有名な夏目漱石の小説 『我輩は猫である』 の
書き出しですが …
まだ眼も開かず藁の上でニャーニャー泣いていたところ
を、書生に摘み上げられたこの子猫の名前を「マダナイ」
だと思うような読者は、まずないでしょう
ところが、世の中には盗人同様に
飼い犬に「猫」という名前をつけたり、猫に「ドラミ」
や「ドラエ」など『ドラえもん』からのネーミングは
ともかく「ジェリー」(トムとジェリー)や「ミッキー」
「ミニー」などのアニメやディズニーランドのキャラクター
からネズミを思わせる呼び名にしたり、果ては「コバン」
(猫に小判)などの諺(ことわざ)からの命名等々 …
変り種のタネも尽きまじなのですが
それは、現在 …
人間界(主に日本)においては「キラキラネーム」
として、あちこちで猛威を振るっている次第なのです
とは言うものの、これも昨今の流行現象だとして バサッと
切り捨てるわけにもいかないのが難儀なところで、冒頭の
漱石と双璧をなす明治の文豪・森鷗外の子供たちも一体、
何の因果なのか、ドイツ人の名前を漢字に当てはめて命名
されているのです
於菟(オットー)、茉莉(マリー)、杏奴(アンヌ)、類(ルイ)、
不律(フリッツ)。
戸籍法では「名前には、常用平易な文字を用いなければ
ならない」との条文があり、使用できる漢字には制限がある
ものの、読み方についてはまったく規定がないのです。
「キラキラネーム」と同種に「暴走万葉仮名」
あるいは「DQN(ドキュン)ネーム」と呼ばれるものが
あるのですが、最近ではこちらの方が優勢な気配です。
これらは暴走族のような当て字や漫画・アニメ・ゲーム等
のキャラクターからとった読みづらい名前や人名としては
一般常識から逸脱するような珍妙な名前に対して蔑視的
に用いられるインターネットのスラングです。
キラキラネームで検索をすると、出るわ出るわの選り取り
見取り、あまりに多くて閉口しちゃいますが、ほんの一部分
だけでも紹介すると …
凸(てとりす)、月(あかり)、愛保(らぶほ)、火星(まあず)
、光宙・光宇宙(ぴかちゅう)、姫凜(ぷりん)、七音(どれみ)
、姫星・希星(きてぃ・きらら)、黄熊(ぷう)、泡姫(ありえる)
、今鹿(なうしか)、流布伊(るふぃ)、皇帝(しいざあ)等々、
どれもこれもぶっ飛んでいるので、多少なりともマトモだと
思えてしまうのが、月(あかり)と七音(どれみ)くらいのもの
で、3番目の愛保(らぶほ)などは、一体全体、何を考えて
名付けているのやら皆目見当もつきません
子供がイジられキャラで、馬鹿にされて、学校から泣いて
帰ってくることでも期待しているのでしょうか
ほぼ100% イジメられることを保証します
さて、
「キラキラネーム」をつける親の心情に関しては、
以下のような投書が新聞社にあったそうですが …
「私の2人の子の名前は〇〇と☆☆で、ほとんどの人は
読めません。 けれども、そのお陰で子供たちは先生方
から 『何て読むの』 と聞かれ、その度に自分の名前を
張り切って答えているそうです。 『パパとママがつけて
くれたの』 と誇らしげに言って。
世界でたった一つの宝物(子供)に世界でたった一つの
名前を付けたくて、懸命に本を何冊も読んで考えました。
『皆と同じ、皆がするのが正しい』 ではなく、『自分なりの
気持ちを大切にしていくことが大事』、― そんな気持ちが
子供たちの名に託されているんだと思います。
人生の先輩、先生方、子供たちに 『何て読むの』 と
聞いてください。 誇らしげな顔が返ってくると思います」
― 主婦 30歳 ―
正直に言いましょう。
敢えて、ここでは伏せ字にした〇〇と☆☆は、簡単には
読めない名前ですが文字面からは親御さんのお子さんに
対する思いの丈がしのばれるもので、キラキラネームとは
いっても許容の範囲内のものです。
問題になるのは、先の愛保(らぶほ)の類(たぐい)で、
名前とは、その子の人生や将来を願って考えるもので、
そのために画数やら音の響きやらになにかと気を揉んで
は懸命に試行錯誤を繰り返すわけです。
ですから、
結果として子供が悩み、苦しむことになるならば、まさに
本末転倒であって、親が子供の心情にまで深く立ち入って
考えてはいない つまりは、親の身勝手な自己満足心や
ひとりよがりにすぎないのです。
一生懸命に考えた末に決めたとしても必ずしもいい名前
になるわけではありません。
ましてや、単に、可愛いからとか、カッコいいからと安易に
名付けたとあっては身も蓋もありません。
たとえば、これは実際につけられた名前だそうですが …
「ララ桜桃」(ららさくらんぼ)と読みます。
そりゃあ、小さい頃は可愛いでしょう
なんてったって、
ララ桜桃 (ららさくらんぼ) ちゃんだもの
でも、これが大人になったら目も当てられないような悲惨
な事態になることを考えてみて欲しいのです。
就職やバイトの面接時に 「ララ桜桃です」 って、
キャバクラの源氏名でも使わないような名前を面接官を前
にして名乗るわけです
どんなに真面目でいい子でも名前で不採用になる公算が
大きいし、会社の名刺にそんな名前を印刷したくないという
のが本音でしょう
つまるところ、不幸を呼ぶことになりかねないわけです。
キラキラネームや珍しい名前がつけられるのは、前述の
森鷗外の例を引くまでもなく、いまに始まった現象では
ありませんし、個人の主観によっても変化しますので
良し悪しの定義はそれぞれに異なります。
早稲田大学の創立者で2度、首相を務めた大隈重信の
娘さんは熊子と名付けられました。
大隈熊子(おおくまくまこ)とクマが2つも付くのです
女性の名前にしては無造作で無神経で酷すぎるのでは、
… と、現代人には思われがちですが、当の本人は一向
に気にする素振りもなく、強そうでいいではありませんかと
笑い飛ばしていたそうです
確かに、
お虎(寅)ばあさんとか、お龍(りょう)さん 坂本龍馬の
の奥さんの例もあり、名前に関する常識やトレンドも時代
とともに変化するものです。
ところで、
森鷗外ですが、子供ばかりではなく孫の名前までが
キラキラネームなのですが …
子供=長男:於菟(オットー Otto)
孫=長男:真章(マクス Max)
次男:富(トム Tom)
三男:礼於(レオ Leo)
四男:樊須(ハンス Hans)
五男:常治(ジョージ Geroge)
子供=長女:茉莉(マリ Marrie)
孫=長男:𣝣(ジャク Jacques)
次男:亨(とおる)
子供=次女:杏奴(アンヌ Anne)
孫=長女:桃子(ももこ)
長男:鷗一郎(おういちろう)
子供=次男:不律(フリッツ Fritz)
生後半年で亡くなる
子供=三男:類(ルイ Luis)
孫=長女:五百(いほ)
次女:佐代(さよ)
三女:りよ
長男:哲太郎(てつたろう)
時代錯誤と言われても不思議ではないDQNネームにも
臆せず、医学者、医学博士、動物学者、光学者、大学教授
、作家、画家、エッセイスト … と多士済々の活躍をみせた
偉大な家系で、決して名前負けしないDNAの凄さに、ただ
ただ脱帽するだけなのでありますが …
それにしても、
暴走気味の 「キラキラ万葉仮名ネーム」 の
氾濫ぶりには投げる言葉もありません。
至近な例でいえば、1号さんの最初の子供(長男)は、
奥さんのたっての希望で亜麻(アーサー)という名前に
なるところだったのを1号さんが頑として認めずに別の
名前で届け出たのだそうですが、聞くところによれば …
なんでも、イギリスに憧れていた奥さんがアーサー王の
伝説からそれを切望したという話ですが、実情は人気俳優
だった当時の黒田アーサーに因(ちな)んだ命名だったとか
1号さんの嫉妬で名前が変更されたと知ったならば、
長男君はどう思うのでしょうか
そのままでいいのか、アーサーの方がよかったのか
あ-さ- て、果たせるかな
この結末やいかに …
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