障害者差別解消法について、私が身の回りで経験した光と影を2回にわたってお伝えしている後編です。障害者差別解消法の2本柱は、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」であることは、前回お伝えしました。今回は、その前者にまつわる「光」のお話です。想像もしなかったようなトラブルが起きました。でも、お伝えしたいのは、その後に起きたことなのです。
以前、ある病院に入院をしたときの話です。1度目の入院は何事もなく終え、2年後にふたたび同じ治療で同じ病院に入院することになりました。今回は突発的なものではなく、数カ月前から予定していた計画入院です。
入院当日の朝、事務的な手続きを済ませると、病室に通されました。ベッドで受け持ち看護師の到着を待っていると、次の言葉に耳を疑いました。
「この病棟は、電動車いす禁止なので降りてください。」
一瞬、私の聞き間違いか、何かの冗談かと思いましたが、そうではなく真面目に言っているようです。歩けないから電動車いすが必要だと伝えると、困った様子で「でも、規則なので」の一点張り。病院の車いすに乗り換えてもいいと言われたけれど、そういうわけにもいかない事情があります。
骨盤がもろく折れやすい私は、きちんと自分の身体に合わせてシーティングを施した車いすでないと座ることができません。ましてや、車いすを自分でこぐことができないから電動に乗っているのであって、病院の自走式車いすでは移動もままならず、ベッド上軟禁に近い生活が予想されること必至です。
そもそも、私が電動車いすに乗っているのは、今に始まった話ではありません。2年前の入院時もそうだし、今回の入院計画に携わっている医療者にも周知の事実です。どうして急にそんなことを言われるのか、意味がわかりませんでした。
ただひとつ前回と違うのは、病棟の階が異なるという点です。退院して電動車いすOKの病棟が空くのを待つか、骨折リスクを覚悟して病院の車いすに乗り換えて1人で身動きのとれない入院生活を送るかの二択を迫られることになりました。結局は、電動車いすNGのA病棟ではなく、以前お世話になったB病棟の師長さんが、「電動車いすNGなんて有り得ない、うちのベッドを空けて引き取ります」と総師長を説得してくださり事なきを得ました。
菓子博でも入場拒否 今回の件は、「電動車いすは危険」という考えから派生しました。ここ数年、根幹が同じ問題を耳にすることが増えたような気がします。「広島菓子博」で電動車いすの入場が拒否されたことがありました。昨年は、電動車いすの人が、ビール工場で試飲を断られた、という報道もありました。いずれも根っこは同じではないでしょうか。 当事者からしたら、危険なものではないし、電動車いすに乗っているというだけで様々な制約を強いられることは納得できないけれど、よく知らない人から見れば怖い乗り物という風に映っているのかもしれないと思うと、やるせない気持ちです。
「電動車いすの入院はお断り」という今回の件。
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