透明人間たちのひとりごと

郷土愛 『静岡の品格』

 先頃、国際的な調査に基づく、競争力と学力に関しての
調査結果(ランキング)が相次いで発表されました。

 ひとつは、2013年版の国際競争力ランキングで、日本は
世界148の国と地域のうち、総合9位で前年から順位を1つ
上げたそうです。

 項目別では 「ビジネスの洗練度」 1位、「研究開発投資」
2位、「市場規模」 4位、「技術革新」 5位などが上位で …

 「政府債務残高」(国の借金残高)最下位、高い税負担
(114位)や貿易障壁(111位)、女性の労働参加率の低さ
(90位)などが下位にランクされる項目です。

 こうした傾向はここ数年、大きな変化はなく財政健全化や
法人税の実効税率の引き下げ、貿易障壁の撤廃など利害
調整が困難だったり、国民に不人気な政策内容ばかりで、
これらの難題の解決にはまだまだ時間がかかりそうです。

 この構図は暫(しばら)く変わりそうもありませんが、今回
ワンランク上昇したのは、政権交代で 「政治への信頼度」
が57位から33位にupしたことが要因のひとつのようです。

 因(ちな)みに、総合第1位はスイスで5年連続で首位を
キープしているそうで、ランキングをまとめている世界経済
フォーラムは、「世界有数の科学的研究機関があり、学界
と産業界の緊密な連携などが強みだ」 と称賛しています。

 もうひとつは、経済協力開発機構(OECD)が初めて実施
した 「国際成人力調査」 の結果ですが …

 こちらの調査は、大人が社会生活を送る上で必要な能力
や学力を測るのが狙いで、参加した24の国と地域のうち、
日本は 「読解力」 と 「数的思考力」 でトップ、基礎学力に
おいては日本が世界一だということのようです。

 年代別では中高年層の成績が他国を大きく上回る一方
で若年層の成績は中高年ほど高くはありませんでした。

 中高年層は子供時代に 「詰め込み教育」 で鍛えられた
成果が出たかたちで、若年層の順位は 「ゆとり教育」 の
弊害としての学力の低下を指摘する声もありますが、単に
学校教育だけでなく社会的要因などの影響の方が大きい
と分析する専門家もいます。

 いずれにしても 「読解力」 では各世代ともにトップだった
わけで、「祖国愛」 からも日本が自信を取り戻すには
うってつけの内容と結果でしたが、こうしたことに関しては
一喜一憂 すべきではないと思うのです。

 数字には表されない「大人力 right 包容力」や測定不能の
成人力 right 自制(自立)力」 もあるでしょう。

 symbol2 成熟した人間の総合力としての魅力は人間力です

 それを測るには多岐にわたる考察が必要で、人間の力を
一介の調査で表すことなど不可能だというべきでしょう。

 ところで

 「小6国語A全国最下位問題」に大揺れの静岡県では、
県知事による成績下位100校の校長名公表発言に対し、
非公表を要請する県の教育委員会と川勝知事との間で
緊張した関係が続いていましたが、先頃、成績下位から
一転して国語Aで全国の平均を上回った86校の校長名を
公表するという苦肉の策を弄するかたちで、一件落着と
なったのですが …

 「まだまだ遊びたい盛りの小学生だろうに …」

 「そんなに目くじらを立てることもない問題だ

 「勉強、勉強って必死になる必要があるのかね

 のんびり屋で、何事にも頓着のない、温和で競争嫌いの
県民気質丸出しの意見ですが …

 教育関係者などの当事者的な立場にある人間を除き、
大方の静岡県民の意識は大体にしてこんなものでしょう。

 おそらく、こうした箍(たが)のゆるさにもどかしさを感じた
知事(京都出身)が、喝を入れようとしたのが件(くだん)の
成績下位校の校長名発表だったのではないでしょうか。

 他府県民の皆さん方には、およそ関心のない話ですが、
もしよかったら少々お付き合いください。

 「テストをすれば順位が付くのはあたりまえで、当然のこと
に1位もいればビリも出る」

 47都道府県のいずれかの自治体が1位の栄光を掴み、
どこかが必ず最下位の屈辱にまみえるわけです。

 2号 を含めた透明人間 たちの意見を要約すれば
、最下位が常態化していて、上にあがっても改善の見込み
がなければ問題だけど、中学になると学力が向上している
のなら、そこに静岡県の教育の特徴があるのかもしれない
ということで、高校受験への切迫感や危機感がないと本気
になれないというのもどこか情けないけど、それが緊張感
に乏しい静岡県民の県民たる所以なのかもしれません。

 でも、悲観することはありません

 全国一律に行なう学力テストで国が確かめたい「学力」と
本県が目指すべき「学力」との間に齟齬があったというだけ
のことです。

 教育の専門家ではないからこそ、得てして物事の本質を
突いたり真理に近づけることもあります。

 これがそうだとは思いませんが、あまりに点数にこだわり
すぎるのもどうなのでしょう。

 点数を取るだけなら方法は簡単です

 学力テストの傾向と対策に絞った設問を繰り返し学習する
反覆練習ですぐに数ポイントの点数は稼げるでしょう。

 だとしたら、本県独自の教育観や学力観とはなんぞやと
いうことになるわけですが、温暖で風光明媚な景観など、
海と山の自然環境に恵まれた風土を活かせる教育です。

 (ちまた)では

 静岡県は 「10番目の県」 と言われています。

 統計で比較すると、調査項目のほとんどで10番前後に
位置するのが本県の特色で、それが微妙に屈折しながら
も県民の自尊心を擽(くすぐ)るわけです。

 さらに、静岡県では平均的な 「日本の県」 として、
新商品のテスト販売が行なわれることが多いのです。

 文化的には関東と関西の中間に位置し、温暖な気候に、
海と山、都市と農村、人口の年代構成、所得分布や世帯
当りの消費支出に物価など全国的にみても平均的です。

 静岡県には民放テレビ局が4局あって、テレビ・ラジオの
電波エリアが県外と重複していないので地域限定の広告
を打ちやすく効果測定がしやすいという事情もあり、これら
を勘案すると全国平均に近いデータを確実にゲットできる
というメリットが他地域に比較して大きいのでしょう

 総じて保守的ですが、なぜか新しい物好きという県民性
が決定打となるのかもしれませんが、要は 「日本の縮図
だと言える地域なのです。

 地理的には表日本(太平洋側 right 東海道)の中央に位置
し東西の文化や言語などが複雑に交錯するエリアですが、
一般的には平均的な日本人像が想定されるとして新商品
などの試験販売地に選出されるのだと思われます。

 そうしたランキングでは、常時 「10番目の平均的な県」で
あるはずの静岡県の小学生が全国で最下位だなんて …

 「あり得ない」いや、あってはならない

 と知事が叫んだのか、どうかは不明です

 世界遺産となった日本一の富士山が看板の知事ゆえに、
さすがに学力テスト全国最下位はショックだったのだろうと
穏やかならぬ心中を察することは容易ですが …

 これは 「郷土愛」 なのか

 それとも知事としてのプライドや面子あるいは職責から
なる使命感が①そう言わせた言葉だったのか

 知事が他府県出身者だからという意味ではありません
が、少なくとも 「郷土愛」 からの発露ではないことは
おおよそ察しが付こうというものです。

 exclamation ここで設問です

 下線部 ① の そう は、どんなことを指していますか

 これには明確な答え 「成績下位校の校長名の公表」が
用意されていますが、もし 「全国平均を上回った86校の
校長名の発表
」 という解答があったとしたら、それは「○」
でしょうか、「×」 でしょうか

 正答はひとつですから「×」 にするのが普通ですが …

 少なくとも 2号 が先生ならば、「×」 にはしないと思い
ます。  皆さんはいかがでしょう。

 まさか、「あり得ない」、「いや、あってはならない」が正解
だとでも言うんじゃないでしょうねase2 

 静岡県では独自の教育方針として、特に表現力に重きを
置いているようで、「~の気持ちを想像して書きましょう」 で
あるとか 「あなたはどう思いますか」 などと正解をひとつに
限定しない設問傾向がよくみられます。

 「自分なりに思ったことがきちんと書けていれば良し」 と
いうわけです。

 つまり、静岡県では全国一律の学力テストとは、あきらか
に違う設問の傾向にあって、記述式で正解に幅をもたせた
問題を多用したテストを実施していたということのようです。

 設問の後半で特に無解答率が高かったようで、本県の
子どもたちはあれこれ悩んだ揚げ句に答えを決めかねて
いた様子が窺えます。

 なぜなら、「○」 か 「×」 かの 「×」 を関東では 「バツ」、
関西では 「ペケ」 と言うのが一般的なようですが …

 静岡ではどちらも、普通に、両方ともに使います

 東西の文化が交錯するなかで、「バツ」 と 「ペケ」 以外
にも、どちらか一方が正しく、他方が間違っていると決め
つけない文化が育っているのかもしれません。

 symbol2 全国の正答率を上回った数少ない設問があります

 皮肉なことですが、ことわざの「石の上にも3年」
「急がば回れ」 の意味を問うものだったとか …

 静岡新聞夕刊 『窓辺』 杉浦文夫氏(浜松市立高校長)
のコラムから一部引用いたしましたが、目先にこだわらずに
おおらかで、のんびりした県民性の面目躍如が見られ
て、なんとも微笑ましい限りです。

 さて

 「祖国愛」 に関するランキングに始まり、後半部分は
「郷土愛」 に絡む戯言を認(したた)めてまいりましたが

 「祖国愛」 を自国の文化、伝統、情緒、自然を愛する
ことだと定義したのは、『国家の品格』 の著者である
藤原正彦氏です。

 「郷土愛」 を地域の文化、伝統、情緒、自然を愛する

 ことと論じて、我らが『静岡の品格』

 であると申し上げたいと思うのですが如何でしょうかpeace

   石の上にも三年寝太郎
 鳴かず飛ばずの WALK DON'T RUN

 symbol2 さすがは大器晩成の静岡人です

コメント一覧

デッキブラシ
気分爽快ゆえに、久々にコメントを啓上するぜ。

やったね! 静岡学園、藤枝順心、全国高校サッカー、
男・女そろっての日本一に王国復活の狼煙はあがった。

とにかく、サッカーだけは「10番目の県」だとは言わせないし、いられない!

確かに他は10番目前後だけど( ^ω^)・・・
ココナン
先日、都市問題を研究している森記念財団(東京)が発表した2013年の世界主要40都市の総合力ランキングによると、東京は調査を始めた2008年から6年連続の4位で、1位は2年連続でロンドン、2位ニューヨーク、3位パリも前年の変わらない順位だったそうですが、東京は5位のシンガポール、6位のソウルに差を詰められているとか。
国内では大阪が17位から23位に、福岡が33位から35位に落ちたようですが、主要40都市って言っても、何カ国参加したんだろう?

それにしても、この手のランキングにどれだけの意味や価値があるのかわかりません。
でかまる子
47都道府県の郷土愛ランキングが載ってますよ!

http://www.narinari.com/Nd/20101014434.html

やっぱり、静岡県は10番前後の8番目でした。
皮肉のアッコちゃん
漢字の書き取りなどを除いて、国語に客観的な正解などあるのだろうか?
一介の中学教師
世に中は数学のように「正解がある」問題だけでできているわけではありません。
絵画などの芸術作品に対する感じ方は千差万別で「こう感じるのが正しい」と強制するのは過ちだし、文学作品も、必ずしも作者の意図した真意が正当に評価、批評されているわけではないでしょう。
「自分の意見を表現する能力」を育み、養おうとする静岡県の教育はすばらしいと思います。
ココナン
確か、サッカーくじの「toto」やマックの「65円ハンバーガー」も静岡が最初だと聞いています。
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