小学4年から中学2年まで
従順で成績がいい優等生であれば
身を守れた 大人の保護のもとにだ
だがそれだけでは無理という事がわかってきた
自分でも制御できないほど自我が育ち始めていた
飼猫から 野良になる
野良になれば
居場所も餌も一人で調達しなければならない
縄張り争いも もう親の保護を受けられない
飼猫は もうやだ
自由が欲しい
でも
自分に野良になる知恵も力もないのは十分知っていた
飼猫のまま野良になるしか無かった
保護を受けながら その態度が野良
絶対矛盾であることは承知の上だ
もう知能やおとなしさは要らない
そう決心した途端
自分は阿呆になった
全教科書を1日で丸暗記出来た記憶力は
跡形もなく消え
強い意志という 透明なサイバードッグの鎧を手に入れた
でもサイバードッグとて生まれたばかり
訓練や躾けを受けてない 天然丸出しのわんこ
子供の野良と 子供のわんこが合体した
おまけに アホときている
これ以上のアホの組み合わせはない
最強のアホが出来上がる
手当たりしだいに人に噛み付くは
もっと強い犬に噛み付かれるは で
多分自分だけではない
男というものは
ある時期から18くらいまで
手が付けられなくなる
優しい人であろうと
厳しい人であろうと
とにかく寄ってくるもの近づいてくるものに歯を剥き威嚇する
自立への 不安と臆病さがそうさせる
敵も味方も区別がつかない
この時期の男の子は野良犬だと思った方がいい
自分一人しかいない世界に住んでいる
でも ほとんどの男の子は
社会のひな形のような小さな世界で
戦闘し 傷つき やがて社会のルールを覚えて行く
我慢し 人と協調することが自分の利益にもなる事を覚えて行く
けっして ただの馬鹿ではない
いずれ いくらか利口になり
おあずけも覚えるし お手も覚えて行く
訓練されたサイバードッグの鎧は
仕事や対人関係にはとても役に立つ
野良を守り 野良を育て 自分も成長してゆく
そして
長い長い年月を経て
何時か
遠い目になる
自我も鎧も要らなくなる
野良もドグも もういない
遠い目の一部になったからだ
すべては事も無く通り過ぎて行く
透明な見つめるだけの目になったからだ
もう何者も何事も自分を傷つけない
難しい言葉で言えば
非存在が存在している
そんなとこかな