生物関係の仕事ではあるものの時間とお金が限られた中、趣味の研究範囲で行う事、限界があるなかでの報告です。
エゾノタチツボスミレに近縁と思われる外国種について(栽培下での観察)
古くから栽培されている園芸種を含む外国種④ビオラ・ルペストリス(旧名アレナリア・ロゼア)V. rupestris cv. ‘Rosea’ 、⑤ビオラ・リビニアナV. riviniana、、 ⑥ビオラ・シエヘアナV. sieheana は国内種と同様の形態からエゾノタチツボスミレ類と考える。ビオラ・シエヘアナV. sieheana(Azerubaijan産)はビオラ・リビニアナV. riviniana の近縁種(田淵 2005)でもある。
⑤ルペストリス ロゼア V.rupestris cv.‘Rosea’ (旧名アレナリア・ロゼア)
2011年入手した株は鮮赤紫色の花が咲く園芸種で、V.rupestris はサンドバイオレットあるいはロックバイオレットと呼ばれている淡青紫色の花である。ヨーロッパから中央アジア、シベリアに分布する(Harvey 1966)。写真9は3株をまとめて一つの鉢で育てていたが、花後は植え替えて1株で栽培したら、地上茎は直立せず横に這うように生長した(写真1)。
① ② ③
撮影①②③:2015.05.06
花のめしべの花柱の上部に突起毛が生える(写真②)ことや、唇弁の距の裏側の溝(写真③)
⑥リビニアナ V.riviniana
園芸名ウッドバイオレットとして苗を入手した(2011年)。しかし、インターネットで調べると、V.rivinianaはHain-Veilchenというドイツ語名があり、ドイツ語Hainは日本訳で「グローブ」のことでウッドバイオレットとは呼ばれていないことがわかった。ウッドバイオレットを調べていくとV.reichenbachianaがヒットした。更に、この種はドイツではWald-Veilchenと呼ばれている。ドイツ語「Wald」は日本語訳で「森」にあたり、「森=Woood=ウッド」、つまり「Forest-Violet=ウッドバイオレット」と連想できた。しかし、V.reichenbachianaの写真を見ると、入手したものと異なっていた。そこで、V.rivinianaとV.reichenbachiana の写真を比べて、果たしてどちらが入手した株と同じであるか検討した結果、V.rivinianaに似ていることが判明した。つまり、栽培名を考えた場合、「Hain-Veilchen=グローブバイオレット」より「Forest-Violet=ウッドバイオレット」の方が売れそうである。入手した栽培種はV.rivinianaのようである。
しかしながら、ヨーロッパのほとんどの地域や北欧、ロシア連邦の一部地域では両種の分布域が重なり、V.rivinianaとV.reichenbachianaとの雑種Viola×bavaricaが生ずる(Harvey 1966)ことがあるようだ。両種の識別ポイントが詳細に掲載してある文献によると、栽培個体は葉や托葉の形、花弁の開く角度や距の色等を観察した結果、雑種Viola×bavaricaと判断できたものの、確信がなく、V.rivinianaとすることが妥当と考えた。
この栽培種は生長すると地上茎が横に這うように数方向に伸び、開花し種子を作る(写真④⑥)ことを観察できた。花のめしべの花柱の上部に突起毛が生えることや、唇弁の距の裏側の溝(写真⑤)もある。
④ ⑤ ⑥
撮影④⑤:2014.03.26 ⑥:2015.05.12
⑦シエヘアナ V.sieheana
株(2012年)や種子(2013年)はアゼルバイジャン産である。シエヘアナは欧州東部から西アジアに分布する(Marcussen 2011)。発芽率が良く、生長すると地上茎が横に這うように数方向に伸びた(写真⑦)。蕾は白色で開花初日は白花で翌日から淡青紫色となる。次々と開花する時期には同時には2色の花が楽しめた。
⑦ ⑧ ⑨
撮影:2015.4.21
花のめしべの花柱の上部に突起毛が生える(写真⑧)ことや、唇弁の距の裏側の溝(写真⑨)もある。
次回は国内産と外国産などの観察から、横走するエゾノタチツボスミレの推察する。
引用文献
・田淵 誠也 (2005) すみれを楽しむ. 栃の葉書房 P.71
・Harvey MJ (1966) Cytotaxonomic relationships between the European and North American rostrate violets . New Phytol 65:470
・Marcussen T, Borgen L (2011) Species delimitation in the Ponto-Caucasian Viola sieheana complex, based on evidence from allozymes, morphology, ploidy levels, and crossing experiments . PL Syst Evol 291:183-196
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