少なくありません。
チンパンジー・ゴリラ・オランウータンなどの類人猿の他に
もイルカやカラスなどもかなり賢い動物であることはよく知ら
れていますが、これらは皆、脊椎(せきつい)動物です
無脊椎動物、それも頭足類に属するイカが霊長類に匹敵
する知性を有するなんて如何(イカが)なことでしょう

なんてシャレている場合ではありません
『イカの心を探る』 池田 譲 著(NHKブックス)
「知の世界に生きる海の霊長類」と副題される本の書評
(池田清彦=早稲田大学教授による記事)が静岡新聞に
載っていました。
それによると、
「イカの脳のサイズは相対的に見れば、魚類や爬虫類
よりも大きく、鳥類や哺乳類に肉薄しているらしい。
賢いはずである。 精密な観察と巧妙な実験によりイカ
の知性を明らかにしようとした挑戦の書である」 として、
まず最初の話は、イカ社会について …
「イカの群れには『順位制』が見られるという。つまり
イカは群れの中での自分の序列がわかっているのだ。
それは、相当程度にレベルの高い認知能力がなければ
できないことで、イカは学習能力が高く、短期記憶ばかり
でなく長期記憶もある、という実験結果にも驚かされる。
しかし、何といっても一番感心したのは、イカにも人間の
成長過程に見られるのと同じ臨界期があることと、イカも
また自分を認識しているらしいという話だ。
― ふ化したイカにアルテミアという動きの鈍い餌だけを
与えて育てると、長じてコペポーダという動きの早い餌を
捕れなくなるという。
最初からコペポーダを与えておかないと、素早い動きに
対応できる神経系が発達しないのだ。 イカの行動もまた
すべて遺伝子により、あらかじめ決定されているわけでは
なく、氏 と育ちの両方によって決まるようだ」
「本書で出色の出来なのは、イカが自己認識できて
いるかどうかを、鏡を使った実験で検証しようとするくだり
であろう。
一匹だけ隔離飼育された孤独なイカが、鏡で自分の姿
を見た次の日に死んでしまったなんていうショッキングな
話もあって実に面白い。
全体として話題をちょっと詰め込みすぎた感があるが、
研究者の意気込みを感じさせる熱い本だ」
… としています。
興味のある人は読んでみてください
さて、一説では、
同じ頭足類に属するタコの知能は、人間の3歳児に匹敵
するらしく、イルカ並みとは言わないけれど、これまた相当
に賢いことは確かです

ネズミや犬を遥かに上回る学習能力があり、ビンの中に
餌を入れて固くフタを閉めておいても、いとも簡単にフタを
回して餌をゲットしてしまうし、反対にビンの中にタコを閉じ
込めても内部から吸盤でフタを回転させて脱出します
なんと驚くことにタコは、9つの脳 と3つの心臓
を持っているのだそうですよ
人間とは遠い昔に枝分かれした生物で、タコには一般的
な意味での脳はなく、脳のような神経中枢と異様なまでに
発達した8本の手足の付け根にある神経脳で構成されて
いて、大脳にあたる神経中枢が全体的な指示のみを与え、
細部は個々の手足が計算する

あるような構造が9つの脳の正体なのですが …
すべての計算を大脳だけで行なう中央集権的なシステム
よりもシンプルながら中央と連動して機能する地方分権的
な仕組みの方がタコにとってはすこぶる効率がいいのかも
しれません
さらには、
本来の心臓の他に鰓心臓と呼ばれる器官が2つあって、
左右の鰓(えら)の根元にそれぞれ1個づつ持っています。
これは鰓に血液を送るためのもので、筋肉への多量の
酸素供給を可能にするように配備されているわけです。
タコにある3つの心臓の一つは全身に血液を送るための
心臓で、あとの2つは鰓の中の血液を循環させるもので、
この仕組みはイカにもあって彼らの心臓も3つあります。
イカやタコは、ヘモグロビン(鉄)ではなく、ヘモシアニン
(銅)を媒介として血液を運ぶので、血液は青色です
ちなみに、
タコといえば8本足が常識でしたが、実は腕が6本で足が
2本らしいことが最近の研究で分かったそうで、個体ごとに
右利きや左利き以外にも両利きならぬ両刀使いや6本利き
のタコまでいるようです
しかも、ある種のタコは半分に割れたココナツの殻を体の
下側に吸い付けてつま先で歩き、2つの殻を組み合わせて
、その中に身を隠すらしいのです
体の保護なのか、天敵に対する防御的な行動なのかは
不明ですが …
いずれにしても、サルや原始人のようにココナツを道具と
して使用するわけで、無脊椎動物として初のノーベル賞級
の快挙だとか …

モノマネも得意で、エイやサンゴに変身する自己防衛の
カモフラージュはお手のもので忍者ばりの完成度です
イカやタコの目の神経系統は、下級動物の中では最も
高度に発達していて、網膜や角膜などの構造は人間の目
と物理的によく似ているそうですが、
視覚よりも嗅覚が発達した海の生物の世界では、極めて
目がいい動物で、頭足類のカメラ眼は、対照的に視神経を
網膜の後ろ側から出しており「正しい出口」を持っている。
つまり、人間のような盲点がないのです。
頭足類の祖先はアンモナイトやオウムガイですが …
進化の過程で殻を失ったタコは、狩のために動きが敏捷
となった半面で外敵からは襲われやすくなったわけで、
目立たないよう単独で行動し、道具や変身術を駆使して
うまく隠れつづける戦略を選択しました。
記憶力や問題解決能力に学習能力など
を鍛え上げなければ、生き残れなかったというわけです。
この論理構成からいくと、当然イカも賢くなるべく進化した
はずですが …
タコに関しては、
「復讐するは我にあり」 であるとも解釈できる
逸話が『タコの教科書』 リチャード・シュヴァイド著、
土屋晶子 訳のなかで紹介されています。
「ある研究者が水槽中のタコがつかんだ餌を取り上げて
からかった。 翌日その部屋に踏み込んだ途端に顔面に
水を噴射された」 という一幕ですが、
練習をしていたと思(おぼ)しき水の跡も残されていたそう
で、タコ恐るべしである。 と鷲谷いづみ=東大大学院教授
は評しています。
また別のある飼育施設でのエピソードでは、
タコに普段活きのいい魚を餌として与えていたのですが、
ある日、都合によって鮮度が幾分落ちた魚を与えたところ、
それは決して食べられない古さのものではなかったのにも
かかわらずタコはそれを食べなかったばかりか、飼育員が
水槽のそばを通りかかるタイミングを見計らって、その魚を
投げ返してきたそうです
そのタイミングがあまりにも絶妙だったので、何度か繰り
返して観察してみた結果、タコは人間に分からせるために
タイミングを狙って、わざと放り出しているとしか思えないと
いう結論に達したというものです。
これが感情によるものなのか、ほかの欲求が転化・転換
したものなのかの判断は困難ですが、
「タコにも感情があるのか」という疑問を
抱かせるのに十分な行動であることは間違いありません。
先の鏡の実験によるイカの例もそうですが …
じっとこちらを見つめるイカのつぶらな瞳、鏡のなかの
自分にそっと触れるイカの細くて長く伸びた2本の触腕、
その姿が自分だと知った瞬間の衝撃や如何(イカ)に …
いやはや、エラ(鰓)いこっちゃ
「このタコ」 と、罵倒されるイカのようなボクの
気持ちと「如何(イカ)にしてくれようか」
と、画策するタコのような複雑系の誰かさんの心 …
ああ、タコ足配線のように絡みつき苦悩(9つの脳)する
タコのようなボクの心のうちは、自己認識能力のあるイカ
が、鏡に映った奇妙で異様な己(おのれ)の姿に絶望して
死んでしまったという孤独なイカの悲しい心のように千路
に乱れてしまうのです

9つもある脳に支配され、翻弄されるタコの心に同化して
しまう前に、3つの心臓に毛が生えている誰かさんのよう
に「ひっぱりダコ」の人気者になれますように


てか、一体全体 ・・・・・・・

誰かさんって、だあれ