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食道がん患者から歯周病菌 食道がんと歯周病との関連とは

研究論文で発表


若林健史歯科医師
2021/09/20 07:00(AERA dot.)

 消化器がんの一つである食道がん。他のがんに比べ早期発見が難しく、進行が早いと言われています。この食道がんに歯周病菌が関係していることがわかってきました。歯科医師で歯周病専門医の若林健史歯科医師に詳しい内容と見解をうかがいました。

*  *  *

 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、最新のがん統計(がん罹患数予測2021年)で食道がんは男性の場合、前立腺、胃、大腸、肺、肝臓、膵臓、に次いで7番目に多くなっています。

 日本食道学会の全国調査(2008年)で性別では男女比が約6:1となっており、男性に多いがんということがわかります。好発年齢は60代、70代とありますね。

 また、食道がんの危険因子として、お酒とたばこがよく知られています。

 私はたばこは若い頃にやめたものの、お酒はときどき飲みます。また、好発年齢にも該当しますので、決してひとごとではありません。そんな中、食道がんと歯周病菌との関連が発表され、とても興味深く読みました。

発症のしやすさが約6倍に

 この研究は東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床腫瘍学分野の三宅智教授、歯周病学分野の池田裕一助教らの研究グループが実施、2020年11月に国際医学誌「Cancer」(オンライン版)に発表したものです。

 研究では同大の附属病院・消化器外科に入院した食道がんの患者さん61人と、がんでない患者さん62人の口の中の検査をおこないました。

 その結果、食道がんの患者さんでは歯周ポケットの深さ(平均)が2.7ミリ、がんでない患者さんでは2.1ミリでした。歯ぐきからの平均出血率は食道がんの患者さんが17%であるのに対し、がんでない患者さんは6%でした。これらの結果から、食道がん患者さんでは歯周病の状態が有意に悪いという結果でした。

 さらに研究では唾液と歯ぐきの下のプラーク(歯垢)を採取し、そこから見つかった7種類の細菌を特殊な機器で計測しました。その結果、食道がんの患者さんでは歯周病菌が有意に高く検出されました。中でもアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス菌(A.a菌)が16人で見つかったのに対し、がんでない患者さんではわずか1人でした。これらの結果から歯周病菌(A.a菌)は食道がんの危険因子となると発表したのです(発症のしやすさは5.77倍)。


 A.a菌は歯周病の中でも特に悪性度の高い菌の一つです。A.a菌は歯周ポケットの内部に入り込んだ後、急速に増加するという特徴を持ちます。歯をかなりていねいに磨いても、歯周病が進行しやすくなってしまうといわれ、この菌が口の中にいる患者さんのうち、15%くらいの人がその後、重症の歯周病に進行します。また、歯周病の中には10〜30代で発症し、急激に進行するタイプの歯周病があります。かつては、重度進行性歯周炎、若年性歯周炎などと呼ばれていたものですが、このタイプの歯周病の原因菌としてA.a菌が知られているのです。

 この研究では歯周病菌がどのように食道がんを発生させるのか、詳しいメカニズムについては明らかにされていません。今後の研究課題となると思われますが、つくづく、歯周病菌というのはたちが悪い菌だと実感します。

 すでに糖尿病、動脈硬化、早産、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、認知症などさまざまな病気とのかかわりが指摘されていますが、今後もさまざまな疾患とのかかわりが明らかになってくるのではないでしょうか。

A.a菌の有無を検査し、抗菌療法を

 さて、A.a菌が見つかった場合、歯周病重症化の予防対策としても、食道がん対策としても、できるだけ菌を取り除き、口の中をきれいにすることが大事になってくると思われます。

 A.a菌が口の中にいるかどうかは、歯科でわかります。この研究と同様に、口の中のプラークを採取し、検査機器で調べます。重度の歯周病や治りにくい歯周病の患者さんでA.a菌が見つかった場合、抗菌療法をおこなうのが一般的です。

 抗菌療法はテトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬などの抗菌剤で原因菌を死滅させる方法で、飲み薬として服用してもらう方法や、歯と歯ぐきの隙間に投与する方法があります。心配な人は一度、相談してみるといいでしょう。治療対象外である場合、自費で検査を受けることができます。

 なお、冒頭でも申し上げたように食道がん対策としてはお酒の飲みすぎ、たばこに注意が必要ですが、この二つは歯周病にも深くかかわっています。

 たばこは成分のニコチンに血管を収縮させる働きがあり、歯ぐきの血流も悪くなるため、歯周病が悪化しやすいことが知られています。また、歯周病があると歯科で治療をしても治りにくいことがわかっています。

 お酒については、飲んだ後、酔っぱらって寝てしまうなどして、歯みがきをしない人が意外と多いのです。

 しかし、アルコールには糖質が含まれています。中でも醸造酒のワインや日本酒は糖質が多く、歯みがきをしなければ、むし歯や歯周病の原因になります。

「アルコール消毒だ」などと言って、豪快に飲んでいる人もいるようですが、十分に注意してください。


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