月一回折り紙教室をやるようになったリハビリデイ。
92歳の可愛いおばあちゃん一人が生徒さんだった。
水曜日、今回は三回目、
前二回も他の利用者さんに
「折り紙やってみませんか?」
と声を掛けたが、
「ムリムリ、折ったことないから」
「手が痛いし動かないんだよ」
ボクは、トホホと笑ってしまう。
今回もおばあちゃん一人なんやろな。
と思っていた。
20人程いる利用者さんに挨拶し、いつもの定席に折り紙や額やボンドなどをセットして、今回の日本人形のパーツを折り始めた。
また十人分のセットが無駄になるんかな?
そんなことを考えていた。
突然、人の気配がした。
見上げると、おじいちゃんが
立っていた。
「見てるだけでいいかな?」
ボクは笑顔になる。
おじいちゃんの左手が震えていた。
「手が使えないから、折り紙は出来ないんだ。でも見てて良いかな?」
ボクはジンと笑顔になる。
「もちろんですよ。さあ、ボクの横に座って見てて下さい」
おじいちゃんは遠慮がちに座る。
「すごいな、可愛いな」
おじいちゃんは目を細めて笑う。
額に収まった小さな日本人形、ボクはおじいちゃんの右手に差し出した。
「え、貰っても良いのかな?」
「どうぞ」
おじいちゃんは満面の笑顔になる。
その時、近くに座っていた左片麻痺のおばあちゃんが、
「ねえ、先月貰ったクリスマスの額家に飾ってるのよ。また、その人形も飾りたいから、私もやらして」
そして、気づくとボクは6人の生徒さんに囲まれていた。
小さなこと。