妻よ 宗教を 語ろうか その前に

君は　多少は　知ってるね
たまに　気が向いた時
しゃべる時があるからね

死んだ　親父は
お母さんの　影響で　ギリシャ正教の
ハリストス　教会へ　通うようになった
函館の　ニコライ堂だ
パイプオルガンを弾いてたそうだ

母と結婚し　山奥の炭鉱町で　経理をしていた
兵役が終わった　敗戦の年
何を　思ったのか
仲間を集めて　教会を作ると言い出した
休日に　行商やバザーを開き
資金を　集め
本当に建ててしまった

器は出来たが　神父様がいない
俺が３才の時
来てくれたのが　ローマンカトリックのヤヌワリオ神父だった
俺は　神父に懐かず
膝に　抱っこされるたび　
ギャーギャー　泣いていたそうだ

３才で　洗礼を受けた
bonaventura
俺の　ミドルネーム
洗礼名だ

小学校　６年頃まで
教会に行ってたよ
家にも　信者さんたちが
溢れていた

お袋は　親父の少ない給料の中で
やり繰りして
皆に　食事を作っていた
毎日　毎日だ

皆好きだったよ
でも　俺は　何時も　一人になりたかった
優しさに　うんざりしていた

炭鉱町には　死が日常
落盤　ガス爆発　出水
手足が　ちぎれた　級友の父親達
何時も　死を見つめなければいけなかった
女達の　子供達の　泣く顔
慣れてしまって
俺は　枯れてしまった
子供なのに

そして　教会へいかなくなった
神よ　お前なんか
偉そうな事言っても
このざまは　なんだよ
何故　殺すんだよ

そして　教会へいかなくなった
優しさゴッコは
もうゴメンだ
生きてるものが　傷舐めあって
どうするんだよ

小学校６年生
身長　１７２cm
身体だけは
大人だった
論理だけは
大人に　負けなかった

中学２年
越境入学で
他人様の家へ　
養子縁組までして
苗字が　変わった
俺も　変わった

短大生の　お姉さんがいた
ミッションスクールだった
何時も　俺を　部屋に呼んでは
身体を揉んでくれ　と言われた
相手を　間違えているんじゃないか
俺は　腹の中で　思った
口には出せなかった
今　思うと　僅か　四つ違い
素直でなかった　あの頃の　俺


親に頼んで
養子縁組を　解消し
違う下宿先を　探して貰った
一人で　朝からウィスキー片手に
ゴロゴロ　していた
部屋は　ヤニで　黄色くなっていた
何で生きているのか
解からなかった
中学３年生だった

疲れたから
今日は　このへんで