永井荷風は江戸の切絵図を懐に東京市中を徘徊するのが好きだった
山頭火は極貧の内に放浪の旅をした
良寛さんも 若い頃諸国行脚の乞食の旅をし 無位無官の僧侶として清貧の日々を送った
それぞれ個性はまったく異なるが
共通しているのは 一人上手のおたくである事だ
動物で言えば 猫である
最近はこの光村推古書院から出ている時代マップをザックに突っ込んで東京散歩をする
江戸時代の切絵図に現代の地図をレイヤーしたものでとても重宝している
昨日は 妻に声をかけ二人で歴史散歩に出かけた
妻は5キロ10キロは平気で歩く人だし
特に当てもなくぶらりぶらりしても 退屈する人でないので
互いに休みが同じ日であれば一緒に散歩する事が多い
青色は川や運河や池で くすんだ蜜柑色は武家や大名の地 ピンクが社寺地 グレーが町民や百姓が住む所だ
江戸の人口100万ほどと言われてるが 町民の街は面積にして4分の1くらいしか占めていない
それでいて町民の人口は50万ほど ほとんどが地方からの流れものだと言う
錦糸町から京葉道路を両国へ向かった
いい天気だが 日陰はやはり寒い
あら! ほんもののニャンコよ 可愛いこっち見てるわ
振り返ると猫がいた
廃業した お店のショーウィンドウで日向ぼっこしていた
ガラスをたたかないで下さい と 張り紙がしてある
物憂げな猫と目線があった じっと見ている
好奇心も 警戒心もないただの観察目線
いいな~ うらやましいな~
ほんとうに この猫が羨ましくなった
妻は ニッコニコして携帯で写真を撮っていた
なんか 俺は この猫と ずっと見つめあっていたかった
さ 行こう あのマンション大きいわね さすが都会ね
久喜にも あのくらいのはあるさ と 返事した
田舎のかたを持ちたくなるのは きっと俺が完全に埼玉県民になった証拠だろう
両国へ出て回向院に寄り裏手の路地を吉良上野介の屋敷跡に向かう
思うに 東京を散歩すると
去年あたりから カメラ女子 携帯おばさん カメラじじいがめったやたら多い
時には デイバッグをしょって 一眼レフを首から下げた10数人の集団とすれ違うこともある
流行りなんだな 俺も人の事は言えないけど
裏通りをゆっくり歩き 街並みを観察しながら清澄庭園へ到着
ちょうど庭師が松の剪定をしていた 透かしの作業だ
懐かしく昔を思い出し職人の手元をながめて楽しむ
松は今でもたまにいじりたくなる
昔は素手で手を脂で真っ黒にしてやったものだ
街路や公園の仕事をしなくても 彼らはここの仕事だけで食っていけるだろう
ここは何度も訪れているが 妻は初めて
こんな施設があるなんて 江戸時代がよく実感できる へ~
行く所 行く所で 靴を脱いで上がりこみしきりに感心している
ここに展示してある家財道具の半分近く 自分の子供時代にも家庭でありふれたものだ
懐かしいだろ?
私は記憶無いわよ あなた古いのね
そうかよ
考えてみれば日本が今のようになったのは昭和40年代前後頃から
65年生きてきたんだなと感慨に耽る
東京は定見も無く無秩序に古いものを壊し 形を変えて古いものを残し
エネルギッシュに変化をしている
自分はその無定見さがカオスが結構好きだったりする
訪れるたび違う顔を見せてくれる
駅に着いて
久しぶりに 妻を飲みに誘った ワタミでいいと言う
あそこ野菜がおいしいし バーニャカウダーで食べたいと言う
生中で乾杯し 昔話を2時間ほどし 帰宅した
程良い疲れで良く眠れた
風呂入るの忘れた
ま 今日入ろう