甘いアイスみたいに、溶けちゃう前に私を愛して
韓国の若いモデルで女の子DJ、Hennyちゃんが歌うトロピカル・ハウス。
曲名はMelt Awayか。
2018年7月リリースのこのクラブミュージックが都心のクラブで毎週末踊り明かす彼女たちのもとに届いたその波の頃に、私もそこにいたかった。
できることが当たり前で、できないことが許されない仕事の世界。年収は面白い様な線で毎年伸びていくものの、勝負の世界に疲れ切った30代後半の夏は、くそったれなものだった。
生きている本質が見えず、金を若い女の子との瞬間的な恋で蒸発させることでしか生の激しさを受け止められなかった。
彼女たち大学生2人と5ツ星ホテルのスイートルームに泊まっては、次の次の日には後悔していた。
俺は何のために生き、一体何を為し得て死ぬんだろう。
セミの赤ちゃんが精一杯、羽化しようと夕方に抜け殻から脱して羽を伸ばしているその刹那の観察時や、甘ったるくて優しいその〝Melt Away〟をBoseのヘッドフォンで聴く朝の散歩の度、思った。
ポルシェのカイエンで早朝、速度計測をしている監視カメラが届かない短い区間だけレインボーブリッジを160kmでぶっ飛ばしても、快感はすり抜けていく。その虚しさはそういえばイエローモンキーの歌詞やファウストの一説みたいだ。
確か、そうだ。働き過ぎて鬱になる前にできるだけ予約している鍼の80代のおじいちゃん先生がこの前言っていた。
そう鬱病は危ないですよ、そう状態のハイの時に勢いで自殺しちゃいますから、って。
音楽に反応してるうちは俺の細胞が生きることをやめないんだろう。そう思う。