夜匂ふ 午前零時の 猫の戀 <殿>
堅香子の 万葉一首 想い馳せ <殿>
涙ぐむ 受験子阻む 赤き門 <殿>
隣合う 狐狸は眠らず 春夜半 <殿>
かの瞳 幼な子のまま 卒業す <殿>
内股となり骸骨模型冬星座 千香子
佳人逢う 想い出冴えし 春夕焼け <殿>
キエフ燃ゆ 地球の裏の 吊るし雛 <殿>
雛の目は 遠き戦禍を 見つめをり <殿>
蝉丸の うたひ偲びて 春の京 <殿>
梢なほ 降るより落つる 春の雪 <殿>
春浅く 掠れし聲の 別離かな <殿>
人去りて 春の夕空 玻璃残る <殿>
憂き猫は 戀の底より こゑを出す <殿>
蝋梅や 透ける蒼天 匂いたつ <殿>
悩ましき うつし世ながく 春眺む <殿>
雪の香や 酔うほど積もり 春の暮れ <殿>