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八月十五日に訪れるのは生まれて初めて
半蔵門線 九段坂下駅は交通規制をしていた
機動隊の警備は厳重で
暴走族のような街宣右翼もいず プロ市民の左翼もいず
ざっと見まわしたところ 数千人の人々がいたが
声高に騒ぐ人もいなく 皆 粛々と列を作っていた
気のせいか 暑いせいか 羊の毛皮を脱ぎ捨ててるように見えた
英霊を前にして 彼らの犠牲を悼む
平和に慣れて 被った毛皮のせいで 心まで羊になってしまっていた
蒸れて腐った毛を捨て
羊の群れから 狼の群れへ
犬のように吠えるのは無駄と知り
静かに相手を倒すチャンスを待つ
必ず隙はできる じっくり観察すればいい
はぐれ狼も出てくるだろう
群れの統制のきかないテロリストもいずれ出てくる
公平と当たり前の正しいことが行われなくなれば
矛先は群れのリーダーへと向かう
内紛は群れを危険にさらす
怒りでもなく 利害損得でもなく 狼一匹一匹の生存と生活のために
普通に羊でいたかったのに
時代だな
緑の木々の下 ふと 夢想した
巨大な鳥居の下で 振り向き拝殿へ向かって礼をする
帰りも こちらへ向かう人々でいっぱいだった