。
「俺には好きな人いるからこういうのは出来ないんだゴメンな」というような反応を出すのかと期待したのに、全然そんな気がしなかった。
表情が見えなかったのが逆に良かったかもしれない。
私もあのこのように長辻くんを抱きしめたい。
どんな感触でどんな温度なのかしら。
抱きしめたら長辻くんはびっくりするけれど喜んでくれるのに違いない。その顔がとても見たい。
フッといてこの気持ちはおかしいと言われるだろう。
しかし振ったとはいえ私は彼がとても好きなのだ。
無愛想だと言われがちな私にも
他の誰かと変わりなく話してくれるのがとても嬉しかった。
最初はそれだけだったのに学校があるときに毎回おはようを交わしたり、
どうでもいいような話をする時の長辻くんの屈託のない笑顔がとても可愛く愛おしく見えた。
彼がとても好きだからこそちゃんと面と向かって告白されたかった。
だからつい振ってしまった。
私がしてもよかったけど、とにかくこういうことは会って話したいの。声が聞きたいの。上手くいったら抱きしめたいもの。私も好きよって言いたいの。
これはわがままなんだろうか?
私は愛用のアザラシの抱き枕を抱きしめる。ふかふかな感触がとてもいい。あの子はもっと柔らかかったんだろうか。
「長辻くんのバカ……」
どうしたらまた長辻くんに会えるだろう。
今日は偶然だったけど、どこに行けば会えるんだろう?
まさかいつもあそこにいる訳でも無いと思うし。
まずあの子は誰なの?どんな関係?
ネクタイの色からして後輩なのは分かるけれど、
それ以上のことが分からない。
考えていたら疲れたので私は寝ることにした。
今度長辻くんに会ったら私はなんて言うんだろう。少し怖いけど楽しみだな、そう思いつつ私は夢の世界に落ちていった。