エーレンフェストのパラドクスについて
回転系の回転対称性と(時間)並進対称性とによって、回転系の同時刻面と慣性系の同時刻面とは一致します。よってパラドクスは存在しません。
円周に沿って等速直線運動する観測者にとっては、円板全体が動きます。一方で円板とともに回転運動する観測者にとって、円板は動きません。両者の物理、計量は異なります。速度だけで計量が定まらないのは、自由落下によって局所慣性系をとる場合と同様です。観測者の速度だけではなく、加速度も境界条件になります。
そもそも、回転する、動く、動かないという見方は、時間経過の中での空間的位置変化を考えることで成立します。時間と空間を分離することです。一般座標変換では座標のとり方は任意ですが、回転系の場合にはそれにふさわしい時間、すなわち、円板上の観測者たちにとって円板が動かない時間座標をとらなくてはいけません。
中心から発せられた光によって円周上の同時刻が定義できます。(各点毎に同時刻面が異なると、時間は循環的になります)
同時刻面の形が変化するならば、円板上の観測者たち相互が「動く」ことになります。固有時の経過時間は半径によって異なりますが、同時刻という観点から考えれば、慣性系の同時刻面と同じく水平面になります。