百日紅 日向子の手酌 偲ぶ夜 <殿>
汽車に乗る 詩集想いて ながし雨 <殿>
踏切の かなたの空に 夏が来る <殿>
友の子に 紙兜折る 子供の日 <殿>
風うねり 天空跳ねし 初幟 <殿>
ビルの街 子らの聲なき 子供の日 <殿>
茉莉花<まつりか>の 香り流れし 坂のぼる <殿>
飛騨の湯に 身はほてりたり 風涼し <殿>
春暁に 醒むれば飛騨の ひとり旅 <殿>
少女いふ キスより優し 春の風 <殿>
花冷えの 最終電車 酒匂ふ <殿>
うちひらく 傘に迎えし 緑雨かな <殿>
目覚めれば 潮の香来たる 春の夜半 <殿>
春号の 表紙の少女 憂い撮る <殿>
東欧の 孤児の悪夢に 夏迫る <殿>
独り鴨 最終便の 背な淋し <殿>
春風や 長き読経に 香ゆらぎ <殿>
友の笑み 車窓に探す 暮れの春 <殿>