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【論文】コロナ禍での日本人の国民性を浮き彫りにし、考察する

2021-12-29 20:40:36 | SPトランプメソッド

                  内 容
1.学習の目的            
2.調査方法                 
3.調査結果                 
4.考察と結論                
ア.数多くのトピックスに共通して出てきた国民性具体的要素について各種国際データをもと
に海外と比較し考察
イ.コロナに関連の深い「公衆衛生観」「ワクチン観」「健康観」の具体的要素については更に
 日本の歴史をさかのぼって考察               
ウ.日本と地理的条件で似ている島国や感染者数の多いアメリカと、コロナ対 策の違いを比較
  し日本人の国民性について考察             
5.その他の国民性具体的要素の考察      
6.日本人は将来どうなりたいのか?       
7.グループ学習で学んだこと          
8.参考文献                 



1 学習の目的
 私たちは、コロナ禍における国民の行動やコロナ対策への反応に日本人の国民性が表れているのではないかとの仮説を持ち、調査をはじめました。グループ学習を始めた時点では、日本人はなぜ多くの人がマスクを着用するのか、なぜ自粛要請だけで外出をひかえるのか、一方、トイレットペーパーやマスクの購入騒動がなぜ起こるのか、これら一連の行動に他国の人たちと違った日本人の心理特性や行動特性が大きく影響しているのではないかといった興味を持ちました。学習が進むにつれて、日本はなぜロックダウンをしないか(なじまないのか)、ワクチン不信が強いにもかかわらず接種率が高まったり、人口に対する感染者数や死亡者数の割合がなぜ少ないのか、興味が次々と湧いてきました。これらコロナ禍における日本人の国民性を浮き彫りにし、そして考察するのが私たちの学習の目的です。
 学習メンバーの中には元々日本人のルーツやコロナ対策島国比較等に関心を持っていた者もいて、これらの観点からも学習を進めました。




2 調査方法
調査の方法は、2020年2月のダイヤモンド・プリンセス号での新型コロナ騒動から2021年11月の衆議院選挙までのコロナ禍の国民の行動や政府のコロナ対策への国民の反応をマスメディア(新聞、テレビ、雑誌、インターネット等)の記事から記録しました。そして国民性の具体的な要素をマトリックス図法で分析しました。







(1)国民性の定義については、広辞苑(岩波書店)と大辞林(三省堂)が定義している行動様式・価値観・気質の三つの要素を基本に展開しました。
広辞苑:ある国民一般に共通する性質。その国民特有の価値観や行動様式、気質などについていう。
大辞林:価値観・行動様式・気質などに関して,国民に共通して見られる特徴。





(2)マトリックス図法で分析した国民性の具体的要素は、統計数理研究所等既存の国民性に関する調査項目を参考にし、下図の国民性具体的要素を選びました。

図表1 国民性具体的要素  




(3)マトリックス図はタテ軸にトピックス(図表3)そしてヨコ軸に、国民性の具体的要素を配置しました。
*マトリックス図法とは、検討を行う2つの要素を行と列に配置し、それぞれの関連度合いを交点に表示することで、着眼点を見つけそして結果を導き出すことができる手法です。





3 調査結果                                    
マトリックス図法で分析したところ、各トピックスに含まれる共通の国民性具体的要素として5つの要素を抽出しました。(図表4)

1位 政治観(46トピックス)、2位 不安感情(45トピックス) 3位 医療観(30トピックス)
4位 危機意識(24トピックス) 5位 性格(21トピックス)
 
図表4 国民性具体的要素とトピックス数(複数のトピックスに該当する要素のみ列記)




4 考察と結論                                   
(1)考察方法は3つの観点で考察し、それぞれに結論を出しました。
ア. 数多くのトピックスに共通して出てきた国民性具体的5大要素(政治観、不安感情、医療観、危機意識、性格)について各種国際データをもとに海外と比較し考察しました。





(2)国民性具体的5大要素の考察
ア.政治観
【該当トピックス数】 46
【該当トピックス】
マスク対策、COCOA不具合、給付金、支援金、自粛要請(ロックダウンなし)
コロナ感染者数増えるにしたがって政府支持率が低下、他国からの日本政府のコロナ対応は評価が高いにもかかわらず国民からは評価が低い等
【考察に当たってのデータ】
・日本人の政治観に「安全な暮らしに国は責任を持つべき」があります。これは他の国も同様ですが、ただ77か国中5位と高くなっています。一方、「(国の)権威や権限が尊重されることは良いことである。」との質問に対しては77か国中77位と極めて低くなっています。    
・公的な信頼度では自衛隊80.6%、警察78.6%、裁判所77.9%、大学56.3%、行政44.6%、選挙41.4%、政府39.8%、国会31.1%、政党25.6%となっています。
  世界価値観調査(2021.3 電通総研発表)(以下「WVS」という。)
【小結論】
日本人は国家に「安心・安全」を求める傾向が強い傾向にあります。政府や行政に対する信頼度は低いにもかかわらず自衛隊、警察、裁判所に対しては信頼度が高いのは自然災害や治安等に対して国民の安心、安全を担保してくれるからだと考えられます。しかし国家が権力を持ちすぎることには大きな抵抗感を持っています。








イ.不安感情(心配、緊張、落ち込み、孤独等の感情も含む)
【該当トピックス数】 45
【該当トピックス】 
マスク・トイレットペーパー買占め騒動、外出自粛(人流)、ワクチン不信、ワクチン接種不安、ワクチン副反応不安、ワクチン接種率増加、オリンピック・パラリンピック開催反対、給付金貯蓄等
【考察に当たってのデータ】
・脳内には「セロトニン」という神経伝達物質があって、これが十分にあると、安心感を覚え、心が安定するといわれています。そして、このセロトニンの量を調節しているのが、セロトニントランスポーター(運搬体)というタンパク質です。ところが日本人は、このセロトニンを調整するセロトニントランスポーターの数が世界で一番少ないことが実証されています。1999 . 鳥取大学臨床医学科他
・セロトニンの分泌量を左右するのが、「セロトニントランスポーター遺伝子」です。この遺伝子にはセロトニンの分泌量の少ない「S型」と、分泌量の多い「L型」の2種類があり、その組み合わせによって、「SS型」「SL型」「LL型」の3つに分かれます。不安を感じやすいかどうかは生まれつきSS型の遺伝子を持っている人は不安を感じやすい人、LL型の遺伝子を持っている人は楽観的な人、SL型はその中間ということになります。不安を感じやすいかどうかは、ある程度、生まれつき決まっています。調査によれば、日本人の遺伝子はSS型が数多いといわれています。
 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 前野 隆司
・29カ国50,135人の遺伝子調査の結果(2009)では東アジア人はS型遺伝子を持っている割合が70~80%と高く、ヨーロッパの40~45%と比べると倍近い数値になっています。
S型遺伝子保有者の割合が一番高いのが日本で80.25%、2番目が韓国で79.45%、以下、中国75.2%、シンガポール71.24%、台湾70.57%となっています。
アメリカ44.53%、英国43.98%、ドイツ43.03%、スペイン46.75%となっており、欧米人と比べるとアジア人が圧倒的に不安を感じやすい人種であることがわかります。
最も低いのが南アフリカの27.79%で、アフリカ人は比較的不安を感じない人が多いようです。ちなみに、不安を感じにくいLL型の人は、日本人では3%ほどしかいないようです。
2009 Joan Chiano &Katherin Blizinsky の研究





・「安全」と「自由」どちらが重要かの質問に対して「自由」より「安全」が重要(「安全」>「自由」)と多くの日本人が答えています。他の国も同様の傾向があります。しかし、個別に比較すると「安全」の重要度は48か国中11位、「自由」の重要度は42位となっています。(「安全」の1位は「インドネシア」2位は「中国」、「自由」の1位はアメリカ、2位はセルビア                                世界価値観調査
【小結論】
コロナ禍の多くの国民の行動(マスク着用、自粛、マスク・トイレットペーパー買占め騒動、ワクチン接種等)は日本人の不安が強いことが大きく影響しています。コロナの感染より不安が伝染したといえます。
 また他国と比較しても自由より安全を重要と考えているのは不安感情が強いことの表れと言えます。
この不安感情が強い理由はセロトニンを調整するセロトニントランスポーターの数が少ないことが原因となっています。




ウ.医療観
【該当トピックス数】 30
【該当トピックス】
ワクチン接種、感染者数・死亡者数国際比較では少ない、重症者病棟、国産ワクチン等
【考察に当たってのデータ】





・医療制度に対する全般的な満足度は「大いに満足」、「やや満足」を合わせて47.0%と、半数を下回っています。比較的高いものは、「医療機関を自由に選ぶことができる」が53.7%、次いで、「診断・治療などの技術の質」が52.9%、「医療の安全性(医療事故の防止)」が48.3%となっています。 最も低いものは、「制度決定への市民参加の度合い(制度に国民の声が反映されているか)」が21.0%、次いで、「制度決定プロセスの公正さ(制度をつくる過程の透明さ)」が21.8%でした。
特定非営利活動法人 日本医療政策機構





・医療観に関しては医療制度が大きくかかわっていますので、この医療制度についても他国と比較しました。
日本は国民皆保険により安価格で高度な医療を受けることができ、医療機関を自由に選択することができます。しかし、日本では民間病院が約70%(アメリカの民間病院は約75%)ですが、ドイツ、フランス、イギリスでは、大半の病院が公的病院となっており、医療の提供体制が統制されています。イギリスでは医療は税金を財源としているため、医師は公務員となっています。日本は公的な仕組みで医療の財政が成り立っている一方で、その財政を使って医療を提供する病院の多くが民間という、世界的にみると特殊な状況で成り立っています。民間病院の経営努力により、日本の医療費が抑えられているという現状もあるため、政府や公的な制度によって病院の数を規制することは難しくなっています。
                                             厚生労働省「OECD加盟国比較」
・コロナに関する影響・不安・不信の構造を、パス解析の結果を見ると(5%水準で統計的に有意な関係のみ表示)若い人ほどコロナによる健康・仕事・家庭への影響を受けやすく、これらの影響を受けた人や普段から不安を感じやすい人、持続的幸福感の低い人は、コロナに関する不安(緊張、落込み、孤独感等)が大きい傾向にあります。これらの不安が「政府への信頼」「地方首長への信頼」「メディアへの信頼」「他者のふるまいの評価」そして「医療関係者への信頼」を減じています。
「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」日本版第一波調査結果発表  2020 年 7 月 28 日
慶應義塾大学、名古屋商科大学
【小結論】
日本人の感染者数、重症者数が国際比較したとき低い理由の一つとして公的皆保険があり、治療が受けやすい環境があります。しかし、今回の緊急事態時に病棟などの体制が遅れた理由に日本の病院の約70%が民間であることも否めません。また、不安感情が強いことが政府や行政に対するのと同様、医療制度の満足度を低くしている一因ともなっています。


エ.危機意識  危機への対応(行動変容)
【該当トピックス数】 24
【該当トピックス】
ワクチン開発、病床確保、水際作戦等
【考察に当たってのデータ】
・人間の行動は主張・感情開放の度合いの2つの行動次元から成り立っており、2つの軸で交差することにより4つのソーシャル・スタイル(社会的行動特性)に分けることができます。(図表5)日本人のソーシャル・スタイル(社会人)の割合は右上のExpressive(表出型)が24%、左上のAmiable(友好型)が32%、左下のAnalytical(思考型)が30%、右下のDriver(主導型)が14%となっています。そして左側の非主張的の割合が多く62%となっています。左側の人の主な特徴として人の意見を聞いてからしゃべる、危険性のあることを避ける、人の決定に従う、決定が遅い、率先して行動しないがあります。

図表5 ソーシャル・スタイル






ソーシャル・スタイルはアメリカのデービット・メリルとロジャー・リードが開発した社会的行動特性(原典は上下反転)
                                                
日本人割合のデータは㈻産業能率大学経営開発本部のデータ参照

ストレス時の対応
左側象限の人(日本人は62%が該当)は、通常、危険性のあることを避ける、人の決定に従う、決定が遅い、率先して行動しないなどの行動傾向にあります。そして、危機などストレスに対してはストレッサー(ストレスの源)から逃げることによって心身を守ります。   
・健康に関しても「健康に関して不安がある人」は約61%いるにもかかわらず、身体の健康を維持するために定期的に行っている活動は「十分な睡眠」が54%(23か国中ワースト3位)、「健康的な食生活」が29%(最下位)そして「定期的な運動」が39%(最下位)となっています。
        GfK:独、マーケティング会社


【小結論】
日本人の行動の特徴は「危険性のあることを避ける」「人の決定に従う」「決定が遅い」「率先して行動しない」などがあります。そして危機などストレスが生じるとストレッサー(ストレスの源)から逃げることによって心身を守ります。不安はあっても能動的に行動変容したり、先手を打って対応していくのは苦手な国民性であると考えます。しかし、地震や津波のように幾度も経験する危機に対してはハザードマップ(災害リスク情報などが記載された地図)の作成、防波堤、免振構造の建物、避難経路など論理的、科学的に回避しますが、未経験の危機に対しては危機意識(危機への対応)が少ないようです。
現在、日本を取り巻く環境には国家間の緊張、地球温暖化、人口減少、食糧問題など数多くの危機があります。しかし、これらに対しても「考えても仕方ない」「誰かが何とかしてくれる」
といった考え方がある。



オ.性格(サブ・パーソナリティ)
【該当トピックス数】 21
【該当トピックス】
マスク着用、自粛要請、ワクチン接種、がまん(自粛)疲れ、不登校増加、自殺者増加等
【考察に当たってのデータ】
・イタリアの精神科医でサイコ・シンセシス(統合心理学)を提唱しているロベルト・アサジョーリは人格やパーソナリティを形成する様々な部分をサブ・パーソナリティ(SP)と称しています。この日本人の主だった準人格化したSPにニックネームをつけカード化したものがSPトランプです。このSPトランプは日本人の価値観で強みや長所とされるものには大きい数字(8以上)を、弱みや短所とさせるものには小さい数字(6以下)がつけられています。(7はときには長所、ときには短所)そしてソーシャル・スタイルのExpressive(表出型)の人に多くみられるSPにはハート、Amiable(友好型)はダイヤ、Analytical(思考型)はクラブそしてDriver(主導型)にはスペードマークがつけられ、内面のパーソナリティと外面のソーシャル・スタイルが関連付けられています。(図表6参照)






図表6 SPトランプ一覧表
SP(サブ・パーソナリティ)トランプ 一覧表



 
図表7 SPベスト10と選択人数                                N=1064




   YAO教育コンサルタント・エンパワーメントカウンセリング研究所の実証データより引用

図表7のように日本人のSPの1位は面倒くさがり屋、2位は心配屋さん(50才以上は1位)、3位はアバウトさん、4位は気分屋さん、5位はまじめさん、6位は慎重さん、7位は飽き性さん、8位はキョロキョロさん、9位はがまんさん、10位は勝気さん(負けず嫌い)になっています。
日本人の心の中はクラブの数字の高い(長所)SPとハートの数字の低い(短所)SPで心のバランスをとっていることがわかります。そしてハートの数字の低いSPは心の中に持っていても、仕事など社会生活では行動化することに罪意識を感じるため抑制しています。










SPマーク特性 外国人との比較

日本人のパーソナルSPはダイヤマークが一番多い(39%)そして仕事時はクラブマークが一番多い(41.1%)、いずれも左側のダイヤ、クラブマークのSPが3分の2を占めています。一方外国人(海外在住22か国)のSPは66%が右側のハート、スペードマークのSPとなっています。

図表8 日本人のSPマーク特性と外国人のマーク特性の違い









*パーソナルSPは52枚のカードから自分に該当するものを無制限に選択(自己選択)
*ワーキングSPは仕事場面で出てくるSP10枚の選択と研修時の他のメンバーからのフィードバックも追加(3~5枚)した合計のSPマーク特性

SPマーク特性と既存の日本人論
SPの4つのマーク特性と戦後(一部戦前)の各種日本人論を考察しました。

図表9 パーソナリティ特性と各種日本人論






多くの日本人論は日本人のパーソナルSPのダイヤのSP、そしてワーキングSPのクラブのSP特性と合致しています。









【小結論】
コロナ禍での対応も「心配屋さん」、「まじめさん」、「まわりが気になるキョロキョロさん」、「がまんさん」、「慎重さん」等がマスク着用、自粛、ワクチン接種の行動につながったと考えられます。しかし、「がまんさん」も度重なればがまん疲れが起こり、人の流れが増えたりテレワークの割合が減少しました。
外国人と比較し日本人のSP特性は受動的、内向きなSP傾向にあります。また過去の日本人論を考察しても同様の傾向にあります。このような心配屋さん、まじめ、がまん、慎重等のSPは過去の日本の経済社会を支えてきたといえます。メイド・イン・ジャパンの製品の品質をささえてきたSPともいえます。
しかし、現在の親は子供に望む特性は何かとの問いに対しては、創造力・創作力、決断力等、ハート、スペードの能動的・外向きなSPを上げています。

(3) 国民性具体的5大要素の考察の結論
国民性具体的5大要素(政治観、不安感情、医療観、危機意識、性格)の小結論を国民性の気質、価値観、行動様式の3つ観点からまとめ、結論としました。(図表10)

図表10 日本人の国民性と考察のまとめ


日本人の気質の特徴の一つは精神を安定させるセロトニンのセロトニントランスポーター(セロトニンの輸送体)のL型遺伝子が少なくS型遺伝子が多いため不安気質でした。多くの日本人の性格で共通するのは心配屋、まじめ、まわりが気になるキョロキョロさん、がまん、慎重、負けず嫌いでした。これらは何かに挑戦したり達成したりといった能動的・外向きなものではなく、日々の対人関係や社会・経済活動で生じる不安を少なくしたり解消するために形成された受動的・内向きな性格であると考えられます。
価値観については「自由」より「安全」の方が重要であると考えていることがわかりました。そして、この「安全」の担保を国家や行政そして医療機関に強く求めています。そのため、コロナ禍において他国からの日本の政府や医療に対する評価は高くても自国の政府、行政、医療関係者に対する信頼度が低いのは日本人の安心・安全の不安が強いことの裏返しであったと考えられます。また自分自身や他者に対する減点主義にもつながっています。
日本人の危機(リスク)に対する行動の特徴は「危険性のあることを避ける」「人の決定に従う」「決定が遅い」「率先して行動しない」などの傾向があります。そして不安はあっても能動的に行動変容したり、先手を打って対応するのは苦手な国民性であると考えられます。
このように日本人のコロナ禍で浮き彫りになった気質や価値観、行動様式の国民性の定義で整理すると、不安気質が大きな要因となり価値観や行動様式に影響を与えていることがわかりました。






不安気質であるS型遺伝子(不安気質遺伝子)を持った人は、なぜ日本人に多いのか、その理由について最後に調べました。この理由についてはいくつかの説があります。その一つは循環器内科専門医の新井孝典氏の説です。「人類の発症はミトコンドリア遺伝子からアフリカの女性だとわかっています。人類はアフリカを出発し、そしてヨーロッパ、中央アジアを通り抜け極東に到達しました。その間に、猛獣に襲われたり、寒く危険な山脈を越えたりなど様々なリスクを通り越して極東に至りました。これらのリスクが極東アジア人の不安遺伝子を増幅させる結果となったのはないか」、この説はS型遺伝子(不安気質遺伝子)がアフリカでは少なく、そしてヨーロッパ、東アジア人に行くにしたがって増えているデータとも一致しており興味深い説です。
もう一つは脳科学者である中野信子氏の「日本は世界でも有数な災害大国であり、地震、津波、台風、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、噴火など様々な災害が各地で発生しています。日本の国土の面積は全世界のたった0.28%しかありません。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。これらの環境圧力がL型遺伝子である楽観的な遺伝子を持った人が淘汰され、不安気質遺伝子(S型遺伝子)を多く持った人が生き延びたのではないか」説です。この説も自然環境が人間の遺伝子に大きな影響を与えたという視点で興味深いです。遺伝子の研究は急速に進んでいる今日、これらが検証されることを期待しています。






イ. コロナに関連の深い「公衆衛生観」「ワクチン観」「健康観」の具体的要素については更に日本の歴史をさかのぼって考察を深めました。

ウ.日本と地理的条件で似ている島国(台湾、ニュージランド、イギリス)や感染者数の多いアメリカと、コロナ対策の違いを比較し日本人の国民性について考察を加えました。



(4)「健康観」「公衆衛生観」「ワクチン観」について歴史をさかのぼった考察
ア.旧石器時代は、病に対しては儀式や祈祷(シャーマニズム)が専ら行われていました。日本の民族宗教である神道をはじめとしてアニミズム、シャーマニズムが浸透していました。日本人の中心的な世界観は「アニミズム」であると考えられています。

イ.縄文、弥生、古墳時代の人々は、「病気や死は自然の定めであり、健康は神によってもたらされるもの」と考えていました。愛媛県の「岩陰遺跡」という縄文初期の遺跡から、手で握られるほどの大きさの石の表面に女神像を刻んだ「線刻礫」が発見され、医療のない時代、女性の持つエネルギーに祈りを込めたものと考えられます。また、福井県若狭町の鳥浜貝塚には、湖に杭をうって桟橋を作り、桟橋から用を足したと考えられています。桟橋水栓トイレ(川屋)と呼ばれています。日本人の公衆衛生の意識の高さが窺えます。

ウ.飛鳥、奈良時代には、貴族や上流階級の間では、仏教の思想により特別な体操や呼吸法、仙薬を用いて不老長寿を手に入れるという神仙思想が広がりました。また中国から漢方や薬学の知識が伝わり、健康に関心が生じました。(健康観) 中国との交流が始まると、病気は何らかの原因によって起こり、治癒には医術や薬が必要であるという考えが伝わり始めました。次第に「医療観」が芽生えていきました。

エ.平安時代には、中国から「秘伝」のように伝えられた漢方医学を、日本人の体質や生活に会うように再編する仕事が進んで行きました。一方、「疫病は恨みを現世に残したまま亡くなった人々の祟りである」と考えられ、疫病退散を念じて京都祇園祭りが始まりました。

オ.鎌倉、室町、戦国時代には、「仏教の教えに沿って自然の流れに身を任せる生き方や優しく穏やかな生き方を良し」とする健康観が広がりました。
また、米の生産量が上がり、庶民も一日三食の食習慣が定着しました。さらに南蛮から色んな野菜が持ち込まれ栄養面が大きく改善されました。
僧侶や武士の中から医師になる者が現われ、医学と宗教が分離され、職業医師が誕生しました。

カ.江戸時代には、天然痘、麻疹(はしか)、はやり風邪が繰り返し流行しました。天皇も例外ではなく、東山天皇(在位1687年~1709年)は、天然痘で崩御され、孝明天皇(在位1846年~1867年)の死因も天然痘との記録が残っています。また、将軍徳川綱吉は、麻疹(はしか)で死去しています。幕府は、小石川養生所を設けたり、家庭用救急医療書を出版して医療知識の普及を図っています。
1800年初頭に、英国のジェンナーの天然痘ワクチンの情報が伝わってきており、緒方洪庵は、天然痘ワクチンの普及に尽力し、「除痘館」を設立しています。

キ.明治時代には、コレラ対応のため初の感染症専門病院が出来ました。内務省は便所の改修、下水、ゴミ溜めの清掃を指示しました。公衆衛生の徹底を図りました。(公衆衛生観)

ク.大正、昭和、平成、そして現在(令和)では、日本はかつてワクチンの先進国でありましたが、ワクチンの副反応に対する訴訟、賠償責任の事案等が相次ぎ、国民はワクチンに対して不信を抱くようになり、政府や製薬会社はワクチン開発に消極的となってしまいました。(ワクチン観)。現在、新型コロナウィルスが世界的に流行しています。現状日本は輸入ワクチンの接種を推進し、感染の収束を図っています。









【小結論】
この感染症年表見て分かるように、各時代各時代に感染症は必ず流行しており、時には政権が倒れたり、崩壊する原因になったりと、感染症はその時代を変えてしまうほどの力を持っています。そして、歴史の裏・背景には感染症が強く影響を及ぼしていることが分かるかと思います。
このように人類にとって脅威的な感染症に対処するために、日本人の民族宗教と言われる神道を通して「祈祷」(シャーマニズム)や「おまじない」、そして仏教の教えからの大仏建立、疫病退散を念じての京都祇園祭り。これらは人々の「不安感情」「危機意識」を和らげ、取り除くために行われたと考えられます。
 また、縄文時代の遺跡から推察されている「桟橋から用を足す水洗トイレ」に見られるように、もともと日本人は衛生的、清潔好きな民族であると考えられます。玄関で靴を脱ぐ生活習慣もそのひとつです。このコロナ禍にあって、ほとんど全員がマスクをし、手洗いを励行しています。清潔感、公衆衛生意識の高い国民性といえます。これは、新型コロナウィルスの世界的パンデミックの中にあっても、各国に比べ感染が抑えられた要因の一つ(ファクターX)ではないかと考えられます。
 日本人のワクチンに対する不信感は、今回の新型コロナウィルス(COVID-19)の予防ワクチン接種の有効性を認識して、払拭されたのではないかと思われます。そして近年、副反応が問題となっていた子宮頸がんの予防ワクチン「HPVワクチン」が八年ぶりに「積極的勧奨」ワクチンとなる見込みです。(厚労省副反応部会了承 2021年11月12日 FNNプライムオンライン)


(5)島国のコロナ対策の違いからくる日本人の国民性についての考察
 台湾、ニュージーランド(「以下「NZ」という。)、イギリス(以下「英」という。)そして日本は同じ島国でありな
がら、コロナ対策に違いがあることから、感染状況が大きく異なっています。それら4つの島国に加えて、世
界で最も感染者の多いアメリカ(「以下「米」という。)を加えて、各国のコロナ対策を整理し、考察します。

ア.行動規制 
NZ、英、米が罰則付きのロッコダウンを行っているのに対し、日本は第1回から第4回まで緊急事態宣言による罰則無しの私権の法的制限をしない「外出自粛要請」というゆるやかな規制を行い、当初はそれなりに効果がありましたが、3~4回と回を重ねるごとに「自粛疲れ」がでて効果が薄れてきています。

日本 緊急事態宣言(1回2020/4/7~5/25 2回2021/1/8~3/213回2021/4/25~6/20  4回
7/12~9/30)外出自粛要請 罰則無し
台湾 対応なし
NZ ロックダウン2020/3/26から4週間など 
スーパーマーケットへの買物、通院以外外出禁止 居住区エリアでの散歩等は可
英 ロックダウン2020/3/23~6/15など
日用品の買物、通院、1日1回の運動以外外出禁止 罰金最大3200ポンド
米 各州ごとにロックダウン カリフォルニア2020/3/19~ ニューヨーク2020/3/25~など生活
必需品の買物、通院以外外出禁止 公園利用可能 罰金最大5000ドル

イ.水際対策(国境封鎖、入国者への対応)
台湾、NZは対応が早く、「2020年3月」に外国人入国禁止の対策を行い、コロナの封じ込めに成功しています。日本は、全ての国・地域からの入国を停止したのが、「2020年12月末」と遅く、島国としてのメリットを生かせる「国境封鎖」が比較的容易であったにもかかわらず、コロナの封じ込めに成功したとはいえません。

日本 中国からの入国2週間待機 公共交通機関利用禁止
全ての国地域からの新規入国を停止(2020/12/28~1月末)
海外から入国帰国した場合14日間自宅等で待機 違反しても罰則無し
台湾 外国人入国禁止(2020/3/19)
入国者に自宅や滞在場所での14日間の隔離「電子フェンスシステム」により追跡
NZ 外国人の入国禁止(2020/3/19)
入国者は2週間の隔離、違反者は拘束
英 外国からの入国14日間の自主隔離(2020/6/8)
自主隔離場所を適切にしない場合は罰金100ポンド
米 中国からの入国禁止(2020/1/31)
入国者は滞在場所での14日間の隔離 違反者は1日1000ドルの罰金

ウ.感染経路の追跡システム
各国とも追跡システムを運用しており、台湾では警察とも連携を行い、隔離対象者の隔離に成功しています。日本では国が「COCOA」、各自治体でも同様のアプリを運用しているものの、全くと言っていいほど活用されていません。マイナンバーカードしかり、「IT施策」が活用されるような付加価値をつけるなどの仕組みの導入が必要です。

日本 COCOA(2020/6/19)、各自治体が運用する追跡アプリあり
個人情報を取得することはない 陽性者の登録義務なし
台湾 電子フェンスシステムにより、隔離対象者を携帯電話経由で追跡し自宅等に待機させる 
違 反した場合自動的に警察へ通知 
NZ 感染追跡アプリ「NZコビットトレーサー」(2020/5/19)
公共機関利用者に使用義務化(2020/9/4)
英 接触者追跡アプリ(2020/5/5)
アプリ利用は希望者のみ アプリ内に蓄積される個人情報は郵便番号のみで、位置情報は利
用者の許可がないと収拾不可
米 バージニア州「コビットワイズ」(2020/8/5)利用者の位置情報や個人情報を追跡・保存しな
い.カリフォルニア州コロナ接触通知アプリ(2020/12/7)アップル・グーグルの開発アプリ提
供など州ごとにアプリを導入

エ.経済的救済措置
 米がGDP比約13%、英がGDP比約24%に対し、日本はGDP比約42%の経済措置。なかでも、一人一律に10万円の給付を行うという手厚い措置を行っているにも関わらず、第5波で爆発的な感染者をだすなど、対策に成功しているとは言えず、コストパフォーマンスの観点から問題があります。

日本 総事業規模 対GDP比約42%(2020/9)
特定定額給付金 10万円/人  持続化給付金 雇用調整助成金など
台湾 「振興三倍券」個人負担1千台湾元で3000元の消費が可能となる国内旅行の喚起策を実施
NZ 基金設立500億NZドル 労働者の継続雇用するための企業支援、若年層の職業訓練など(2020/5)
英 総事業規模 対GDP比約24%(2020/9)
企業に対する一時帰休者の給与8割保障、家計支援として住宅ローン支払い猶予など
米 総事業規模 対GDP比約13%(2020/9)
経済的影響給付金1200ドル/人(子500ドル)所得制限あり
一時帰休中の従業員への給与8割補助

オ.マスク対策
  日本以外の各国は公共の場、公共交通機関などでマスク着用を義務化し、違反者には罰金を科すという厳しい対策をしています。日本は「マスク着用のお願い」で罰則もなく緩やかなものであるにもかかわらずマスク着用が守られ「他人の目を気にする」日本人には効果を発揮しています。

日本 マスク着用のお願い アベノマスクにより国民全員にマスクを配布
マスク着用に対して特に目立った反対運動なし
台湾 公共の場でのマスク着用罰則付き義務化3000~15000台湾ドル  
「マスクマップアプリ」により薬局のマスク在庫がわかり、「ICチップ入り健康保険カー
ド」によりマスクの実名販売により国民全員に公正公平にマスクを配布
マスク着用に対して特に目立った反対運動なし
NZ 公共交通機関利用時におけるマスク着用義務 違反者には罰金300NZドル
ロックダウンに反対する数千人のデモ、多くの人がマスクを着用せずに行進(2020/9/13)
英 店舗、スーパー内のマスク着用義務 違反者には罰金200ポンド
マスク反対派がマスク無しでスーパーで集団ショッピング(2021/4/21) 
米 公共の場、公共交通機関でマスクの義務化 州により罰則あり
マスク着用義務化に抗議しマスクを燃やす(2021/3/8)
マスク反対派が抗議デモ(2020/917)

カ.ワクチン対策
 感染者が爆発的に多い米、英は2020年12月からワクチン接種を開始しています。日本では
2021年2月からと遅く開始したにもかかわらず、9月末時点で米の接種率を上回り、素晴らしい速さで接種が進んでいます。

日本 2021/2/17開始 医療従事者から開始し高齢者接種、次に基礎疾患のある方、高齢施設等の
従事者、一般の方、10~11月までに希望する国民に接種完了目標
接種率1回76.1%、2回68.4%(2021/10/20)
台湾 2021/3/22開始 医療従事者から開始 7月末までに25%接種目標 接種率1回63.9%、2回
23.9%(2021/10/20)
NZ 2021/2/20開始 国境管理・隔離施設関係者、医療従事者から開始し、高齢者・基礎疾患の
ある方等に順次接種
接種率1回73.3%、2回59.5%(2021/10/22)
英 2020/12月上旬開始介護施設の入所者・スタッフから開始し、80歳以上の高齢者・医療従事
者に接種、年齢重視で順次接種
接種率1回74.7%、2回66.9%(2021/10/20)
米 2020/12月中旬開始 医療従事者・介護施設入居者から開始
接種率1回66.3%、2回57.3%(2021/10/20)


【小結論】 日本人は、「要請」というゆるやかなものであっても、真面目で我慢強く、決められたことを守ることから、その効果を発揮するが、それが何度も続くと「仏の顔も三度まで」で我慢疲れとなり、効果が薄れてきます。「国境封鎖」が遅れたのは、国民の「安心・安全」を優先するよりも、国として「経済を回す」ことに重点を置いたことによると考えられます。
手厚い経済措置、なかでも国民全員に一律に給付金を支給することは、「迅速に」という面があるものの、やはり「平等」という考えが強く出てきたものと考えられます。マスク着用が守られ、またワクチン接種が進んでいるのは、「他人の目を気にする」、「具体的に明確な目標があると頑張る」ことによるものと考えられます。


5.その他の国民性具体的要素の考察
国際比較で特筆すべき国民性具体的要素(該当トピックスが一つのものも含む)
5大要素以外で、日本人の国民性を浮き彫りにした要素について考察しました。該当するトピックスが
一つであっても国際比較すると大きな違いがあるものを追記しました。

(1) 幸福観 日本人の幸福度は88.3%、しかし子供の精神的幸福度は37か国中37位
日本人は自らを幸福だと思う指数である幸福度は88.3%(非常に幸せ、やや幸せ)と高い数値が出ています。そして、大切なものとしては家族44%、健康・生命18%、愛情が18%になっています。
統計数理研究所調査(The Institute of Statistical Mathematics)(以下「ISM」という。)
一方、日本の子供は「健康」であるが「精神的な幸福度」は低い結果になっています。日本の順位で特徴的なのは、子どもの肥満や過体重の割合、死亡率から算出する 「身体的健康」では1位 だったにも関わらず、15歳〜19歳の自殺率や生活の満足度からランク付けした 「精神的幸福度」は最低レベルの37位 になっています。(ユニセフ2020.9)

(2)家族観 家族は重要、親の介護の賛成は77か国中73位
家族を重要と考えている人が98,2%もいました。しかし他国との比較では77か国中47位と日本人より家族を重要視する外国人が多いこともデータとして出ています。そして「成人したら両親の長期介護を担う義務がある」という考え方に対する「賛成集計(賛成・やや賛成)」は25.5%で、77か国中73位との結果になっています。日本人は家族を重要と考えるが、親の介護については他国と比較して低い結果にています。

(3)勤労観 働くことは大切でないは増加傾向
勤労観は変化しています。「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする答えが倍増しています(合計値で 2010 年 21.1%⇒2019 年 42.6%)など、仕事や働くことに対する日本人の意識が顕著に変化しています。

(4)生活観 中流意識は横ばい、下流上流意識が微増
生活の満足度は74.4%満足となっており(2019年)、生活の程度は42.2%が中の中、36%が中の下と下、16.5%中の上と、上になっています。これは前回の調査(2010年)に比較して中流意識は横ばいで下流意識と上流意識は微増しています。別の調査(NHK放送研究所)では低所得者層が増加、中流意識が減少、階層意識も中流から下流にシフトしているとのデータもあります。また社会の対立意識が弱まり、貧困が自己責任だと思う人が少なくなったデータもあります。

(5)個人の基本的価値観 不正には厳しい
基本的価値で重視するのは前述の「安全」>「自由」以外に不正には厳しいがあります。他国との比較でも「資格がないのに医療給付をうける」77か国中22位、「公共交通機関の料金のごまかし」75か国中2位、「脱税」は77か国中3位となっています。

(6)自然観 自然とは共生関係
日本人は自然との関係について、1.「人間が幸福になるためには、自然に従わなければならない」が48% 2.「人間が幸福になるためには、自然を利用しなければならない」が41% 3.「人間が幸福になるためには、自然を征服してゆかなければならない」が6%、その他5%となっています。

(7)宗教観 宗教離れは進む
あなたは、何か信仰とか信心とかを持っていますか?という調査に対して1.「もっている、信じている」が36% 2.「もっていない、信じていない、関心がない」が62%、との結果が出ています。(ISM)
何の宗教ですかとの問いに対して下記ISSPの調査によると「仏教」31%、「神道」3%、「キリスト教」1%。一番多い「仏教」で男女別にみると男性が34%、女性が30%、年代的にみると18~39才が17% 60才以上で40%台となっています。宗教の形骸化は進んでいます。違う表現をすると宗教離れは確かに進んでいます。しかし、宗教へのかかわりの深さは心の問題であって、拝む頻度は少なくなったとしても信仰心が薄くなったとは言い切れません。
NHK放送文化研究所が参加しているISSP( International Social Survey Program)調査2019によると、
「宗教団体への信頼度」は日本の場合10%未満と極端に低く、キリスト教の地位の高い欧米では30%台~50%台と一定程度高くなっています。

(8)死生観  死生観は多様化、しかし自殺は許容できない
現代社会においては,価値観の多様化に伴い死生観そのものも多様化し個人化してきており、さまざまな場面で死生をめぐる自己決定を求められるようになってきています。こうした中で自らの死生観を吟味し確立する必要性に迫られるようになったことも、今日、死生観に対する注目度が上がっている理由と考えられます。自殺観については性、年代問わず自殺は許容できないが82.3%と多い傾向にあります。しかし10%は許容しており、若年層ほど自殺を許容する傾向にあります。
コロナ禍でも死の選別が話題になりました。東京大学医科学研究所が2020年12月に実施したECMOの装着を必要とする患者数に対して台数が足りない場合、装着する患者の優先順位を決定するトリアージが行われる可能性」があることについて想像したこともない一般市民が44%いることがわかりました。各自の死の問題はタブーなのかも知れません。

(9)マスメディア観 インターネットが新聞を超える
欧米諸国はマスコミへの信頼度は低いのに対し、日本は特に高い傾向にあります。
マススメディアに関して新聞・テレビから毎日情報を入手しています。このように新聞、テレビから「毎日情報を得る」のは48か国中1位となっています。そして新聞雑誌への信頼度は69.3%(18~29才60.6%、70代78.6%)。信頼度は他国と比較すると77か国中4位となっています。テレビへの信頼度は少し低く64.53%(18~29才58.46%、70代72.6%)となっています。そして信頼度は48か国中8位となっています。
情報源については情報源への毎日の接触頻度はテレビニュースが89.1%、インターネットが59.4%、新聞が56.8%、携帯電話が27.1%、友人同僚との会話が25.3%、ソーシャルメディアが25.2%、Eメールが17.5%となっています。新聞よりインターネットが超えていることがわかります。インターネットへの接触頻度は30代が一番高く毎日が85,4%、週1回は8.4%、70代は毎日が22.6%、週1回が7.9%となっています。


6.日本人は将来どうなりたいのか?(What do Japanese people want to be in the future?)
今後の日本や日本人に何をのぞむかについてのベスト3は次のようになっています
1. 日本文化や価値観を大切にすべき
2. 生き生きと自己実現できる社会の構築
3. アジアの諸国との交流を深め頼りがいのある国へ
                                              世界価値観調査
そして自分の子供に望む特性(サブ・パーソナリティ)としては「決断力」「創造・創作力」を重視しています。また現在の若者(社会人)が自分自身に身に着けたい特性(サブ・パーソナリティ)としては「チャレンジャー」「だんどり屋」「実践家」「理論家」を重要視しています。  N=827


7.グループ学習で学んだこと
(1)グループ学習で学んだこと                                        板倉宗衛
 私は以前から、「日本人のルーツ」に興味をもっていましたが、今回の世界的な新型コロナ感染症拡大(パンデミック)のなか、日本と諸外国との対策や感染度合に大きな違いがあり、その要因は日本人の国民性にあるのではと考えるようになり、日本人の国民性について学習する動機となりました。
① 日本人の基本的価値観で重視するのは、安全、自由、平等であります。最も重視しているのは「安全」
で あります。その中の「自由」は我々日本人が自ら勝ち取ったものではなく、与えられたもので、本質的な価値を理解していない面があります。また「平等」は大切ではありますが、「公平」という概念の方がより大切であると私は考えています。「公平」とは、ゲタをはかせて平等になるようにする」と理解しています。(今回、平等と公平の違いを知りました。) 公平を突き詰めれば、本質的な平等を実現できます。
② 日本人は自然には逆らえないという自然信仰があり、自然との共生を選んでいます。宗教について
無宗教の人が多いと言われますが、そんなことはなく、日本人は信心深い国民であります。無意識のうちに宗教的行動をしています。例えば、初詣、お守り、お寺参り等々です。
③日本人の国民性を根本から形成しているのは、「不安感情」であります。日本人には「不安」を抑えるセロトニンという脳内神経伝達物質の分泌量の少ない人が多く、そのため「心配屋さん」が多数をしめています。日本人は、この不安感情を抑えるセロトニンの分泌量が世界で一番少ないことが実証されています。この不安感情が、日本人のさまざまな国民性に影響を及ぼしています。
④日本人は「不安感情」の強い国民でありながら、「危機意識」が低いと言われています。 日本は古来より台風、地震、津波、洪水、火山噴火など自然災害に晒され甚大な被害を被ってきたのにも拘わらず「危機意識」が低いとは不思議です。これは、日本人の「面倒くさがり屋」「アバウト」な性格によるものかも知れません。 私は、この日本人の国民性の「不安感情」を十分認識した上で、ちょっと今より早めに決断、行動しさえすれば良いと考えます。決して悲観的になる必要はないと思います。「不安感情」の裏返しとして「慎重さ」「思慮深さ」という優れた気質を日本人は持っているからです。
⑤「感染症の歴史」から推察すると、感染症の流行のない時代はなく、日本の歴史は感染症との歴史であるといっても過言ではありません。感染症は歴史をも変える力があります。しかし歴史の裏に感染症があったとしても、表に出されて語られる事があまりないようです。
⑥最後に、What do Japanese people want to be in the future?について、
日本人が将来自分の子供に求めるものは、「創造性」と「決断力」であるとの調査結果が出ています。日本人の国民性として世界的に認められている「勤勉」「礼儀正しい」「親切」をこれからも大切にして、それをベースに「創造性」と「決断力」を兼ね備えれば、必ずや「世界から頼りにされる国民・国家」になることができると考えます。

(2)グループ学習で学んだこと                                       岡田光雄
①たくさんの本を読むようになった。日本や世界の出来事に関心が湧き、コロナ関連本をはじめ幅広く、医療・科学から政治・経済、人類学までの分野の本を読むようになりました。これは73年間の人生では初めてのことです。「学び直し」の大きな契機になりました。
②「心は熱く、頭は冷静に」、経済学か法学の教科書にあったことばです。自分の思いや考えを伝える時に、熱い心が強くなり過ぎては情報の偏りや論理展開での誤りがおこります。特に日本人は空気に同調化しやすい国民性をもつ。冷静な思考・判断で、エビデンスのある理論や考えを伝えることが大事であることを学習しました。
③日本人の「強み」と「弱み」を知り、これからの「ありよう」を考える良い機会になりました。
<日本人の強み> 思いやり、おもてなし、助け合いの精神、空気を読む力(読み過ぎは注意)、平和的、協調的、調和的、貢献的な国民性、勤勉でまじめ、高い公衆衛生意識、几帳面、正確、正直、丁寧、職人気質、器用な手先、何でもその道を究める高い精神性などたくさんあります。
<日本人の弱み> 長期的な展望や政策が苦手、深く長期的・継続的な思考力や思想の形成や言語化が不得手、狭い小さな世界でこじんまりまとまる、外国人(語)は苦手、不安やリスク回避の時にとる逃避的・近視眼的な行動様式、ムラ社会を形成し同調圧力を使い「出る釘(くぎ)は打たれる」、「以心伝心」(言わなくても空気で伝わる、理解してもらえる)に依存するために、説得が苦手。
④グループ学習での「基本的価値観調査」では「安全」が一番でした。国防に関しても、アメリカ依存から脱して「自主独立した形」にしていかないと、これからの厳しい国際社会で生き残ることは難しいと思います。  
⑤日本人の「不安気質」や「自然災害」に関しては、これからも長いお付き合いになります。しかし③で述べた日本人の「強み」を知り、創意工夫することで、不安の少ない、安心な環境社会つくりが実現すると考えられます。 
⑥日本人の「弱み」を改善するには、勇気をもって異文化社会(世界)に飛び込み、積極的に切磋琢磨することで、「弱み」を「強み」に転化することにつながると思います。
⑦「コロナ禍」でのカレッジ生活は規制が多くて残念でしたが、一方では初めてのオンライン授業やZoom会議、スカイプでのコミュニケーションなど経験ができました。これからも健康である限りは、地域社会での「自己実現」をめざして頑張りたいと思います。みなさんありがとうございました。

(3)日本・日本人はどうなってほしいか                                  小原元司
日本は、第2次世界大戦後、その国民性を遺憾なく発揮し、国の復興のために真面目で我慢強くこつこつと頑張ってきました。それにより、高度経済成長を遂げ、奇跡の復興と言われ世界第二位の経済大国となりました。ところが、1990年に入るとバブルが崩壊し「失われた30年」と呼ばれるように、経済成長が低迷し、物価も給料も増えず、これまでのこつこつと努力するやり方では世界に通用しなくなり、欧米はおろか中国にも置き去りにされてしまっています。
長引く経済の低迷により、日本人は自信を喪失し閉塞感が漂ってしまっています。これらを打ち破るためには、周りの人の目を気にする「キョロキョロさん」では無く、自分自身に自信を持ち、その生き方に信念を持って生きていくことが必要であると考えられます。
これまで日本は、長い歴史の中で脈々と受け継がれてきた工芸・芸術・芸能など世界に誇れる伝統文化を数多く有しています。これからは、欧米と同じ土俵で競争するのではなく、これらの伝統文化を基に「創造力・創作力」に磨きをかけることにより「ナンバーワン」にならなくても、世界の中で「オンリーワン」の存在として、「輝く日本・日本人」を取り戻せるものと考えています。 

(4)日本人の課題                                                八尾芳樹
コロナ禍での日本人の国民性をトピックスとして扱ったこともあり、日本人の不安気質がクローズアップされました。しかし、これは平常時の日本人の気質でもあることが学習や研究を通じてわかってきました。そしてこの不安気質がベースとなって性格形成、価値観そして行動様式につながっていることもわかりました。 
日常の生活や経済活動においても失敗をしたくない、間違いをおかしたくないといった安全・正確欲求、人に嫌われたくない、迷惑をかけたくないといった受容・所属欲求が強いため、これらの欲求が脅かされるのではないかといった不安から、自らの生き方にブレーキをかけているのではないかと感じることがあります。
マズローの欲求段階説を借りてコロナ禍における日本人の国民性で浮き彫りになった具体的要素を考察すると、多くは生理的欲求(身体的欲求)、安全欲求、社会的欲求(人のつながり)といった欲求を満たすものでした。マズローはこれらの欲求が満たされると次に自尊欲求(達成・賞賛)や自己実現欲求が生じてくると提唱しています。(実証データはないが人間の動機付けやマーケッティングの世界では概念としてよく使用されている)しかし、自尊欲求や自己実現欲求が内面から自然発生的に生じてきてもどこか自分らしい自己実現的な生き方に一歩踏み出せないところがあります。
今年はメジャーの大谷翔平選手が活躍しました。野球フアンのみならず多くの国民に感動と日本人の誇りを与えてくれました。確かに多くの数字を残したり彼の人間性、指導者にも恵まれたことも大きかったかと思います。しかし私は注目したいのは流行語大賞にもなったピッチャーとバッターのリアル二刀流の野球スタイルにこだわり、自分の野球スタイルを実現したことです。現在の親は子供に対して生き生きと自己実現できる社会を望んでいることもわかりました。私たちが自分らしい生き方、自分の可能性を具現化する生き方、そしてかけがえのない人生を生きるためには失敗からくる減点主義や他者の目にいつも縛られるのではなく自分の生き方にこだわる意志が必要なのかもしれません。

謝辞
最後に私たちのグループ学習の内容に興味を持っていただき、そして導いていただいた指導プロフェッサーJudy Noguchi先生にお礼を申し上げます。


8.参考文献
調査方法
1. 新村出編(1998年11月11日): 広辞苑 第5版  岩波書店 
2. 松村明編(2006年10 月27日) 大辞林 第3版  三省堂
3.統計数理研究所調査(The Institute of Statistical Mathematics) 第13次全国調査結果 2016年
https://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/index.htm

考察と結論
4.価値観に関して
世界価値観調査 (World Values Survey)77か国比較
(1)「日本の時系列比較」「世界価値観調査」1990~2019年日本時系列分析 2020年3月
(2)「最大77か国の国際比較」第7回「世界価値観調査」レポート 最大77か国比較から浮かび上がっ
た日本の特徴  電通総研  2021年3月
(3)「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」日本版第 1 波調査結果発表  2020 年 7 月 28 日 慶應義塾大学、名古屋商科大㈻

5.セロトニンに関して
(1)村上 文世、下村京夫、小谷和彦、井川史郎(1999年1月) 「セロトニントランスポータ
ー遺伝子調節領域における多型に関連する不安特性」人間遺伝学雑誌 
17DOI:10.1007/s100380050098
(2)慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 前野 隆司(2020年9月18
日)「日本人の多くが持つ心配性の遺伝子型と上手に付き合う」
https://shuchi.php.co.jp/article/7930?p=1
(3) Joan Y. Chiao & Katherine D. Blizinsky(2009年10月28日)「個人主義-集団主義とセロトニ
ン輸送体遺伝子の培養-遺伝子共進化」
https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rspb.2009.1650
(4) 循環器内科専門医専門医 新井孝典(2015年11月26日)「日本人は高度不安民族?!」
http://jsca.co.jp/stressnews/2015/11/26/
(5)脳科学者 中野信子(2015年11月30日) 日本人の不安気質 
  https://rikei-biyouka.com/2019/03/lifestyle/
6.医療制度に関して
(1)特定非営利活動法人 日本医療政策機構(2017年11月)「医療制度に対する調査」
(2)厚生労働省(2018)「医療制度各国比較」 「OECD加盟国比較」
7.ソーシャル・スタイルに関して
(1)David W. Merrill & Roger H. Reid (1981) 「Personal Styles and Effective  
   Performance」 Chilton Book Company,PP. 53 
(2)㈻産業能率大学経営開発本部(1970) ソーシャル・スタイル「日本人のデータ」 
8. 性格・サブ・パーソナリティに関して
(1)清水弘司(2004年10月7日) 「性格心理学」  ナツメ社 
(2)ロベルト・アサジョーリ(1997年6月15日)国谷誠朗・平松園枝共訳「サイコシンセシ 
  ス」誠信書房
(3)YAO教育コンサルタント・エンパワーメントカウンセリング研究所(2017年5月)SP(サ
   ブ・パーソナリティ)特性「SPTメソッド実証データ編」 
(4)SPトランプ  八尾芳樹、角本ナナ子 企画制作
9.日本人論に関して
(1)大久保喬樹(2003年5月25日)「日本文化論の系譜」 中央新書
(2)佐伯彰一・芳賀徹(1987年3月25日)「外国人による日本論の名著」  中央新書
10.ワクチンに関して
(1)北里生命科学研究所 中山哲夫教授(臨床ウィルス学)(2021 )
 「ワクチン訴訟判決1992年」で照会 /項目(過去の苦い記憶 日本のワクチ
  ン展開の影響を懸念)https://www.dailyshincho.jp/article/2021/05241115/?all=1
(2)厚労省副反応部会(2021 年11月12日)FNNプライムオンライン「HPVワクチンに
  関する動画」
11. 感染症の歴史に関して
(1)WEB防災情報新聞(無料版)(2021年9月5日) bosaijoho.net/2021/09/05/項目「日本の 
  災害・年表「感染症流行・飲食中毒・防疫・」選択
(2)石 弘幸(2021年1月29日)「図解 感染症の世界史」 Kadokawa
(3)磯田道史(2020年9月20日)「感染症の日本史」 文藝春秋社




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