八年前のことだった。
ヘルパー2級の講座で80歳近い先生がボクの前にいた。
先生は、何故かボクの目を見つめていた。
「ねぇ、あなた達、年取った利用者さんにとって、あなた達は人生で出逢う最後の赤の他人なのよ」
ボクは唖然と先生の顔を見上げていたと思う。
『最後の赤の他人』
その言葉が胸に突き刺さった。
嗚呼、ボクは最後の赤の他人になるんや!
その言葉に全身の皮膚が硬直し鳥肌だっていた。
先月、施設のおばあちゃんが他界した。
おばあちゃんの娘さんが、
「あの、すみません。母は90歳にして、最後にあなたに恋をしたんだと思います。デイに行きはじめて、それまでしなかった化粧をしだしたんです。だから、母にとってあなたが最後の恋だったんです」
そうなんや!
ボクは最後の赤の他人になれたんかもしれん。