96.生徒さんの日記から「ボーナス」(2)
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
造形リトミック教育研究所
*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー
あの、ボーナスをもらったお嬢さんのお話のつづきです。造形リトミックの教室では、日記を書きはじめる前に、毎回「いつ・だれは・だれと・どこで・どうした」をメモ書きしてから書くように練習しています。先回ご紹介した日記にも、小さな文字でそれがメモ書きされていました。よく読むと、そんな小さな表現にも気持ちの動きが表れていました。「どうした」の項目だけを拾ってみましょう。
12月8日 月曜日:「どうした:仕事した」
12月9日 火曜日:「どうした:仕事した」
12月10日 水曜日:「どうした:仕事たのし」(ボーナスをもらった日)
12月11日 木曜日:「どうした:仕事した」
12月12日 金曜日:「どうした:やるきの仕事」
たったの数文字で、うまく表現していることに感心します。「仕事たのし」「やるきの仕事」とは、何ともユーモラスに、また端的に微妙な気持ちの変化を表しています。
造形リトミックの教室で初めて出会っときは1歳7ヶ月、幼児というよりまだ赤ちゃんのころでした。ベビー用のハイチェアにさらに厚くクッションを敷いて、どうにか机に向かえるような形でおけいこをはじめました。手を添えていっしょに、「とんとんてんてん」と点描、「すーい」「しゃー」と線描・・・。ねらいは、認知、ことば、手先の巧緻性の基礎作りとその発達。いわゆる文字や数などの学習の前の学習です。
気に入った教材が机の上に出てくると、椅子の中から机の上に這い出してきてしまいます。這い出しては、また椅子の中におさめながら、楽しく学習を続けました。
あれから、20年近くが経ちました。親御さんは就学や進路の選択など、節目ごとにいろいろとご努力またご苦労されたことと思います。でも日々は、楽しく豊かに無理なく育てられたのではないでしょうか。
このお嬢さんをはじめ、生き生きと豊かに成長された生徒さん方に共通していることは、「愛情をもって、無理なく育てられた」ということです。「無理なく」というのは、「手を抜く」ことでも「あきらめる」ことでも「あまやかす」ことでもありません。
ですからこのお嬢さんは、楽しく、ユーモラスな面を持ちながらも、毎日お仕事に通い、不慣れな仕事に疲れても乗り越えようとするような芯の強さも持ち合わせています。宿題、ピアノ、日記など、自分から習慣として取り組むような意欲もあります。季節や折々の行事も楽しみ、本当に生き生きと生活しています。
このような成長の仕方、生き方は、もって生まれた力は異なっても可能です。「いかに育てるか」、です。それも、大上段に構えた育て方があるのではありません。毎日をいかに無理なく楽しみながら、しかも適度なノルマや約束事も与えながら、過ごさせるか、ということです。
生き生きと豊かに成長されたたくさんの生徒さん方に、今、幼児であり、小学生、中学生、高校生である生徒さん方が、それぞれの個性を育みながら続かれることを心から願っています。(2008年クリスマス)
造形リトミック教育研究所
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