あの日から10年以上過ぎた。
あの頃、自分の会社が倒産し、ボクは自己破産した。
眠れない日々、酒浸りの午後。
胃潰瘍、鬱病。
そんなある日、息子が
「カッつぁん、心療内科に行かんか?」
ボクは突然の息子の言葉に眼を開いた。
「ああ、行くよ」
心療内科のある街に観覧車があった。
「観覧車乗る?」
C女史が遠慮がちにボクを視た。
ボクは、
「とてもそんな気分になれないんだ」
「いつか、この観覧車に乗れたら良いね」
微笑んだ彼女の顔が忘れられない。
今年、やっとクレジットカードを手に入れた。
感慨深い思いが降りてくる。
ボクはあの観覧車に乗れるのだろうか?